玄関やエントランスにシンボルツリーを植えたいけど、どんな種類の庭木がいいのかな?
お住まいの「顔」となる木ですから、シンボルツリーを選ぶ際はお好みはもちろん、樹姿や個性も考えて選びたいものです。
こちらのページでは私もこれまで多く植えてきた、シンボルツリーとしておすすめ出来る庭木種類のご紹介を始め、シンボルツリーの選び方のヒント、よりおしゃれに見せる植栽方法も交えて解説を致します。
目次
シンボルツリーとは?
シンボルツリーという言葉が使われる様になりましたのは15年程前からでしょうか。
古くは門周りに松やマキ、シイノキを植える「門被り」と呼ばれる植栽手法がありましたが、現在も同様に門周りや玄関先へ木を1本植える楽しみ方があります。
近年では昔の様に庭木そのものを盛大に飾る様な植栽は少なくなり、むしろ庭木と建物とのバランスが重要視される様になりました。
シンボルツリーが持つ役割や目的
先述の昔の意味合いとは少々異なり、近年の「シンボリツリー」はその名の通りお住まいのシンボルでありながら、建物(お住まい)を引き立てる大切な役目を担っています。
「お住まいを引き立てる庭木」という事は同時に建物との調和も求められますので、シンボルツリー選びはお住まいの方向性や趣向、テーマも重要な要素となります。
シンボルツリーの樹種については常緑樹と落葉樹の選択を踏まえれば自由度も高く、最終的には生育面・維持管理面の観点から、その庭木が植栽場所に適しているかどうかが判断材料になります。
もちろん樹形や花、葉の雰囲気からシンボルツリーを選ぶ事は楽しいのですが、その木が上記の点で適しているかどうか、下の解説をご参考の上で少し考えてみるのも良いかと思います。
尚、植栽時は小さなシンボルツリーでも、木の種類によってはすぐに大きくなりますので、生育力を踏まえた植木選び、生長を見越した植栽計画を行いましょう。
これはシンボルツリーに限らず、庭木を選ぶ上での基本となります。
シンボルツリーによって得られる恩恵
植える樹種に関わらず、シンボルツリーをお住まいに取り入れる事によって、様々な恩恵(メリット)や効果を得られます。
まずはこれらを具体的に見てまいりましょう。
お住まいのトレードマークになる
シンボルツリーはお住まいに溶け込んだ姿も魅力的ですが、独立したトレードマークとしての効果も持っています。
トレードマークとなったシンボルツリーはお住まいに個性を加え、無機質だった外壁にも表情を与えてくれます。
特に似た建物が並ぶ建売住宅ではお住まいに個性を取り入れられますので、シンボルツリーを植えればお住まいのトレードマークとなってくれます。
「遠景」を意識すれば木の存在感もアップ
シンボルツリーは遠くから眺める「遠景」も魅力的ですので、植栽計画の際はこの「遠くからの眺めと見え方」も意識するのが良いでしょう。
遠景を重視して植栽されたシンボルツリーは写真の様に離れて見ても美しく、お住まいのトレードマークとしての存在感が増します。
遠くからの眺めを重要視するシンボルツリーの場合、無理に建物へ近付けて植栽をする必要はありません。
この場合はむしろシンボルツリーと建物は3~4m程離す事がおすすめで、こうする事で玄関やアプローチ等の生活動線周りにゆとりも生まれ、シンボルツリーを放任して自然な姿のまま大きく育てる事が出来ます。
ある程度の樹高を有したシンボルツリーを希望される場合は、この様な植栽手法が有効と言えるでしょう。
程良い目隠し効果も得られる
シンボルツリーがもたらすメリットとして、程良いレベルの目隠し効果も挙げられます。
植栽方法と樹種を上手く組み合わせる事で得られる目隠し効果ですが、その方法と実例を少しご紹介致します。
シンボルツリーで玄関を目隠し
まず玄関先にシンボルツリーを植栽する場合ですが、景観向上を兼ねてドア付近を見え隠れさせる事も出来ます。
近年の住宅事情ですと玄関が道路から近い事も多く、玄関ドアを開けた際に内部が道路から見えてしまうケースがあります。
この様な場合は葉密度が高い常緑樹のシンボルツリーを選ぶ事によって、程良い目隠し効果を持たせてみましょう。
目隠しとしては常緑樹を植栽するのが通常ですが、枝葉の密度によっては落葉樹でも目線対策として十分な場合もあります。
例えばイロハモミジやエゴノキ、ドウダンツツジ等は枝数も多く、これが程良いレベルの目隠しとなり得ます。
しかし玄関先は出入りも多い場所ですので、歩行の妨げになりにくい生育の緩やかな樹種を選ぶのが理想です。
シンボルツリーで窓もおしゃれに目隠し
上の写真はシンボルツリーのソヨゴですが、右手には縦長の大きな窓が設置されています。
縦長窓はモダンで美しく、近年お住まいに取り入れられる傾向が多くなってきております。
しかし室内の天井から床付近までが窓となっている事から、設置場所によっては意外と外からの目線が気になってしまうものです。
この様にシンボルツリーと目隠し効果を兼ね備えれば、室内からも緑のシルエットを感じられる様になりますので、内外両方の景観向上を図る事が出来ます。
庭の無いお住まいでも緑を演出できる
近年の住宅事情では、お住まいに「庭」という場所があるとは限りませんが、玄関先に小さな植樹用スペースが設けられている事が多いものです。
基本的にシンボルツリーの場合は庭木を1本植えるのみですので、小さなスペースさえあれば植栽が可能という事になります。
小さな場所が玄関をおしゃれに見せる
最低限のスペースさえあればシンボルツリーの植栽はもちろん、低木類やマルチングとの組み合わせによって玄関をおしゃれに演出できます。
庭の無いお住まいにとって玄関先の小さな場所は大切なグリーンスペースであり、シンボルツリーが特に際立ちます。
庭が無くても小さな植栽スペースをお持ちのお住まいであれば、是非シンボルツリーを取り入れていただきたいものです。
少ない土面を活かしてシンボルツリーの植栽を
上の写真はシンボルツリーとしてオリーブを植栽しておりますが、植えた場所は小さな土面です。
この様に庭ではない小さな土面を活かす上でも、シンボルツリーの植樹は有効な緑化方法と言えるでしょう。
小さなスペースであっても周囲や頭上の空間にさえ余裕があれば庭木の植栽は可能であり、シンボルツリーによってお住まい周りの雰囲気を一変させる事が出来ます。
尚、小さな土面へのシンボルツリー植栽においては、根が広範囲に成長しにくいという事を意識しておきましょう。
必ずしも生育上に問題となる訳ではありませんが、四方八方に根が回らない木は強風によって傾きやすくなります。
この場合はしっかりと風止め竹を施す等、予め強風対策も盛り込んでおきましょう。
シンボルツリーは常緑樹と落葉樹のどちらを選ぶ?
シンボルツリーに限らず、庭木選びは常緑樹と落葉樹の選択から始まります。
目隠しを目的とした植栽であれば迷わず常緑樹を選ぶ事になりますが、シンボルツリーの場合は景観シンボルであるという役割上、シチュエーションやご希望イメージによって自由となります。
それではシンボルツリーという観点から、常緑樹と落葉樹それぞれのポイントを解説していきます。
常緑樹のシンボルツリー
常緑樹は整った樹形を持った庭木が多く、存在感が強めなシンボルツリーに向いております。
庭木を「飾る」、緑を「添える」といったオーナメント的な存在として扱いやすく、文字通り明確なシンボルとしての植栽としておすすめ出来ます。
輪郭がハッキリとしていて存在感がある、そんなシンボルツリーをお望みであれば常緑樹から選択するのが良いでしょう。
目隠しとしても使われる常緑樹は落葉樹よりも葉密度が高く、陽射しや風を通しにくい事も念頭に入れる必要があります。
例えばシンボルツリーに常緑樹を選んだ場合、その裏側には陽が差しにくくなり、若干暗くなる可能性もあるという事です。
常緑樹は窓の目隠しを兼ねるシンボルツリーとして活躍する一方、室内から見るとその窓はやや暗く見える様になる事も想定しておきましょう。
上は常緑樹であるソヨゴをシンボルツリーとした写真です。
常緑樹は通年葉を付けている為、一年中お住まいに緑を添え続けるシンボルツリーをお望みの際におすすめです。
しかし常緑樹は寒さに弱い樹種も多くあり、冬に北風が当たり続ける場所ですと葉数が大幅に減ったり葉の退色が強く起こる事があります。
退色の主な傾向は、葉の色が薄くなる、黄色っぽく変色する、等ですが、余程傷んでしまった場合を除き翌春以降の暖かい季節になれば新葉が展開して葉色も元通りになり、成長に伴って古い葉を落としたりします。
写真のソヨゴは新緑時期に古葉が落ちる前に黄色く変色します。
枯れの兆候かと驚かれる事もありますが、自らの落葉行動なのでご心配はありません。
ホンコンエンシスやシマトネリコは特に寒さに弱い傾向が強いので、北風が常に吹き続ける様な場所への選択は避けたいものです。
落葉樹のシンボルツリー
落葉樹の最大の特性は冬季に葉を落として休眠する事ですが、この際に見られる自然な枝模様を楽しむかどうかが選択のカギとなります。
落葉樹の場合は常緑樹とは明らかに異なる繊細なシルエットを持ち、重く感じない軽やかなシルエットが魅力です。
落葉樹は花を楽しめる樹種も多いので、花が咲くシンボルツリーを望まれる方には落葉樹のシンボルツリーがおすすめ出来ます。
また、花だけでなく落葉樹の楽しみとして落葉前の紅葉があります。
樹種によっては紅色ではなく葉が黄色く染まる黄葉も見られますし、植栽された環境にもよりますが落葉樹のシンボルツリーは季節感を感じられるのがメリットと言えます。
落葉樹をシンボルツリーに選ぶ場合は、葉の無くなる冬季に備えて周囲を低木類で充実させるレイアウトもおすすめです。
こうしますと葉が無くなってしまった冬季も寂しさを感じにくくなり、シンボルツリー周りへ自然らしさと賑やかさを両方楽しめる景観になります。
また、特に落葉樹は植える環境・生育管理面を考えて樹種を選ぶ必要があります。
落葉樹には特に伸びの強い木や毛虫の発生しやすい木もあり、夏に葉焼けを起こしやすい木もあります。
背の低い落葉樹を選んだ時ほど成長力が強い為、この場合は特に成長後の姿・サイズに注意が必要となります。
落葉樹は慌ててカットすればする程に樹形が崩れて固くなる傾向が強いので、なるべくであれば放任し、頃合いを見て枝透かしを大胆に行う事がおすすめです。
落葉樹のシンボルツリーに対しては「こまめにカットする」という処置が最も適しませんので、ご参考下さい。
常緑樹と落葉樹の選択ポイントまとめ
- 常緑樹は「飾る」「添える」様なオーナメント的イメージ
- 常緑樹は寒さによる落葉を考えておく
- 常緑樹の裏側は暗くなるかもしれない事を想定
- 落葉樹は「軽やかで自然に見せる」「住まいに溶け込ませる」様なイメージ
- 落葉樹は季節感を感じるシンボルツリーになる
- 落葉樹は真夏の葉焼けや枝の伸びを想定しておく
シンボルツリーと建物の雰囲気を合わせる
シンボルツリーを選ぶ際は樹種のお好みも大切ですが、お住まいの雰囲気に合わせて選ぶという方法もあります。
注文設計住宅であれば、お住まいの方向性と庭木のお好みが共通していらしゃる事も多く、自ずとシンボルツリー選びの一つの基準ともなるでしょう。
近年では建物とシンボルツリーが一体となって初めて完成、と考えられる程にシンボルツリーのマッチングが重要視されており、建物の設計段階から樹種まで検討される事も珍しくありません。
私も建築設計の段階から樹種や樹高をご相談~お取り決めを行い、竣工時速やかに植栽を行うケースもあります。
洋風のお住まいにナチュラルシンボルツリーを合わせる
こちらのお住まいは南欧風の意匠が施された建物ですが、シンボルツリーにナチュラルなアオダモを選ぶ事で、お住まいの魅力がさらに際立って見えます。
緑色は通常お住まいには使用されないカラーの為、庭木の緑が加わることで外壁の色彩がより美しく映える効果が期待できます。
この他、暖色系の建物には濃緑色のシンボルツリーも良く似合います。特にソヨゴやフェイジョアなどの葉色は、外壁色との調和が美しく見える様になります。
和風シンボルツリーでお住まいを引き立てる
ひと昔前でありますと、和風のお住まいと言えば黒松やマキが添えられたものですが、近年ではシンボルツリーにも柔らかみや優しさが求められており、何よりも建物との調和が好まれる様になっています。
自然な樹形のイロハモミジの他、均整の取れた樹形のヤマボウシやハナミズキ等の落葉樹は、実は和風シンボルツリーとして違和感なく溶け込ませる事ができ、和風建築の魅力を存分に引き立ててくれます。
ナチュラルなお住まいなら雑木シンボルツリーもマッチ
ナチュラルで優しい雰囲気のお住まいなら、シンボルツリーも自然風に。
こちらでは6mクラスのコナラをシンボルツリーとして植栽しており、天井の高い2階リビングからその枝葉を望む事が出来ます。
山の雑木類はその成長力が最大の懸念となりますので、植栽後に成長し過ぎて想定外な事にならない様に予め許容範囲内で最高の樹高を有した木を植栽する事がおすすめです。
樹高だけが懸念されがちですが雑木については幅も相応に広くなっていく為、植栽時からある程度幅のある木を選んで適切な場所へ植栽する事が大切です。
こうする事で成長による思わぬ越境を繰り返さない事にも繋がります。
尚、このシンボルツリーの雰囲気をもう少しボリュームダウンして表現したい場合は、自然樹形を持ったエゴノキやジューンベリーがおすすめ出来ます。
左右への広がりが許容されるならヤマボウシも向いていると言えるでしょう。
シンボルツリーとお住まいの雰囲気を合わせるポイントまとめ
- 洋風のお住まいには、ナチュラル系または濃緑色の庭木がおすすめ
- 身近な落葉樹でも、和風建築にマッチさせる事が出来る
- 最終樹高が高い雑木を使う場合は、許容できる最大限のサイズの木を植栽しておく
シンボルツリー選びで重要な「日向と日陰」を考える
シンボルツリーの選び方を解説してまいりましたが、実は最も最初に考えなくてはならないのは植栽場所が「日向か日陰か」という点です。
植栽場所の陽当たりに適応しない樹種を選んでしまうと、強い日光で葉が焼けてゆっくり傷んでいく、陽が少なすぎて病気がちになって葉の数も少なくなっていく、といった事が起こり、残念ながらこれらは珍しい例ではありません。
ここでは日当たり具合に焦点を当ててシンボルツリー選びを解説していきます。
陽射しの強い日向に植えられるシンボルツリーは?
ほぼ一日を通して日光が当たる日向ですが、南庭に限らずシンボルツリーを植える事になりやすい玄関も該当する事が多いです。
近年は夏の直射日光が非常に強くなっており、それに伴い地面からの照り返しも強くなっています。
特にシンボルツリーは門ウォールや駐車場脇に植えられる事も多く、道路や駐車場からの照り返しは相当に強くなります。
総じて植物が生きる為には長時間の日光が不可欠であるというイメージを持たれる事が多いものですが、全ての植物が夏の日光を浴び続けても健康でいられる訳ではありません。
特に落葉樹の多くは夏の日差しで傷んでしまうケースが多い為、この様な場所では特に日差しに強いシンボルツリーを選ぶ必要があります。
典型的な陽樹という選択
とにかく日当たりを好み、少しでも日差しが当たりにくい部分は葉を減らしてしまう、この性質を持つ庭木は陽樹とも呼ばれ、主に洋風の常緑樹が多く該当します。
陽当たりの良い場所は周囲が開けているケースも多く、シンボルツリーを自由に成長させられる場合は洋風の庭木が適しています。
特にオリーブは横幅を自然に広げた姿が美しい庭木ですので、日当たりも良く広い場所であればおすすめ出来ます。
逆にオリーブは陽射しの少ない場所に植えると葉が黄色味を帯びながら次第に数を減らし、上部だけが強く成長する様になっていきます。
同時に下部や内側の枝がみるみる枯れていき、植栽当初とは全く異なる姿になってしまう事を想定しておきましょう。
写真は人工芝ですが、芝生の庭は必ず日光が強く当たり続ける場所であり、そこへ植えるシンボルツリーも陽樹である必要があります。
シマトネリコも暖地の常緑樹として代表的な庭木であり、葉は夏の日光を浴び続けても健康的なツヤを保ちます。
暑さに対しては最も強い木であると言っても過言ではなく、暑い季節は特に瑞々しく見える事が人気な理由の一つです。
シマトネリコもオリーブ同様に成長に伴って下枝が少なくなってくる事が多いので、大きく育てれば日除け効果もあるシンボルツリーにする事も出来ます。
実際に日差しが強すぎる場所へのシンボルツリーとしてシマトネリコを植栽し、日除け効果によって玄関周りが涼しくなったという実例も多々あります。
同じくフェイジョアも強い陽射しに動じない洋風常緑樹であり、しかも樹高をいくらか抑えながら維持する事が出来ます。
陽射しの強い場所への低木シンボルツリーとして是非選択肢へ入れたいものです。
日光に耐える落葉樹はある?
日光に強い常緑シンボルツリーについて解説してまいりましたが、強い日光にもある程度耐え得る落葉樹もあります。
陽当たりの強い場所で、どうしても落葉樹のナチュラル感が欲しい場合はどんな庭木があるのでしょうか。
ジューンベリーは山の風情も感じられる落葉樹ですが、植栽後に根付けば夏の日光にもある程度耐える適応性を持っています。
しかし幹や植え付け地面を強い日光から守る為にも、自らの葉が日除けとなる様な成長をさせる事がおすすめです。
イロハモミジやアオダモも同じく日光に耐える剛健さを持っておりますので、これらの落葉樹であれば南庭や日向の玄関先へのシンボルツリーとしておすすめは出来ます。
日向に植えるシンボルツリーのまとめ
- 夏の暑さにも耐える、洋風陽樹を選ぶのがおすすめ
- 落葉樹にも暑さに耐え得る庭木はある
日陰に植えるシンボルツリーを選ぶ
シンボルツリーを植える事が最も多い玄関周りですが、必ず南側に位置しているとは限りません。
主庭は南側にあっても玄関は逆の北側に位置するケースは意外と多く、この場合はある程度の耐陰性を踏まえてシンボルツリーを選ぶ必要があります。
長時間の強い日差しを嫌う庭木を考える
こちらは北側に位置する場所ですが、シンボルツリーとしてソヨゴやハナミズキを選んだ基準として「長時間に渡る強い直射日光を嫌う木」を考慮しました。
一般的にはソヨゴやハナミズキも日照が不可欠とされてはおりますが、住宅地における夏場の直射日光は時として庭木に致命傷をもたらす事もあります。
夏の葉焼けは景観的にも宜しくありませんので、ある程度の陰となる場所で綺麗に生育する木を選びましょう。
右奥の特に陰となる時間が長い場所へは、ナツハゼも植栽しています。
日陰だからこそおすすめな「雑木」の選択
こちらは日陰となる北側玄関ですが、シンボルツリーとしてコハウチワカエデを選んでおります。
山間における自生では高木が作る木陰の下で育つ落葉低木であります為、風通しさえ悪くなければ育成には向いているとも言えます。
当然ながら木漏れ日を受ける時間帯も少なければ葉数を減らしたり枝も少なくなってきたりはしますが、強い直射日光で葉が焼けてしまう状況よりは美しい姿を保ってくれます。
こちらは東側玄関、つまり午後から日光が当たらなくなる「半日陰」に該当します。
この様な場所でも雑木類をシンボルツリーにするのは大変おすすめで、こちらではアオハダを玄関に添えています。
雑木類の最大のメリットは圧迫感の少なさであり、雑木を使えば樹高のあるシンボルツリーも実現しやすいものです。
玄関周りでは歩行のしやすさを維持したいものですので、アオハダやアオダモの様に「下枝の少ない」樹形がマッチしやすいものです。
雑木のシンボルツリーであれば日陰の玄関がさらに暗くなる様な事はありませんので、ぜひ樹種選びの選択肢に取り入れていただきたいものです。
日陰で育った様子を再現するシンボルツリー
こちらも玄関ドア付近となる日陰地ですが、木漏れ日で育った姿を表現すべく、背の高いアオダモをシンボルツリーに選んでいます。
雑木類の存在感は決して強くはありませんが、陽の差す方向に木の向きを合わせたり傾きを付ける等、自然に忠実な植栽を施す事によって、より自然で美しいシンボルツリーとなります。
アオダモに限らず同様の植栽手法が可能な庭木はヒメシャラやヤマボウシ等があります。
日陰環境でシンボルツリーを選ぶポイントまとめ
- 日向向きの木とされていながらも長時間の日光を嫌う庭木は存在する
- 日陰だからこそ雑木シンボルツリーという選択が可能
- 陽の差す方向まで考慮した植栽手法により、シンボルツリーを自然な姿に見せる事が出来る
シンボルツリーの高さ(樹高)はどれ位が良い?
シンボルツリーは「背が高くない方が良い」という考えで背の低い木を植栽しても、庭木は必ず大きくなります。
「手入れの要らない木」という紹介例も目に致しますが、庭木は必ず伸びてメンテナンスが必要不可欠な生き物です。
しかしなぜ、せっかく小さな木を選んで植えたのに、あまりにも大きくなってしまうのでしょうか?
実の所、木は樹高が低い内程よく伸びる、これが一番の理由と言えます。
植栽時の姿というのはあくまでも成長スタートであり、予め「どの程度の大きさまで許容出来るか」を考えておく事が、シンボルツリー選びでは重要です。
実はおすすめな「背の高い木」
背の高い木は若木と比べても生育が大人しく、植えた時の姿が成長によって豹変してしまうというケースを避ける事が出来ます。
ですのでシンボルツリーを植える場所に面積の余裕がある場合は、可能であれば3m~程の背丈の木を考えるのがおすすめとなります。
基本的に高木の部類であればカットや剪定を前提としても人の手が届く樹高に抑え続けるのは不可能に近い為、シンボルツリーは「見上げるもの」と捉えてイメージしておく事が望ましくあります。
尚、クスノキやコナラ、カツラ等は家を追い越す背丈が本来の姿である為に、樹高が数mを超えてもまだまだ伸びしろが余っています。
この為、通常の区画がなされた住宅街での植栽は不向きと言えます。
コンパクトに維持できる木はある?
写真の様にポストやインターホンの近くへシンボルツリーを植栽する場合は、どうしても小振りな姿を維持し続ける必要があります。
低木シンボルツリーの選択肢も多々ありますが、実際植栽後も最低限のメンテナンスで小さなサイズを維持出来る樹種は限られてきます。
おすすめなのは生育が特に緩やかなヒメシャリンバイやキンメツゲ、ボックスウッド等の常緑低木で、場合によっては年に一度の剪定のみコンパクトな樹姿をほぼ維持する事が出来ます。
シンボルツリーの樹高についてのポイントまとめ
- 樹高が低い若木程よく伸びるという事に注意
- 成長により樹姿が豹変する事を避ける為、可能なだけ樹高のある木を植える
- 背を低く維持したいシンボルツリーには、成長が特に緩やかな樹種を選ぶ
プランターや鉢植えで実現するシンボルツリー
シンボルツリーと言えば玄関前やエントランスへの植栽が主となりますが、玄関周りは既にアプローチとして整備されていて土が無い事も多く、シンボルツリーの植栽を諦めてしまうケースも多いのではないでしょうか。
しかしプランターや大型植木鉢を使用する事で、土の無い場所でもシンボルツリーの設置が実現出来ます。
大型プランターのデザインも多岐に渡りますので、実は地植えよりもおしゃれなシンボルツリーに見せる事が出来るのです。
エントランスに設置したプランターシンボルツリー
こちらはマンション内の共用エントランスでの植栽実例ですが、地面はコンクリートで固められており、通常の植栽は不可能な状況でした。
そこで大きな丸型のプランターを設置する事で、樹高4mのシンボルツリー設置を実現しています。
丸いプランターは「大きな鉢植え」の様にも見え、角型とはまた異なるおしゃれな景観になります。
シマトネリコはある程度の乾燥にも耐えうる庭木でありますので、乾きやすいプランターシンボルツリーに向いていると言えます。
こちらの植栽実例の様にシンボルツリーの足下へ下草類を寄せ植えしたり、プランターごとライトアップを施せば、よりおしゃれに見える景観となります。
土の無い玄関アプローチにもシンボルツリーを
こちらは玄関アプローチ上に設置した、プランターシンボルツリー(オリーブ)です。
スクエアプランターは見た目も落ち着いており、シックなカラーがより上品なシンボルツリーを演出してくれます。
オリーブのシャープな葉がグレーのプランターと馴染み、玄関前のシンボルとしておしゃれに引き立ちます。
土の容量は出来るだけ多く
プランターや植木鉢のサイズは周囲への干渉を考えて小さなサイズにしてしまいがちですが、根を生育させる為にも、可能な限り容量が大きいプランターを選ぶ事がおすすめです。
根の成長領域を確保する為に限らず、容量の大きなプランターは水遣りをした際の含水量も多くなりますので、生育面でもメリットがあります。
また、サイズの大きなプランターである程に重さがあり接地面積も広いので、風によって倒れるリスクが小さくなります。
小さなサイズのプランターや鉢へ植えたシンボルツリーは風で倒れやすいので注意しましょう。
プランターの乾燥に耐え得る庭木を選ぶ
プランターの土は庭と全く異なり、想像以上に乾燥しやすいものです。
設置場所によっては雨も当たらず、人が散水をしなければ庭木が水分を吸収する事が出来ない場合もあり、人為的に葉水を掛けてあげる必要もあります。
この為プランターのシンボルツリーを選ぶ場合は乾燥にいくらか耐える庭木が適しており、シマトネリコやオリーブ、ギンバイカやマキ、コニファー類などがおすすめではあります。
プランター設置は水遣りの容易な場所がおすすめ
せっかくのシンボルツリーですから、プランターの乾燥には十分に注意したいものです。
乾燥だけではなく、プランターは直射日光で根を温められてしまう他、冬季も根が冷えてしまう事にも留意する必要があります。
出来る事であればプランターや鉢植えでシンボルツリーを設置する際は、水道の近く等の水遣りを行いやすい場所を選んであげましょう。
プランターでシンボルツリーを実現するポイントまとめ
- 庭木は乾燥に耐え得る樹種を選ぶ
- プランターや植木鉢のサイズは出来るだけ大きくする
- 毎日の水遣りが行いやすい場所かどうかを確認する
シンボルツリーにおすすめな常緑樹13種類
それではここからはシンボルツリーに向く庭木、まずは常緑樹の13種類をご紹介をしてまいります。
冬季でも葉が落ちない常緑樹であればシンボルとしての存在感も強く、通年緑を保ったオーナメントになり得ます。
ですが寒さによって葉を半分以上落とす木もありますので、北風の当たる場所ではシンボルツリー選びを慎重に行いましょう。
オリーブ:洋風で優雅な樹姿を楽しむ
■モクセイ科・オリーブ属
洋風のシンボリツリーとして根強い人気を持つオリーブは、強い日差しと乾燥に強く虫も付きにくい特性があります。
日当たりの良過ぎる場所で困った時には迷わず選べる庭木ですが、その代わり旺盛な成長を活かせる広い場所が必要で、周囲は空間である事が必要です。
この特性からオリーブは寄せ植えには向きませんので、1本を単独で活かすシンボリツリー向きの庭木と言えるでしょう。
オリーブは優雅な枝振りを活かせる場所に
オリーブは自然に枝が伸びて枝垂れた姿が美しい為、伸びた枝をすぐに切らなくてはいけない様な場所には不向きです。
同じ部分のカットを繰り返し行っていると、オリーブはあっという間に太く硬い樹形へ変化してしまいます。
ですのでオリーブをシンボルツリーに選ぶ場合は周囲に成長させる余裕があり、頭上へも枝葉を展開させられる様な場所を選びましょう。
白・青・黒系のお住まいに特にマッチする樹姿
オリーブはその爽やかな葉色と風に揺れる清々しさから、洋風の住まいのシンボルとしてマッチします。
特に木の背景が白壁や青壁になりますとギリシャ風の雰囲気も醸し出し海風を感じさせる眺めになります。
また、オリーブの幹は白~青っぽくも見える色をしており、黒壁を背景にしてもはっきりとした存在感が得られ、シャープでモダンな雰囲気を演出してくれます。
白壁に木目調の意匠が施されたナチュランモダン住宅ですが、シンボルツリーのオリーブが美しく映える事がお解りいただけると思います。
オリーブが持つ独特なシャープな葉は、賑やかで繊細な美しさがあります。
その細かい葉はバックスクリーンが白壁になる事で細部まで浮かび上がる為、オリーブが白壁とマッチする一要因となっています。
こちらは黒壁をバックにしたオリーブのシンボルツリーです。
黒壁のデザイン住宅も近年増えてきておりますが、オリーブが持つシャープな佇まいは非常に良く似合います。
オリーブは放任成長させるとナチュラルな印象が強くなり、数少ない「野趣ある常緑樹」として魅力を発揮してくれます。
シックなデザイン住宅に合わせるシンボルツリーは悩み所ですが、陽当たりが良く面積に余裕がある場合はオリーブを候補にしても良いでしょう。
関連記事>>>実も楽しいオリーブの木を解説-洋風シンボルツリーや鉢植えの植栽実例も
シマトネリコ:耐暑性と剛健さ、洋風な柔らか味が魅力
■モクセイ科・トネリコ属
近年人気のシンボルツリーとして知られるシマトネリコですが、まず生育力の強さを第一に考えなくてはならない庭木です。
シマトネリコの植栽時は、最低でも樹高3~4mで維持していく事を想定しておく必要があります。
シマトネリコは無理に背丈を詰める強剪定を繰り返す事は避けるべきであり、予め背の高いシンボルツリーをイメージして植栽計画を立てましょう。
シマトネリコは夏の強い日差しに対しては全く動じず、乾燥気味な環境でも問題なく剛健に育ちます。
しかし関東以北では越冬が難しい程に寒さには弱く、関東でも冬の北風が吹きつける場所だと傷みが生じます。
また、シマトネリコは冬季の寒さで半落葉を起こしやすく、目隠しを兼ねたシンボルツリーとしては不向きと言えます。
レンガ調の外観にマッチする洋風感
洋風を強く意識して設計されたお住まいでなくても、上の写真の様に外壁の一部にレンガが使われていたり植栽場所がレンガで作られている場合は特にマッチするシンボルツリーと言えます。
葉色も濃く木の幅・ボリュームもある事から、洋風かつ重厚な雰囲気を出したい場合にもシマトネリコはおすすめです。
庭の中央に植えるシンボルツリーに最適
シンボルツリーを植える場所は玄関や門横が多いものですが、時には庭へ植える事もあります。
この場合は大きく成長させる事を見込んだシンボルツリーとなりますので、シマトネリコであれば問題なくおすすめが出来ます。
特に庭の中央ですと陽当たりも強い為、シマトネリコの様な日向向きの木であれば夏も安心となります。
しかし風通しの良い場所は強風を受けやすいという捉え方も出来ますので、枝葉の重いシマトネリコはしっかりと風止め処置を行っておきましょう。
驚異的な成長力に注意
シマトネリコについては特に「コンパクトなサイズを狭い場所へ植える」のは厳禁です。
シマトネリコは狭い場所に植えつけると更に成長速度が速くなる傾向があり、これは壁際への植栽時も同じ事が起こりやすくなります。
写真のシマトネリコは狭小部、隣地にも近い部分へ植栽をされてしまっており、繰り返し「カット」をせざるを得なかった状態でした。
これにより近隣からの苦情や枯れにも繋がり、抜根処置をするにも費用が発生してしまう事になります。
シンボルツリーとしてシマトネリコを植栽する際は周囲に余裕がある場所を選び、成長後とのギャップが起こるのを避ける意味でも予め2.5m以上の木を選ぶと安全です。
関連記事>>>シマトネリコの特徴と魅力-シンボルツリーや鉢植えの植栽実例も
ホンコンエンシス(常緑ヤマボウシ):色彩豊かな葉色と花を楽しむ
■ミズキ科・ミズキ属(ヤマボウシ亜属)
常緑ヤマボウシと呼ばれる事も多いホンコンエンシスは、色彩豊かな葉色が魅力です。
その色彩は洋風シンボルツリーとしての風格があり、花も楽しめる優れた庭木です。
ホンコンエンシスは単色に見えない葉の色合いと均整の取れた美しい樹形が魅力で、洋風~ナチュラルなお住まいへのシンボルツリーとして植栽する事が多いです。
ホンコンエンシスは陽当たりの良い暖かな環境を好み、寒さに弱い点に注意が必要です。
この為、冬季に冷たい北風が当たらない様な場所を選んで植栽するのががおすすめです。
写真の様にホンコンエンシスは葉色が単調に見えず、どこか賑やかな印象を感じさせてくれる庭木です。
シンボルツリーとして選ぶ事でお住まいは色鮮やかな雰囲気となり、洋風住宅の魅力を大いに引き立ててくれる事でしょう。
樹形自体はハナミズキと似ており、剪定によって形を維持しやすい点も共通しています。
植栽当初の樹形を維持しやすい庭木は決して多くは無く、剪定のコツさえ覚えてしまえばDIYでも難しくはないシンボルツリーと言えるでしょう。
長く楽しめる花
■開花期5月~7月
常緑樹で花を楽しめる庭木は他にもありますが、シンボルツリー向きの庭木の中ではそう多くはありません。
ホンコンエンシスの花はやはりヤマボウシと似ており、総苞片が花弁に見える様な構造となっています。
開花している時期も長い事が特徴で、花持ちの良いシンボルツリーとして玄関先を彩ってくれる事でしょう。
注意したい冬の半落葉~全落葉
先述の通りホンコンエンシスは冬季の落葉が起こりやすい木ですので、常緑樹と呼ばれていますがこの点に注意が必要です。
写真の様に冬季の北風に当たると葉の変色や落葉を起こしやすく、場所によっては半分以上の葉を落としてしまう事もあります。
春になれば再び新しい葉が展開するのですが、落葉してしまうと葉の無い期間は長くなりますので注意が必要です。
ホンコンエンシスをシンボルツリーとして植栽したい場合、北風が当たり難い南側が適していると言えます。
関連記事>>>常緑ヤマボウシ(ホンコンエンシス)とは?-葉や花の魅力、洋風シンボルツリーとしての植栽実例も
ソヨゴ:生育の緩やかさとさりげないナチュラル感
■モチノキ科・モチノキ属
ソヨゴの魅力は何といっても成長の緩やかさと、常緑樹では稀な軽やかさにあります。
樹高があっても重たい印象や圧迫感を感じさせず、シンボルツリーとしても野趣ある爽やかな印象を感じさせます。
その落ち着いた佇まいは洋風・ナチュラルに限らず和風住宅にもマッチし、シチュエーションも選ばないシンボルツリーと言えます。
ソヨゴは非常に生育が緩やかである為、頻繁に歩く場所や隣地境界付近などへの植栽で重宝します。
一年間の枝の伸びが20cm前後である事から、伸びた枝によって外壁を傷付けたくない場合にも向いております。
ソヨゴはモチノキ科である事から切り戻し剪定からの萌芽力も強く、葉の無くなった切り口からも新たな芽が枝分かれして出てきてくれます。
この特性から、ソヨゴはご自身でのお手入れも容易と考えられるシンボルツリーであり、日々のお手入れに不安のある方にもおすすめです。
和洋を問わないマッチングが魅力
シンボルツリーを選ぶ際はお客様のお好みが第一ではありますが、やはりお住まいとのマッチングも外せない要素です。
この際、ソヨゴ程あらゆるシチュエーションに合う木は無いであろうかと思います。
主張も無く自然な姿は個性が少ないとも取れますが、木に主張をさせずお住まいと木が静かに寄り添う風景もまた魅力的です。
株立ちの常緑樹にしては枝葉が少なく軽やかな印象で、ナチュラルな雰囲気のシンボルツリーとして手軽に取り入れられるのが魅力です。
個性が強くないソヨゴであれば、上の写真の様に周囲へ賑やかな植栽デザインを施してあげますと、派手に見えないバランスの良い景観となります。
モダンなデザイン住宅のシンボルツリーにも
ソヨゴは樹形バリエーションも豊富な庭木であり、シンボルツリーとしては株立ちと単幹、それぞれの樹形を選ぶ事が出来ます。
写真の様な単幹樹形は非常に整った印象であり、シャープなデザイン住宅のシンボルツリーにおすすめが出来ます。
枝葉の数も植栽時に剪定によってコントロールがしやすく、ソヨゴであればお住まいそれぞれに合ったシンボルツリーになるでしょう。
株立ち樹形であれば野趣と葉の多さ、単幹樹形であれば端正でシャープな印象といった所でしょうか。
実の色付きを楽しむシンボルツリーとして
ソヨゴの花は目立たないのですが、雌木であれば秋に美しい実の色付きを見る事が出来ます。
実は木全体に均等に付きやすく、大きなソヨゴであれば実成りの姿が特に美しく感じられます。
食用する事は出来ない観賞用の実ではありますが、鳥に食べられてしまう事も少なく、長い間実の付いた姿を楽しむ事が出来ます。
関連記事>>>ソヨゴの特徴と赤い実の魅力-成長の緩やかなシンボルツリーや目隠しとして
ソテツ:ローメンテナンスでオリエンタルな原始的植物
■裸子植物・ソテツ科
古い日本庭園のイメージもあるソテツですが、その剛健さとオリエンタルな雰囲気が再注目されている庭木です。
強く乾燥しやすい花壇でも全く動じず、日照りにも強く、剛健なシンボルツリーとしておすすめ出来ます。
ヤシ類に似た雰囲気を持っていますが葉はヤシ類に比べて短く、手頃な大きさで維持出来る洋風シンボルとして植栽が可能です。
道路沿いなどではない敷地内であれば葉の越境を心配せずに植栽でき、洋風オーナメントとしての存在感を放ちます。
ほぼ放任が可能なシンボルツリーとして
ソテツは岩の崖から生えていたり、砂地に生えていたりと非常に過酷な環境に適応した原始的な植物です。
毎年中心部から葉が生え、古くなった葉が垂れ下がってくる程度の生育で、この垂れ下がった葉をカットする程度で維持が可能です。
水遣りも必要なく、オーナメントとして植えてしまえば後々の手が掛からない植物です。
小振りなソテツでもおしゃれなシンボルツリーに
ソテツのメリットとして、樹高が低くても存在感があるという事も挙げられます。
写真のソテツは葉先までの高さが1m程とかなり低いのですが、葉の幅も1m程あり、とても存在感のある姿となっています。
小振りなソテツであればシンボルツリーとしてはもちろん、アクセントとしてもおしゃれに際立ち、おすすめな樹種の一つです。
しかし樹高の低いソテツは傍に寄るとトゲのある葉に接触しやすい為、この点のみ注意しておくのが良いでしょう。
意外にも豊富なソテツの樹形
ソテツは単純に一本幹の木と決まっている訳ではなく、写真の様に幹自体が分かれた樹形も多く存在します。
時には幹が3本に分かれたソテツも目にする事があり、実はソテツは個性的な面白味もあるシンボルツリーになります。
幹が分かれた樹形の他、ソテツは大小の幹が複数本生えた株立ち樹形も人気です。
鋭利な葉や幹先端のトゲに注意
ソテツの葉は一枚一枚を見ると先端が非常に鋭利で固い構造となっており、中心部に近い葉は短く針の様に尖っています。
この為小さなお子様がいらっしゃるご家庭はもちろん、近くを歩く様な場所ですと危険ですのでソテツはおすすめ出来ません。
歩行箇所の傍に植える場合は葉数が常に少なくなる様に、垂れ下がり始めた葉を常に元から切除しておく事が有効です。
中心部の葉は指に刺さりやすい為、葉の切除作業は十分に注意して行いましょう。
フェイジョア:花や果実を楽しめる低木シンボルツリー
■フトモモ科・フェイジョア属
フェイジョアは、それほど背が高くないシンボルツリーとしておすすめな庭木で、年1度の剪定を前提とすれば、2mほどの高さで維持できます。
「低木シンボルツリー」として取り扱う事が多く、近年の住宅では重宝する様になってきた庭木です。
フェイジョアは表裏で葉の色が異なるのが美しく、茶色の幹も美しさを引き立てます。
フェイジョアは元々陽当たりを好む庭木である事から、維持のしやすさも住まえますと明るいけども広くはない場所、そんな場合に向いている庭木と言えます。
また、常緑樹の中では耐寒性があり、寒い時期も極端に葉を減らす事は少ないです。
しかしフェイジョアは乾燥に弱い一面がありますので、地表の乾きを確認したら多めに水遣りをしてあげましょう。
白壁からレンガ調までマッチする中木シンボルに
シンボルツリーとしては低い姿を維持しやすいフェイジョアですが、肉厚で濃緑色の葉を持ち、存在感は決して薄くありません。
しっかりとした葉のツヤと幹の美しさが色合いを誇示し、背景となるお住まいをしっかりと引き立ててくれます。
刈り込み仕立てによって密度の高い木に仕上げてあげると、洋風のお住まいに重厚感を演出してくれます。
小さくも存在感の強い花を楽しむ
■開花期6月
小さくも存在感のあるフェイジョアの花は、南国調の雰囲気も感じられます。
お住まいを引き立てるシンボルツリーが見せる華やかな花ですので、ぜひ取り入れていただきたい庭木です。
果樹としての評価も高い果実
■収穫期10月~12月
フェイジョアはシンボルツリーとしてはもちろん、果樹としても評価が高く、パイナップルグアバと呼ばれる洋ナシに似た食感の実を付けます。
ただし基本的に自家不結実性の特性から、異なる品種を近接させて栽培しないと結実が見込めません。
尚、「クーリッジ」という品種だけは自家結実性であり、単木で実を付ける事が出来ます。
しかしシンボルツリーとして植栽する庭木で品種まで指定する事は難しいのが実情です。
関連記事>>>花や果実を楽しめるフェイジョアの魅力-シンボルツリーや目隠しの植栽実例も
シラカシ:丈夫で癖が無く、自然な緑を楽しめる
■ブナ科・コナラ属
シラカシは里山で自生する身近な常緑樹であり、カシ類の中では細く美しい葉を持っています。
シラカシは里山にも自生する身近な常緑樹であり、シンプルで飾り気のない姿をしています。
年間を通じて同じ姿をしており特に個性も見られませんが、丈夫で成長力のある頼れる庭木と言えます。
シラカシは根付いてしまえば放任していても傷んだり枯れたりする事は少なく、持ち前の成長力で大きなシンボルツリーへと成長していきます。
この為シラカシをシンボルツリーとしておすすめ出来ますのは、
- 工場・社屋
- 商業施設
- 公園
等であり、とにかくシンボルツリーを大きく育てたいというご希望に応えてくれます。
木が大きくなるまでは寒さに弱く、冬の北風に当たり続けると葉をかなり落としてしまいますが、翌春になるとあらゆる部分から新たな葉が出てくることがほとんどです。
シンボルツリーを「自然な常緑樹」にするという選択
シラカシの魅力を挙げるとしますと、やはり身近なナチュラル感にあると思います。
里山の風情そのものをシンボルツリーにする、といった感覚においては、シラカシはおすすめな木であるかと思います。
害虫対策さえきちんとしておく事で夏は美しい葉が繁茂し、育て方によっては日除けのシンボルツリーとしても活躍します。
シラカシは近年の建築におけるナチュラル志向の中で「自然な常緑樹」である魅力が再認識されてきており、背の高い自然なシンボルツリーを求めるシチュエーションで植栽されています。
特に3階建てのデザイン住宅においては、シンボルツリーのシラカシを樹高4~5mまで育て、建物とのバランスを美しく見せるケースもあります。
私も近年ではシラカシをシンボルツリーとして植栽する機会が増えてきており、樹高のあるシンボルツリーをご検討の際はシラカシをおすすめ出来ます。
関連記事>>>シラカシとは?目隠しや生垣への活用方法、他のカシとの違いも解説
モッコク:古くから植えられてきた、美しい葉を持つ剛健樹
■ツバキ科・モッコク属
モッコクは古くから庭園や社寺にも用いられてきた樹木であり、庭木としては古い歴史を持ちます。
モチノキやキンモクセイと共に昔から植えられてきた庭木ですが、モッコクの葉は特に美しい為に「庭木の王者」と呼ばれていた時代もあります。
モッコクは現代のシンボルツリーとして植栽しても風格と美しさを楽しむ事ができ、樹形の仕立てによっては和風洋風を問わないマッチングの高さを持っています。
洋風住宅においてもモッコクの美しい葉が建物との引き立ち合いを見せ、重厚感のあるシンボルツリーになってくれる事でしょう。
モッコクは植栽の歴史から見ましても日本の風土に適合しており、暑さや寒さ、梅雨によって傷む事がありません。
樹高は3m~6m程で仕立てられている事が多く、樹高の割に太く丈夫な幹が見られるのも特徴的です。
しかし樹形を美しく保つには熟練した剪定技術が必要で、正しい枝透かしを施し続ける事が前提となります。
自然光を反射する美しい葉
ツバキ科らしい光沢があるモッコクの葉は自然光を反射させ、曇りの日でも色合いが美しく見えます。
近年の夏の直射日光でもほとんど傷む事がなく、年間を通して葉を楽しむ木と言えるでしょう。
健全な葉を保つには適度な風通しを確保する事が大切で、これは剪定による枝透かしが主な対策となります。
ツバキ科でありながらもチャドクガの被害を受ける事はありませんが、葉を折りたたんで内部に生息するハマキムシの被害を受けるケースが非常に多い庭木です。
被害を受けた後ですと農薬を散布しても見た目の改善は難しいので、特にモッコクは予防的農薬散布をする必要があります。
幹と枝模様が見える剪定を
モッコクは風通しと景観の両面から、幹周りに枝葉を付けさせない剪定維持が必要です。
モッコクは幹の太さと枝分かれの様子を見せるのが最も美しく、剪定は基本に忠実に、枝透かしの技量を要します。
維持費の削減から刈り込みによって手早く刈り揃えてしまうケースもありますが、理想としては表面に残す小枝にはなるべく手を付けず、枝数を減らすのみで仕上げるのが理想的です。
この為モッコクを美しく維持させるには幅を許容する事が必要で、シンボルツリーとして植栽する場合には直径2m前後のエリアが必要となる事を想定しましょう。
ヒメシャリンバイ:緩やかな成育で植栽場所を選ばない
■バラ科・シャリンバイ属
ヒメシャリンバイは非常に小さな葉を持ち、春の花や古葉の紅葉も見る事が出来る庭木です。
特筆すべきは細かく繊細な枝葉と生育の緩やかさであり、強い日差しに耐えうる強さも持っています。
これらの特性を活かし、ヒメシャリンバイは狭いお庭や近くを歩く場所へのシンボルツリーとしておすすめ出来ます。
この特性はソヨゴとも共通しておりますが、ヒメシャリンバイは葉も小さく枝分かれが細かく、とても背の低いシンボルツリーとして活躍します。
狭小通路部へシンボルツリーを植えるケースは意外にも多い為、ヒメシャリンバイは近年の住宅事情において重宝する庭木となりました。
歩行場所の妨げにならないシンボルツリー
シンボルツリーを選ぶ際は、歩く為のアプローチに支障が出ないか、ポストの使用に影響がないか等、生活上への影響を考慮します。
ヒメシャリンバイは生育も遅く毛虫も付きにくい為、道路沿いやアプローチ、ポスト下などへの植栽が可能となります。
シンボルツリーの植栽を諦めてしまいそうなお住まいの場合でも対応出来ますので、ここがヒメシャリンバイの特筆すべきポイントと言えます。
野趣ある常緑シンボルツリーとして
ヒメシャリンバイはスリムで端正な樹形だけではなく、放任した幅広い自然樹形もチョイスする事が出来ます。
この様な自然な樹形をシンボルツリーとして植栽すれば、ナチュラルなお住まいにも非常にマッチします。
ナチュラル志向のシンボルツリーですと選択肢が落葉樹に偏りがちになりますが、ソヨゴと同様に自然を感じさせる常緑樹として選択肢に含む事が出来ます。
自然に膨らんで育った姿はとても優し気なシンボルツリーと言えるでしょう。
ややピンク掛かった数多くの花
■開花期3月~4月
コンパクトで生育も緩やかなヒメシャリンバイは、春の花も楽しめる庭木です。
花も見せてくれる低木シンボルツリーとして、ヒメシャリンバイはあらゆる場所への植栽におすすめが出来ます。
関連記事>>>ヒメシャリンバイはどんな庭木?花も楽しめる生垣や低木シンボルツリーとして
トキワマンサク(紅花・白花):密生する小さな葉と数多く咲く花を楽しむ
■マンサク科・トキワマンサク属
トキワマンサクは小さな葉が密生した樹姿であり、低木かつ存在感のあるシンボルツリーとしておすすめです。
元々トキワマンサクは生垣の庭木として広く知られておりますが、一昔前まではローソク型という円柱型の仕立てが一般的な庭木でした。
トキワマンサクの特徴は小さな葉が多く付く事、枝がとても細い事が挙げられます。
この特性を活かして目隠しの庭木として植栽する事も多いのですが、しっかりとした仕立てを行った樹形ですと、シンボルツリーとしてもおすすめが出来ます。
木全体に咲く鮮やかな紅花
紅花トキワマンサクの花は木全体に多数咲く為、花期の姿は圧巻です。
シンボルツリーにたくさんの紅花が咲く風景も魅力的ではないでしょうか。
葉色も異なる白花種のトキワマンサク
トキワマンサクは花の色の違いによって葉の色も明確に変わる珍しい庭木です。
ハナミズキも花色によって葉の色が異なりますが、トキワマンサク程に明確ではありません。
紅花トキワマンサクの葉は全体が紫~赤となりますが、白花トキワマンサクはこの様に木全体が美しい黄緑色で覆われるイメージです。
軽やかな清涼感がお好みの方は白花種のトキワマンサクがおすすめです。
関連記事>>>生垣におすすめなトキワマンサク(ベニバナ・白花)の特徴と育て方
ギンバイカ(マートル):可憐で多数咲く白花と剛健さが魅力なハーブ
■フトモモ科・ギンバイカ属
マートルというハーブ名でも知られるギンバイカはシンボルツリーとして使われる場面は少ないものの、枝を伸ばした様が優雅で美しく、洋風のお住まいによく似合います。
伸びきった枝は剪定によって切り戻しが必要ですが、花期は白花が美しく、虫害も起きにくい強さを持っています
水捌けが非常に良い土壌を好み、乾燥にも強い特性から、花壇や玄関周りへのシンボルツリーとしておすすめが出来ます。。
オリーブと同様にシャープな印象の葉が多く付き、地中海風の雰囲気を感じさせるシンボルツリーとなるでしょう。
成長を放任できる環境がおすすめ
ギンバイカは低木シンボルツリーとして植栽出来ますが、枝先の伸びが速い木である事を意識する必要があります。
毎年の枝伸びは40~50cm程度を見込む必要があり、剪定によって維持するとしても歩行箇所の傍への植栽は不向きであると言えます。
適した場所としては嵩上げされた花壇の中や、階段脇など、枝葉が頭上展開する様な環境が挙げられます。
ギンバイカは自由に成長させた姿が美しい木ですので、なるべく強剪定を行わない事がおすすめです。
これらを満たす事で、ギンバイカは洋風かつ優雅なシンボルツリーになってくれる事でしょう。
玄関周りを彩るギンバイカの花
■開花期6月~7月
多数の花を咲かせるギンバイカ。常緑樹のシンボルツリーで花を楽しめる庭木は少ないので、季節感のある玄関にしたい方にはおすすめです。
花持ちも良く、一面に咲く花が玄関周りを彩ります。
花弁を5枚持ち、雄しべが冠の様に美しい花は梅の花に例えられ、銀梅花(ギンバイカ)という名前の由来となっています。
関連記事>>>ギンバイカ(マートル)の花や芳香の魅力-シンボルツリーや目隠しとしての植栽実例も
オガタマノキ(ポートワイン等):香り高い花と葉の光沢が魅力
■モクレン科・オガタマノキ属
オガタマノキは放任状態でも5m以下にとどまる常緑低木の部類に入り、モクレン科の樹木の中では唯一の常緑樹となります。
オガタマノキは庭植えとして扱いやすい植木として、古くから造園・庭づくりに使われてきました。
また、榊(サカキ)と同じく枝と葉が神事に使われていた崇高な樹種でもあります。
寒さに弱く移植も嫌うデリケートな一面もありますが、根付いて落ち着けば刈込みにも耐える剛健さを持ち、シンボルツリーとしての1本植えでも存在感のある姿を見せてくれます。
オガタマノキの葉は大きめで、ソヨゴと同じく飾り気のない自然な常緑樹であり、ナチュラルな建物とはもちろんの事、洋風のお住まいとの相性も宜しいかと思います。
この様な自然な常緑樹であれば、シチュエーションを限定されない幅広いシンボルツリーとしておすすめが出来ます。
甘くバナナの様な芳香を持つ花
■開花期3月~4月
オガタマノキの花持ちは短いものの、バナナの様な甘い芳香があります。
この花の香りから英名ではバナナツリーと呼ばれており、オガタマの最たる特徴と言えるでしょう。
芳香は開花し始めの時だけであり開花後は無香となりますが、花数が多い為に香る期間が長く感じられます。
紅花が咲く園芸品種として「ポートワイン」もあり、
同じく芳香を楽しむ事が出来ます。
秋の風情を感じる実
オガタマの実が割れて種が見えた様子は美しく、紅葉と同じく秋の風物詩とも言えるでしょう。
この様子はツリバナマユミの実にも似ています。
中国原産の近縁種としてカラタネオガタマがあり、この実と種を連想してしまいがちですが、これは単純に唐(中国)から由来したオガタマノキという意味であり、実の形態とは関係がありません。
オガタマノキの緑の葉と赤い種の組み合わせはとても美しく、常緑樹ながらナチュラルなシンボルツリーとなってくれるでしょう。
ボックスウッド:整えられた洋風の低木シンボルツリーとして
■ツゲ科・ツゲ属
ツゲの仲間であるボックスウッドは一般的には背の低い生垣として植栽される事が多いのですが、こちらの様に低木立ち木としての樹形もあります。
シンボルツリーやオーナメント植栽として存在感があり、洋風庭園では成型された同型木の列植や、技巧的な形の刈込み仕立てを見る事が出来ます。
ですのでボックスウッドをシンボルツリーとして植栽する場合は1本植えに限らず3本程を並べてあげると、より洋風のシンボルツリーらしさを楽しめるかもしれません。
刈込み直後の葉の傷みに注意
イヌツゲと異なり、ボックスウッドの葉は大きく光沢がありますので、刈り込んで葉を裁断した直後の変色がやや目立ちます。
葉を切られた箇所はどうしても茶色く小さな枯れを起こす為に、刈り込み面全体が茶色く見える様になります。
すぐさま新芽が吹く季節であれば問題なく目立たなくなってきますが、翌春まで芽が出ない冬季の刈り込み時には注意しましょう。
ツゲノメイガの被害に注意
ボックスウッドはツゲノメイガという蛾の幼虫の被害を受けやすく、あっという間に葉を全て食害される事があります。
葉を全て食べられてしまったボックスウッドはそのまま枯死してしまう事もあり、ツゲノメイガについては定期的な観察~予防としての農薬散布も植栽計画に入れておく事がおすすめです。
シンボルツリーにおすすめな落葉樹8種類
ここからは、シンボルツリーにおすすめ出来る落葉樹を8種類をご紹介致します。
シンボルツリーとして落葉樹を選択すれば、常緑樹には無いナチュラル感や柔らか味、雑木らしさを演出する事が可能になってきます。
木々が持つ柔らかな雰囲気や、軽やかなシルエットをシンボルツリーに取り入れたい方には落葉樹の選択がおすすめとなります。
また、落葉樹は花を楽しめる樹種が多く、紅葉等の季節感が楽しめる種類が多い事も魅力です。
ただし落葉樹である特性上、冬季は葉が無くなって寂しげになりますので、落葉樹をシンボルツリーに選ぶ際は他種の庭木を寄せ植えしたり、足元へ低木類をレイアウトをする等、景観補助としての植栽を取り入れる事も有効となります。
イロハモミジ:和洋・ナチュラル等、シーンを選ばない存在感
■ムクロジ科・カエデ属
庭植えとして古くから慕われるイロハモミジは、和洋はもちろんナチュラルな印象まで、最も幅広いシチュエーションに馴染む庭木ではないでしょうか。
しかしイロハモミジ特有の柔らか味を活かす上で、植栽環境は慎重に選びたいものです。
周囲に成長させる余裕があるかどうか、乾燥をし過ぎない場所かどうかなど、環境さえ合えばイロハモミジは是非シンボルツリーとして使いたい庭木です。
カエデの中の一品種であるイロハモミジは葉が小さく数も多く、カエデ特有の葉の切れ込みが深い事が特徴となります。
イロハモミジは樹形のバリエーションが多く、それぞれが自然な個体差を持っており、シンボルツリーとして選ぶ際もお住まいの雰囲気に合わせた樹形選びをする事が出来ます。
お住まいの持ち味を倍増させる魅力
イロハモミジの魅力は樹形の美しさに加え、マッチングさせたお住まいの魅力も増す事ではないでしょうか。
和風の住まいならより和の風情が増し、構造木材や外壁が一層際立って見える様になります。
また、ナチュラル志向のお住まいであれば自然の中に建てられた家の様な雰囲気が感じられ、お住まいの持つコンセプトがより強調される事となります。
上の写真はナチュラルに設計されたデザイン住宅であり、イロハモミジをシンボルツリーとして植栽致しました。
イロハモミジの美しい樹形を維持するには樹高3~4m程を見込むのが適切であり、このサイズ感を考えますとお住まいからは数m程離れた場所への植栽が望ましくあります。
イロハモミジのシンボルツリーは木が持つ方向性、いわゆる樹勢の動きをデザインとして表現する事が可能で、これがイロハモミジが建物との一体感を得られやすい要因となっています。
モダン建築のシンボルツリーとしてもおすすめ
イロハモミジと言えば幹が数本立ち上がった「株立ち樹形」を連想される方も多いのではないでしょうか。
しかしイロハモミジは一本幹、いわゆる単幹樹形の方も扱いやすく、シチュエーションによって私もこちらの樹形を積極的に植栽しています。
まず単幹樹形のイロハモミジをシンボルツリーにしますと、背後の透け感が程良く感じられ、建物を見せたい場合や樹木を絵画風に浮かび上がらせたい場合に良くマッチします。
また、イロハモミジが持つ凛とした空気感はモダンな建築物ともよく調和し、現代的なデザインと自然な姿の共演がとても魅力的と言えます。
日陰から日向まで、幅広いモミジの魅力
玄関先が暗い場所でも、モミジであれば日陰らしい姿へ変化し、山歩きの際に見られる様な繊細な姿へ成長していきます。
他の木であれば日照不足で下半分の枝が無くなってしまうと「樹形の崩れ」と認識してしまいますが、不思議とモミジであれば枝が少なくなっても「自然なシンボルツリー」に感じられます。
また、雑木類の中では直射日光に耐え得る方ですので、これも日当たりの良いケースが多い玄関周りへの植栽に向いているポイントとなります。
関連記事>>>イロハモミジの魅力とは?特徴や樹形の解説、庭木としての植栽実例も
アオダモ:枝葉の少なさと環境適応力が魅力
■モクセイ科・トネリコ属
近年シンボルツリーとして人気が出てきているアオダモは、控えめな姿でありながらも実は環境適応性が高い一面があります。
アオダモは日向から半日陰まで育成可能な環境幅が広い為、あらゆる場所へのシンボルツリーにおすすめしております。
アオダモはシマトネリコと少し似ている列状の葉が涼し気な雰囲気を感じさせ、全体的に枝葉の数も少ないのが特徴です。
幹模様を楽しむ様なシンプルな樹形が多く、成長による越境や落ち葉の問題を考慮する現代では、頼れるシンボルツリーではないでしょうか。
落葉樹の中では直射日光にある程度耐えられる他、虫害が発生し難いのも嬉しい特性です。
落葉樹としては稀な成長の緩やかさも備えている為、アオダモであればナチュラルなシンボルツリーを諦めてしまいがちな狭小部への植栽も実現出来ます。
アオダモを植栽する際は既にある程度の樹高を有する木を選ぶ事で、さらに生育の緩やかなシンボルツリーになります。
山の風情を感じるシンボルツリーに
アオダモは枝葉の少ない軽やかな樹形を楽しむ木でありますので、シンボルツリーとして植栽しますと山間の様な雰囲気をもたらしてくれます。
アオダモは下部の枝を早めに枯らしながら背を伸ばす為、樹高3m程の木でも下半分の枝が無く幹だけになっている事が多いものです。
山歩きなどをして樹木をご覧になると解る様に、この樹形はごく自然な姿と言えるものであり、アオダモのシンボルツリーが自然に見える理由と言えます。
この幹部分に他種の落葉低木、または常緑の灌木を添えてあげる事で自然味が増し、シンボルツリーのエリアを自然を切り取ってきた様な風景に見せる事が出来ます。
アオダモが取り分けナチュラル感を感じられる理由としては、写真の様に幹の立ち上がり方が自然な樹形が多いからではないでしょうか。
シンボルツリーに落葉樹を選ぶ際は左右のバランスが整った樹形の木を植栽する事が多くなりますが、アオダモの場合は実に個体差が多く、地面から幹が立ち上がる部分にも木によって様々な個性が感じられます。
この幹の立ち上がり方こそが山間の風景を連想させる要因であり、お客様もアオダモをシンボルツリーに選ぶ決め手となる事が多い様です。
枝葉の少なさを活かし、窓や外壁に寄せるシンボルツリーに
枝葉も少なく成長も緩やかなアオダモは、他種の庭木では難しい窓や外壁に寄せる様なシチュエーションにも活用できます。
これは窓越しに眺めるシンボルツリーとして有効で、窓下に設置された花壇内にシンボルツリーを植える際、アオダモを選択する事が多い理由となっています。
しかしアオダモと言えどもゆっくり成長はしますので、外壁や窓に向かう枝は元から外しておくのが良いでしょう。
枝の途中をカットしてしまうと樹形が硬く成長してしまう為、後々の樹姿をよく計画しておく事が大切です。
落葉期も美しい、繊細な枝模様
アオダモについては庭木として植えられる雑木類として、最も枝が細く繊細な姿を維持できる樹種ではないかと思います。
特にシンボルツリーとして3m~の高さで維持するにあたり、このサイズでも枝や幹が細いままの木は珍しい部類に入ります。
お住まいに接近させて植える場合も圧迫感は皆無であり、背が高くても葉が少ない為、ご近所迷惑にもならない優れたシンボルツリーと言えるでしょう。
アオダモの幹は地衣類によって模様が見られる事が多く、特に山採りの木は美しく浮き上がっています。
アオダモの他にはアオハダ、環境によってはエゴノキにも見られる幹模様ですが、アオダモは枝葉が少ない為にこれがより強調されて見えます。
アオダモは少ない枝葉である為に木の向こう側を隠す事もなく、これはシンボルツリーと建物を調和させる上で優れた特性であると言えるでしょう。
山の風情を感じる、綿の様な白花
■開花期4月~5月
アオダモは小さな花がまとまって開花し、綿の様に柔らかな美しさを見せてくれます。
木全体に多くの花を付けるのとは異なりますが、雑木らしい素朴な美しさをお庭で楽しめるシンボルツリーと言えます。
花が咲き終わると翼果という羽の付いた実を多く付け、その姿もまたアオダモの魅力となっています。
尚、アオダモは雄性両全性異株性という非常に珍しい特性を持っており、
・雄花を咲かせる株
・両性花を咲かせる株
の2株が存在します。
関連記事>>>アオダモの魅力とは?育て方の解説、植栽実例もご紹介
ヤマボウシ:飾らない自然樹形と野趣ある白花
■ミズキ科・ミズキ属・ヤマボウシ亜属
ヤマボウシは山の何気ない風景を切り取ったかの様な樹形が魅力で、飾り気の無い落ち着いた雰囲気を持った庭木です。
雑木としての寄せ植えはもちろん、ヤマボウシは左右が均等に整った株立ち樹形が人気であり、この樹姿からシンボルツリーとして多く植栽されてます。
ヤマボウシは幅を狭く詰める剪定を繰り返すとすぐに樹形が崩れますので、外壁沿いのワンポイントなどへレイアウトし、傍を歩く様な場所への植栽は避けましょう。
葉はやや大きめでありますので枝が混み入ってくると落葉樹でありながらも圧迫感を感じる様になってしまいます。
また、ヤマボウシは風通しが悪くなりますと病気(うどん粉)や毛虫(イラガ)の被害にも遭いやすい為、枝を透かす事を剪定計画として意識しておく事が必要です。
ナチュラル感を楽しむシンボルツリーとして
左右均等の樹形が多いヤマボウシですが、写真の様にやや傾いだ樹形も非常に魅力的です。
左右のバランスを均等に維持したい場合は、実は周囲も均等に開けている場所、つまりお庭の中央や余程に広い場所でないと成長によって重心がどちらかへ偏ってくるものです。
シンボルツリーを植栽する場所は多くが外壁沿いやアプローチ沿いとなる事が多い為、バランスが均等なヤマボウシを選びますと樹形も変わってきてしまいます。
ですのでシンボルツリーとして植栽する場合は予め自然な方向性を持ったヤマボウシを選び、その方向性を植栽デザインとして取り入れる事がおすすめとなります。
葉の中に咲くナチュラルな白花
■開花期5月~7月
中央の小花を僧の頭、4枚の総苞片を頭巾に見立てて「山の法師」に例えた事が、ヤマボウシの名前の由来となっています。
総苞片が花弁の様に見えるヤマボウシの花は、少しハナミズキにも似ています。
ですがハナミズキとは異なり総苞片の先端が尖っており、時期的にも既に茂った葉の中に白花を咲かせる為、開花期は野趣ある美しさが感じられます。
後々の剪定により整形的な形になる事も想定
ヤマボウシは放任すると横幅が広くなりやすく、どうしても幅を小さくする剪定が必要になってきます。
この際、出来るだけ自然な姿に見せる剪定を施しても生育によって段々と剪定の影響を感じる姿になっていきます。
この為、ヤマボウシの自然な姿を維持したい場合は、予め大きく広がった姿を許容できる場所へ植栽する必要があります。
幅に制約がある場所へヤマボウシをお考えの場合は、下でご紹介するハナミズキをご検討されるのも良いかと思います。
関連記事>>>ヤマボウシの特徴と魅力-花や実、紅葉を楽しむナチュラルシンボルツリーとして
シャラノキ:半日陰が似合う自然樹形と可憐な花を楽しむ
■ツバキ科・ナツツバキ属
シャラノキは昔から和風庭園にも用いられており、茶花にも用いられる白い花も美しい落葉雑木です。
エゴノキやヒメシャラと比べますと葉は大きく、ナツツバキという名の通り、葉の形はツバキにも似ています。
枝葉の数は決して多くはなく、懐付近の枝を自然に枯らせる傾向があります。
この為いつも幹周りはすっきりとしており、シャラノキは枝振りが解りやすい理由となっています。
シャラノキは枝振りやシルエットが軽い落葉樹として風情が感じられ、その姿は茶庭でも見る事が出来ます。
夏に葉焼けをしやすい性質
下でご紹介するヒメシャラと同じく、シャラノキは夏の直射日光に弱い性質があります。
日向に植える場合は午前中のみ陽が当たる東側がおすすめであり、南庭に植える場合も周囲の建物で半日陰となる様な環境が良いと思います。
上の写真は中庭を確保したデザイン住宅への植栽であり、シャラノキを2階リビングから眺められる様になっています。
シャラノキは周囲を外壁で遮蔽され、程良い半日陰となる様な場所にも向いています。
特に植え付けた足下へ日光が当たる事を嫌いますので、シンボルツリーとして植栽を検討される場合は環境のチェックが必要となります。
シャラノキは環境さえ適合すれば、非常に美しいナチュラルなシンボルツリーになります。
枝の走りも緩やかでありますので、剪定も時折の枝透かしのみで対応する事となります。
茶花としても知られる可憐な花
■開花期6月~7月
シャラノキはナツツバキと呼ばれる事も多く、その可憐な白花はとても魅力があります。
開花は梅雨時期にあたり、雨に打たれやすい事もあり花持ちは短く儚いものです。
ツバキと同様に花が散らずに下へ落ち、京都ではスギゴケにシャラノキの花が落ちた風景が有名です。
茶花としても古くから愛され、シャラノキは和洋を問わない人気を持っています。
チャドクガの発生に注意
シャラノキはツバキ科の植物でありますので、人体にも有害な毛虫「チャドクガ」が発生する可能性はあります。
風通しの弱い場所や湿度の高い場所へ植えた場合は要注意であり、近年では梅雨の長引きによる発生増加を感じております。
発生してしまうと処理が大変ですので、可能であれば予防措置として農薬散布を行う事が良いでしょう。
ヒメシャラ:柔らかに枝垂れるシルエットと美しい幹肌
■ツバキ科・ナツツバキ属
ヒメシャラは枝が細く柔らかく軽いシルエットの樹形であり、優しい自然味を感じられるのが魅力です。
ヒメシャラは成長につれて小枝を枯らす傾向が強く、通年細かい枯れ枝が付いています。
これらは時折除去してあげる事が望ましく、生きている枝の健全な生育や風通しの改善、美しいシルエットを維持する事にも繋がります。
洋風~ナチュラルなシンボルツリーとして
ヒメシャラをシンボルツリーとして植栽しますと、まずお住まいがナチュラルで優しげな印象になります。
これはヒメシャラの枝が細い為に圧迫感が少ない事が理由で、特にヒメシャラは横枝を放任してあげる事で枝垂れてくる姿も自然で美しく感じられます。
ヒメシャラはヤマボウシと同じく左右が均等に整った株立ちの樹形が多く、独立した洋風シンボルツリーとしても美しく映えます。
株立ち樹形と言えば枝葉が多く向こう側も透けにくくなりがちですが、ヒメシャラの場合ですと適度に透け感を維持する事が出来ます。
この透けを維持する為、他の樹種であれば枝透かしの剪定を時折行う必要がありますが、ヒメシャラの場合ですと混み入った部分の枝がすぐに自然に枯れる為、常に枝透かしを行ったかの様な雰囲気になります。
マンションのシンボルツリーとしても
洋風住宅やナチュラルなシチュエーションが似合うヒメシャラですが、直射日光が強く当たらない北側であればマンションのシンボルツリーとしても植栽する事があります。
直線的で大きな建物をヒメシャラのナチュラルな樹形で和らげる事ができ、意外にも良いマッチングを見せてくれるものです。
ヒメシャラは住宅への植栽が難しい5m以上の樹高の植木も流通している為、規模の大きな建物と合わせる事もあります。
現代的な建物へあえてナチュラル感うぃ添えたい場合、ヒメシャラをご検討されるのも良いでしょう。
ヒメシャラの幹の美しさは生育判断基準に
ヒメシャラは健全に生育する環境を選ぶ樹種であり、特に直射日光が長時間強く当たる場所や、西日を受ける場所では葉焼けを起こしてそのまま枯れてしまう事もあります。
ヒメシャラを陽当たりの良い場所へ植えたい場合は、地表が直射日光に晒されない様に低木でカバーする、または低木落葉樹を寄せ植えする等の保護が有効となります。
特にシンボルツリーは日当たりの良い場所が多い為、ヒメシャラをご検討される際は環境チェックを行い、上記の工夫も予め植栽計画に盛り込んでおくのが良いでしょう。
ヒメシャラの生育状況を判断する目安としては「美しい幹」があり、ヒメシャラの特徴である幹の美しさが表れた場合は生育環境が適しているという判断材料になる程です。
上の写真の様に、ヒメシャラが上手く生育した際は幹肌が細かく剥け続ける様になって赤茶色となり、葉の色とのコントラストが美しく映えます。
この色はヒメシャラ・シャラ特有であり、他の庭木では見られない最大の魅力と言えます。
小さな白花を全体に咲かせる美しさ
■開花期6月~7月
ヒメシャラは梅雨時期である6月頃に、枝垂れた枝一面に小さな白花を咲かせます。
可憐な白花は枝に沿って緩やかな曲線を描く様にも見え、ヒメシャラの柔らかさをより引き立ててくれます。
ツバキ科である為、花をよく見ますと小さなツバキの花の様にも見えます。
この為近似種であるシャラノキの花はツバキと同じく茶花としても用いられ、苔の上に落ちるシャラの花は京の風情としても有名です。
ヒメシャラの開花期間は短く、梅雨時期という事もあって花が大量に下へ落ちる事になります。
掃除のしにくい場所であったりしますと大変ですし、道路へ花が大量に落ちる事は避けたいものですので、こちらの所も留意しておく事が良いでしょう。
ナチュラルシンボルツリーらしさを維持する為に
ヒメシャラは自然に枝垂れ始めた姿が美しく、出来ればこの様な幅で維持する事を心掛けたいものです。
幅が2m程許容出来る場所であれば問題ありませんが、カット剪定が必要な場所ですとある程度の自然味を残す高度な剪定が必要となります。
ヒメシャラは基本的に剪定自体を嫌う木であるとご認識いただき、ほぼ放任状態にしてあげる、そんなシンボルツリーとして選んであげる事が理想的です。
関連記事>>>ヒメシャラの特徴と美しさ-シャラノキとの違いも解説します
ジューンベリー:花と果実、紅葉まで楽しめるシンボルツリー
■バラ科・ザイフリボク属
ジューンベリーは自然な樹形に加え、美しい白花や食用も可能な果実、秋の紅葉まで、季節ごとに楽しませてくれる庭木です。
正式にはアメリカザイフリボクという樹木名ではありますが、春の開花後、すぐに実が熟し6月に下旬頃に収穫を迎える事から「june berry」という名前で呼ばれています。
ジューンベリーは自然に伸びた姿をある程度放任出来る場所への植栽が必須で、形やサイズを小さく維持させる事には向きません。
ジューンベリーが最も美しく感じられるのは「自然に生えて大きくなった山の木」という様な樹形であり、低い樹高を留める事は難しいとお考え下さい。
イメージとしては太い幹から横枝が頭上に展開している様な樹形であり、公園や緑地で見掛ける様な樹木イメージを持っていただければと思います。
ある程度の樹高に達すると成長は幾分緩やかになりますが、ジューンベリーは特に横幅の成長を許容しておく事が必要です。
シンボルツリーとして植栽する場合も、自然にそこから生えてきていた庭木に見せる、という様な雰囲気が似合います。
ですので私がジューンベリーをシンボルツリーとする際はアプローチ沿いの何気ない場所へ植栽したり、上の写真の様にウッドフェンスと自然に合わせる様な植栽手法を取る事が多いです。
こうした植栽をしておきますと自然に育った際に違和感なくお庭に溶け込み、無理に整形的な仕立てを行う必要も無くなります。
あくまでも自然に大きく育てる、ジューンベリーをシンボルツリーに選ぶ時はこの様にお考えになっておく事が良いでしょう。
実だけではない、ジューンベリーの花の魅力
■開花期4月~5月
「ジューンベリー」という名前から実を連想しやすい木ですが、ジューンベリーは美しい花も楽しめるシンボルツリーです。
桜の様な雰囲気を持った白花は木全体に咲き、開花時期は樹形全体が白く浮き上がって見える程です。
花持ちは短いのですが風情や儚さが感じられ、これも桜に似た風景と言えます。
ジューンベリーは実成りしやすい樹種でありますので、多く咲いた花のほとんどが結実します。
自家結実性でありますので果実を食用・加工用としたい方には非常におすすめなシンボルツリーです。
収穫が難しい、高い位置の実に注意
ジューンベリーは食用も可能な実が魅力として流通していますが、実を収穫しにくい高い位置にも実が多く成る事に注意が必要です。
手が届かずに収穫が出来ず、熟し過ぎた実が大量に下へ落ちてアプローチを汚してしまう事もあります。
シンボルツリーとして植えるのは玄関や門周りが多いかと思いますので、これは想定しておかれた方が無難かもしれません。
手軽に収穫が出来るジューンベリーの実は、生食はもちろんジャムへの加工もおすすめです。
収穫には赤紫色まで熟したものが適していますが、実の場所によって熟すタイミングが異なります。
適期となった実から随時収穫していき、少しずつ冷蔵庫へ保存しておくのがおすすめです。
関連記事>>>ジューンベリーの魅力と育て方-シンボルツリーとしての植栽実例もご紹介
エゴノキ:小振りな葉と吊り下がる白花が美しい雑木
■エゴノキ科・エゴノキ属
エゴノキは細い小枝が樹形を作る雑木であり、自然な樹形と美しい小花を楽しめる庭木として昔から親しまれています。
エゴノキは野趣を感じられるナチュラルなシルエットと小さな葉が魅力で、シンボルツリーとして植栽すれば繊細な自然味を添える事が出来ます。
人の手によって樹形を整形する事は向かず、サイズを小さくする為に切戻しの剪定を行うと樹形がすぐに崩れてしまいます。
不用意にカットしてしまいますとエゴノキはいわゆる枝太りを起こしやすく、切り口は徒長枝の始点となってすぐさま暴れだしてしまいます。
エゴノキは特に自然な姿を残す様に心掛け、木の幅は最低でも1.5m程度を見込んでおく事が望ましいです。
シンボルツリーとしてのエゴノキの魅力は、やはり自然な姿そのものかと思います。
飾り付けるシンボルツリーとして植える事も出来ますが、庭のシンボルとしてレイアウトする事が多く、周囲の木々と馴染ませる事にも向いています。
枝が細く繊細で自然な枝枯れを起こしやすい所はヒメシャラと共通しており、剪定を嫌う部分も似ている様に思えます。
エゴノキについては横方向に伸びる小枝を特に大切に残し、幹元から発生する徒長枝をしっかり元から外しておく事で、自然で美しい姿を保つ事が出来ます。
下垂する花々を楽しめるシンボルツリー
■開花期5月~6月
エゴノキはたくさんの小花が垂れ下がる姿が美しく、この花の為にシンボルツリーにエゴノキを選ぶ方も多くいらっしゃいます。
エゴノキは花付きが良く、この小花を木全体に咲かせます。
その姿は雲の様に見える程で、街の中でも一際目立つシンボルツリーになる事と思います。
尚、花も含めて後に付く実にはエゴサポニンという毒が含まれております。
実は固いので誤食をする事は考えにくいですが、知っておくのが良いかと思います。
冬季の寂しさと切り詰めに注意
エゴノキは冬芽がとても小さく、落葉した時の姿が特に寂しく感じられる木でもあります。
細い枝先は生きている枝と自然に枯れ枝となった部分があり、全体的に枯れ木の様なシルエットに見える事があります。
また、放任した姿は自然味がありとても美しいのですが、大きさを維持する剪定を繰り返した木は姿が全く異なってきます。
エゴノキは生育力の強い庭木ですので、植栽計画時からから大きめのサイズの木を想定するのがおすすめです。
関連記事>>>エゴノキの特徴と育て方-小花の魅力や庭木としての植栽実例も解説
ハナミズキ:美しい花と、スリムで維持しやすい樹形が魅力
■ミズキ科・ミズキ属
■開花期4月~5月
ハナミズキは古くから庭木として親しまれてきた落葉樹であり、花・紅葉等の季節感を感じられるシンボルツリーとしておすすめです。
ハナミズキの花色は紅花・白花・ピンクと多岐に渡りますが、花の色によって葉色も若干異なってくるのが特徴です。
例えば白花~ピンク花種の葉は青々としておりますが、赤花種の葉は若干の赤みが混じっている印象を受けます。
また、ハナミズキの場合は花色によって生育面でも違いがあり、白花の木は成長が旺盛で丈夫、赤花種は生育が非常に緩やかで枝分かれも細かくなりやすい、といった特性が見られます。
ハナミズキは剪定による樹形維持が行いやすい木であり、壁際や道路に近い場所へのシンボルツリーとしてお勧めが出来ます。
落葉樹のシンボルツリーとしては稀なコンパクトさ
ハナミズキは落葉樹としては珍しい程にスリムな姿を保ち、植栽後も定期的な剪定によって幅を抑えた仕立てが可能です。
これの特性は傍を歩く様な場所へのシンボルツリーとして大きなメリットであり、維持のしやすさも魅力的です。
また、ハナミズキの様に整った樹形のシンボルツリーは和洋を問わずあらゆるお住まいにマッチしやすく、まさに面積とシチュエーションを選ばないシンボルツリーと言えるのではないでしょうか。
ただしハナミズキは夏の直射日光が非常に苦手であり、日向へ植栽する場合はヒメシャラと同じ位に環境選びと工夫が必要になってきます。
葉焼けだけでは済まず枯れ死するケースもありますので、植栽計画時は注意していただきたく思います。
紅葉するシンボルツリーとして
ハナミズキは名の通り花が有名な庭木でありますが、紅葉を楽しめるシンボルツリーとしてもおすすめです。
特にうっすらと赤味を帯びた赤花種のハナミズキは紅葉が美しく染まりやすく、端正な樹形が赤く染まる姿はとても美しく映えます。
特にシンボルツリーの場合は単独で植えている事がほとんどですので、ハナミズキが紅葉した姿は非常に引き立つ事でしょう。
関連記事>>>ハナミズキの特徴と育て方-花の魅力、シンボルツリーとしての植栽実例も
シンボルツリーをよりおしゃれに見せる植栽方法
それでは最後の項目として、上でご紹介した様々なシンボルツリーを更におしゃれに美しく見せる植栽方法を解説致します。
せっかく植えるシンボルツリーをより魅力的に見せる為にも、下記のポイントをご参考にしていただければと思います。
お庭の中心にシンボルツリーを植える
シンボルツリーは門や玄関に植えるものと決まっている訳ではなく、お住まいのシンボルとしてお庭の中心へ植える方法もあります。
この場合は南向きで非常に日当たりが強い環境となる事が多い為、先程ご説明をした様な日差しに耐えられる種類の庭木を使いたいものです。
庭の中心にシンボルツリーを植えるとその1本だけで庭が充実して見える為、周囲へ無理にたくさんの庭木を植えずに済む事にも繋がります。
玄関周りやアプローチ沿いにシンボルツリーを植えた場合は成長の制約も生じますが、庭の中心への植栽であれば自由に成長をさせる事が出来ます。
庭木は自然に大きくなった姿が最も美しく見える為、このシチュエーションのシンボルツリーは非常に良い樹形に感じられる事が多いものです。
庭の中心で陽を浴び続けながら自由に成長させる木としては、シマトネリコやオリーブが特におすすめでありますが、やや小さいサイズが好みであればギンバイカやフェイジョア等も良いでしょう。
ナチュラルシンボルツリーとして周囲の庭木(低木)と馴染ませる
シンボルツリーは1本を独立させて植栽する事が多いのですが、あえて周囲の庭木や低木類と馴染ませる植栽方法もあります。
ナチュラル感のある雑木が1本だけ植えられているよりは、山間の様に周囲の木々と馴染んだ姿の方が自然に見えるものです。
こちらは心地よい半日陰の環境を活かしてアオダモをシンボルツリーとして植栽をしていますが、アオダモだけを目立たせるのではなく、雑木らしく周囲にも他種の木を寄せ植えして一体感を持たせています。
アオダモは特に下枝が少い樹形が多く、その姿も魅力的ではありますが、こちらでは背の低いアロニア(西洋カマツカ)やオトコヨウゾメなどを、アオダモと共生する様に植えています。
写真のアオダモ自体は3本幹程の株立ちなのですが、左右の雑木によって明確な幹数が解りにくくなっています。
この位の雰囲気でありますと三山間の雰囲気が感じられる様になり、ナチュラルガーデンデザインも楽しめる眺めになります。
雑木のシンボルツリーをよりナチュラルに見せる、おすすめな植栽方法です。
下草やマルチング材と合わせる
上でシンボルツリーと低木類との組み合わせについて触れましたが、低木よりも小さな下草類との組み合わせも大変おすすめです。
低木類の寄せ植えは実際の面積に余裕がある事が必要なのですが、下草類であれば限られた面積を十分に活かしてシンボルツリーとの組み合わせを楽しむ事が出来ます。
しかし下草類と申しましても、
- 横方向への広がりが早い植物(特にツル性植物)
- 繁殖力により増え続ける植物(根を伸ばして次々に株が増える植物)
などを植える場合は色々な下草との「混植」をする事はおすすめ出来ません。
この場合はむしろ種類を単一に絞って繁殖させた方がシンボルツリーとのマッチングがシンプルに映えますので、繁殖力の強い下草類がお好みの場合はご参考下さい。
柔らかな低木とシックな砂利カラーを合わせる
こちらのシンボルツリー(アオダモ)の足下を彩るのは、柔らかい印象のグラス類や野趣ある下草類です。
下草類は単体でも魅力的な植物が多いのですが、シンボルツリーとの相性を考えて選びますと大変一体感のある風景を楽しむ事が出来ます。
アオダモであれば山採りの自然樹形が多い為、下草類もよりナチュラルな植物を選びたいものです。
洋風のシンボルツリーであれば存在感の強い植物を選ぶとマッチしますが、ナチュラルデザインの場合は色を抑えた葉の柔らかい植物、葉の細い植物を合わせるのがおすすめです。
尚、シンボルツリーの足下への通風を確保する為にも、植物の無い隙間・空間を空ける事が有効となります。
この空間をデザインできるのがマルチング材、いわゆる砂利やレンガチップ、バークチップ等です。
こちらで使用の砂利はグレーやブラウンが混じった「割砂利」であり、いわゆる面の丸い「玉砂利」よりもナチュラルな雰囲気を演出できます。
シンボルツリーや下草類が持つ雰囲気に合わせて、是非砂利もコーディネートに含んでみましょう。
薄暗くなるシンボルツリーの足下も、下草類なら賑やかに
シンボルツリーを植えた場所が壁に囲まれている場合、その足元は非常に暗くなるケースが多いものです。
いわゆる強い木陰となる訳ですが、写真の様に常緑樹(ソヨゴ)を植えた場合は特に顕著です。
低木類ですと余程耐陰性のある植物、ヒイラギ系統・アオキ・サルココッカ・沈丁花等を選ぶ必要がありますが、これらの木でも頭上にシンボルツリーの枝葉があったり暗すぎる環境ですと生育が難しくなります。
しかしシンボルツリーと下草類の組み合わせであれば、この様な環境でも美しい組み合わせを楽しめます。
下草類はカラーリーフの種類も多くあり、シンボルツリーの足下を明るく彩る効果もあるのです。
掃除の必要性に迫られなくなるバークチップ効果
また、この様な環境の場合、合わせるマルチング材はバークチップなどの自然な素材がおすすめです。
周囲を囲まれたシンボルツリーの足下や裏側は立ち入る事が難しくなる為、落ち葉の掃除やメンテナンスをし難い場所です。
実際、風通しの少ない場所は落ち葉も堆積しやすく、特に常緑樹の落ち葉は腐りにくく残ってしまうものです。
こんな時、砂利敷きの上に葉が落ちると気になってしまうものですが、バークチップであれば落ち葉も自然な風景に見え、掃除の必要性に迫られなくなるといった、意外な効果があります。
バークチップは自然由来ですのでいずれは腐食し永久的ではありませんが、良質なものを選んでおくと持ちも長くなります。
敷き直しの場合も軽量ですので手軽に行え、古いバークチップは穴を掘って埋めておけば自然に帰ります。
外壁やスクリーンに寄せて植える
シンボルツリーは周囲に広々とした空間があるに越した事はございませんが、なかなか難しい条件でもあります。
そこであえて外壁やスクリーンに寄せて植えつける方法もあります。
外壁などに木を寄せて植える事に抵抗を感じられる事もあるかと思いますが、成長の早さ等を踏まえて樹種選択をきちんと行えば顕著な悪影響はございません。
こちらは生育の緩やかなソヨゴをシンボルツリーとして、板塀を背景にして植栽しています。
ソヨゴは強い走り枝が発生する事が少なく、壁を傷付けたりしにくい庭木と言えます。
この植栽方法を行いますと、背後の壁がスクリーンの効果を発揮してシンボルツリーの緑がはっきりと浮かび上がり、とてもおしゃれなお住まいに見せる事が出来ます。
シンボルツリーに存在感のあるディテールをお望みの場合はとてもおすすめな植栽方法と言えるでしょう。
まとめ
如何でしたでしょうか。
シンボルツリーはご自身でお植えになられる方も多いかと思いますが、是非この記事をご参考いただき、生長を見越した計画を持って行っていただければと思います。
玄関前や花壇に位置する事の多いシンボルツリーですが、植栽のご依頼は随時承っております。
環境を加味した計画的な御提案をさせていただきますので、お問い合わせ方法をご参照の上、e-mail等で是非お声掛けをいただければと思います。
執筆者:新美雅之(新美園HP作成・作庭者)
庭木や庭デザインについて、作庭者の経験を活かして現実的に解説をするコンテンツを目指し、日々執筆しています。