アロニアはバラ科・アロニア属の落葉低木で、非常に耐寒性の強い植物です。
アロニアは庭木としての存在よりも実の方が有名で、アロニアと言えばサプリメントを連想される方も多いのではないでしょうか。
この有名なアロニアの実は、北海道を始め岩手県や長野県でも栽培・生産が行われています。
庭木として弊社も造園、庭づくりでも度々に植栽しており、その自然樹形や季節感、生育の緩やかさ等の魅力は作庭に欠かせない庭木となっています。
アロニアの基本データ
- 科名と属名 バラ科・アロニア属
- 学名 赤実種:Aronia arbutifolia 黒実種:Aronia melanocarpa
- 分類 落葉広葉樹 低木
- 樹高 1m~3m
- 原産地 北アメリカ
- 和名 西洋カマツカ
- 開花期 4月~5月
- 実の収穫期 10~11月
- 植栽用途 雑木の庭やナチュラルガーデン
アロニアは枝葉が少ない為、単体での存在感が薄く、自然風景の一部として上手にレイアウトする事が望まれます。
剪定メンテナンスについては楽に維持する事ができ、暑さにも耐える植木です。
同時に一般的な落葉樹が苦手とする乾燥にも耐えうる側面も持ち、水遣りや極度の乾燥を避ける工夫さえ行っていれば、プランター植えでも育てられます。
アロニアの特徴と成長傾向
枝葉の少ないシンプルな樹形
アロニアは基本的に数本の幹によって構成される「株立ち樹形」がほとんどで、幹の形状は不揃い、自然そのままの姿をしている事が多いです。
幹に曲がりが起きやすく、風によって木が倒れるというよりも形が曲がったり幹同士が絡み合ったりする事が起こりやすい木です。
ですので樹形が落ち着くまでは写真の様に「矯正」の為の結束を行う事もあります。
細く繊細な枝
アロニアの枝はとても細く繊細で、遠くから見ると葉が宙に浮いている様にも見える程です。
この独特のシルエットが雑木らしさ、ナチュラルガーデンらしさを演出するのにぴったりであり、軽やかさを活かして思い切った寄せ植えを行う事もあります。
枝葉の少ないアロニアなら、美しい落葉低木の群生を表現する事が出来るのです。
成長の緩やかさ
先述の様に、庭木として最も優れた点は生育の緩やかさではないかと思います。
ただでさえ枝葉が少ない樹姿をそのまま保ち、とにかく手が掛からない点が挙げられます。
加えて落葉果樹にしては病虫害がほとんど見られず、お客様より多く戴くご要望をほとんど満たしてしまう、数少ない庭木です。
アロニアの花
実のご紹介でも触れますが、アロニアには大きく分けて「赤い実」がなる木と「黒い実」がなる木があります。
花にも若干の違いがありますので、実の色に分けて花をご覧いただきます。
赤実アロニアの花
赤実のアロニアの花は非常に繊細かつ、眺める程に色合いも豊かな事が解ります。
葉が少ない為に花も目立ちますが、花の大きさが小さい事で上品さも持ち合わせて見えます。
花はすぐに散ってしまう訳でもなく、やや長めに鑑賞する事が出来ます。
黒実アロニアの花
こちらは黒い実のなるアロニアの花です。
花の形は同じですが、花弁が少し大きい事、雄しべが目立つという部分で違いがあります。
総じてこちらの花の方が大きく見えるという事になります。
美しいアロニアの紅葉
結実した実が成熟していくに連れ、葉も後から真っ赤に紅葉していきます。
紅葉の色は環境に関わらず綺麗な色となる傾向があり、手軽にお庭に季節感を取り入れる事が出来ます。
アロニアは夏にも葉にダメージを受けにくく、特別何か工夫をしなくても綺麗に紅葉しやすい庭木です。
この特性はジューンベリーやブルーベリーと似ており、低木の紅葉ポイントとして庭づくりに取り入れる事も多くあります。
アロニアの実:赤実と黒実の違い
アロニアには「赤い実」の木と「黒い実」の木があり、
- 赤い実の木 Aronia arbutifolia(アロニア・アルブティフォリア)観賞用の実
- 黒い実の木 Aronia melanocarpa(アロニア・メラノカルパ)加工食用の実
という様に呼称と実の用途が異なります。
それぞれの実成りを見てみましょう。
赤いアロニアの実
アロニアの赤い実は観賞用として楽しむものであり、食用ではありません。
しかし庭木として扱うのはほとんどがこの赤い実のタイプであり、ある程度の樹高があっても幅が小さく維持できるのもこちらの木です。
房状に多くの赤い実が付く様子はナナカマドにも似ており、これが山間の風景らしく美しい景観をもたらします。
雑木の庭づくりを行ってもこれほど秋に鮮やかになる庭木は少なく、この赤い実は付いている期間も非常に長いという特徴があります。
黒いアロニアの実(チョコレートベリー・チョコベリー)
観賞用としての赤実とは異なり、こちらは収穫から加工用として用いられる黒い実で、チョコレートベリーとも呼ばれます。
収穫期は9月~10月頃で、多くの実を収穫する事が出来ます。
赤い実と比べますと、黒い実は大きく重みもあります。
この為実が成ると重みで枝が大きく枝垂れ、下向きになってしまう程です。
尚、チョコレートベリーの方は葉も大きく厚く、枝が太くなりやすい様に見えます。
それに伴い樹形がやや硬く、幅が広がっていきやすいという特徴がありますので、やはり黒い実のアロニアは果樹としての存在感が大きい様に思えます。
果実としてのアロニア(チョコレートベリー)
果樹として栽培しやすいアロニアは、実成りの為に難しい世話や工夫をする必要もなく、意外な程お手軽に実を収穫する事が出来ます。
ではアロニアの実(チョコレートベリー)について解説します。
アントシアニンが豊富
ポリフェノールの一種であるアントシアニンという成分は、目の機能回復という点で有名です。
ポリフェノールはチョコレートや赤ワイン、果実であるブルーベリーに多く含まれていますが、アロニア(チョコレートベリー)についてはブルーベリー等に比べて3倍近くの量が含まれています。
他にもカロチノイド(抗酸化作用)も突出して多く含まれており、アロニアは健康果実として有名になってきています。
食用には加工が必要
アロニアの果実は酸味が非常に強い為、ブルーベリーやジューンベリーの様にそのまま生食するには向いていません。
やはりアロニアの実はジャムやジュース、果実酒に加工する他、ヨーグルトと共にいただく等、工夫をして召し上がっていただく果実となります。
また、成分のみを摂取する目的で、サプリメントへの加工も多く行われています。
お勧めの植栽方法
単体では寂しい見た目のアロニアですが、周囲に造園的な景観が整っていれば寂しく感じられなくなります。
その枝の少なさから冬季はまるで枯れてしまったかの様に見えますが、周囲の植木を充実させたり、化粧砂利で飾ってあげると単体でも美しく引き立てられます。
樹高のあるアロニアならシンボルツリーにも
なかなか目にする事は少ないですが、2.5m程の高さがある株立ちのアロニアなら、シンボルツリーとしてもお勧めが出来ます。
もともと生育の緩やかなアロニアですので、この様な樹形とサイズは庭木として流通する事は少ないです。
もちろん植栽後の生育も非常に緩やかで、剪定も枯れ枝処理など最小限で済ませる事が出来ます。
他の落葉樹と合わせる寄せ植え
写真はシンボルツリーであるアオダモの幹に絡む様に、低木のアロニアを寄せ植えした植栽実例です。
2つの雑木がとても自然に共存する様子がお解りいただけると思います。
アロニアは寄せ植えに用いても軽やかな雰囲気を保ち、様々な植物が共生する山間の雰囲気を手軽に表現できる庭木と言えるでしょう。
低い位置が花や紅葉で彩られる事もあり、アロニアは雑木の庭の重要な位置付けとなります。
アロニアの育て方
適した環境
暑い夏にも葉は傷みにくいものの、高温かつ乾燥する様な場所は避けましょう。
花壇の様な場所でも育ちますが、その場合は足元へ草花やグランドカバーを植えて地表を保護します。
生育は緩やかなのでアプローチ沿いや玄関近くへ植え付けても問題ないでしょう。
植え付け
苗木の植え付けは落葉期の12月~3月ですが、春に近い2月~3月がベストとされます。
アロニアの植木は根が小さく作られている事が多く、植え付けの際は少し深めの穴を掘るのが良いでしょう。
雑木らしく腐葉土と樹皮堆肥を混合した土を使い、水捌けの良い腐植質に富んだ環境にします。
水やり
アロニアは乾燥状態に強いので水やりに気を使う事はありませんが、やはり夏場は夕方の水やりを日課にする事をおすすめします。
根付いてからも夏の乾燥には弱い傾向があり、油断しない様に観察しましょう。
肥料
アロニアは肥料が必ずしも必要な木ではありませんが、寒肥として2月~3月に根回りに有機質の肥料(油かすや骨粉)を浅く埋め込みます。
アロニアの剪定方法とメンテナンス
とにかく生育の緩やかなアロニアにも弱点があり、あまりにも繊細な枝は雪や風の影響を受けやすいという部分があります。
細く繊細な枝は雨の重み、または付いた実の重みによって垂れ下がってしまう事がありますので、その様な枝は竹材やグリーン棒などで支えをしてあげましょう。
アロニアは風で枝が揺れて、そのまま何本かが絡まったまま生育してしまう事もありますので、大風や嵐の後は枝の様子を観察しましょう。
剪定については落葉期に行うのが適切で、上記の様に絡みやすい枝を見付けて外しておくのがメインとなります。
黒実のアロニアについては出来るだけ幅を抑える剪定を施しておく事で、果実が成った際に重みで枝を傷める事が少なくなります。
しかし毎年剪定を行う程の成長はしにくい為、傷んだ枝を除去するのが主な作業となるでしょう。
執筆者:新美雅之(新美園HP作成・作庭者)
庭木や庭デザインについて、作庭者の経験を活かして現実的に解説をするコンテンツを目指し、日々執筆しています。
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