シマトネリコはモクセイ科・トネリコ属の常緑樹で、主に洋風ガーデンへのレイアウトやシンボルツリーとして植栽されます。
ほとんどが複数本の幹を持つ株立ち樹形で流通しており、常緑樹でこの樹形を楽しめる数少ない庭木と言えます。
シマトネリコは常緑樹ですが寒さによる落葉を起こす事がある為、一年中姿が変わらないという解釈はおすすめ出来ません。
特に北風の当たる場所へ植栽する場合、シマトネリコは半常緑性という認識で取り扱うのが無難です。
庭植えのシマトネリコは成長が非常に速い上、切り戻し剪定(カット)によって小さなサイズを維持するのが難しい庭木です。
しかしシマトネリコは日当たりと水捌けを非常に好み、厳しい夏の直射日光下でも問題なく育つ為、暑く乾燥しやすく場所でも植栽できる庭木です。
目次
シマトネリコの基本データ
- 科名と属名 モクセイ科・トネリコ属
- 学名 Fraxinus griffithii
- 分類 半常緑広葉樹 高木
- 樹高 10m
- 原産地 沖縄県 中国 台湾 フィリピン インド
- 別名 タイワンシオジ タイワントネリコ タイトウシオジ
- 開花期 5月~7月上旬
- 用途 シンボルツリー 洋風ガーデンやナチュラルガーデンへの植栽 日除け プランター植栽や鉢植え
同属の「トネリコ」の常緑種であるという意味で「シマ」を冠してシマトネリコと呼称とされます。
作庭者から見ると「シマトネリコはこんな庭木」
すっかりその姿を目にする事が多くなったシマトネリコですが、私の場合はどんな場所でもおすすめ出来る庭木ではないと考えています。
洋風の樹姿が魅力のシマトネリコですが、作庭者の目線から考えますと以下の様なポイントが挙げられます。
おすすめなポイント
- 剛健で夏の暑さにも動じない
- 列状葉が爽やかな洋風の雰囲気に
- ケムシや病気発生の心配が少ない
注意したいポイント
- 成長がとにかく早い(予め大きな庭木であるという認識が必要)
- 剪定をしても小さく維持出来ない
- 寒さに弱く葉を落とす
それではこれらのポイントを交えながら、庭木としてのシマトネリコについて解説をしてまいります。
シマトネリコの特徴
シマトネリコは常緑樹でありながら柔らかい樹形を楽しめる数少ない庭木であり、剛健な性質から土や環境を選ばないというメリットがあります。
雌株であれば花を見る事もでき、庭木を自由に生育させる事が出来る日向であれば大変おすすめ出来る洋風庭木です。
それではまずはシマトネリコの特徴を見てまいりましょう。
葉の形と色
規則的並ぶ小さな葉は奇数羽状複葉という形状で、アオダモ・トネリコなどと共通しますが、シマトネリコはより葉が小さく数も多く、風に揺れると涼し気な印象があり、おしゃれにも見えます。
葉は光沢のある濃緑色なので存在感もあり、背景の色彩がどんな色でもよくマッチします。
庭木の葉が傷みやすい真夏でもダメージは受けず、この強さも夏に涼しげな印象を感じさせる一因となっております。
シマトネリコは硬い灰色の葉芽が大きくなり、この位の大きさから葉の姿を現してきます。
新芽が展開する時期はやや遅く、本格的に暖かくなってきてから生育を開始する印象を受けます。
シマトネリコの雌雄、花と翼果
シマトネリコは雌雄異株であり、雌株だけが花を咲かせます。
私見ですが、庭木としてより剛健に育つのは花の咲かない雄株であると考えております。
寒さによる影響も花の咲く雌株の方が大きく、植栽後に年数を経た際に自然に枯れてくる傾向も見られます。
雌木は5~6月、枝先に大きさ3mm程の小花が円錐状に集合して咲きます。
この花の形態は円錐花序と呼ばれ、印象としてはサルスベリの咲き方にも似ています。
根を張って落ち着いた雌株は花を多く付けやすくなります。
シマトネリコは枝先に小花が集合する為、開花期は写真の様に木の上部が花いっぱいになる様子が見られます。
この白花は綿が付いている様にも見えてよく目立ち、開花期にシマトネリコが見せる貴重な華やかさとも言えるでしょう。
花期が過ぎると写真の様にへら状の翼果が大量に付き、シマトネリコ全体の色が変わって見える程です。
果実についた翼は風に吹かれてプロペラの様に機能する為、少し離れた場所へ種が飛んで発芽をする様になっています。
この為、雌株のシマトネリコの周囲からは頻繁に種からの発芽が見られますので、これは予め考慮しておいた方が宜しいかと思います。
シマトネリコは種からの発芽力が強く、庭木として生産する場合も盛んに実生から株立ち樹形が作られています。
シマトネリコの幹
庭木として流通するシマトネリコはほとんどが若木で、幹は細く滑らか、色は灰色です。
しかし成長したシマトネリコは幹がとても太く、樹皮も剥けてやや茶褐色になります。
シマトネリコの成長はこうした樹姿に向かって行われるという認識を持ち、後述の成長力についての解説もご参考下さい。
半常緑性という一面
あらゆる場所へ適応して生育もたくましいシマトネリコですが、本来は熱帯から亜熱帯の山間部に自生する高木であり、常緑樹特有の寒さに弱い傾向が特に顕著に表れます。
基本的に関東以北では越冬は困難とされており、寒い時期は茨城県の生産ファームでもシマトネリコの流通が無くなる事もあります。
関東におきましても、冬季に北風が当たり続ける場所ですと半分以上の葉を落としてしまう程です。
ですのでお住まい建物が北風避けとなる南庭への植栽がお勧めとなりますが、建物脇などからの通り風が常にあたる場所ですと冬季に傷みますので注意しましょう。
落葉しても春には新芽が展開
冬季の寒さで落葉したシマトネリコでも、翌春には小さな新芽をたくさん出してくれます。
寒い季節を終えて春の暖かさが本格化すると、枝先からはもちろん、幹からもたくさんの葉が出てきます。
冬季に寂しい見た目となったシマトネリコも、季節が変わり暖かくなれば緑多い姿を取り戻してくれます。
シマトネリコの適応環境
典型的な陽樹として
シマトネリコは日向を好む典型的な陽樹であり、植え付けは陽当たりと風通しの良い場所を選びましょう。
また、成長力を想定し、後々の幅や樹高を想定した場所選びが必須です。
シマトネリコを庭へ地植えした際はとにかく上へ上へと背を伸ばし、放任致しますと樹高5m~の木となるまでにさほど年数は掛かりません。
剪定維持を前提にした場合でも予め樹高3m前後を想定しませんと、強い切り戻しを繰り返す事となり、樹形の崩れと生育速度の倍化を招きます。
シマトネリコを日陰に植えると…?
日当たりが不十分な場所や遮蔽物に囲まれた場所へシマトネリコ植栽しますと、写真の様に下枝をどんどん枯らして日光を求めて上へ伸びる速度が速くなります。
同時に背の高さを支える幹も太くなり、当初の柔らかな姿とは一変してしまいます。
しかし中庭などへ植栽して頭上高くに葉を展開させたい場合や、2階リビングから葉を眺めたい場合は、このシマトネリコの生育力はメリットとして活かす事が出来ます。
繰り返しますがシマトネリコは建物や塀の脇、狭い場所などへ植栽した場合は極めて成長速度が増す傾向があり、幹も曲がって育つ事を想定しておく事が大切です。
成長力の強さを想定した植栽計画を
シマトネリコはその成長力の強さが最も大きな課題となる植木です。
鉢植えの観葉植物としても流通しておりますが、その様な場合とは大きく異なり、地植えによって根が展開すればとてつもない生育力を発揮します。
細い株立ち幹でも、狭い場所ではすぐに太い幹の集合体に
当初は細い直径2cm程の幹が株立ちとなっている樹形でも、植栽計画や剪定方法を誤りますと幹はそれぞれ直径15cm~まで太くなり、これらが数本まとまって生えている状況と化します。
植栽場所が狭かったり根鉢が窮屈になった場合や、無理にシマトネリコの高さや幅を切り詰め続けた場合、幹がこの様に太くなる傾向が早く表れます。
当初からこの太さを想定する植栽であれば良いのですが、生育計画を無視した植栽を行う事は厳禁です。
小さなシマトネリコを維持したい場合は、後述のプランター植えをおすすめ致します。
シマトネリコを玄関脇の小スペースへ植えてしまう、これは本当によく目にする事なのですが、成長度合いを知る植木屋さんであればまずおすすめはしない植栽と言えます。
特に隣地も近いケースですとシマトネリコが大きく成長して簡単に越境をしてしまう他、風によって枝が揺れて外壁や車を傷つける事もあります。
コンパクトに剪定で維持する、というお考えも浮かぶかと思われますが、切り詰めは瞬時にシマトネリコを太らせ、さらに強い枝を発生させる事に繋がります。
隣地やアプローチに近い場所への植栽をご検討される場合は慎重に計画を立てられるのが宜しいかと思います。
太く展開する浅根にも注意
シマトネリコは重い枝葉をいち早く支えようとする為、比較的浅い場所へ太い根を張り巡らせる傾向がありますので、周囲の低木生育を阻害したり、埋設された配管類を破損させる事があります。
特にガス管や上水道管の存在には注意が必要であり、植栽計画時にはこれらの存在を確認する必要があります。
同じ事項に留意する木としてはシラカシが挙げられますので、併せてご参考下さい。
こちらは抜根処分をせざるを得なかったシマトネリコですが、かなり浅い位置に太い根が展開している様子が解ります。
この浅根は素早く太く育ち、周囲の配管類に干渉するのにさほど年数は掛かりません。
こちらは埋設された配管類の近くにシマトネリコを植えてしまった例ですが、当初は本当に小さな鉢植えサイズの木を植えても、この様にすぐに太い幹と太い根に変わっていきます。
このシマトネリコは私の方で抜根処置を致しましたが、やはり配管類の上下に太い根が走っており、強風の際はその根が動いて配管も揺らしている状況でした。
住宅設備類の破損は大きな出費と被害を受けてしまいますので、植栽は慎重に行いましょう。
背の高さを許容すれば自然味ある樹形に
上記で解説を致しました様に、シマトネリコは当初から樹高のある木として植栽計画に盛り込む必要があります。
また、狭い場所へシマトネリコの植樹を勧めてしまうかどうかが、きちんとした植木屋であるかどうかの見極めポイントになると言っても過言ではありません。
シマトネリコは上記の生育・成長面を踏まえる事はもちろんですが、最初から大きなサイズを広い場所へ植栽する事がおすすめです。
予め4~5mクラスのシマトネリコを植栽した場合、その生育は若木と比べると大人しくなります。
この為、懸命にのこぎりで背丈を詰め続けるのとは異なり、小枝透かし等の正しい整枝剪定を行う事が可能となります。その結果、この様な自然な樹形を維持する事が出来る様になります。
枝透かしを行ったシマトネリコは懐付近の枝が少なくなり、幹や枝のシルエットが非常に美しく見える様になります。
枝透かしをされたシマトネリコは下部への採光も滞る事がなくなり、圧迫感も皆無な美しい常緑樹となります。
この様な樹形であれば同じ木を列植しても美しい景観を生み出す事ができ、夏場は適度な日除けとしても頼りになる木となります。
また、シマトネリコは乾燥に強い面がありますので、花壇状に植栽場所が設けられたマンションやオフィスビル、ホテルエントランスへの植栽におすすめが出来ます。
実は理想的なシマトネリコの単幹樹形
シマトネリコは賑やかな見た目である「株立ち」の樹形が一般的ではありますが、当然本来はこの様な単幹樹形として生育するものです。
樹高4m以上のシマトネリコであればこの様なしっかりとした単幹樹形も取り扱われており、バランスも良く美しい姿を楽しむ事が出来ます。
これらは主にビルの植栽で目にする事が多く、この木がシマトネリコであるという事に気が付かれない場合がほとんどです。
シマトネリコをシンボルツリーにしよう
シマトネリコは、日当たり・風通しが良く、周囲に遮蔽物がない無い場所への植栽が必須な庭木です。
この生育特性はシマトネリコがシンボルツリーとしての植栽に向いている事を示しており、植樹の際は他の木と寄せ植えをせず、独立させて植える事がおすすめです。
周囲に遮る物がなく伸び伸びと育ったシマトネリコは、とてもおしゃれなシンボルツリーになってくれる事でしょう。
それではシマトネリコをシンボルツリーにした植栽実例を見てみましょう。
庭の中心のシンボルツリーとして
こちらは広いお庭の中心へ、シンボルツリーとして植栽したシマトネリコです。
樹高は4m以上あり、悠々とした姿がお住まいを引き立ててくれます。
このサイズであれば生育面で後からお悩みになるケースは少なく、夏場も青々とした美しい景観を得る事が出来ます。
ですが大きなサイズのシマトネリコを植栽する際は、強風による倒木を防ぐ為、しっかりとした風止め処置を行っておく事も必要です。
2階窓から見えるまで生育させるシンボルツリー
こちらもシマトネリコをシンボルツリーとして植栽した事例ですが、既に3m弱の背丈を更に伸ばす事を想定した植栽計画となっています。
ここから樹高を伸ばし、2階に位置するリビング窓より緑が望める様になるまで生育させる事を見込んでおります。
最初からさらに背の高いシマトネリコを植栽する事も可能ではありますが、根付き前の大きなシマトネリコは強風によって倒れやすい為、まずはこちらのサイズのシマトネリコを植栽し、しっかりと根を張らせる事を目的としています。
尚、シマトネリコに限らずシンボルツリーをお選びされている方は、シンボルツリーの選び方とおすすめ樹種についてのページもご参考いただければと思います。
目隠しとしてシマトネリコを植栽する場合の注意点
シマトネリコの場合、目隠しとして植栽しますと最初の内は効果がありますが、生育に連れて下枝が少なくなっていき、肝心な目隠し部分は幹だけとなってしまう傾向があります。
これは日照が当たる部分が優先して生育展開し、陽の当たり難い幹周りや下部の生育が衰える為で、特にシマトネリコはこの性質が顕著に表れます。
また、先述の様に寒さで葉を落とす可能性が高い為、これも目隠し効果的に留意しておく必要があります。
目隠しフェンスの効果を補うシマトネリコ
こちらは目隠しとしてシマトネリコを列植しておりますが、下半分の目隠しは予め低いフェンスを設置しており、上半分はシマトネリコの葉を自由に展開させる手法を取っております。
高さが2~3mもある目隠しにフェンスを長距離に設置しますと圧迫感が強くなり、お住まいの景観そのものを大きく変化させてしまいます。
植物の葉が高く展開すれば写真の通り、目隠しをしながらも緑化を伴う景観向上にも寄与します。
シマトネリコを鉢植えやプランターで楽しむ
シマトネリコは地植えでの成長力に困る反面、プランターや鉢植えで観葉植物的な扱いをする事には向いています。
これはプランター植えの場合ですと地植えと異なり根が成長しにくく、生育力がいくらか緩やかになる為です。
プランターや鉢植えはどんな植物であっても乾燥対策が重要で、水遣りはもちろん雨に当たり難い葉へ水を掛ける等のメンテナンスが必須ですが、シマトネリコなら乾燥しやすい環境でも生きる剛健さを持っています。
そんなシマトネリコの鉢植えですが、実際の設置事例を見てみましょう。
バルコニーで実現するシマトネリコの列植
こちらは広いバルコニーにおしゃれな洋風プランターを設置し、3株ずつシマトネリコを植栽しています。
これによりシマトネリコの列植が出来上がり、独特の株立ち樹形によって賑やかなグリーンを演出する事が出来ました。
尚、シマトネリコのプランター植栽設置時は南側等の北風が当たらない場所がおすすめとなります。
冬の北風に晒される場所ですと枝葉が寒さで傷み、プランターごと根が冷やされる事にもなりますので要注意です。
お住まいの外壁カラーに合わせたプランターへシマトネリコを
こちらはお住まい外壁のカラーと合わせたダークグレープランターへ植栽したシマトネリコです。
シマトネリコ特有の株立ち樹形は、列植をした際に自然な木立の様な景観に見せやすいメリットがあります。
シマトネリコであれば、単純に木が並んでいるというよりも自然群生の様な雰囲気を作り出す事が出来ます。
また、シマトネリコが持つ明るい葉は暗色のスクリーンに映えますので、カラーマッチングも宜しいかと思います。
大型プランターへ植える樹高3m超のシマトネリコ
こちらはマンションエントランスへ大型プランターをセットし、シンボルツリーとして樹高3m超のシマトネリコを植栽しました。
真上に屋根は無い場所ですが建物に囲まれている為に雨が当たりにくく、この様な環境もシマトネリコなら適応する力があります。
元々シマトネリコは観葉植物として屋内で育てられる一面があり、環境適応性が高いという特性を持っています。
しかし葉が雨に全く当たらないのは宜しくありませんので、時折葉にも水を掛けてあげる事は必要となります。
洋風小型プランターのシマトネリコを目隠しとして
レンガ調のデザインが楽しいこちらのプランターは40cm立方体、いわゆるスクエアプランターと呼ばれるものです。
一般的にプランターへ庭木を植栽する場合はこのサイズが最小基準とされ、このサイズのプランターであれば樹高1.6m程の庭木を植える事が可能となります。
こちらは窓から人通りの多い橋が近くに見えてしまい、この部分を目隠しするべくシマトネリコを植栽しております。
シマトネリコですと強い目隠しを実現する事は難しくはありますが、見え難くする程度の目隠しと景観向上を兼ねる事ができ、リビングからの眺めも楽しめる様になりました。
インテリアと合わせるおしゃれな鉢植えとして
ホワイトを基調としたインテリアに合わせる様に、シマトネリコをホワイトプランターへ植栽した実例となります。
このプランターは重量軽減のためにFRP(強化プラスチック)製のものをセレクトしており、マンションバルコニーへの重量負荷を少なくしています。
マンションによっては重量物の搬入に条件が付く事もありますが、この様な軽量物であれば問題なく搬入作業や設置を行う事が出来ます。
シマトネリコが窓の外に見えますと、観葉植物的な存在感によってインテリアと同化した様に見え、お部屋が広がった様な景観効果を生み出してくれます。
シマトネリコは上部ほど幅が広がっている樹形がほとんどである為、この様に2台のプランターの間隔を空けても枝葉は一体感を感じるレベルまで近付きます。
これを応用すれば、少ない数のプランターでシマトネリコの枝葉を広範囲で楽しむ事が出来ますので、ご参考にされてみては如何でしょうか。
シマトネリコの育て方
適した土質
シマトネリコは乾燥に強く過剰な湿潤を嫌う為、水捌けの良い土を作ります。
常緑樹の基本でもありますが、赤玉土や腐葉土を庭土に混ぜてあげましょう。
植え付け
シマトネリコは浅い根を早く成長させる為、深く植える事は避けます。
しかしシマトネリコは樹形と枝葉の重さから、根付く前に強風に煽られて傾きやすい庭木です。
根張り自体は早く行われますが、簡易的な風止め処置はしておきましょう。
水やり
シマトネリコは鉢植えで育てられる事が多く、この場合は土の表面が乾いたら深部まで浸透させる位に水を与えましょう。
庭植え(地植え)のシマトネリコは根の成長も速いので、2~3年経過して庭木として落ち着けば水やりも必要なくなります。
それまでは根の活着の為にも、乾燥を確認したら水を与えます。
肥料
地植えのシマトネリコは元々強い成長力を持っている為、特に肥料を必要とはしません。
元気の無いシマトネリコについては、寒肥として2月~3月に有機質肥料(油かす・骨粉)を埋めておきます。
鉢植え・観葉植物としてのシマトネリコへは、成長が始まる前の3月頃に、有機化成肥料を根元に撒きます。
室内に置くシマトネリコへの施肥は、完全無臭の化成肥料がおすすめです。
シマトネリコの剪定方法と実例
シマトネリコはその剛健さゆえに病気や害虫被害に遭いにくく、年間を通じて逞しい印象があります。
ですのでお庭での維持管理は生育的な剪定メンテナンスに集約されてまいります。
まずはシマトネリコを小さく維持する事は諦め、せめて3m~の樹姿を想定します。
シマトネリコの樹形は、幹から枝へというよりも幹自体で構成されている事がほとんどで、この幹をいかに太らせないかにかかってきます。
剪定のポイントとしては、
・必要最低限の本数の幹にする(バランスが良く見える3本程度)
・背丈を切り詰める際は木が硬く見えない高さまでに留める
・濃いシルエットではなく、向こう側がかなり透ける軽さにする
という様になります。
背丈を無理に詰めないシマトネリコの仕立て
こちらのシマトネリコは高さ2.8m程を想定して植栽しており、無理に切り詰めを行わない剪定を施しています。
シマトネリコは高さに余裕を持った樹形が最も自然に見えますうえ、剪定後の生育も幾分緩やかになります。
背の高さを許容して、柔らかな姿を維持する
無理に背丈を詰めず、植栽計画の段階から4m程の高さを想定していれば、こちらの様に柔らかな木立を思わせる庭木となります。
シマトネリコの様に、常緑樹でありながら自然な木立を演出できる植木は限られておりますので、背の高ささえ許容出来る場所であれば是非取り入れたい植栽方法です。
詰め過ぎず、カット後の反動を考えた剪定を
背が高くなりすぎて困ったというケースに多くお伺いを致しますが、背丈を低くする事を優先に剪定をしますと全体が一気に太る事に加え、あっという間に元の高さへ戻ってしまいます。
つまり木を太らせる為にカットをしている様なものとなってしまいますので、シマトネリコの剪定におきましてはなるべく詰めず出来るだけ柔らかにする、実は剪定の本来の心得が特に必要な植木とも言えます。
シマトネリコで注意する病気・害虫
シマトネリコは成長・生育力が元々旺盛であり乾燥にも強い剛健な庭木である為、施肥は寒肥として冬場に行う程度で十分と言えます。
毛虫類の被害は受けにくいものの、植栽場所によっては大型のイモムシの食害が慢性化するケースが見られます。
この被害を受けた場所は毎年夏に被害を受ける様になる傾向がある為、予防として梅雨明けに毛虫用の殺虫剤を全体散布しておく事が望ましいです。
まとめ
以上となりますが、如何でしたでしょうか。
シマトネリコは独特の列状葉が涼し気で、洋風の雰囲気を感じさせてくれる個性的な庭木です。
成長面を踏まえた植栽計画さえ行えば、柔らかな樹形も維持する事が出来ますし、他に類を見ない美しさも見せてくれます。
広い場所へ大きな洋風の木をご希望される方は、是非シマトネリコの植栽をご検討されるのが良いかと思います。
執筆者:新美雅之(新美園HP作成・作庭者)
庭木や庭デザインについて、作庭者の経験を活かして現実的に解説をするコンテンツを目指し、日々執筆しています。