ソヨゴはモチノキ科・モチノキ属の常緑樹で、お庭のあらゆる場所へ植栽する事が出来る庭木です。
最も特徴的なのは秋に色付く赤い実と、特筆すべき生育の緩やかさです。
基本的にはやはりモチノキと共通する部分が多いのですが、良い意味であまり元気が良すぎない姿と雰囲気があり、葉は普段から下を向いて数も少ない為、元気が無いのではないかとご心配されるお客様もいらっしゃいます。
目次
ソヨゴの基本データ
- 科名と属名 モチノキ科・モチノキ属
- 学名 Ilex pedunculosa
- 分類 常緑広葉樹 小高木
- 原産地 日本
- 別名 フクラシバ、ソヨギ、フクラモチ
- 用途 シンボルツリー 目隠し用 添景木 材としては丈夫さが求められるそろばんの珠、工具の柄、おもちゃ等
軽やかな葉が風で揺れた際に擦れ合い、そよそよと音を立てる事がソヨゴの名の由来ではありますが、実際はシャラシャラとした歯切れの良い音を聞かせてくれます。
作庭者から見ると「ソヨゴはこんな庭木」
作庭をしていますとソヨゴが活躍する植栽場面は多く、日向から日陰、狭小部まで、あらゆるところで頼りになる庭木です。
そんなソヨゴですが、作庭者の目線から考えますと以下の様なポイントが挙げられます。
おすすめなポイント
- 特筆すべき成長の緩やかさ
- 低い樹高でも維持していく事が出来る
- 雌株であれば秋に赤い実を鑑賞できる
- 単幹(一本立ち)・株立ち・枝葉密度の違い等、樹形バリエーションが多い
- 葉密度の高い樹形なら目隠しとしても植栽が可能
- ある程度の日陰で生育でき、葉も美しく残る
注意したいポイント
- 大きく育てるには時間が掛かる
- 常緑樹としては高価な樹種になる
- あまりにも直射日光が強い場所だと傷む事がある
- 毛虫の害はほぼ無いが黒点病のリスクがある
- アブラムシ・カイガラムシに注意が必要
それではこれらのポイントを交えながら、庭木としてのソヨゴについて解説をしてまいります。
葉の特徴が異なるソヨゴの「葉性」
庭木におきましてはあらゆる植物で、同じ木でも葉の微妙な違い(種類)が存在します。
庭職の間では「葉性(はしょう)」と呼ばれ、微妙な違いで異なる木のクセを把握しています。
ソヨゴについては大きく分けると3種類の葉性があり、生育面でも違いがあります。
さらに細かく分ける事も出来ますが、この3つの種類のソヨゴを見てみましょう。
クロガネモチに最も近いタイプ
ソヨゴの葉の特徴と言われる両端の波が少ない(ほぼ見られない)タイプで、枝や幹も含めてクロガネモチにかなり近い種類のソヨゴです。
葉の数が最も少ないタイプであり、冬季は先端に近い箇所しか葉が残らない事もあります。
また、新葉の展開前は古い葉をかなり落としますので、枯れてしまったかと心配させる面もありますが、枯死の場合は葉を落とさず枯れてしまうのでご安心下さい。
生育はかなり遅いのが特徴で、秋に色付く実が大きいのもクロガネモチと共通しています。
カイガラムシの被害に遭う確率が高く、植栽直後に生育不良を起こすケースもあります。
しかしこれを乗り越えて根が張り、症状が落ち着いて安定する傾向も見られます。
葉が少なく幹が太い樹形が多い為、垣根の前など和風の庭への植栽事例が多くございます。
葉が小さく波が強いタイプ
こちらのタイプのソヨゴは葉が小さく、両端の波も細かいタイプです。
波以外の特徴として、葉が下へ垂れている様な印象があり、このタイプは和風の庭に良く合います。
このタイプのソヨゴの葉は付け根が赤味掛かっている事が多く、日陰へ植えても葉数の減りが少なく済みます。
生育は緩やかでメンテナンス性にも優れ、葉数も多い事から目隠し用としても植栽は可能ではあります。
しかし部分的な枝枯れを起こす事もあり、弊社では仕入れ後にファームにて様子見期間を設けます。
また、斑点の症状から始まる褐斑病を起こしやすい側面がありますので、お手元には殺菌剤を備えておく事がおすすめです。
葉の波も少なく、青く剛健なタイプ
私も近年ではこちらのソヨゴを植栽する事が多いのですが、葉の波がややおとなしく、青々とした剛健なタイプとなります。
葉は固く丈夫ですが、冬季に古葉が黄色掛かるのが目立ち、葉を減らしやすい傾向があります。
肥料による効果が大きく表れ、成長期に追肥をしておくと冬季に傷みにくくなります。
病気に掛かる確率が低めであり、生育は上の2種に比べると早い傾向にあります。
この為計画的に背丈を伸ばす事が可能なソヨゴとして、生産者の方々にも好まれるタイプです。
目隠しやシンボルツリーなど、用途を選ばず植栽できるおすすめなタイプのソヨゴです。
生育が緩やかでDIYでも剪定維持が可能
ソヨゴの生育はとても緩やかで、特に株立ち物の場合はより顕著です。
一本幹で構成される単幹樹形の生育は若干早めですが、枝分かれが細かい為、仕上がりが自然に見える剪定を行う事が出来ます。
上の写真の様に赤い実が美しいですが、雌雄異株でありますので、雌木でなければ実を付ける事はありません。
雌雄によって花の付き方や生育具合が異なり、雄木の方はやや硬い印象枝振りで生育し、山の雑木感を演出する事が出来ます。
剪定維持の実例:植栽から5年~経過のソヨゴ
こちらは植栽から5年が経過したソヨゴです。
5年目に私が枝整理を行って整えましたが、それまではお客様がご自身にてカットを行っており、樹形維持が出来ておりました。
年数を経てもご自身によるカットのみで越境を防ぎつつ、樹形を崩さない庭木は貴重ですので、生育面が心配される場所へは特におすすめな庭木と言えます。
ソヨゴの樹形タイプ:株立ちと単幹
あらゆる庭木において複数本の幹を持つ「株立ち」と1本幹の「単幹」がありますが、ソヨゴについては両方共にそれぞれ魅力があります。
尚、ソヨゴの様に積極的に単幹物も取り入れる機会のある庭木としては、ヒメシャラ・イロハモミジ・ホンコンエンシス等が挙げられます。
それではソヨゴにおける株立ちと単幹の樹形を見比べてみましょう。
株立ち:存在感のある樹形で濃いグリーンを添える
こちらは株立ち樹形のソヨゴですが、根元は元々1本だった幹が分かれて3本立になっているのがお解りいただけるかと思います。
これはいわゆる「本株物」であり、当然3本が均等に季節ごとの生育を見せます。
人為的に寄せ付けをした株立ち物は多くの種類の庭木でも存在しますが、特にソヨゴはどれか1本の幹が枯れてしまうケースや、先述の葉性の違うソヨゴがセットになってしまっていたり、時には予期せぬ雌雄株のセットだったりする事があり、新芽のタイミングや実の形も異なってしまう事が稀に見られます。
株立ち樹形のメリットを挙げるとすれば、何よりも存在感と自然味ではないでしょうか。
シンボルツリーとしてはもちろん、維持のしやすい優れた庭木としてお住まいを引き立ててくれる事でしょう。
単幹:剛健さと葉の密度が魅力
単幹樹形のソヨゴは、高さ1.5~3m超まで幅広く流通しており、品質的にも安定しているのが特徴です。
株立ち樹形の方は仕入れの際に先述の様な品質上チェックが重要となりますが、単幹樹形のソヨゴは剛健さゆえにしかりとした健康な木が多いです。
しっかりとした幹から枝葉が360度展開している事が多く、これはソヨゴが日向日陰に関わらず葉を維持できる事の目安ともなります。
普通の常緑樹でありますと幹付近の密生した部分は葉を付けませんが、ソヨゴはこの様に日当たりの弱い密生部でも葉を維持できる事から、緑濃い景観を見せてくれます。
株立ち樹形よりも生育力はありますものの、庭木全体から見れば極めておとなしく、剪定による維持が容易だといえます。
このメンテナンス性と密生度から、隣地や道路境界付近での目隠し植栽として扱う事にも向いています。
野趣あるソヨゴの小花
ソヨゴは先述の通り生育面は緩やかで申し分なく、毛虫もほぼ付かない植木です。
取り分け大きな特徴を持たない野趣ある木とも言えますが、白い小花と色付く実が鑑賞ポイントとなります。
ソヨゴの花・雌雄の違い
5~6月に開花するソヨゴの花は非常に小さく目立ち難い為、花を鑑賞する目的で植える事は少ないです。
しかしながら華美でない小花は里山の風情を感じられ、庭の中の1キャストとして欠かせない魅力があります。
実の成る雌木と実の付かない雄木では花の咲き方に違いがあります。
雌木の花
秋に実を楽しめる雌木の花は雄木よりも開花数が少なく、遠くから眺めると気付きにくい程ひっそりと咲きます。
果柄の先に1~3個程度の花を付けており、雄木に比べて明らかに花数が少ないのが特徴です。
雄木の花
雄木は雌木に比べて花数が明らかに多く、中心から分かれた先で更に分岐をして花数が多くなっています。
離れて鑑賞すると雌木よりも花が目立ちますので、野趣ある小花を取り入れたい場合は雄木を植栽するという選択肢もあります。
実の成る雌木の流通が一般的ですが、雄木は骨格が整った樹形が多く、しっかりとした常緑樹を庭へ取り入れたい場合にお勧めです。
ソヨゴの雌株が付ける赤い実
ソヨゴの人気ポイントとしては秋に付けるサクランボ状の実が挙げられます。
実成りは良く、葉の緑色と実の赤色が美しいコントラストを生み出します。
植栽後の実の数は変化していきますが、環境や周囲にある木によって変わってくるとも言われます。一般的には実成りの為に雄木も庭内に植えるのが望ましいとされています。
多くの実成りで風情を見せるソヨゴ
野趣あるソヨゴを寄せ植えした例ですが、こちらでは毎年秋になりますと多くの実成りを見せ、秋らしい風情を感じさせてくれます。ほぼ放任状態の姿はとても自然味があり、山歩きをしている様な雰囲気でもあります。
ソヨゴをシンボルツリーにしよう
ソヨゴは飾り気のない庭木ではありますが、近年のナチュラル志向に伴って人気を得ています。
和風洋風にとらわれない自然な姿がソヨゴの魅力ですので、あらゆるお住まいのシンボルツリーとしておすすめが出来ます。
洋風住宅にもマッチする、ソヨゴのシンボルツリー
洋風の意匠が美しいお住まいですが、玄関先のシンボルツリーとしてソヨゴをセレクト致しました。
洋風の雰囲気を馴染ませる為、一本幹で樹形が整ったソヨゴを吟味して植栽しております。
一本幹のソヨゴは端正ではっきりとしたシルエットを放ちますので、意外にも重厚な存在感も演出してくれます。
この濃いグリーンは背景となる洋風住宅とのマッチングが良く、生育の緩やかな洋風シンボルツリーとして、ソヨゴはおすすめの庭木と言えるでしょう。
急な成長によって歩行が阻害される事も無く、しっとりとお住まいを彩ってくれます。
洋風低木の色合いを引き出すシンボルツリーとして
こちらもシンボルツリーとして単幹樹形のソヨゴを植栽しておりますが、周囲の洋風低木の色彩とのコントラストを楽しめる様にしています。
ソヨゴはまさしく濃緑色を持つ庭木の代表であり、この色が近接するとカラーリーフ植物の色合いが引き立って見えるという効果を得られます。
ソヨゴと同じ視界に入るエリアにコルジリネ(レッド)、ヒメトベラ(イエロー)、ローズマリー(ブルー)といった植栽をレイアウトしており、これらの色合いが一層美しく引き立っています。
飾り気の無いソヨゴですが、シンボルツリーとしてチョイスすれば意外な効果も得る事が出来るのです。
シンボルツリーのソヨゴをナチュラルな素材に合わせる
こちらの株立ちソヨゴは花壇の中で小さな石や植物と組み合わせており、低木シンボルツリーとして玄関先を彩ります。
ソヨゴは強い主張をしない庭木ですので、ナチュラルガーデンの様な自然な風景にもよく馴染み、自然石や下草とのマッチングに優れています。
半日陰という立地ですと植栽デザインもナチュラル志向になる事が多く、併せてソヨゴの出番も多くなるものです。
樹高も抑えつつ自然な雰囲気のシンボルツリーがご希望でしたら、この様な株立ちのソヨゴは大変におすすめです。
玄関先のしっかりとしたシンボルツリーとして
玄関先、アプローチ付近へのシンボルツリーとして植栽したこちらのソヨゴは単幹樹形を選んでいます。
しっかりとしたシルエットを持つソヨゴでありますので、背後の石材調デザインの外壁にも負けない存在感を持ち、景観的なバランスを保っています。
生育の緩やかなソヨゴであれば歩行場所の近くにも安心して植栽をする事が出来ますので、玄関先のちょっとしたスペースでもご検討いただけるかと思います。
ソヨゴなら狭小部や半日陰のシンボルツリーにも
ソヨゴは生育の緩やかさはもちろんの事、耐陰性も兼ね備えた非常に優れた庭木です。
近年の住宅事情ではシンボルツリーを植える場所も狭かったりする事が多く、その場合は大抵日陰の環境となっているものです。
ソヨゴは優れた耐陰性を兼ね備えており、この様な状況下でも極端に葉が無くなってしまう事はなく、ある程度の陽さえ入れば濃緑色の葉を付けていてくれます。
ソヨゴが狭小部のシンボルツリーに向いているポイントとしては、やはり生育の緩やかさであり、強い徒長枝が急に発生して外壁を傷つけるという様な事がありません。
また、ソヨゴはモチの仲間なので萌芽力もあり、日陰で剪定を行っても新たに芽吹く力を持っています。
日陰に添えるシンボルツリーを選ぶのであれば、ソヨゴはおすすめの庭木となります。
尚、ソヨゴに限らずシンボルツリーをお選びされている方は、シンボルツリーの選び方とおすすめ樹種についてのページもご参考いただければと思います。
ソヨゴを目隠しに活用してみよう
枝葉の少ない樹形が多いソヨゴですが、枝葉の密度を高めた重厚な形の木も存在します。
半日陰や開けた北側であれば美しい濃緑葉を維持しやすく、やや暗い場所への目隠しとして植栽する事が出来ます。
写真の様に窓に近い部分でも極端な枝枯れは起こし難く、身近に緑を感じたいシチュエーションへもお勧めです。
他の常緑樹と組み合わせて目隠しに
こちらは窓の目隠し用としてソヨゴを植栽しておりますが、他種類でありますホンコンエンシスとの組み合わせを行っております。
同種のソヨゴを列植する手法もございますが、ソヨゴの濃緑色は他の木とのコントラストも得やすく、双方の庭木の色が引き立て合う景観を作り出せます。
少し日陰気味な玄関の目隠しにも
玄関は北側や東側等、南ではない場所に位置している事も多い為、意外と日陰気味であるケースがあります。
そんな場所でありましてもソヨゴであれば耐陰性がありますので、若干陽射しの弱い場所でも目隠し効果を維持していく事が可能と言えます。
ソヨゴは特に陽当たりによる表裏の葉数ギャップが少なく済む傾向があり、裏面から見ても葉のある樹姿を楽しめる事が多いです。
加えて玄関周りは頻繁に出入りをする場所でありますので、ソヨゴの様に成長が極めて緩やかな庭木は大変おすすめと言えます。
縦長窓をおしゃれに目隠しする
細くしっかりとしたシルエットを持つソヨゴであれば、近年良く採用される縦長窓を美しく見え隠れさせる効果も期待できます。
こちらのソヨゴの奥にはおしゃれな縦長窓が備えられており、しっかりとした樹形によって窓を程良く見え隠れさせています。
シンボルツリーの役目を担うのは手前のアオダモなのですが、セットバックされた位置にソヨゴをレイアウトする事で、緑濃い景観に致しました。
ソヨゴと落葉樹のアオダモを組み合わせる事で、ソヨゴが単なる目隠し用の庭木ではなく、植栽背景としての美しさを引き出す事が可能となります。
緑深い森の様な目隠し効果を
ソヨゴは樹形によってそれぞれ異なった印象を感じられる庭木です。
軽やかな印象の木から、枝葉の多い株立ち樹形の木まで、用途や目的に合わせて吟味できるのがソヨゴの強みと言えます。
こちらはウッドデッキ沿いへ植栽したソヨゴで、樹高3m、枝葉がとても充実した樹形となります。
ウッドデッキに出る為の窓はとても大きく、お向かい様からの目隠し対策としてソヨゴを植栽した実例となります。
こちらのソヨゴはとにかく枝葉が多く、立派な幹と株立ち樹形によって森の様な雰囲気も演出してくれます。
しかし本数を植え過ぎますと暗くなってしまいますので、こちらでは左角にイロハモミジを植栽し、明るさの確保とナチュラル感を加える構成としております。
こちらも同じく株立ち樹形のソヨゴを並べて植栽しており、背後の窓を程良く目隠ししていますが、こちらのソヨゴは枝葉が少なく軽やかな印象であり、完全な目隠しというよりも程良く見えにくくするといった程度に留めています。
例えば窓の前に枝葉の多いソヨゴを植えれば強い目隠し効果を発揮しますが、その代わりに窓からの景色が枝葉で塞がれ、室内も暗くなってしまう事になります。
軽やかなソヨゴであれば窓越しに心地良い緑を感じられる目隠しとなりますので、この様なシチュエーションでは大変おすすめです。
ソヨゴにおすすめな植栽シチュエーション
シンボルツリーや目隠しとしての活用方法をご紹介してまいりましたが、これらに限らずソヨゴはその特性を活かして様々な場面や用途で植栽をする事が出来ます。
お庭にさり気ないグリーンを添える
ソヨゴの様に生育が緩やかな庭木であれば、アプローチや水周り等、傍を歩く場所でも植栽する事が出来ますので、この点が植栽の幅を広げています。
特に美しく育つ半日陰であれば目隠しの植栽にも使用でき、この場合生育の緩やかさを活かして建物に近い場所へも植える事が可能となります。
単幹と株立ちをセットで植栽する
手前に単幹のスリムなソヨゴを、奥へ株立ち樹形のソヨゴを植栽した例です。
スリムで透かし感のあるソヨゴは圧迫感も無く、奥へ続くお庭を垣間見る事が出来ます。
反対に株立ちで葉数も多いタイプのソヨゴは目隠しになる程に重厚であり、こちらでは庭の最奥を引き締めています。
生育の緩やかさを利用し、ポストに寄せる植栽も可能
生育が緩やかなソヨゴであれば、ポスト脇等への植栽を行っても安心です。
更に枝葉の少ない樹形を選べば構造物への押し付け感も無く、こちらの場合ではポストの赤いカラーとソヨゴのグリーンが美しいコントラストを生み出してくれています。
シンプルな単幹樹形でシェードガーデンに溶け込ませる
1本幹、いわゆる単幹樹形のソヨゴは、葉数の少ない木であれば背後を透かした美しい景観づくりに取り入れる事が出来ます。
この様なソヨゴはややクラシックな洋風感を感じられる為、和洋を問わず庭づくりで活かしたいものです。
ソヨゴの特性であります耐陰性はこちらの様なシェードガーデン(日陰の庭)で大いに活かす事ができ、暗くなりがちな場所へ美しい緑を添える事が可能になります。
小さな落葉低木のスクリーンとして
こちらの植栽レイアウトではソヨゴと小さな落葉低木を合わせています。
落葉樹であるアオダモとアロニアは、写真の様に落葉期の存在感が薄れてしまいます。
そこで背後に通年緑濃いソヨゴを植栽する事で冬季の寂しさを軽減し、同時に野趣ある風景に見せてくれる効果も得られます。
また、ソヨゴはその緩やかな生育から他種との寄せ植えにも向いており、後々に枝同士が混んでしまう事も少ないというメリットがあります。
様々な緑で風景を充実させたい場合に有効な植栽レイアウトと言えるでしょう。
和風の庭に馴染ませるソヨゴ
ソヨゴは華美な印象も無く、落ち着いた自然な常緑樹という顔も持っている為、静かな和庭にも良く似合います。
ソヨゴは葉が下向きで遠慮がちな印象である事から風情も感じやすく、秋の実成りの際は季節感のある和庭を演出してくれます。
枝葉が少ない樹形で仕立てる事も多い為、和庭特有の空間美も感じられる他、背景の垣根の美しさを引き立てる景観効果も発揮してくれます。
成長も緩やかである事からこの空間美がすぐに崩れてしまう事は少なく、年に一度程度の剪定によって上品な姿を維持する事が出来ます。
ソヨゴの育て方
適した環境
ソヨゴは日向向きの木と言われますが、日陰地においても美しい葉を維持できる、いわゆる耐陰性も持っています。
「日陰でも生育可」という庭木は数多くありますが、日陰で葉を多く保てる木は少なく、ツバキ類と共に日陰植栽において重宝します。
この様にソヨゴの適応環境は幅広く、日向から明るい日陰まで幅広い場所選びが出来る庭木なのです。
しかし、夏に高温乾燥が激しくなる場所や、西日が強く当たる場所は避ける事が望ましく、葉が黄色っぽく退色する傾向が表れます。
逆に明るい日陰へ植えたソヨゴは葉の発色も良くなる傾向があり、陽当たりが良すぎると黄緑色の様な葉に変わります。
適した土
モチノキの仲間なので土質についてはそれほど気を遣わずに済む強さがありますが、水捌けが極端に悪いと枯れる可能性が高いです。
水捌けの良い土壌を作るつもりで、腐葉土や赤玉土を庭土に混合すると良いでしょう。
植え付け
植え付け時期は寒さを避け、4月~5月に行うのが安全ですが、新しく出た新芽がやや固まるのを待つのが最良です。
また、夏場を過ぎた8月下旬~9月にも植え付けは出来ますが、近年は残暑も厳しいので気温を観察して計画しましょう。
植え付ける穴を掘ったら、根鉢を入れる前に、元肥として有機質肥料を穴の底へ埋めておきましょう。
ソヨゴは根が張るのに時間を要する木です。
その為しっかりと自立するまでは強風で傾く事も多い為、簡易的でも風止め処置は施す事がおすすめです。
水やり
先述の様にソヨゴは根の成長にも時間が掛かります。
つまりそれまでは乾燥によって根鉢と土が剥離する恐れもあります。
ですので根と土を密着させる目的も兼ねて、乾燥時はたっぷりと水やりを行う様にしましょう。
根張りが済めばモチノキと同様に剛健な育ちを見せますので、水やりの必要は無くなります。
肥料
常緑樹であるソヨゴは肥料の吸収も良く、効果も目に見えて表れます。
寒肥として2月に有機質肥料(油かす等)を根の周囲へ浅く埋めます。
成長期の追肥として5月~6月に有機化成肥料を株元へ撒いておくと、冬季の寒さによる変化(黄ばみや落葉)が少なくなる効果が期待できます。
ソヨゴの剪定方法と実例
ソヨゴは株立ちの場合は剪定についてもローメンテナンスな植木と言えます。
小枝から伸びた枝は年間20~30センチ程の生育に留まる事も多く、これを丁寧に枝分かれ部分まで切り戻す程度に留めます。
もちろん他の植木と同様に、突出して伸びる枝は発生しますが1年で大きく景観を乱す様な事はなく、年に一度取り除く程度で十分に維持する事が出来ます。
単幹タイプのソヨゴの剪定事例
単幹物のソヨゴは幹が太い分いくらか生育は早いのですが、柔らかな小枝が多く存在する為、伸びた枝を分岐点まで切り戻す程度で維持が可能です。ほとんどが分岐点で剪定出来るソヨゴは、カットされた場所が一見して分かり難く、切り痕が目立たない極めて自然な仕上がりにする事が出来ます。
おすすめの剪定時期
尚、剪定において適期とされるのは芽吹き期の3~5月と新梢がしっかりとした後の7~8月とされています。
やむを得ず冬季に剪定を行う場合は強い切込みはせず、ソヨゴが寒がらない様に留意する事が必要です。
ソヨゴで注意したい病気と害虫
ソヨゴはとりわけ毛虫の被害に遭わない庭木である事から、その他の症状・虫害についてはあまり触れられる事がありません。
しかしソヨゴで注意したい病気や虫は幾つかありますのでご参考下さい。
新芽に寄生するアブラムシ
ソヨゴの新芽は明るい黄緑色が美しい柔らかな葉でありますが、この新芽が美しい4~5月頃にアブラムシに寄生される事があります。
アブラムシの被害に遭うと新芽が開いた際に綺麗な葉にならずに縮れてしまう事が多く、アブラムシの落とす分泌物によって葉が真っ黒に変色するすす病も誘発されます。
アブラムシが寄生したソヨゴは翌年も同じ被害に遭う傾向がある為、粒状オルトランを足下へ撒いておく事が効果的です。
弱ったソヨゴに寄生するカイガラムシ
ソヨゴは環境が合わずになかなか元気に育たない時、カイガラムシの被害を大きく受けてしまう事があります。
カイガラムシが枝中に寄生すると完全除去は非常に困難であり、対処法としてはカイガラムシへのカルホス乳剤の定期散布、冬期はマシン油乳剤などの殺菌剤散布を行うのが一般的です。
ソヨゴの場合はカイガラムシの寄生に遭うと枝が目に見えて弱り、木そのものの勢いがみるみる内に衰え、少しずつ枝枯れが進行する傾向が強いです。
上記の薬剤散布を行うのと並行して、手作業でカイガラムシを除去するのが最も効果的ではあります。
斑点~落葉を起こす黒点病
カビ菌が原因とされ黒点病はソヨゴの病気の中でも非常にやっかいであり、菌が原因である事から他の枝や他のソヨゴにも病気がうつってしまう事もあります。
症状としては葉に黒い点がいくつも生じ、葉が黄色く変色して、やがて落葉してしまいます。
対処としては日頃(特に梅雨時期)から病気をチェックし、発生箇所がすぐに見付けられた場合はその部分を切り取って処分してしまう、これが最良と言えます。
全体的に症状が出てしまった場合は殺菌剤であるサプロール乳剤を定期的に散布し、徐々に回復を待つ事となります。
見た目的にも生育的にもダメージの大きい病気ですので、先述の様に日頃からの観察が大切と言えます。
まとめ
ソヨゴについて解説をしてまいりましたが、如何でしたでしょうか。
ソヨゴはありとあらゆるシチュエーションで植栽する事が可能で、雰囲気や庭のイメージに合った樹形を探すのも面白いものです。
シンボルツリーとしてはもちろん、目隠しからナチュラルガーデンの脇役としても魅力的なソヨゴですので、ぜひお庭のどこかへ取り入れてみては如何でしょうか。
執筆者:新美雅之(新美園HP作成・作庭者)
庭木や庭デザインについて、作庭者の経験を活かして現実的に解説をするコンテンツを目指し、日々執筆しています。