フェイジョアはフトモモ科・アッカ属に分類される常緑低木で、シンボルツリーとしてはもちろん、洋風ガーデンへの植栽や目隠し用の庭木としても使われます。
幅の広ささえ許容できれば生垣風の植栽にも使う事が出来ますが、フェイジョアは薄く仕立てる事が難しく圧迫感が出やすいので注意が必要です。
フェイジョアの魅力は多く、肉厚で美しい葉や南国を思わせる花や樹形に加え、花や果実も食用とする事が出来ます。
フェイジョアは元々果樹として有名ですが、私の様な庭職の間では「庭木」としての存在の方が親しみがあります。
目次
フェイジョアの基本データ
- 科名と属名 フトモモ科・アッカ属
- 学名 Acca sellowiana
- 分類 常緑広葉樹 小高木
- 樹高 2m~3m
- 原産地 南米:ブラジル南部 ウルグアイ パラグアイ
- 別名 アナナスガヤバ パイナップルグアバ
- 開花期 5月中旬~6月
- 果実の収穫期 品種により10月下旬~12月中旬
昭和初期から既に日本国内に持ち込まれていたものの、当時は南国風の観葉植物として取り扱われていました。
その後、`80年代になってようやく果樹として再度持ち込まれる様になり、タイミングとしてはキウイフルーツがやってきたのと同時期となります。
作庭者から見ると「フェイジョアはこんな庭木」
庭木として再び人気が出ているフェイジョアですが、作庭者の目線から考えますと以下の様なポイントが挙げられます。
おすすめなポイント
- 葉・花・実を庭で楽しめる
- 小振りなシンボルツリーとして植栽できる
- 剪定維持がしやすい
- 病気や害虫の心配が少ない
注意したいポイント
- 雪によって枝が折れやすい
- 強風に弱い
- 陽当たりを好む割に乾燥を嫌う
- 自家不結実性である事を認識する
それではこれらのポイントを交えながら、庭木としてのフェイジョアについて解説をしてまいります。
フェイジョアの特徴
フェイジョアはしっかりとした葉が充実した常緑樹でありながら、花や果実まで楽しめる優れた庭木です。
そんな魅力的なフェイジョアについて、まずは葉や幹の特徴から見てまいりましょう。
光沢のある厚い葉
フェイジョアの葉は肉厚で硬く、表面が光沢のある濃緑色、対して裏面は白味を帯びたカラーになっており、表裏異色の葉はオリーブの雰囲気と似ております。
ですがオリーブよりも葉が大きく目立つ印象であり、重厚感のある樹形に仕上げる事で存在感が増し、洋風ガーデンにとても良く似合います。
フェイジョアの濃緑葉は特に白壁に映え、洋風の木であるオリーブやシマトネリコと一緒にレイアウトをしますと、よりお庭がおしゃれに見えます。
フェイジョアは葉の大きさと木の重厚感から樹高が低くても存在感があり、お庭のワンポイントとしてもおすすめな庭木です。
赤褐色の美しい幹
フェイジョアの特徴としては、美しい樹皮も挙げられます。
自らの葉で木陰を作り、幹周りに強い直射日光が当たらずに健全に育ったフェイジョアは、赤褐色の美しい樹皮を見せます。
枝が悠々と伸びて懐の風通しが良い樹形を保つと、樹皮が更新されて美しい発色を見せます。
緑の葉とのコントラストが映え、庭木としてのフェイジョアで最も美しいポイントでもあります。
フェイジョアの花
6月に開花するフェイジョアの花は個性的で、南国調の雰囲気を醸し出します。
植栽環境や剪定した時期によって花数は異なってきますが、日当たりの良い場所で放任された木は花を良く咲かせます。
花の咲く前、フェイジョアの蕾はとても可愛らしく、上へ向いた蕾が並んで少しずつ膨らんでいきます。
開く前の蕾は完全な球体の様にも見え、遠目から見てもかなり存在感があります。
開花したフェイジョアの花です。
花弁は外側の白と内側の赤に分かれており、さらに雄しべの鮮やかな赤が引き立っています。
一輪でも華やかな雰囲気を感じられる花ですが、この花をたくさん付けた姿はまさしく南国調と言えます。
「食べられる花」として
フェイジョアの花は食用とする事が出来る、エディブルフラワーとしても知られています。
食用が出来るのは花びらだけですが、厚みのある花弁は糖分が含まれており、口に含むとシャリシャリとした食感で、やや粉っぽさを感じますがほのかな甘みを持ちます。
この花弁は色合いが美しいのでデザートやサラダに振りかけるとおしゃれに様変わりしますので、フェイジョアの花は目も楽しませてくれる食材と言えます。
フェイジョアの果実:収穫時期や食べ方
花の後に結実する実は、フェイジョア最大の魅力です。
フェイジョアの果実はオーストラリアやニュージーランドで特に好まれており、栽培・生産が盛んに行われています。
自家不結実性とは
フェイジョアには自家不結実性という性質があり、これは同じ品種を植えているだけでは実が成らない事を意味しますので、実を楽しみたい場合はまずこれを知っておく必要があります。
しかしフェイショアの中でもクーリッジという品種だけは自家結実性が強く、単一品種植えでも実は成ります。
しかし実が小さく形や大きさが不揃いになりやすい傾向があります。
フェイジョアの果実の収穫が目的の場合は、異なる品種を同時に育て、交配授粉によって結実させる事が基本となります。
花後に付く実
花の終った箇所に実が付いた様子です。
夏には実の存在がはっきりと解る様になり、このままゆっくりと熟していく事となります。
果実の収穫時期
収穫期は早生主を含めた品種によって時期が異なり、10月下旬~12月中旬となります。
実は楕円形で品種によって大きさに違いがあり、収穫期になっても色付いたりはせずにグリーンのままです。
他の果実であれば熟し具合が実の色で判断できますが、フェイジョアの果実は見た目で成熟具合を判断しにくいです。
フェイジョアの果実の収穫タイミングついては、自然落下した実をすぐに収穫するのがベストです。
しかし自然落下した際に果実が直接土面へ触れてしまいますとカビや傷みの原因となりますので、果実の自然落下に備えて予め地面をネットやシートで保護しておくと良いでしょう。
別名パイナップルグアバとも呼ばれる果実は追熟をすると芳香があり、果実そのものが香る木としては他にカリンが挙げられます。
実はさほど大きくはなく可食部分も少ないのですが、庭で栽培できる果樹としては大変魅力的です。
品種により異なる、果実の形や大きさ
フェイジョアは品種によって果実の形が若干異なり、果実の大きさが揃いやすいかどうかも変わります。
例えば同じフェイジョアの木に付いた果実であっても、写真の様に大きさが異なる事があります。
反対に小粒の果実が同じ大きさで揃っている品種も見られます。
フェイジョアの食べ方と栄養素
フェイジョアの果実にはビタミンやポリフェノール、カルシウム、食物繊維が含まれており、低カロリーであるという嬉しい一面もあります。
含まれるビタミン類についてはビタミンCが特に多く、E、B1、B2が続きます。
ビタミンCや抗酸化作用のある物質を含んでいる事から、健康面にも嬉しい果実と言えるでしょう。
生食での楽しみ方
フェイジョアの果実を生食する場合は、食べる前に追熟させる事が望ましくあります。
追熟させる場所の温度は18~20℃前後で、期間の目安としては、
- 完熟して木から自然落下したものは1週間弱
- 収穫期に木から取ったものは2週間前後
と言われています。
追熟された実は香りが強く柔らかくなり、実際の糖度も上がって甘みが増します。
食べ方としては実を半分に切り、スプーンですくうか、実離れしやすくなった実の場合は普通に皮を剥いて食します。
実の中心部は甘いゼリー状であるに対して、外側はシャリシャリとした食感となっています。
生食の場合はパイナップル香と洋ナシの食感があり、これが日本人好みだとも言われています。
この異なる食感は食べた時に面白みもあり、フェイジョアの実は果物として高い評価を得ています。
ジャムへの加工方法
たくさんの実を付けるフェイジョアですので、ジャムに加工して保存するのも良いです。
- フェイジョアの実(雄しべの跡や変色部分は取り除く)
- レモン汁
- 砂糖(果実量の半分の重さ)
これらを中火で温めながらヘラでよく混ぜ合わせ、ミキサーで練り上げれば完成となります。
フェイジョアの実が成らない、よくある原因
フェイジョアの実が成らない、そんな時は自家不結実性以外の要因として以下が考えられます。
剪定で花芽を切ってしまう
フェイジョアは暖地植物らしく花芽を先端に付ける庭木です。
その為、3月頃に剪定を行って全体カットを施した際、この花芽部分を切り落としてしまっている事があります。
サツキやツツジにも同様の事がありますので、冬場の剪定を余儀なくされる場合は注意ポイントと言えます。
剪定は枝の間引き程度に留めるか、花後であれば見定めながら枝抜きを行う事が出来ます。
虫が少なく受粉されない
住宅密集地などは受粉に必要な昆虫類が少ない為、実が少なかったり成らなかったりする事があります。
フェイジョアの開花が6月の梅雨時期である事から、昆虫の活動が制限されてしまう事も一要因です。
この場合は正しい人工授粉を行うのが効果的です。
そもそも陽当たりが悪い
下記でも解説を致しますが、フェイジョアはもともと陽樹であり、生育・活動には日光が不可欠な庭木です。
陽当たりが多少悪くても生育する強さはありますが、開花~結実を目指すのは難しいかと思われます。
実成りを楽しむ場合は、植栽時から日当たりの良い場所へ植えてあげましょう。
フェイジョアの品種(種類)
果樹であるフェイジョアには、実の形や大きさ、収穫時期も異なる様々な品種があります。
しかし庭木として取り扱う私共としては厳密に品種を選ぶ事はありませんので、あくまでも苗木をお求めになる場合としてご参考下さい。
果実の収穫を行う場合は、以下の様な品種から異なる2~3種を選んで同時に育てる事になります。
グレース
フェイジョアの実としては最も大きく、収穫期が12月と遅いのが特徴
マンモス
実は大きめで、楕円形よりも丸型に近い形となる 収穫期は10月下旬の早生品種
トライアンフ
大きめの実で卵型、味が良い 収穫期は11月上旬~12月
クーリッジ
果実は小さめで大きさが不揃いであるが、味が良いの特徴
自家結実性の為、単一品種植えでも実成しやすいのが特徴
果実を実際に食してみる
弊社ファームには常時フェイジョアの木が在庫として仮植えされています。
庭木として流通するフェイジョアは品種が特定されていない事がほとんどである為、ファームには様々な異品種が集まってくる事になります。
この為、風や虫を媒介した授粉が行われ、弊社ファームでは多くのフェイジョアが果実を付けます。
このフェイジョアの果実を収穫して追熟させ、生食するまでの様子をご紹介します。
フェイジョアの果実を収穫する
フェイジョアの果実は自然落下したものをすぐに収穫する、または手で軽く回しただけで枝から離れる果実を収穫します。
フェイジョアの果実は熟すと地面に落ちますので、土面に長く触れない内に収穫します。
11月に入ると日ごとに実が落ちているのが確認できますので、都度見落とさずに収穫しておきましょう。
果実の大きさが不揃いな木
こちらは実の大きさにバラつきが見られる木から収穫した果実です。
大きさだけでなく形もやや異なっており、丸いものから細長いものまで、色々な形が見られます。
果実の大きさが揃いやすい木
こちらは果実の大きさも形も揃っている事が解ります。
この木は丸く大きめな果実が揃って熟しましたが、数はやや少なめでした。
18~20℃程度の室温で追熟させる
フェイジョアの実を生食する場合、室内常温にて1週間程の期間追熟させるのが良いとされています。
これは収穫から熟成を経るキウイフルーツと共通しています。
時期的にも室内が18~20℃程度になりやすい為、あまり気を遣わず直射日光に当たらない場所へ置いておく、という程度で良いと思います。
追熟させた果実はどうなる?
フェイジョアの果実は追熟させると皮にシワが入り、全体がやや柔らかくなります。
最も実感できるのが香りであり、収穫時には何の香りもしなかった果実から、カリンにも似た甘い香りがする様になります。
果実を半分にカットして生食する
生食時は果実を半分にカットするのですが、向きについては縦方向・横方向どちらでも良いかと思います。
フェイジョアの果実は見た目からは想像しにくい程に内部が瑞々しく、水分も豊富に含まれています。
中央の種の部分は追熟により半透明になっており、これが食べ頃のサインとも言えます。
皮に近い部分は青っぽい味を感じてしまいやすいので、中央のゼリー状の部分を食べるのがおすすめです。
追熟させた実は酸味が増した印象で、やはり味はキウイフルーツに似ていると思います。
品種や追熟具合、肥料によって味は異なってくるのですが、私見では追熟せずに収穫した実をそのまま食べる、これでも美味しいという印象でした。
しかしジャムなどへ加工する場合は酸味が効いていた方が美味しく出来上がる為、今回の様な追熟を行うのが良いと思います。
フェイジョアの成長傾向と特性
さて、ここからは庭木としてのフェイジョアの解説に戻ります。
フェイジョアは庭木としても維持管理のしやすい面があり、場所に合わせて樹形を仕立てる事も容易です。
ここでは成長の仕方や特性について少し解説を致します。
自然に樹形は整いやすい
フェイジョアは全体が均一に成長して形は整いますが、樹高が低い内は伸びも早く、特に壁際や狭い場所へ植えると生育が旺盛になる傾向があります。
無理な剪定によって大きさを詰め続けていると樹形も崩れやすく、出来る事ならやはり洋風の植木らしく、伸びた枝がそよぐ様な余裕のある場所へ植栽する事が良いでしょう。
それが難しい場所の場合は刈り込みや切り戻しによって整形的な樹形に仕立て、オーナメントの様な雰囲気の庭木にするのがおすすめです。
強い萌芽力
フェイジョアは優れた萌芽力を持ち、枝をどこで切られても複数の芽が生まれてきます。
この萌芽力を活かせば枝分かれによって枝葉の数を増やしていく事が容易です。
この為フェイジョアは枝葉の多い目隠し用の庭木として植栽される事も多く、比較的維持もしやすいのでおすすめです。
しかし生垣の様な扱いとなりますと壁状に薄く仕立てる必要が生じますので、フェイジョアはあくまでも列植や単体でレイアウトするのが良いでしょう。
常緑樹では珍しい耐寒性
フェイジョアは暖地植物でありながら、耐寒性熱帯果樹とも言われる様に、寒さに耐える特性も持っています。
マイナス8℃までは耐えると言われておりますが、やはり寒すぎますと落葉を起こし、翌年の花~実の付きが著しく悪くなります。
しかし南国調の庭木としてここまでの耐寒性を持つ果樹は珍しく、これが幅広い地域で親しまれる理由となっています。
降雪による枝裂けに注意
耐寒性があるものの、フェイジョアは枝に雪が積もって重くなった際、枝が避けやすい庭木です。
フェイジョアは枝が下方向に曲がった際に幹との付け根から裂けやすい構造になっており、弊社ファームでも急な大雪による枝裂け被害を受ける事があります。
大雪の予報時はヒモをフェイジョアに一周回す様に縛り付け、樹冠を絞っておく事が有効です。
フェイジョアをシンボルツリーに
膨らむ様に育って重厚感もあるフェイジョアは、洋風ガーデンの中で独立した場所へ植栽すると引き立ちます。
これはシンボルツリーの様な見せ方にも向いている事となりますので、是非ご検討をされては如何でしょうか。
小振りな庭木をシンボルツリーにしたい場合に、特にフェイジョアはおすすめ出来ます。
通常シンボルツリーは樹高2~3m程を想定しますが、フェイジョアであれば2m以下で維持していく事も可能ではあります。
玄関周りや道路沿いの花壇を利用したシンボルツリーの場合、膨らむ様に大きくなるフェイジョアであれば管理もしやすくなります。
優れた低木シンボルツリーとして
玄関アプローチ沿いにシンボルツリーとして植栽したフェイジョアですが、樹高は1.8mと低木扱いのサイズです。
しかし木の幅や葉の充実度のお陰で存在感があり、立派なシンボルとして引き立つのがお解りいただけるかと思います。
このフェイジョアの場合、剪定は刈込に近いカット処置となり、枝透かしはさほど行わない様にします。
目的やお好みによって仕立てを変化しやすいのもフェイジョアの魅力です。
尚、フェイジョアに限らずシンボルツリーをお選びされている方は、シンボルツリーの選び方とおすすめ樹種についてのページもご参考いただければと思います。
フェイジョアを目隠しに
常緑樹であり樹高が高くなりすぎないフェイジョアであれば、目隠しとしての植栽にも向いております。
先述の様にフェイジョアは壁の近くや陰を嫌う為、目隠しのポイントから離れた場所へ植栽するのが最良となります。
例えますと写真の様に遠くの窓を目隠しする為に道路際に植える、といった植栽手法です。
程好い目隠しをするつもりでやや枝透かしを行えば、とてもナチュラルな雰囲気を取り入れる事が出来ます。
離れた窓を目隠しする植栽例
枝葉の密度が濃いフェイジョアであれば、離れた窓を効果的に目隠しする事も可能です。
この様に枝数が多いフェイジョアであれば、植栽後の成長によって均等に膨らんできます。
大きくする=密度が高くなるという訳ではなく、当初から枝数や樹形が整った木を選んで植栽しませんと、成長と共に木が予想外の形になっていく事は珍しくありません。
ですので特に目隠し用のフェイジョアを植栽する場合は、綺麗な生育が見込める木を選びましょう。
ナチュラルガーデンの中のさりげない目隠しに
フェイジョアはのびのびと育った姿がとても美しく、洋風かつナチュラルな印象を感じさせます。
この姿を活かせば自然風の庭にも溶け込ませる事ができ、ナチュラル感を存分に楽しめます。
何気なく添えるフェイジョアのグリーンはさりげない目隠しとしても機能し、窓はもちろんウッドデッキ前への目隠しとしても自然に馴染みます。
フェイジョアの育て方
植え付けに適した環境
フェイジョアは洋風の庭木らしく、日光を必要とする典型的な陽樹です。
日光は花や結実にも必要不可欠であり、肉厚で美しい葉を保つ為にも欠かせません。
日向かつ風通しの良い場所を好みますが、経験則上、あまりにも風が強く吹き続ける環境ですと元気を無くす傾向があります。
特に郊外の広い住宅地などでは葉の少ないフェイジョアが多く見受けられ、これは強風が一因と思われます。
また、強風の拭き続ける広い庭は乾燥しやすいというデメリットがあり、長期の乾燥を嫌うフェイジョアでは注意が必要となります。
フェイジョアを日陰に植えた場合
フェイジョアはある程度の明るい日陰でも生育はしますが、元気のある姿とは少々異なってきます。
暗い日陰ですとすぐに枝を枯らしてしまうフェイジョアですが、明るい開けた日陰であれば独特の美しさを見せてくれます。
日陰に植えたフェイジョアの傾向
日陰へフェイジョアを植栽しますと、まもなく以下の傾向が表れます。
- 葉が薄くなる(色の濃さは変わらず)
- 枝の先端以外の葉が無くなる
- 下部や幹周りの枝が枯れて無くなる
この様な傾向となりますものの、見方によっては自然に枝透かしがされたかの様な姿と見る事も出来ます。
この場合、フェイジョアは枝を間延びさせて日光を求める樹形となりますが、この樹形は無理に小さくしない事がおすすめです。
枝の少ない柔らかな姿を活かす為、出来るだけ自由に伸ばさせ、木の幅は広くする事が好ましくあります。
適した土質
フェイジョアはとにかく水捌けの良い環境を好みます。
植え付け時は腐食質に富んだ砂壌土になる様、調整しましょう。
植え付ける時は、赤玉土や腐葉土を混ぜ込むと効果的です。
砂壌土とは砂土と壌土の中間あたりの土質であり野菜の栽培等にも適した土ですので、庭土にこれらを混ぜ込むのも良いでしょう。
※チッ素肥料入りは避ける
水やり
鉢植えのフェイジョアであれば乾燥を確認次第たっぷりと水を与えます。
庭植えの場合は根を張って落ち着けば基本的に降雨だけで育ちますが、フェイジョアは柔かい細根が地表近くの浅い位置にある為、乾燥しにくい様な環境作りが有効です。
バークチップによるマルチングや、多年草や低木類を株元周りへ植栽する事で、日光による高温や強い乾燥を防ぐ事が出来ます。
肥料
果樹としても楽しむ場合は、フェイジョアへの施肥は欠かせない作業です。
施肥は3月と10月辺りの2回、有機質肥料または即効性の化成肥料を株元へ与えます。
または有効な液肥を用いるのも良いでしょう。
フェイジョアの剪定方法
フェイジョアの伸び方は全体的に均一に進むケースが多く、木がそのまま膨らんでいく様な生育イメージになります。
ですが剪定につきましては枝透かしも刈り込みも自由に選択する事ができ、添景的な重厚感や軽やかなナチュラル感など自在に作り上げる事が出来ます。
フェイジョアに適した剪定時期
フェイジョアの花芽の分化は8月~9月に行われますので、実の収穫期には既に翌年の花芽分化を終えているという事になります。
ですのでフェイジョアの剪定は、花(6月)の前となる春先(4月頃)に行うのが良いとされています。
剪定で枝を透かせば爽やかな印象に
この様な樹形のフェイジョアにおきましてはナチュラルガーデンに添えると美しい景観となります。
フェイジョアは萌芽力もありますので様々な剪定にも対応し、切り戻しからの芽吹きも問題なく行われます。
枝透かし仕立てのコツは、幹や枝等の骨格が明確に見える様に枝を減らす事が挙げられます。
幹に近い懐付近の枝は予め取り除いておく事で、景観面だけでなく風通しや採光による健全な生育を促す事にも繋がります。
フェイジョアは葉が多く、僅かな枝透かしでも一気に透ける事がありますので、枝を外した様子を想定しながら行うと良いでしょう。
表面だけを見ると解りにくいのですが、フェイジョアは強い徒長枝が内側へ伸びて幹を横切り、外へ飛び出す傾向が強いです。
この様な枝を元から取り外せば「絡み枝を除去」する事が出来ますので、まずは強い枝や絡んでいる枝の発生点を探してみましょう。
刈り込みによって整形を行う場合にも、まず先述の強い枝だけは先に元から外しておき、その後細かい枝をまとめて刈り込むと美しく仕上がります。
フェイジョアを強剪定する場合
樹種に関わらず、多くの庭木は狭小部や外壁近くに植栽すると強い伸びを起こしやすくなります。
フェイジョアも同様に全体が強く膨らむ様な生育をしますので、毎年どの様な骨格に留めるか、というラインを決める剪定が有効となります。
強い枝を外しながら枝振りや頭部分を決める様に仕立て、毎年の剪定目安となる骨格を作っておくと維持がしやすくなります。
フェイジョアは無理に自然に見せなくとも整形的な姿も魅力がありますので、思い思いの形に仕立てるのが良いかと思います。
注意したい病気と害虫
果樹でありますと普通であれば毛虫類への注意は付き物でありますが、フェイジョアについては毛虫の害を受ける事が少ない庭木と言えます。
フェイジョアで注意が必要であるのはコナジラミやハダニなど、葉の色が異常をきたす害虫となります。
特に陽当たりの少ない場所や風通しの悪い場所のフェイジョアによく見られますので、植栽計画時に留意しておきましょう。
予防的な農薬散布としては通常の殺虫剤の他、「ハダニ用」の殺虫剤を撒いておくのが望ましくあります。
まとめ
庭木としてのフェイジョアを解説してまいりましたが、如何でしたでしょうか。
常緑樹で花や果実を楽しめ、目隠しや背の低いシンボルツリーとしても活躍できる庭木は数多くはございません。
樹高の低いシンボルツリーから目隠しまで、フェイジョアは陽当たりの強い場所で元気に育ってくれる庭木ですので、是非植栽をご検討されてみては如何でしょうか。
執筆者:新美雅之(新美園HP作成・作庭者)
庭木や庭デザインについて、作庭者の経験を活かして現実的に解説をするコンテンツを目指し、日々執筆しています。