シンボルツリーとして植栽されたアオダモ

シンボルツリーとして植栽されたアオダモ

アオダモはモクセイ科・トネリコ属の落葉広葉樹で、造園や庭づくりの際はその自然樹形を存分に楽しむ為に植栽をしております。

幹から枝先までが細く繊細な樹形が多くシルエットも軽い為、背の高いサイズを植栽しても圧迫感を感じにくい特徴があります。

背の高い雑木はお住まいとのマッチングも良くなりますので、樹木と建物との一体感をお望みの際にお勧めとなります。

アオダモの基本データ

  • 科名と属名 モクセイ科・トネリコ属
  • 学名 Fraxinus lanuginosa
  • 分類 落葉広葉樹 小高木
  • 樹高 5m~15m
  • 原産地 日本 朝鮮半島
  • 別名 コバノトネリコ アオタゴ
  • 開花期 4~5月
  • 植栽用途 シンボルツリー 雑木の庭 地域により街路樹・緑化等
  • 木材用途 しなやかで粘りを持つ材質から、野球のバットやテニスラケットにも使われる

切った枝を水に浸けた際、うっすらと青色を帯びる事がアオダモの名の由来。この特性から染料として活用されていた事も。

 

作庭者から見ると「アオダモはこんな庭木」

アオダモは近年人気が高まっている事もあり、樹形の良い品ですと価格も高くなってきています。

庭づくりを行う私から見ますと、アオダモは以下の様なポイントが挙げられます。

おすすめなポイント

  • 雑木の中では珍しい複数葉が魅力的
  • 存在感のある花や紅葉を楽しむ事が出来る
  • 生育が緩やかで手間が掛からない
  • 手軽に背の高いサイズの木を植栽できる
  • ケムシの被害を受けにくい

注意したいポイント

  • 幹が細い為に強風・降雪に注意が必要
  • 枝が少なく、単独植えの場合は寂しさを感じる事も
  • 特に手頃なサイズの木が高価

それではこれらのポイントを交えながら、庭木としてのアオダモを解説してまいります。

 

アオダモの特徴

アオダモは繊細な樹形を持ち、春は柔らか味のある花、夏は涼し気な葉を楽しむ事ができ、秋には紅葉の色付きも見る事が出来ます。

それではアオダモの特徴を見てまいりましょう。

アオダモの葉:芽吹きから葉の広がり

芽吹いたアオダモの新芽

芽吹いたアオダモの新芽

落葉期の冬眠を経て、春に芽吹くアオダモの新芽です。

暖かくなってくると灰色の殻の様な芽が膨らみ、割れる様に中から新葉が出てきます。

年によって明確な新葉展開時期は異なりますが、アオダモの芽吹きは他の落葉樹よりもやや遅れて始まります。

 

アオダモの葉

展開したアオダモの葉

展開を経たアオダモの葉は、3枚~7枚の小さな葉が対生する奇数羽状複葉という形態で、異なる植物ですが同属のシマトネリコとやや似た葉をしています。
この羽状複葉を持つ庭木は遠くから眺めると涼し気でナチュラルな印象を持たれますので、近年の自然な庭で好まれる傾向があります。

 

涼し気な葉が美しいアオダモ

涼し気な葉が美しいアオダモ

アオダモの葉は一枚一枚が小さく集合している形状の為、風にそよぐ姿がとても美しいものです。

写真の様に枝葉が多いタイプの樹形であっても軽やかさを感じられ、モダンなデザイン住宅とも良く調和します。

特に庭木の向こう側を透かして見せたい場合、例えばデザイン住宅の外壁や和風住宅の意匠等と融合した様な風景を作りたい際に、アオダモは非常に適した庭木と言えるでしょう。

 

アオダモ独特の軽やかな樹形

アオダモの樹形

アオダモの樹形

アオダモは基本的に樹高が高くても幹が細いままの姿が多く、流通する多くが株立ち状の樹形となります。

人為的に幹を寄せ付けた「寄せ株」の植木は後々何本かの幹が枯死するケースがありますので、元々一つの根から複数本の幹が育った「本株」の木がおすすめです。

山採り品と吹かし直し品

本株物のアオダモでありましても、自然に幹が複数育った山採り品と、太い幹を切断して複数本の幹を発生させた「吹かし直し」の2種類が流通しておりますが、庭木として丈夫に育てたい場合は吹かし直し品の方が生育面で剛健なのでおすすめです。

山採りのアオダモは根も小さく幹それぞれの高さや太さが異なる事が多く、とにかく自然の姿をお庭へ取り入れたい場合におすすめな庭木です。

幹模様の違いに見る生産地

アオダモの魅力である幹模様は菌類が付着したものであり、環境的側面から山採り物の方が明らかに幹肌は美しくなっています。

模様が少なく幹がグレー掛かっているアオダモはしばしば「畑もの」と呼んで区別されます。

近似種との区別

トネリコ・ヤチダモ等の近似種は、葉の形状が同じものの生育力が格段に強くアオダモとは異なります。

見分けるポイントは樹形が繊細かどうか、葉の大きさ、小枝同士の距離(伸びが強い木は枝が離れる)となりますが、これらの木は背丈の割に幹や枝が太い事が多いので、雰囲気で見分ける事は出来ます。

株立ちだけじゃない?アオダモには単幹樹形も

軽やかなアオダモの単幹樹形

軽やかなアオダモの単幹樹形

庭園材として流通する事は少ないのですが、アオダモにはこの様な単幹樹形の商品も存在します。

特性として株立ち樹形よりも成長力が強く、葉も大き目であるケースが多いのですが、足元をスッキリさせつつ上部に雑木の雰囲気を演出したい場合におすすめです。

写真の様に下部へ低木を多く植栽する事ができ、ナチュラルガーデンを作る場合には有効と言えるでしょう。

 

 

アオダモらしさを感じる、幹の縞模様

アオダモはその樹形が自然味に溢れている事が魅力ですが、さらに雑木らしさを感じられる特徴が、幹にある縞模様と言えるでしょう。

アオダモの持つ縞模様

アオダモの持つ縞模様

地衣類(菌類)が付着した為に見られる縞模様ですが、山で自然に育った山採りアオダモにおいては特にハッキリとしています。同じ縞模様を持つ雑木としてアオハダがあり、こちらもナチュラルな魅力のある雑木です。

木漏れ日を受けた陰影の様に見える縞模様はとても美しく、雑木の庭で引き立ちます。
幹に模様を持つ木は少ないので、自然な山間部を表現する際、やはりアオダモは特別に重宝する存在と言えます。

 

柔らかな印象を持つアオダモの花

アオダモの花

アオダモの花:小花が集合して柔らかな印象を持つ

アオダモは4~5月に美しい花を咲かせます。
アオダモの開花は、新葉の展開と同時に蕾が成長し、小さな花が集合して咲きます。

小さく集まった花はふわふわした綿毛の様に見え、遠くから眺めても柔らか味を感じられます。

花持ちは短いのですが、雑木らしく季節感を感じさせてくれるには十分な魅力を持っています。

尚、アオダモは非常に珍しい雄性両全性異株性という性質を持っており、雄株と両性花株に分けられます。

これは雄花を付ける株と両性花を付ける2種類が存在する事を示します。

尚、近似種のヤマトアオダモやトネリコは雌雄異株となります。

 

花後に見られるアオダモの翼果

アオダモの翼果

アオダモの翼果

アオダモは花後に、この様な見た目も楽しい翼果が付きます。

アオダモの翼果は翼の片側に種子が付いており、そこから翼が伸びている形状になっています。
同じ形状を持つ翼果としてはカエデ属の植物が挙げられます。

この翼で風に乗って木から離れた所まで飛び、そこで発芽する為の優れた仕組みとなっています。

 

アオダモの紅葉

アオダモの紅葉

アオダモの紅葉

環境によって色味は異なりますが、条件が合いますと真紅に近い紅葉を見せてくれます。
葉が少ない分、紅葉時には風情が感じられ、背景の建物や垣根などと重なった美しさを楽しむ事が出来ます。

アオダモは総じて枝ぶりがシンプルで葉数も少なく、むしろ木の向こう側を透かして見せたい時に重宝します。
この樹姿を存分に楽しむ為、弊社では切り口の目立つ物や不自然に太ったり曲がったりした樹形の物をお納めする事はございません。

 

アオダモの生育と適応環境

伸び方については落葉樹としてはややおとなしい部類となりますが、やはり人の背丈ほどで維持しようとするには無理が生じてきます。

せっかく圧迫感を感じさせない爽やかな植木ですから、背丈は悠々と伸ばしてあげた方が美しく見えます。
また、この傾向から植栽する際には既にある程度の背丈があるものを植えるのが良いかと思います。

半日陰の環境で美しく成長する

やや日陰となる中庭に佇むアオダモ

やや日陰となる中庭に佇むアオダモ

生育は夏場の日向でもやや耐えられますが、やはり西日を避けられる半日陰が最適となります。

写真の様に、頭上は陽が当たりつつ足下は木漏れ日となる様な場所ですと、アオダモは特に良い生育を見せます。

下部に低木や下草類を生育させる場合に相性が良く、様々な植物を近接させても圧迫感を感じさせない、爽やかな風景となります。

葉が柔らかな割に毛虫の害を受け難く、私共にとりましては頼れる雑木といったところでしょうか。

 

明るい北側への植栽にも適応

北側へ植栽したアオダモ

北側へ植栽したアオダモ

北側であっても広く開けた様な場所であれば、アオダモらしさを活かした植栽をする事が出来ます。

旺盛な生育を期待する場合にはやや不向きですが、アオダモは明るい日陰であれば山の小高木といった雰囲気で維持する事が出来ますので、自然な木が静かに佇む様な風景作りとしておすすめな庭木です。

日陰気味の場所へアオダモを植える場合は、特に枝葉の少ない樹形を選ぶのが良いでしょう。
元々日陰で育ってきた様な樹形ですと特に相性も良く、植栽後も環境による変化を起こしにくくなります。

 

周囲を囲まれた、暗めな場所への植栽にも

やや陽射しの弱い中庭へ植栽されたアオダモ

やや陽射しの弱い中庭へ植栽されたアオダモ

中庭は周囲を外壁に囲まれている場所ですが、こんな場所にもアオダモはとても向いています。

元々下枝の少ないアオダモは頭上に光が当たる場所であれば樹形の変化も起こり難く、加えて外壁に接触しにくい樹形を探す事も容易です。

方向性のある樹形を選べば外壁から離れて育っていく様な構図を作る事ができ、落葉樹でこれを行える樹種は非常に限られます。

ただし中庭は風通しが十分でないケースも多く、この様な場所ですとアオダモはうどん粉病を発症する事があります。
ですのでアオダモを中庭へ植える場合は多くの植栽によって風を妨げる事が無い様に、シンプルな構成を心掛けるのが良いでしょう。

他樹種ですとハナミズキも同様のケースでうどん粉病を起こしやすいので注意しましょう。

 

アオダモをシンボルツリーに

アオダモは自然樹形を活かせるナチュラルガーデンの1キャストとしての植栽の他、単体でシンボルツリーとしても活かす事が出来ます。

シンボルツリーとして植える場合、枝数が少なく特に冬季の姿が寂しくなる傾向を踏まえて他の木を寄せ植えしておく事も有効です。

また、背後に外壁やフェンスが存在する場所ですと、背景がしっかりとして見えますので落葉期も寂し過ぎる事が無くなります。

優しい印象を演出するシンボルツリーに

アオダモなら優しいシンボルツリーに

アオダモなら優しいシンボルツリーに

樹高が高くても木に圧迫感を感じないアオダモは、最もお住まい外壁に寄せられる落葉樹とも言えます。

均整の取れた形よりも自然に傾いだ樹形が多い為、吟味次第でお住まいにぴったりなシンボルツリーとして植栽を行う事が出来ます。

特にお住まいを優しい印象に見せたい場合にはおすすめ出来る庭木です。

 

モダンなデザイン住宅のシンボルツリーに

アオダモが持つ自然な姿と主張の少なさは、融合させるお住まいを大いに引き立てる効果をもたらします。

モダン住宅のシンボルツリーとして

モダン住宅のシンボルツリーとして

白壁が美しいシンプルデザインの住宅のシンボルツリーとして、アオダモの株立ちを植栽した実例です。

こちらの植栽場所は日当たりも強く足元の乾燥もやや懸念された事から、アオダモは山採り品ではなく丈夫な「畑もの」を植栽しました。

植栽時はアオダモとしてはかなり枝葉も幹も多い樹形でしたが、植栽直後に剪定を施しており、この様な軽やかな姿に仕立てました。
※およそ3割程度の枝葉を間引く剪定となりました

シンボルツリーであるアオダモだけでも存在感はありますが、背後にレイアウトしたソヨゴが緑の背景となっており、これだけで緑濃い風景が構成する事が出来ます。

足下はスナゴケ張りでシンプルに仕上げている為、自然なアオダモの立ち上がり部分が強調されます。

 

樹勢の方向性を活かしたシンボルツリーに

アオダモは樹形を選ぶ幅が広く、良い意味で行儀が良すぎない事が魅力です。

シンボルツリーとして樹形選びを行う際もアオダモは木それぞれが持つ表情が多彩であり、場所にマッチしたシンボルツリーとして馴染みやすい一面があります。

アプローチへ傾ぐアオダモ

アプローチへ傾ぐアオダモ

こちらのアオダモは玄関へ向かう入り口にシンボルツリーとして植栽をしていますが、アプローチ側へやや傾いだ自然な表情を取り入れています。

左右の均整が取れた株立ちの庭木ではこの様な自然な演出は難しく、方向性を持ったアオダモならではの手法と言えます。
頭上へ自然に枝葉を感じる、気持ちの良いシンボルツリーとしておすすめが出来ます。

この植栽手法が応用しやすい他のシンボルツリーとしては、イロハモミジやジューンベリーがおすすめとなります。

 

ウォールに寄せるシンボルツリーとしてもおすすめ

デザインウォールに寄せるシンボルツリーとして

デザインウォールに寄せるシンボルツリーとして

アオダモの特徴として下枝の少ない樹形についてもご説明しましたが、この特徴を最も活かした植栽方法がこちらの「ウォールに寄せる」というケースだと思います。

シンボルツリー選びにおいて落葉樹のナチュラル感を取り入れたいご要望は多く戴きますが、雑木が広げる柔らかな枝葉がポストや表札、インターホンに干渉するケースは避けなければなりません。

アオダモであれば下半分は幹しかない樹形の為、写真の様に自然にウォールから顔を出している様な植栽を行う事が可能です。

木の角度も歩行側へ傾けて風情を加える事もでき、まさしくアオダモは現代住宅のシンボルツリーに向いた雑木と言えるでしょう。

 

庭の中でナチュラルなシンボルツリーに

ナチュラルガーデンのアオダモ

ナチュラルシンボルツリーとして

ナチュラルガーデンに溶け込むアオダモの姿。
写真でもお解かりいただける様に下枝がほとんど無く、他種の雑木類を傍まで寄せて自然風の木立を作る事が出来ます。この程度の背丈があれば生育も幾分大人しい為、剪定管理も容易となります。

 

狭小スペースへのシンボルツリーとして

植栽スペース自体が狭かったり、周囲を歩く事が多い様な場所ですと、シンボルツリーの選択は限られてくるものです。

周囲も歩きやすい雑木として

周囲も歩きやすい雑木として

こちらのアオダモは樹高2.5mを有しますが、周囲を歩く事に干渉しない木を選んでいます。

アオダモは下半分の枝が自然に朽ちている事が多く、自然な簡素さを備えています。

この為狭いと思われる場所へのシンボルツリーとして取り入れた場合、人の動線に干渉しにくいというメリットがあります。

場所は狭いけれど自然なシンボルツリーが欲しい…といったご希望でありましたら迷わずおすすめが出来る庭木です。

尚、同じシチュエーションで常緑樹をご希望される場合は、ソヨゴやヒメシャリンバイがおすすめとなります。

 

和風のシンボルツリーにもなるアオダモ

アオダモはそのすっきりとした枝振りから、垣根などの背景を透かして和風の印象を演出する事も可能です。
枝の発生が多いヤマモミジやヤマボウシよりも枝透かしを行う手間が掛かりませんので、背景を活かす植栽方法にも向いています。

垣根を背にした、和庭のアオダモ

垣根を背にした、和庭のアオダモ

こちらの写真では足下へツリバナマユミを合わせて植栽しており、ナチュラル感を取り入れた和風の庭づくりに役立っています。せっかく施工した垣根は常に景観として見せたい物。アオダモの様に背後が透ける植木であれば、スクリーンの垣根やフェンスを存分に活かす事が出来ます。

 

坪庭でライトアップされた、シンボルツリーのアオダモ

光を透過しやすいアオダモはライトアップにも最適

光を透過しやすいアオダモはライトアップにも最適

こちらは作庭した和風坪庭のシンボルツリーとして植栽したアオダモですが、夜間のライトアップで幻想的に浮かび上がっています。

アオダモは枝葉の少ない樹形である事から、光を通しやすいというメリットがあります。

せっかく木々をライトアップしても、枝葉が多い木ですと表面的に葉だけを照らす事になってしまい、光がそこで遮られてしまう事があります。

アオダモであれば下からも上からもライトアップの光を通しやすく、この様に美しい幹模様がしっかりと浮かび上がります。

 

尚、アオダモに限らずシンボルツリーをお選びされている方は、シンボルツリーの選び方とおすすめ樹種についてのページもご参考いただければと思います。

 

アオダモにおすすめな植栽方法と実例

アオダモは自然の中にいる様な雰囲気を庭で楽しむ為に、主にナチュラルガーデンや雑木林風の植栽として扱います。

樹高が3m前後程度の木でも下枝が無くなっており、縞模様の幹を美しく見る事が出来ます。
この特性により、植栽をした場所の傍を歩いても枝に引っ掛からない為、幹の傍を歩き頭上に枝葉を感じる、といった自然味を味わえるお庭を作る事が出来ます。

スッキリとした樹形を活かして周囲へデザインを施す

アオダモの足下へレイアウトを施す

アオダモの足下へレイアウトを施す

下枝の無いアオダモの樹形からは、造園上様々な恩恵を受けられます。
下部が幹だけで構成されているので木の裏側まで視認性が良く、背後のスクリーン(フェンス等)が綺麗に映えます。
また、足下への寄せ植えレイアウトも行いやすく、低木類のみならず下草類や自然石、時には水鉢等の添景物も添えるレイアウトを行います。
この様な所見から、アオダモは様々な材料を組み合わせる庭づくりに向いた雑木とも言えます。

 

手水鉢や灯篭等、和庭の素材と合わせる

灯篭・手水鉢と合わせたアオダモ

灯篭・手水鉢と合わせたアオダモ

主張をし過ぎないアオダモの佇まいは、この様に和風資材とも良く馴染みます。

かつては灯篭・手水鉢と言えば松や梅を合わせるのが常でしたが、近年では自然樹を併せる事で優しい風景を作る事が多くなりました。

アオダモやイロハモミジは和風資材と合わせる事で、時の流れや凛とした空気を感じさせてくれる他、いわゆる和風ナチュラルといったお庭を表現する事が出来ます。

 

他種雑木との美しい組み合わせを楽しむ

先述の様にアオダモは下枝が少なく、美しい幹を楽しむ雑木でありますが、そのシンプルな樹形から他種の雑木との組み合わせにも向いています。

アオダモの幹と雑木の細枝の共演

アオダモと他種雑木との組み合わせ

アオダモと他種雑木との組み合わせ

アオダモの幹はそれぞれ模様が異なる他、幹の太さや角度の組み合わせによって自然の林の様な風景を感じられます。

こちらではアオダモ同士の寄せ植えの他、ヤマコウバシとの組み合わせによって自然の絵画の様な風景をデザインしてみました。

葉のある季節であればさらに野趣が感じられるお庭となり、生活の中で四季それぞれの表情を垣間見る事が出来ます。

幹の角度・樹勢を融合させた植栽

イロハモミジと樹勢を合わせる植栽

イロハモミジと樹勢を合わせる植栽

陽の差す上部へ向かって幹を曲げる様は、周囲の雑木の角度を共通させる事でより自然風景に近付きます。

アオダモの持つ幹流れを活かせば自然の流れをも表現する事ができ、さらに周囲の雑木とも美しく調和します。

こちらではアオダモの幹流れとイロハモミジの角度を合わせ、尚且つ陽に向かって自然に生育したイメージを表現しています。

幹自体が美しいアオダモならではの手法であり、ナチュラルガーデンでは是非取り入れていただきたいものです。

 

狭小部への植栽で山間の雰囲気を演出する

狭小部でもナチュラルな雰囲気を演出

狭小部でもナチュラルな雰囲気を演出

自然樹形でありながら幅を取らないアオダモは、一見して高木の植栽が困難でありそうな場所でも違和感なく収まり、ナチュラル感を手軽に取り入れる事が出来ます。

こちらの場所も頭上のみ光が差し込み足下は涼しく保たれる環境の為、土壌を改良すれば問題なくアオダモが生育出来ます。

こちらではアオダモの幹回りを補う様にセイヨウカマツカを添え、ナツハゼも共生させる自然風の構図となっております。

 

中庭(坪庭)で軽やかなアオダモ林をデザインする事も

上で解説を致しました様にアオダモは狭小部への植栽にも向いており、その特性は限られた空間である中庭・坪庭内でも活かす事が出来ます。

中庭で実現するアオダモ林

中庭で実現するアオダモ林

狭小スペースである事も多い中庭や坪庭ですが、圧迫感の無いアオダモであれば複数本の植栽によって清々しい木立をデザインする事も可能です。

根の大きさや樹高、枝振りの吟味は欠かす事が出来ませんが、頭上に軽やかな枝葉が展開する様な環境を実現する事が出来ます。

こちらの中庭では主に単幹樹形のアオダモを6本組み合わせて植栽しており、それぞれの前後バランスや傾き加減を調整したレイアウトを行いました。

 

2階リビングからの緑を楽しむアオダモ

普通の庭木であれば樹高が4~5mとなりますと、幅や存在感も相当になってまいりますが、アオダモであれば樹高が高くても軽やかさを感じられ、圧迫感も皆無です。

2階から眺められるアオダモ

2階から眺められるアオダモ

この為アオダモであれば手軽に高い樹高の木も選択肢に入れる事ができ、2階から緑を楽しめる植栽を実現できます。

同じ条件下ではシマトネリコも選択肢として挙げられますが、やはりスケールが大きくなりがちです。

ただしアオダモは落葉樹でありますので、冬季だけは葉は無くなってしまう事に注意しておきましょう。

 

大型プランターで活かすアオダモのシルエット

半日陰となる中庭などでは雑木類の生育が良好になりやすく、ナチュラル志向の植栽としてアオダモはお勧めできます。
生育力も旺盛過ぎず、お住まいにナチュラル感を取り入れる植栽として有効です。

中庭プランターでアオダモのナチュラル感を

中庭プランターでアオダモのナチュラル感を

こちらでは中庭へ埋め込む様に設置したプランターへ4mクラスのアオダモを植栽しています。
下枝の少ないアオダモの特性を活かし、オトコヨウゾメセイヨウカマツカ等を混植し、ナチュラル感をさらに高めております。

アオダモ自体が乾燥に強い訳ではありませんので、プランターそのものが直射日光に当たりにくい場所が条件となります。

 

枝葉の少なさで実現する、窓際への植栽

窓越しに雑木の緑を眺めたいというご要望は多く戴きますものの、落葉樹は生育の旺盛な木も多く、建物に寄せて植栽すると枝が窓ガラスを擦ってしまう可能性が高くなります。

窓際で揺らぐアオダモの葉

窓際で揺らぐアオダモの葉

この為、雑木類は枝の走りも早く植栽場所に余裕が必要ですが、枝葉も少なく大人しいアオダモであれば、こちらの様にある程度窓際に寄せて植栽を行う事が出来ます。
特に枝葉の少ない木や、傾いだ樹形の木を吟味すれば、揺らぐ雑木の葉をお住まいから眺める事が可能となります。

 

アオダモの育て方

適した環境

アオダモは環境適応性が高く、日向~半日陰まで、植えられる場所は幅広いです。

しかしあまりにも夏の陽当たりが強く、植え付け地面まで熱せられてしまう場所、西日が強い場所は避けるべきでしょう。
葉の色が悪くなり、生育も極端に衰えます。

また、暗い日陰や葉に雨が当たりにくい様な狭い場所ですと、枝枯れを起こしやすく、幹単位で枯れてしまう事も多く見られます。

これらの見解から、アオダモの適所は地面に陽が当たりにくい日向、明るく開けた日陰、という事が言えます。

植え付け時期

基本は落葉している12月~3月に行いますが、既に前年落葉期に根巻きをされた植木であればこの限りではありません。

しかし新葉が固まっていない時期、あまりにも暑い時期は運搬するだけで葉が傷んでしまうので避けましょう。

適した土質

アオダモは特に山間の様な土壌を再現して植える必要があります。

腐葉土と樹皮堆肥をふんだんに含んだ、フカフカな土に植えるといったイメージでも良いでしょう。

実際アオダモが自生している場所は腐植質に富んだ柔らかな斜面である事が多く、これもアオダモが水捌けを好む表れと言えます。

水やり・肥料

乾燥を放置するのは望ましくなく、特に夏は常にやや湿り気のある涼し気な土壌にしておく事が良いでしょう。

散水後に暑くなるのは良くないので、基本的には夕方以降に水やりを行います。

この際、同時に葉に水を掛けておく事で夕立に恵まれた様な効果が望めます。

成長期に行う追肥は必要とせず、基本的には寒肥として1~2月頃に根の周囲へ有機質の肥料を浅く埋めたり、腐葉土を土壌に混ぜてあげるのが良いでしょう。

注意点

アオダモは根が細く繊細で、根巻きの植木でも根がぶよぶよと柔らかい事があります。

特に山採りの植木は顕著であり、植え付け後に幹が揺れると根が内部で切れてしまう事もあります。

また、これにより幹自体が傾き、生育もせずに枯れる事もあります。

特に根が柔らかいアオダモを植えた時は風止めが必須であり、最低限、目立たない低い位置でも良いので竹材を斜めにさして縛り付けておく等の処置をしておくのがおすすめです。

 

アオダモの剪定方法

既に背の高いアオダモであれば生育はおとなしく、剪定メンテナンスが容易です。

ほとんどの場合、地面から生えた幹は枝分かれを繰り返しており、高さを抑える場合は枝分かれをしている部分(分岐点)を選び、剪定の仕上がりが自然な枝分かれに見える様に行います。

数は多くありませんが幹付近から成長する強い枝は元から外し、重なり合っている枝を見付け次第、強い方の枝を外す様にします。

基本としては横向きに伸びている大人しい枝を大切に残すといった具合です。

アオダモの剪定作業

アオダモの剪定作業

写真の様に一度最頂部を決定した仕立てのアオダモであれば、2.5m程の高さで剪定管理をする事が可能です。

アオダモは葉の形状に柔らか味があって小枝が細い為、背丈を止めても固い印象に見えにくく、これもシンボルツリーに向く理由と言えます。

この様な剪定を行いながら、樹形を乱す、あるいは乱すであろう枝を見付ける事を意識し、発生点から外しておく事が大切です。

 

アオダモで注意したい病気と害虫

ケムシによる被害は稀ですが、周囲の環境によってはアメリカシロヒトリの発生が懸念されます。

また、山の木らしくカミキリムシに産卵されてしまう事があり、幼虫であるテッポウムシが幹内部を食害してしまう為、幹の内部に産卵する成虫を見付け次第、駆除する事が必須となります。

また、近年では大型のアオムシによる食害に遭うケースが増えてきております。
アオダモにおきましても、梅雨明け頃からは葉の食害をチェックする必要が出てきておりますのでご注意下さい。

 

まとめ

アオダモの解説をしてまいりましたが、如何でしたでしょうか。

アオダモは庭木として扱いやすい点やメリットが多く、レイアウトを行えるシチュエーションも多い優れた庭木です。

枝葉の少なさから寂しさを感じる事もありますが、近年の住宅・庭事情の中ではそれを逆に長所として活かす事が出来るのではないかと思います。

お庭や玄関周りを上品に引き立てる植栽として、是非アオダモをご検討をされてみては如何でしょうか。

 

執筆者:新美雅之(新美園HP作成・作庭者)

執筆者:新美雅之庭木や庭デザインについて、作庭者の経験を活かして現実的に解説をするコンテンツを目指し、日々執筆しています。