ヒメシャリンバイはバラ科・シャリンバイ属の常緑樹で、庭づくりの際は低木として植栽されます。
古くからお庭や街路樹で植栽をされておりますシャリンバイ(車輪梅)の小葉性を指しており、枝分かれや花はよく似ていますが、葉の大きさや枝のサイズは大きく異なります。
また、他の種類の常緑樹と比べても葉の小ささは群を抜きます。
ヒメシャリンバイの基本データ
- 科名・属名 バラ科・シャリンバイ属
- 学名 Rhaphiolepis umbellata
- 分類 常緑低木
- 原産地 日本
- 樹高 2m~3m
- 開花期 4月頃
- 主な植栽用途 低木シンボルツリー 生垣 目隠し
シャリンバイの名の由来は、一か所から複数に枝分かれする形は車輪の軸に似ている事から「車輪(シャリン)」、花は梅に似ている事から「梅(バイ)」と例えられ、合わせて「車輪梅(シャリンバイ)」という名前が付きました。
ヒメシャリンバイはこのシャリンバイの小葉性、いわゆる葉が小さくなった変異種に当たります。
幹の皮や木材となる部分にタンニンが豊富に含まれており、植物由来の染料として利用されています。
ヒメシャリンバイの特徴
小さく光沢のある葉
写真の様にヒメシャリンバイの葉はとても小さく、濃緑色が美しく光沢もあります。
葉の数も多く、小さなサイズでもしっかりとした存在感を感じます。
赤い新芽の美しさ
芽吹きの際は新芽が赤味を帯びており、グリーンの部分とのコントラストが美しく映えます。
秋は一部の古い葉が赤く染まる為、紅葉の様な感覚で楽しむ事が出来ます。
潮風にも強い剛健さ
シャリンバイの仲間は総じて潮風に強い特性を持っており、海に近い場所の街路樹や低木寄せ植えなどに使用されています。
常に潮を含む風に晒されたり排気ガスを浴びたりすれば、他の植木なら生育が難しいものです。
ヒメシャリンバイはこの様な悪条件にも耐えつつ、乾燥や砂質土にもある程度耐える力があります。
小さな葉が小さな庭にマッチ
ヒメシャリンバイはその光沢のある濃緑色と枝の繊細さにより、小さな場所や狭い庭への植栽に大変向いております。
葉が小さいとお庭のスケールも小さく見えなくなる為、小さな庭の魅力を引き出す際に活躍します。
ヒメシャリンバイの花
3~4月に付けるヒメシャリンバイの花は葉と比例してとても小さく可憐で、ピンク~白の色合いをしております。
一箇所に小さな花を多く付ける姿は見事で、花の観賞用としても優れた植木です。
花付きは非常に良く、木全体に花を付ける姿はとても美しいものです。
花の後は大量の小さな花弁が落ちますので、この掃除に少々手が掛かります。
お庭での生育傾向・適応環境
突出した生育の緩やかさ
ヒメシャリンバイの生育はとにかく緩やかであり、不意に発生する徒長枝を除けば1年で伸びる長さが10~20センチほどで、非常にローメンテナンスな庭木です。
この特性を活かして建物脇や通路などへも植栽をする事ができ、お庭作りの幅がとても広がります。
生育が緩やかですと植木同士の接触も時間を要する為、この様にヒメシャリンバイ同士を近くに植栽させる事も出来ます。
一年ですぐさま接触し合う事が無いため、重厚な雰囲気を作り出す事が出来ます。
日向から日陰まで幅広い環境適応性
ヒメシャリンバイは強い直射日光にもダメージを受けず、乾燥状態に対しても他の庭木と比べて強いです。
しかも逆に日陰へ植栽をしても生育が可能で、日陰独特のツヤのある葉色へ変わっていきます。
但し日陰のシャリンバイは葉が若干大きくなったり、葉の数を減らす事もあります。
特に暗い日陰などでは足下付近の枝や壁際の枝が無くなってきますので、予め剪定で取り除いておくのが良いでしょう。
お勧めの植栽方法
ヒメシャリンバイはこんもりと仕立てても上の様に爽やかに透かしても違和感が無く、洋風の庭にもよく似合います。
洋風の庭と言えばオリーブやシマトネリコ、ギンバイカなどが挙げられますが、生育の緩やかな洋風樹木は中々少ないゆえ、洋風ガーデンはヒメシャリンバイが活躍する場でもあります。
濃緑色を保っている為、周囲の洋風植栽の色合いが引き立てられ、カラーリーフの植木が美しく映えます。
低木シンボルツリーとして
低い樹高を楽に維持出来る庭木は多くありません。
ヒメシャリンバイはその特性を活かした低木シンボルツリーとして活躍します。
樹高が低くても濃緑色が重厚感を出し、葉数も多いので存在感も申し分ありません。
写真の様な道路沿いを始め、ポストやインターホンの近くへ植栽しても安心な庭木と言えるでしょう。
ナチュラルなお住まいにもマッチ
ヒメシャリンバイは飾り気のない自然体、葉が小さい繊細な姿から、ナチュラルなお住まいに良く似合います。
葉が大き過ぎますと植木の存在感が誇張して見える事もあるのですが、葉が小さいヒメシャリンバイであればこちらの様に外壁に接近させる植栽レイアウトも可能です。
自然味のある常緑樹としてはカシ類やソヨゴが存在しますが、花も楽しめるヒメシャリンバイは重宝する庭木と言えます。
生垣調の植栽で目隠し対策にも
ヒメシャリンバイは小振りなサイズの木を生垣風に列植えする方法も有効です。
生垣はすぐさま枝が伸び出し、年に1~2回の刈り込みが必須となりますが、生育の緩やかなヒメシャリンバイでしたらメンテナンスに追われる事はありません。
害虫による被害も少なく強い日差しにも耐え、密度の濃い枝葉がしっかりとした生垣へと育ってくれます。
ヒメシャリンバイの育て方
適した土質
海岸近くで育つ性質から、砂質土に近い土壌が良いでしょう。
ですが水捌けの良い土にしてあげれば問題なく成長します。
用土としては赤玉土や腐葉土、堆肥類を混ぜ込んだものであれば大丈夫です。
植え付け
植え付けは春植えが適しており、やや浅めに植えるのが良いでしょう。
または暑い時期をさけて秋(9月~10月)に植え付ける事も可能です。
水やり
乾燥に強く降雨だけでも育ちますが、新しく植えたヒメシャリンバイであれば、寝付くまでは乾燥を放置しない様に水やりを行いましょう。
肥料
常緑樹ですので肥料効果は大きいです。
寒肥として化成肥料を株元へ撒いておく程度で、成長期を迎えた後に元気に育ちます。
ヒメシャリンバイの剪定方法
ヒメシャリンバイは花芽の分化が8月~に行われる為、剪定適期としては花後すぐに行うのが良いでしょう。
先述の通りヒメシャリンバイは生育が非常に緩やかであります為、剪定については気になる枝をカットする程度で済みます。
また、放任しても全体が樹形を整えながら膨らむ様な成長をしますので、木が荒れてしまう様な事もありません。
枝分かれの本数を減らしたりする事で確実な透かし剪定にもなりますし、重厚感を出すのであれば刈り込みによる仕立ても行う事も出来ます。
病虫害についても被害を受け難いですが、年によってコガネムシの食害に遭う事があり、これはマキやツバキなど、葉に厚みがあって固い植木に起こる事が多いです。
一旦食べ始められるとあっという間に葉が少なくなるので、日頃の観察はしておきましょう。
執筆者:新美雅之(新美園HP作成・作庭者)
庭木や庭デザインについて、作庭者の経験を活かして現実的に解説をするコンテンツを目指し、日々執筆しています。