ジューンベリーはバラ科・ザイフリボク属の落葉樹で、アメリカザイフリボクの別名として知られています。
ザイフリボク(シデザクラ)という樹木が日本国内に自生する唯一のザイフリボク属として存在しますが、実の小ささや味の薄さから、食用果樹としては扱われません。
私がジューンベリーを扱う際は、果樹と申しますよりも雑木の一種として植栽する事が多いです。
ジューンベリーはシンボルツリーからナチュラルな植栽まで、幅広くおすすめ出来る庭木と言えます。
自然な雑木らしい樹形を楽しめる他、ジューンベリーは4月頃に開花の白花はもちろん、6月に収穫期を迎える果実、秋には色付きの良い紅葉まで楽しめる人気の庭木となります。
目次
ジューンベリーの基本データ
- 科名と属名 バラ科・ザイフリボク属
- 学名 Amelanchier
- 分類 落葉広葉樹 小高木
- 原産地 北アメリカ
- 別名 アメリカザイフリボク・セイヨウザイフリボク
- 開花期 4月下旬~5月上旬
- 実の収穫期 6月
- 適正土壌 やや湿り気のある肥沃な酸性土壌
- 樹高 5m前後
- 植栽用途 シンボルツリー 雑木の庭やナチュラルガーデン
別名とされるアメリカザイフリボクが正式な名称ですが、6月(june)に熟すベリーの様な実という意味でジューンベリー(JuneBerry)と呼ばれています。
作庭者から見ると「ジューンベリーはこんな庭木」
ジューンベリーは近年人気が高く、植える事でお住まいも自然の中の佇まいの様に見え、手軽にナチュラルガーデンを演出できる庭木だと思います。
作庭を行っております私から見ますと、ジューンベリーについては以下の様なポイントが挙げられます。
おすすめなポイント
- 桜に似た白花を楽しめる
- 食用出来る実や紅葉も楽しめる
- 落葉樹でありながら日差しにも強い
- ケムシの発生が少ない
注意したいポイント
- 「ひこばえ(不要な垂直枝)」の発生が多い
- 収穫しきれなかった実が落下して汚れになる
- 小さく維持するのが困難(品種:バレリーナを除く)
それではこれらのポイントを交えながら、ジューンベリーについて解説をしてまいります。
葉と幹に見る、ジューンベリーのナチュラル感
ジューンベリーはいわゆる「ナチュラル」な庭木として植栽する事が多い庭木です。
左右が均等に整った株立ち樹形とは異なり、あくまでも自然に生えて育った山の木というイメージが強く、枝葉や幹におきましても飾り気のないナチュラル感を感じられます。
飾り気のない葉
ジューンベリーの葉は葉脈がくっきりと見え、表裏で色の違いが明確なのが特徴です。
根付いたジューンベリーの葉は長さが6~7cmありますが、徒長枝の様に強く伸びた枝先の葉は10cm近くになる事もあります。
側面は僅かに鋸状になりますが、全体的には丸みのある葉に見えます。
葉数は密生する訳ではなく間隔を空けて付いており、これによりジューンベリーは枝が混み入らない限りは幹や枝の形、つまり樹形を鑑賞しやすい庭木と言えます。
山間を思わせる幹
ある程度成長したジューンベリーの幹は地衣類による幹模様が生じやすく、アオダモの様な縞模様と斑模様の中間の様にも見えます。
全体的にグレー色をしており、上部に伸びやすい特性から幹も相応に太りやすい傾向があります。
当初は株立ち樹形が多いジューンベリーですが、全ての幹がこの太さになる事を考えますと、適期に幹数を減らす事が必要となります。
最終的には単幹樹形として仕立てる事も多く、これがより自然な姿となって見えます。
肌が美しい、強い若枝
ジューンベリーは、若木の内は強く走る枝が多く発生する木でもあります。
この若い枝は必要なものだけは残して放任し、植栽時よりもスケールを大きく育てる事が望ましくあります。
若い枝は自然な模様も美しく、手触りも非常に滑らかです。
この様に幹や枝が自然に垣間見えるのも、ジューンベリーの魅力の一つと言えます。
季節ごとに見るジューンベリーの見所
ジューンベリーの見所は多く、季節ごとに美しい姿を楽しめます。
ここではジューンベリーの魅力的なポイントを、季節ごとに見てまいりましょう。
ジューンベリーの花:開花期4~5月
4月下旬から5月上旬に開花するジューンベリーの花は、新葉が展開する前から咲き始め、開花中に新葉が展開していきます。
開花期や新葉展開のタイミングを考えますと、桜にも似た風情を感じられます。
ジューンベリーの花は枝いっぱいに咲くのが特徴で、この部分も桜と似た雰囲気が感じられます。
花の期間が短いのも良く似た特徴であり、一週間前後で終わりを迎えます。
やや下垂する上品な白花
細い花弁を持つ白花は、花房からやや下垂する様に複数開花します。
ジューンベリーの花は花弁の白と中央のグリーンのグラデーションが美しく、華美ではない上品な印象を感じさせます。
木全体に開花する様子は圧巻
ジューンベリーはその花数も圧倒的で、開花や結実は植栽後すぐに見る事が出来ます。
果樹は年数を経ませんと結実しない種類が多くありますが、ジューンベリーであればその心配もありません。
弊社ファームに在庫中のジューンベリー(品種:ラマルキー)を撮影した写真ですが、上から下まで万遍なく花が咲く様子が解ります。
ジューンベリーの花については当たり外れ年はさほど見られず、特に「ラマルキー」は花数が多く圧巻の姿を見せてくれます。
5月:美しい新緑
花も咲き終わりますと、途中から展開してきていた新葉が大きくなってきます。
5月には葉の大きさが充実しますが、夏まではまだ柔らかい手触りの葉です。
ジューンベリーの葉はやや幅広で丸みがあり、葉同士の間隔はやや空いている印象です。
夏までには葉の表面に若干のツヤが生じ、落葉樹としては夏の日差しに耐え得るたくましい葉に成長していきます。
6月:ジューンベリーの実
ジューンベリーは花後は速やかに実が充実してきます。
実成りは良く、通常の日向であればほとんどの枝に実が成ります。
熟す期間がとても早く、翌6月下旬には収穫期を迎える程です。
実の成熟は、緑の実が白っぽくなり、さらに美しい赤い色へ変化していきます。
赤い実はまだ収穫するには早いのですが、ジューンベリーの実は熟すまでの鑑賞価値も高く、緑色の葉とのコントラストがとても美しく映えます。
この頃になると葉の厚みもしっかりとしており、夏の直射日光にもいくらか耐えられる強さを持ち合わせてきます。
速やかに熟すジューンベリーの実です。
この状態から紫に近い成熟をするまでは短いので、実を収穫される場合はタイミングを観察する様にしてください。
尚、成熟タイミングは実の位置によって異なります。
暖かい場所から順次熟していきますので、収穫作業は少しずつ行うつもりでいるのが良いでしょう。
鳥によって食べられてしまう事も
ジューンベリーの実は大きさは小さいのですが鮮やかな色と数が鳥の食事になりやすく、お住まいの環境にもよりますが鳥に食べ尽くされてしまう事もあります。
鳥による被害を防ぎたい場合は防鳥ネットの使用がおすすめです。
景観的な面さえ許容すれば、実は守る事が出来ます。
しかし後述の「高い位置の実」については収穫が難しい為、これらは鳥におすそ分けするのも宜しいではないでしょうか。
収穫が出来ない位置の実に注意
樹高が3m以上あるジューンベリーですと、高い枝の実を収穫する事が難しく、放置していた実が落下して庭を汚す可能性があります。
ジューンベリーの植栽位置が玄関アプローチ傍であったり、落下した実がカーポートの上へ落ちたりする場所でありますと、実によって汚してしまう可能性があります。
実の落下についてはナチュラルガーデン等では汚れも気になりませんが、タイルやルーフに付着した汚れは落ちにくいものでありますので、ジューンベリーを植栽する場合の注意点として挙げておきます。
秋に楽しむジューンベリーの紅葉
ジューンベリーは秋の色付きも楽しむ事が出来る庭木です。
落葉樹であれば大抵はいくらか秋の色付きを見る事が出来ますが、ジューンベリーは深紅に染まりやすい庭木と言えます。
紅葉し始めるジューンベリーの葉
秋が深まるに連れ、ジューンベリーの葉は段々と赤い色に染まっていきます。
全体が均一に赤くなる葉もあれば、赤味が広がって行く様に染まっていく葉も見られます。
他の庭木ですと緑の部分が黄色~オレンジ~赤と順次色付いていくものですが、ジューンベリーは緑から急に赤く染まる事があります。
これはブルーベリーの紅葉にも似ており、純粋な深紅を楽しめる数少ない庭木と言えます。
写真は紅葉途中のジューンベリーの樹姿ですが、オレンジや黄色、そしてまだ緑色の葉が混在し、美しいグラデーションが見られるのがお解りいただけると思います。
幾つかの葉はやはり紅葉途中で落ちてしまったりもしますが、ナチュラルな樹姿が染まっていくのは風情もあります。
紅葉したジューンベリーの姿
紅葉によって葉が染まりきったジューンベリーは、秋の庭で特別な存在感を見せてくれます。
植栽後、庭木として根付くまでは黄葉に終わる事もありますが、深紅に染まる様になったジューンベリーは色付き方も見所です。
この抜ける様な発色はイロハモミジやナナカマドと並んで美しく、ジューンベリーは秋も楽しむナチュラルガーデンへの植栽が非常におすすめです。
さらに秋の季節感をお庭で楽しまれたい場合は、マルバノキやアロニア、ナツハゼ等の落葉低木と組み合わせてみるのも効果的で、美しい秋の庭を作り出せます。
ジューンベリーの実:収穫から楽しみ方
収穫したジューンベリーの実は見た目も美しく、ブルーベリーと似た可愛らしさも感じられます。
食用として収穫するのは濃い赤から紫の色合いになった実で、これは生食用か加工用でタイミングが異なります。
ジューンベリーの栄養素は?
ジューンベリーの実は栄養価も高く、ブルーベリーでもお馴染みの栄養素であるアントシアニンが豊富である他、ビタミンB6やミネラル、カルシウムに加え食物繊維も含まれます。
特にアントシアニンが持つ抗酸化作用は、体内のたんぱく質が酵素により酸化されてしまうのを防ぐ作用がある事から、老化防止にもなるという見解もあります。
生食でも楽しめる
ジューンベリーの実は生食も可能で、これはフェイジョアでも楽しむ事が出来ます。
生食用の場合は、鮮やかな赤い色をしている実を収穫しましょう。
やはり商品として流通している他の果物とは異なり、味はほのかな甘みであり酸味も少なめと言われていますが、肥料や生育環境によって異なると思います。
種が口に残る感じが否めませんが、やはりご自宅の庭で採れた実であるという事が、代えがたい喜びなのだと思います。
トッピングとしてもおすすめです
生食をご紹介しましたが、ジューンベリーの実は既に出来上がっているデザートなどへのトッピングとしておすすめが出来ます。
とにかく果物としての色合いが美しいので、お菓子やデザートへの彩りとして使う事が出来ます。
ジャムへの加工方法
実を最も有効活用できるのが、ジャム作りです。
ジャム作りはそもそも実の数が必要なレシピですから、実が大量になるジューンベリーは適した庭木です。
ジャムとして利用する実は赤から紫色に変わるあたりまで熟した実を収穫して使いましょう。
ジャム作りの方法ですが、簡単にご説明しますと以下の手順となります。
①収穫
少しずつ収穫した実を都度冷凍庫で保存し、貯めていく様にして集めます。
ジャムに加工する場合は、なるべく黒色に近い状態まで熟した実を選びましょう。
②煮詰め
ジューンベリーの実を鍋に入れ、焦がさない様にする程度の水を加えて煮始めます。
実自体からも水分は出ますので、水少しでも構いません。
③攪拌
水分が抜けてくるまで十分に煮て、ハンドミキサーでペーストになるまで混ぜます。
この時、アクを取りながら不純物も取り除きます。
④裏ごし
種が口に入りますと感触が宜しくない為、種が残らない様に裏ごしをします。
⑤砂糖・レモンを加えて完成
柔らかくなったジューンベリーペーストに、総重量の半分の重さの砂糖、レモン果汁(半分)を加えて煮詰めれば完成となります。
実のたくさん成る大きなジューンベリーを植栽した際は、是非ジャム作りにチャレンジしてみましょう。
お庭での生育傾向
ジューンベリーは放任して自然樹形を楽しむ庭木ですので、小さなサイズの木を植えてそれを維持していくのは難しい事です。
剪定によって適切な大きさに維持する、というご意見もありますが、庭木には維持の方向性によって向き不向きがあります。
ジューンベリーについては少なくとも樹高は3m~とし、自然に育った樹形を崩さない事が大切です。
ですので当初からある程度の樹高を持つサイズを植栽しておけば、予想外の姿に成長してしまう事は避けられます。
幹と化す「ひこばえ」の発生
ジューンベリーは幹元から無数の垂直枝(ひこばえ)を出す傾向が強く、気が付かない内に樹形を乱す事があります。
ひこばえはどんな樹種でも発生する事はありますが、ジューンベリーの場合は特に発生本数と成長速度が速く、気が付いた時には普通の木鋏では切除出来ない様な太さになってしまいます。
ひこばえは見る見る内に横枝の高さを追い越し、樹形の中を潜り抜ける様に伸びてしまいます。
これらについては早めの切除が基本であり、なるべく地面からしっかり取り除いておきましょう。
その他の横向きの細い枝は成長が大人しいものの、枝の途中から不要な垂直枝が突出して発生しやすく、これは早い段階での除去が望ましくありますので、落葉期に元から外しておく事が有効です。
「見上げる雑木」として育てる
庭木を植えられる際はどうしても、人の背丈程度の高さの木を維持するというイメージをお持ちになられるかもしれませんが、特に雑木類の植栽では「見上げる木」が理想形である事をご認識いただきたく思います。
ジューンベリーも同様で、特に自然な姿を感じていただく為にもある程度の樹高は必要です。
ヒメシャラやヤマボウシ等の株立ちであれば整った印象で大きくなってきますが、ジューンベリーの場合は山の木らしく自然な曲がりや方向性(樹勢)が出てきます。
造園上これを大切にするのはイロハモミジと共通しており、ジューンベリーは特に自然な扱いが求められる庭木です。
見上げる様な姿を想定し、自由に成長して形付けられる場所へ植栽してあげましょう。
植栽するジューンベリーのおすすめ樹高
ジューンベリーはいわゆるサイズ(樹高)のみでは規格を判断しにくい庭木です。
例えば「2.5mのジューンベリー」といった規格であっても、苗木がそのまま2.5mまで伸びた様な木もあれば、幹数も幅も充実した木もあります。
人の背丈ほどの樹高(約2m)のジューンベリーを植栽しますと、低木品種を除き、その高さをそのまま維持する事は難しいでしょう。
あくまでも成長させる事を前提とするならば、写真の様な2.5m~の樹高を植栽し、若干の成長をさせるのが望ましくあります。
成長によって樹形が大幅に変わってしまう事も少なく、若木よりも成長が緩やかであるメリットもあります。
ジューンベリーをシンボルツリーに
ジューンベリーはその優雅さと自然体から、庭の中心で主役を演じさせてナチュラルガーデンをデザインする事が多く、直射日光下で生育出来るイロハモミジに並んで自然風の庭で重宝します。
広い玄関であればシンボルツリーとして植える事も出来ますが、あくまでも頭上に枝葉を感じられる様なサイズ感で検討する事をおすすめします。
ジューンベリーをシンボルツリーにすれば、お住まいを山の様な雰囲気に見せる事が出来ます。
形が整った洋風植栽とは少し異なった雰囲気であるのは、やはりジューンベリーが自然に作られた樹形を持つ庭木であるからかと思います。
ナチュラル志向のお住まいであればジューンベリーが特にマッチしますので、自然溢れるシンボルツリーとしておすすめです。
さらに高い樹高を許容できる場合は、コナラを使う事もあります。
ウッドフェンスと合わせてナチュラルなシンボルツリーに
こちらは門周りに設置したウッドフェンスと合わせ、シンボルツリーとして植栽したジューンベリーです。
自然な姿を大切にして放任成長させれば、この様にウッドフェンスとのマッチングが非常に良く、花や実も美しく映えます。
ジューンベリーは放任すれば枝が混んできますが、自然風景の様な雰囲気がお好みであれば無理に強い枝透かしをする必要はありません。
山の木がそのままシンボルツリーとなった姿を楽しんでいただけます。
玄関アプローチで出迎えるジューンベリー
玄関へ向かうアプローチ沿いのシンボルツリーにジューンベリーを選んだ植栽実例です。
周囲が洋風で仕上げられたアプローチへあえて自然な樹形の雑木を選ぶ事で、いわゆる洋風ナチュラルというおしゃれな玄関周りを演出する事が出来ます。
洋風住宅の場合はシンボルツリーも明るく洋風な樹種にうる事がありますが、ジューンベリーの様な雑木を選択するのも良い景観を生み出せます。
ジューンベリーは自然な形も多く、樹形選びをしっかり行えばそれぞれの場所へ馴染む木が見付かるものです。
上の写真ではアプローチ沿いへ優しく傾ぎながらも、しっかりと存在感のあるジューンベリーを選んでいます。
ナチュラルなデザイン住宅のシンボルとして
こちらはナチュラルなデザイン住宅へのシンボルツリーとして、樹高3mのジューンベリーを植栽しております。
枝模様がしっかりと見えるジューンベリーであれば、樹高が高くても圧迫感が無く、美しいお住まいとの調和を図る事が出来ます。
周囲に余裕さえあれば、ジューンベリーは2階から眺める様な植栽設計にも採用する事が可能で、近年ではあらゆるシチュエーションへのシンボルツリーとして植栽をしております。
尚、ジューンベリーに限らずシンボルツリーをお選びされている方は、シンボルツリーの選び方とおすすめ樹種についてのページもご参考いただければと思います。
ジューンベリーの植栽実例
ジューンベリーは周囲の自然に溶け込ませて手付かずの自然を演出するに適した庭木である事から、芝生や草花との相性も良く、これらの空間と合わせて植栽すると更に魅力的な景観を作り出す事が出来ます。
上ではシンボルツリーとしての植栽をご紹介し致しましたが、こちらではジューンベリーを庭木として植栽した実例をご紹介致します。
庭の中でナチュラルに育てるジューンベリー
ジューンベリーをお庭の中程に植栽した実例で、外からもその自然な樹形を楽しむ事が出来ます。
ジューンベリーは成長に伴い横方向の枝も充実してきますので、夏になれば木陰や木漏れ日を作ってくれる様になります。
落葉樹としては夏の日光に耐え得る方であり、これはイロハモミジと似た剛健性であるかと考えます。
強い直射日光が当たり続ける庭へ植栽できる落葉樹は限られており、コナラやクヌギですと大木となってしまいます。
ジューンベリーの様に小高木の部類で陽当たりに耐え得る樹種は少ない為、日向で自然な姿を楽しむ雑木としておすすめが出来ます。
雑木の寄せ植えを楽しむ
ジューンベリーはシンボルツリーとして単独で植栽する事も良いのですが、雑木の雰囲気を活かした寄せ植えにも向いています。
あまり整いすぎていない樹形の木を使う事が大切で、この様なジューンベリーであれば寄せ植えを行っても自然な群生の様に見せる事が出来ます。
左手前がジューンベリーですが、右手に角度を合わせて小さなアオダモを寄せ植えしています。
さらに低木であるブルーベリーも寄せ植えしており、この一角で3種の庭木による群生を作っています。
落葉樹を綿密に植え付けるデザインは、ジューンベリーの自然らしい姿を楽しむおすすめの植栽方法と言えます。
葉の雰囲気が異なる庭木とのコラボレーションも
ジューンベリーの葉は飾り気がなく存在感も強くはありませんが、葉の雰囲気が異なる庭木と組み合わせれば魅力を増す事も出来ます。
葉の形が大きく異なるジューンベリーとイロハモミジですが、この2種類の庭木を組み合わせる事で双方の木の魅力が引き立ちます。
また、両方とも紅葉をしやすい庭木でありますので、秋には庭が見事な色に染まる様子を見る事が出来ます。
和風の庭に合わせるジューンベリー
ジューンベリーと言えばナチュラルガーデンや洋風の庭を連想されるかもしれませんが、その自然な樹形は和風の庭に合わせる事も出来るのです。
ジューンベリーが持つ軽やかな自然樹形は、庭木の枝ぶりを楽しむ和風の庭にもよく合います。
余分な枝が少なく透かされた落葉樹は和庭で古くから用いられており、シャラノキと同様に風情ある落葉樹としておすすめ出来ます。
また、先にご紹介の様にジューンベリーは紅葉を見せる庭木としても優れており、これがまた和庭の風情を引き立ててくれるものです。
ただし美しい紅葉の発色を見る場合は日当たりの良い場所へ植栽する様にし、和庭の雰囲気を保つ様に枝透かし剪定は常に行っておく事が良いでしょう。
ジューンベリーの品種(種類)
ジューンベリーには様々な品種がありますが、庭木として流通するのは品種が定かでない木や「ラマルキー」が多いです。
これは背丈が伸びやすく庭木として仕立てる事に向いており、花数も多い事が理由です。
その他品種は主に花色や実に個性が表れ、庭木としては品種に拘る事はあまりございません。
アメリカザイフリボク・セイヨウザイフリボク
近縁として扱われる2種ですが、ジューンベリーは主にこの二つに含まれます。
こちらのページでご紹介したジューンベリーもこちらの品種について解説をしております。
ザイフリボク
日本国内の自生種。花と新葉の展開が同時に行われ、実の成熟も6月ではなく11月頃となります。
ラマルキー
本ページの花についての項目でもご紹介した庭木用品種です。特に花数が多い為、それに準じて実の数も多くなります。
実の収穫をされたい方はこちらの品種を選んでおくと良いでしょう。
ロビンヒル
希少な桃色花種で、咲いた花は紅がうっすらと白地に溶けた様なピンク色をしています。
この色彩は咲き始め、蕾の頃が最も濃く、開花が進むに連れて白色へと変化していきます。
ノースライン
見の大きさは14mm程あり、味が非常に甘いのが特徴で、果肉密度が高い事から歯ごたえを楽しめる実として知られています。
バレリーナ
こちらも時折取り扱う品種ですが、庭木の市場で頻繁に流通する事はありません。
樹高が1m程度の高さでも実を付けるのが特徴で、実の大きさも大きい(10~15mm)のが最大の特徴です。
味も良い為、質の良い実を少し収穫したい方や、プランター・鉢植えで栽培をしたい方におすすめです。
ジューンベリーの育て方
適した環境
ジューンベリーは花を咲かせて果実を充実させる目的からして、陽当たりはある程度良好な場所へ植え付けたい木です。
最低限、半日は陽射しを得る場所を探すとなると、東側への植栽が最も宜しいかとは思います。
しかしジューンベリーは乾燥続きの状態を嫌いますので、肝心なのは地面が乾燥し過ぎない環境を作る事です。
大きく育てて自ら木陰を作る様にしたり、低木類を寄せ植えして地表を保護する対策も効果的です。
植え付けの時期
基本的には落葉している12月~3月に行いますが、庭木として流通している根巻き状態であれば、真夏と厳寒期を避ければ植え付けは可能です。
適した土質
ジューンベリーは落葉雑木らしく適湿で肥沃な土壌を好み、水捌けも良い土が適しています。
植え付けの際はこれに近付ける様に、腐葉土や堆肥類を庭土に混ぜ込んで植えましょう。
水やり
根が充実するまでは極度な乾燥に注意します。
地表が乾いているのを確認したら水やりはたっぷりと行います。
庭木として逞しく成長すれば、その後は真夏以外は水やりを必要としません。
肥料
12~3月:寒肥として堆肥・油かす・骨粉を混合したものを樹冠下へ埋め込みます。
3~4月:緩効性肥料(化成肥料等)を地表へ与えます。
注意したい病気と害虫
ジューンベリーは日当たりの良い場所への植栽が適していますが、日照不足の場所ですと葉にうどん粉病が見られる事があります。ただしかなりの日陰でなければ心配は無いでしょう。
ケムシの被害には遭い難いのですが、近年になって食害の報告が少し出てくる様になっています。
ですが樹木全体を食べ尽くす様な被害はなく、少しの食害で済む事がほとんどです。
新芽については周囲の庭木によってはアブラムシの発生があります。
ジューンベリーは樹高が高い事が多い為、農薬散布よりも粒状オルトランを地表に撒く事をおすすめします。
浸透移行作用によって高所まで薬効が期待でき、アブラムシの予防対策としてご活用下さい。
ジューンベリーの剪定方法
お庭での維持サイズは、枝を見上げる様な大きさが最も美しい姿となります。
3m~の高さを想定のうえ、剪定によって大枝を取り除き、なるべく小枝には触らず維持していきます。
太い枝を途中でカットしてしまいますとそこまでの部分が太り、切る以前の徒長枝が真上へ向けて再発生します。
これをまた取り除くという繰り返しになりますと、すぐさま幹から枝までが太くなり、自然体とは程遠い姿へ変わってしまいます。
また、地表から発生するひこばえも多く、これは早い段階から剪定の一環として取り除く必要があります。
ひこばえは栄養分を優先して摂取しやすく、肝心な幹よりも数段早い速度で幹を形成していってしまいます。
気が付かない内に幹の本数が増えてしまう事もありますので、柔らかく剪定が容易な内から取り除くと良いでしょう。
まとめ
ジューンベリーについて解説をしてまいりましたが、如何でしたでしょうか。
ジューンベリーは季節それぞれに見所があり、ナチュラルなシンボルツリーとしてはもちろん、雑木らしい魅力も兼ね備えた庭木です。
自由に自然な姿へ成長させられる場所であれば是非おすすめしたい庭木ですので、花も果実も楽しみたい方は是非、ジューンベリーの植樹をご検討されてみては如何でしょうか。
執筆者:新美雅之(新美園HP作成・作庭者)
庭木や庭デザインについて、作庭者の経験を活かして現実的に解説をするコンテンツを目指し、日々執筆しています。