今回は日陰にある小さな花壇での植栽工事の様子をご紹介致します。
日陰で面積も小さい場所でありますと、庭木によっておしゃれな雰囲気を作るのは難しいとお考えになる方も多いと思います。
ですが庭木選びをきちんと行い、薄暗さを活かしたレイアウトを行えば、見違える景観を作り出す事が出来ます。
そんな日陰花壇にて行いました植栽工事の様子を見てまいりましょう。
施工前の花壇の状況
工事前にも花壇に植栽が施されておりましたが、樹種の選定にやや問題がある様でした。
まずシンボルツリーとしてヒメシャラが植わっておりましたが、背後におしゃれなスクリーンや外壁が無い場合、ヒメシャラは落葉時の存在感が非常に薄くなる庭木です。
枝が特に細い落葉樹はシルエットを浮き上がらせるスクリーンが無いと冬に姿が見えにくくなる事を留意しておきましょう。
また、コニファーが列植されておりましたが、特に立性のコニファーは典型的な「陽樹」であり、日陰に植えると写真の様に陽が少ない下の方から枯れ上がってくる傾向が表れます。
特に列植をする場合は日光が必須でありますので、どうしてもやや日陰な場所へコニファーを植える場合は1本植えにして周囲には何も遮る物が無い環境にしておきましょう。
既存の庭木を伐採・抜根
コニファーを始め、下草類も全て伐採・抜根していきます。
コニファーの枯れ葉は細かくて尖っており、全てがトゲの様に手に刺さりやすい物ですので、ご自身で作業を行い場合はゴム製の作業用手袋をされる事をお勧めします。
全ての庭木・下草が撤去されて更地となった花壇です。
草花を楽しむ様な花壇として使うにはやや広く、奥の方へは土を踏まないと辿り着けない形でもあります。
やはりこの様な花壇の場合は庭木をレイアウトして、庭の様にデザインを施す事がおすすめと言えるでしょう。
一度庭木類で景観を決めてしまえば、草花の様に常時綺麗に植え替えを行う必要もありません。
シンボルツリーのソヨゴを植栽
外壁に近く日陰気味な場所であれば、やはりソヨゴはおすすめなシンボルツリーと言えるでしょう。
まず耐陰性がある事はもちろん、お住まいの壁や窓に近い場所であれば成長面も大人しい庭木でないといけません。
また、ソヨゴは外壁側の枝葉も枯れずに残りやすい木ですので、窓越しに緑を楽しむシンボルツリーとして重宝します。
ソヨゴについては樹形バリエーションが多く、品質上の違いも多い庭木です。
ソヨゴであれば植栽の目的・用途によって樹高や樹形もきちんと選ぶ事ができ、その場所に合った木をお探しする事が可能です。
窓の目隠しについても「完全な目隠し」と「緑を感じられる程度」の様に度合いが分けられますから、それに応じた樹形や枝葉を持つソヨゴを選びます。
どんな木でも成長によって樹形の変化は見られますが、ソヨゴについては樹高2.5m程の木を選べば植栽後の変化も少なく、成長ギャップに困る事も少ないでしょう。
今回シンボルツリーに選んだソヨゴは単幹樹形で左右が均等に整った木であり、株立ちの木よりも位置決めが重要になります。
ソヨゴは根の張りにやや時間が掛かる木ですので、少しだけ深めに植えておくと安定しやすいです。
ソヨゴは過湿でジメジメとした土を非常に嫌う傾向がありますので、特に水分が乾きにくい日陰では土壌改良をきちんと行いながら植え付けてあげましょう。
サブツリーや低木類を植栽
サブツリーとはいわゆる主木に対する「副木」の位置付けであり、シンボルツリーを引き立てる為の庭木と言えるでしょう。
基本的にシンボルツリーよりも小さな木を使う事となりますが、成長によってこれが逆転してしまっては意味がありません。
樹高はあくまでも植栽時の目安でしかなく、将来もこの2つの木のバランスが崩れない様な庭木選びを行う事が基本となります。
ソヨゴと同じくヒメシャリンバイは耐陰性を持った成長の緩やかな木であり、小さな葉が密生している樹形は狭い場所にとても良く合います。
人工物であるポストの足を目立たなくする為、グラス系植物の大株であるベアグラスをレイアウトしています。
小さな下草の株をたくさん植栽するよりもスッキリとしてインパクトもあり、ポストの足を目立たなくしてしまうボリュームも持っています。
カレックス類はカラーバリエーションも豊富ですが、今回は少し位この場所を明るく見せる為に、緑/白のカラーをお選びしています。
コニファー類は強い日光を好むというお話を致しましたが、数多くある低木コニファーの中にはある程度の耐陰性を備えた樹種も存在します。
代表的なブルーパシフィックやウィルトニーは陽射しが少ないと極端に葉を減らしやすく、枝も黒ずんで少しずつ枯れていく傾向がありますが、特に針葉樹らしい小葉を持ったブルースターやブルーマウンドは葉を減らしながらも景観を保ちやすい品種です。
しかしコニファーは周囲が開けた場所が必須でありますので、他の木の枝葉が上に被っていたり地面が特に乾きにくい場所には適しません。
写真の様に最前面等、少しでも早く水分が乾きやすい場所を選んでレイアウトを行います。
この2種は領域を広げる速度もやや緩やかで、頻繁にカットを行う必要も無いのがメリットです。
一年に一度程度、形を整える様にカットしてあげましょう。
防草シート敷きとバークチップのマルチング
仕上げとして土面にバークチップを敷き詰める為、下処理として防草シートを敷いていきます。
雑草対策としての防草シートであれば不織布タイプ等の丈夫な物がおすすめですが、植栽部を避けて切り抜きを多く行う場合は織り込みタイプの安価なものでも良いでしょう。
このタイプの防草シートは薄く柔らかいので柔軟な切り抜きを行いやすく、耐久性についても上に砂利やチップを敷いておけば大きな問題はありません。
バークチップと土面が触接触れあっていると腐食が早まり、降雨によって少しずつバークチップが土の中へ潜っていってしまいます。
あくまでもチップと土の境界としての防草シートとなります。
バークチップについては商品によって品質に大きな差があります。
もちろんどんなバークチップでも腐植していきますが、完全に乾燥されて表面も研磨されたバークチップは耐久性も高く、美しい景観を見せてくれます。
表面が削られたチップは水分がいくらか乾きやすく、表面に含まれた水分によってぶよぶよとした状態になるまでに時間を要します。
庭づくりや鉢植えに使用するバークチップは、高品質な物を使うのがおすすめです。
完成した花壇への植栽
完成した花壇への植栽レイアウトです。
最奥にシンボルツリーのソヨゴが見えますが、やはりシンボルツリーの樹高はある程度有していた方が視認性も良く、立体感も感じられる様になります。
写真は2月ですが立ち木も低木も緑濃い状態が保たれており、日陰の花壇をおしゃれに見せてくれます。
今回は洋風~ナチュラルな植栽デザインを行っておりますが、和風~ナチュラルに見せる植栽デザインも可能です。
雑木や下草類を合わせればまた違った雰囲気に見せる事も出来ますので、小さな花壇の使い道にお悩みの方は是非ご参考いただければと思います。
執筆者:新美雅之(新美園HP作成・作庭者)
作庭・植栽工事をしながら撮影を行い、これから庭づくりを目指す方に役立つ「工事ダイジェスト」を目指して執筆をしています。
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