オリーブはモクセイ科・オリーブ属の常緑高木で、洋風庭木の代表種として知られています。
その実から得られるオリーブオイルは身近な存在であり、栽培地ではオリーブ茶を始め多くの製品が作られています。
オリーブの木の品種は非常に多く、その違いは果実だけに留まらず、樹形や生育傾向も品種によってかなり異なる印象を受けます。
グレー~ブルー掛かった幹、光沢のあるシャープな形の葉が特徴的で、オリーブはシンボルツリーや鉢植え、目隠し目的にもおすすめ出来る庭木です。
目次
オリーブの基本データ
- 科名と属名 モクセイ科・オリーブ属
- 学名 Olea europaea
- 常緑広葉樹 高木
- 樹高 5m~15m
- 原産地 小アジア 地中海東部沿岸
- 開花期 5月下旬~6月上旬
- 実の収穫期 塩漬け等に利用する未熟な実は9月~10月 オイル用とする完熟実は12月頃
- 主な植栽用途 シンボルツリー 目隠し プランターや鉢植え 洋風庭木の代表種
オリーブは古代ギリシャより慈愛・平和・自由の象徴とされており、現在のギリシャでも国花になっています。
スポーツ大会で与えられる冠は月桂冠と呼ばれていますが、実際はオリーブの冠です。
スポーツの大会ではオリーブ冠を、文化称号においては月桂冠を与えるのが正しいそうです。
作庭者から見ると「オリーブはこんな庭木」
自由に枝を伸ばした姿が美しく人気のあるオリーブの木ですが、作庭者の目線から考えますと以下の様なポイントが挙げられます。
おすすめなポイント
- ブルーの小さな葉がおしゃれな洋風感を演出
- 1本植えのシンボルツリーとして使える存在感
- オイルや調理にも使える実を楽しめる
- ケムシの心配がほとんど無い
注意したいポイント
- 成長力がある為、植える場所を選ぶ
- オリーブらしさを保つ剪定が技量を要する
- 根が浅く、強風で倒木しやすい
それではこれらのポイントを交えながら、庭木としてのオリーブの木について解説をしてまいります。
オリーブの歴史と伝来
オリーブが栽培され始めたのは5000年以上前のシリアやトルコと言われており、オリーブの木は地中海沿岸やアフリカの北岸で自生していた野生種でした。
その後、航海技術や通商活動に長けていたフェニキア人によって広がっていったとされています。
オリーブと言えばギリシャを思い浮かべられますが、ここへ伝わったのは紀元前700年頃になってからであり、現在の主要栽培地となっているイタリア半島へ渡来したのは紀元前370年頃まで時間を要しています。
神聖な木として扱われたオリーブ
オリーブは伝来した各地で神聖な木として文化に馴染んでおり、様々な神話上でも登場します。
「神聖な木」や「栄養を持つ木」として崇拝を受けてきた、非常に長い歴史を持ちます。
日本への伝来
日本には安土桃山時代、日本を訪れたポルトガル人の神父によって持ち込まれたとされ、当時は薬用としての存在であったそうです。
その後の鎖国を経て再びオリーブが持ち込まれる様になったのは幕末~明治であり、苗木を導入して神戸等で栽培されました。
栽培の歴史を現在も引き継ぐ小豆島
その後明治40年以降、三重県や香川県、鹿児島県でオリーブの栽培研究がされ、その結果香川県小豆島での栽培が順調な生育を見せた事から、今でも小豆島は日本のオリーブ主要栽培地として有名です。
現在の小豆島では多くの栽培農園があり、観光農園として一般開放して下さっている農園もあります。
様々なオリーブ製品の研究・開発・販売がされており、小豆島オリーブ園さんは開園100周年を迎える程の歴史があります。
オリーブの楽しみ方
オリーブは実の栽培のみならず、観賞目的としても優れた庭木です。
洋風陽樹の代表格として取り扱われており、その樹姿は他に類を見ない魅力と言えます。
オリーブが持つシャープで涼し気な雰囲気を出す葉も個性的であり、伸びた枝葉が優雅に枝垂れる様も大変美しいと思います。
地中海を思わせる姿を楽しむ
洋風らしさを感じる庭木は数多くありますが、海風を感じさせる様な雰囲気を持つ庭木はそう多くありません。
海を感じさせるといっても南国調の様な雰囲気とはまた異なり、オリーブは地中海沿岸を連想させてくれる数少ない庭木であると思います。
実や装飾を楽しむ
オリーブの魅力は樹姿だけではなく、誰もが知る優れた実の他、枝を装飾とする楽しみ方もあります。
実はオリーブオイル絞りにチャレンジしたり、ピクルスやマリネ等の調理、オリーブ茶作りも楽しめます。
また、剪定をした枝も美しい為、装飾としてアレンジメントを楽しまれるのも良いのではないでしょうか。
オリーブの特徴
それではここからは、庭木・植物としてのオリーブをご紹介致します。
オリーブの品種は非常に多く存在しますが、こちらではあくまでもオリーブの平均的な特徴として解説をしてまいります。
オリーブの葉
オリーブの最大の特徴は、やはりシャープで美しい葉でしょうか。
品種によって葉先の尖り具合は異なりますが、品種に関わらず葉は共通した雰囲気となります。
葉は細長く先が尖っており、革質で光沢を持ちます。
葉の表面は濃緑色ですが、裏面は白に近い色で、この表裏の色差が美しさの一要因となっています。
風に揺れた時には表裏の色合いが美しく輝いて様に見える為、なんとも美しい姿を見せてくれます。
洋風庭木であるフェイジョアも葉の表裏の色差がありますが、オリーブの様に葉が風で揺らぐ事はありません。
オリーブの幹
オリーブの幹は成長すると力強い太さとなり、重い枝葉をしっかり支える木となります。
華美な印象は無いオリーブの幹はシラカシとも似ております。
剪定を繰り返し行っている内に太くなり、樹高が低くても立派な幹になる事もあります。
樹齢の長いオリーブは幹にうねりや瘤が生じ、大木が持つ独特の雰囲気を感じさせます。
オリーブの花
オリーブの花は小さく可憐で、5~7月に房状の形態で枝先に咲きます。
モクセイ科という事で、よく見るとモクセイの花にもよく似ています。
花を鑑賞する為にオリーブを植えるケースは少ないですが、近付いてみると花には芳香もあり、オリーブの楽しみ方の一つとも言えるでしょう。
オリーブの花は花粉量も多く、風媒によって受粉が行われます。
実を栽培する場合は、他品種同士の花粉によって授粉させるようにします。
オリーブの実
実はオリーブ最大の魅力です。
収穫期は品種や使用目的によって異なり、塩漬けに使う未熟な青い実は9月~10月頃、オイルを絞る為の完熟した黒い実は12月頃が収穫期となります。
実の性質はオリーブの品種によって数も大きさも異なり、実の使い道や栽培の仕方によって品種を選ぶのが基本となります。
オリーブの自家不結実性
オリーブが実を付けるには、他品種との組み合わせが必須となります。
実の収穫を目的とする場合、オリーブは自家不結実性である事から、2種以上の品種を同時に育てる事が必要です。
1種類植えでも実が成るとされる自家結実性品種も存在しますが、やはり他品種と合わせた栽培が現実的です。
実の使い道としてはオリーブオイルを搾取する他、実を加工・調理したりする等、多岐に渡ります。
実際にどの様な種類・品種があるのか、下で簡単にご紹介を致します。
庭木用・実の栽培用として使いやすいオリーブの品種
オリーブの品種数は数百種類以上も存在すると言われており、日本国内では60~種類が存在・栽培されているそうです。
しかし身近に庭木や趣味の栽培として適した種類はそう多くはありませんので、迷われる事も無いかと思います。
それでは代表的なオリーブの種類、品種を見てまいりましょう。
庭木としてもおすすめな品種
実の栽培を目的とせず、あくまでも庭木として植栽する場合もおすすめ出来るオリーブの品種です。
シプレッシーノ
庭木として扱う事が最も多い品種であると思います。
枝が直立して伸びる為、横幅が広くなり過ぎずに育ちます。
実は艶があり小粒であるのが特徴です。
ミッション
上のシプレッシーノと同じく直立した樹形を作る品種で、庭木として植栽する事もあります。
実は丸い形であるのが特徴で、中粒サイズといった所でしょうか。
有名な栽培地である小豆島へ最初にやってきた品種であるそうです。
ルッカ
成長力があり、横方向へ広がっていく品種です。
風格のある大木の雰囲気を持つ樹形になりやすく、実成りよりも成長を優先する傾向があるそうです。
横幅の広い美しい樹形を楽しむためにも、広いお庭の中心への植栽が望ましくあります。
コラティーナ
直立型の樹形となる品種で、成長力が強く大きくなりやすい為、庭木として向いている品種です。
実は中型でありポリフェノールを多く含み、ブレンドの過程で用いられます。
実を楽しむのにおすすめな品種
プランター栽培や鉢植えで実を育ててみたい。
そんな場合におすすめな品種です。
マンザニロ
果実を加工する為に開発された品種で、スペインが原産です。
柔らかく大きめの実を食する事を目的とされた品種である為、オリーブオイル用としては不向きであるとされています。
実成りも安定する他、鉢植えでも生育しやすい品種であるそうです。
アルベキーナ
鉢植えサイズの小さな木でも鈴なりに実を付ける品種で、木も大きくなりにくい特徴があります。
実は小さく丸型であり、実を食すよりもオリーブ油を得るための品種という位置付けとなります。
エルグレコ
直立型の樹形を形成する品種で、果実は小さめです。
枝葉の密度が高い為、刈り込みによって楽しい形を作るトピアリーにも向いています。
木が若い内から実を付けやすい特性があり、花粉の量も多い為に授粉用としても用いやすい品種です。
園芸店等へ行きますと品種別にラベルが貼られたオリーブがたくさん売られていますので、上記以外の品種も是非ご覧になると良いでしょう。
オリーブの成長と適応環境
特に地植えをされたオリーブは強い成長力を持ち、特に小さなサイズの木を植えた場合、植え付け当初とは姿が異なってくる事を想定しておく必要があります。
予め大きなサイズのオリーブを植えた場合はいくらか大人しいのですが、小さな木ほど成長は早く、無理な丈詰めは木を一気に太らせる事につながります。
また、樹高や幅を詰める為に枝途中でカットをしてしまいますと、切り口からすぐさま強い勢いで枝が発生します。
柔らかいオリーブのイメージを損なわない為にも、後述の剪定方法をご参考下さい。
一日中陽射しを受ける場所へ植栽する
オリーブは陽射しに強い典型的な陽樹であり、頭頂部から足下に至るまで万遍なく日光が当たる環境が必要です。
美しい葉のツヤや花・実の為にも日向である事は必須であり、尚且つある程度自由に成長させられる広い場所がベストと言えます。
オリーブを日陰へ植えてしまうと葉数は減り、葉の色は黄色掛かってしまい、下半分の枝はみるみる内に枯れてしまいます。
枝が伸びた自然な姿を大切にする
オリーブは枝が伸びて、風に揺れる姿が美しい庭木です。
真っ直ぐにすらっと伸びた枝に、表裏が異色の葉が美しく煌く様に見えるからではないでしょうか。
可能であれば、他の庭木であれば外してしまう様な徒長枝も景観として活かしたいところではありますが、実際は木のサイズ維持の観点からも難しい為、やはり植え付け時に成長させる余裕を持った場所を選びましょう。
水捌けが非常に良い土壌が必要
オリーブは乾燥に強いという面がありますが、これは逆に水はけの良い場所でないとうまく育たないといった意味でもあります。
例えば芝生とオリーブが状態良く共存するケースが多く見られますが、これは双方ともに日光と水捌けが最重要な植物である為です。
芝生は水捌けを良くする為に砂質土を使った上に勾配(傾斜)を付ける事もあります。
オリーブも同様に、やや浅めに植え付けを行い、傾斜によって周囲の土面より上がった状態で仕上げる事も有効です。
オリーブを植える場所の注意点
オリーブを植栽する場合、成長力の点を考えまして、
■玄関(歩行部分が近い場合)
■駐車場(お車の傍)
■道路際(隣地境界付近を含む)
などへの植栽はお勧めしておりません。
伸びたら切る、という処置は枝や幹をどんどん太らせ、最終的には背の低い大木という形となります。
こうなってしまったオリーブをやむなく撤去、といった作業もしばしば行っております。
「剪定によって適切な大きさを維持する」といった事もよく聞きますが、これが可能な木とそうでない木は明確に存在します。
まずは植栽計画として場所の取り決めは入念に行い、オリーブの様な木は特に環境へ配慮したいものです。
オリーブは防風対策が必要
オリーブはシマトネリコと同様に枝葉の重量があります。
しかしそれに対し根は浅くてもろい為、強く根付くまでは強風によって倒木が起こりやすい庭木と言えます。
これはホンコンエンシスとも似ている傾向であり、樹高に応じた風止め処置が必要となります。
オリーブをシンボルツリーに
オリーブは自由に枝が伸びた樹形が美しい事から、単独植えとなるシンボルツリーにおすすめ出来る庭木です。
オリーブをシンボルツリーに選ぶメリット
- 洋風で爽やかな雰囲気を演出できる
- 広い場所であればオリーブ1本で仕上がる存在感
- 工夫すれば実も楽しめる可能性も
オリーブは剪定方法によって様々な樹形に仕立てる事が出来ますので、重厚感を感じさせたり、逆に軽やかなシンボルツリーに仕上げる事も可能です。
どちらと致しましても、オリーブをシンボルツリーにする場合はある程度自由に枝を伸ばしてあげられる様な広い場所が必要です。
それではオリーブをシンボルツリーとして植栽した実例を見てみましょう。
モダン建築のシンボルツリーとして
洋風に限らず、オリーブであればナチュラル・モダン系のお住まいにも不思議とマッチします。
シンボルツリーとモダン建築のマッチングは非常に美しく、オリーブの葉は黒色との相性も抜群です。
シャープでいてナチュラル感も感じられる庭木は貴重であり、これがオリーブがシンボルツリーとして人気である理由でもあります。
白壁を背景にオリーブの樹形を楽しむ
オリーブは原産地で見られる様に白壁が非常に良く似合い、地中海沿岸部の様な雰囲気をもたらしてくれます。
白壁のお住まいであれば是非シンボルツリーとして取り入れていただきたいものですが、やはり外壁に近い場所への植栽ですと、定期的な枝透かしや切り戻し剪定は必須となります。
写真の様に枝透かしを主とした剪定で維持したオリーブであれば、白壁に浮かぶ樹形の美しさを楽しめる事でしょう。
ある程度の成長計画を伴うシンボルツリーに
こちらは玄関へ向かうアプローチステップ、いわゆる階段の上に位置する場所へシンボルツリーのオリーブを植栽しました。
この場所は3方向に広く開けている環境であり、オリーブが美しく横枝を伸ばしていく事を前提としています。
アプローチと同じ高さでオリーブを近接させますと、成長によってすぐに歩行の妨げになり、枝詰めを行わざるを得なくなります。
しかしこちらの様な一段上がった場所であればオリーブの枝葉は頭上へ展開していく事となり、オリーブらしい優雅な樹形を作っていける事となります。
大きく出来ない場所へ植える場合
場合によってはこちらの様に、広い場所ではない環境へシンボルツリーとして植栽する事もありますが、この場合は年に一度の枝整理が必要となります。
小さく留める為のカットを繰り返すだけですと、すぐにオリーブとは解らない様な姿になってしまいますので注意しましょう。
洋風で自然な雰囲気作りを検討される方へ、オリーブは是非おすすめしたいシンボルツリーです。
尚、オリーブに限らずシンボルツリーをお選びされている方は、シンボルツリーの選び方とおすすめ樹種についてのページもご参考いただければと思います。
オリーブなら洋風の雰囲気作りや目隠しにも
こちらではフェンスよりもさらに高い位置を将来的に目隠しする為に、2本のオリーブを植栽しております。形の似た美しい2本を同時に入荷してお納めをしており、生育によって近接をしても違和感の無い洋風目隠しとなり、これからが楽しみなオリーブと言えます。
ハーブ専門店の店先へ植栽したオリーブです。
オリーブは1本を植えるだけでお店の雰囲気づくりに貢献してくれる為、自然素材や植物に関するお店の他、美容院やカフェへの植栽が人気です。
オリーブは単体でも存在感がある為、数多くのグリーンを使わなくても賑やかなグリーンを演出する事が出来ます。
場所の限られた店先などでオリーブが特に重宝される理由でもあります。
オリーブにおすすめ:プランター植栽や鉢植えで楽しむ
オリーブは夏場の直射日光にも耐える強さはもちろん、砂質土壌・乾燥状態にも適応する特性があります。
この為、乾燥に強い植物向けであるプランター植栽に用いられる事が多くございます。
オリーブは乾燥気味の状態がやや続いても直ちに木が傷む事はございませんので、プランター植えで店先を飾る事もあります。
こちらの様に白壁やアイアンフェンスとの組み合わせは大変美しく、洋風のお住まいの施主様には是非取り入れていただきたい一例となります。
こちらではシックな石材調の意匠が施されたプランターへオリーブを植栽しています。
先述の様にオリーブはシックな色合いのマテリアルはもちろんアイアンフェンスとの相性も良く、ナチュラルでおしゃれな空間づくりにぴったりな庭木です。
こちらはケーキ屋さんの店先に並べられた鉢植えのオリーブで、お店をおしゃれに見せてくれています。
オリーブの鉢植えは多く並べてもしつこさを感じにくく、むしろ街の景観向上となります。
オリーブの鉢植えはイタリアンレストランで多く見られますが、美容院や雑貨店でも見掛ける事もあり、店舗への植栽事例としては最も多い庭木と言えるでしょう。
プランターで実を付けたオリーブ
オリーブの実は異種同士を近くで生育させる必要があると言われており、愛好家の方は多くの品種を寄せて育てていらっしゃいます。
庭植えで多くの木を管理するには面積も必要で、旺盛な生育上、管理も大変になってしまいます。
この面を踏まえましても、土の容量に余裕のあるプランターでのオリーブ栽培はおすすめです。
異種同士を近くに置き、極度な乾燥が続かない様に散水管理をしてあげましょう。
オリーブの育て方
適した環境
開花や実の栽培面だけでなく、オリーブの成長には日光が欠かせません。
木の上から下まで日光が当たる風通しの良い場所を選びましょう。
また、美しい樹形を大切にする為にも、ある程度大きくさせられる場所選びも大切です。
適した土質
ブルーベリー等とは逆に、オリーブはアルカリ性の土壌を好む植物です。
石灰質を含んだ土地で栽培が行われているのもこの為で、庭植え・鉢植え共に意識する必要があります。
庭植えの場合は植え付ける前に石灰と庭土を混ぜておきます。
鉢植えの場合は基本となる赤玉土や腐葉土に加え、最後に石灰を混合した土を使いましょう。
植え付け
植え付け時期は暖かくなる目前の3月~4月に行うのが最良です。
根鉢を作られたオリーブの植木であれば通年植え付けは可能ですが、厳寒期は避けます。
オリーブは根鉢が柔らかい事があり、根もほぐれてちぎれやすい面があります。
植え付けをする場合は根の保護を意識し、運ぶ時も根鉢を抱える様にします。
これは柑橘類も同じですので、注意しましょう。
水やり
潮風の吹き続ける海岸や離島で生育するオリーブは、元々乾燥には強い植物です。
植え付け後、2年程かけて根が張っていくまでは活着の為の水やりが必要ですが、その後は必要なく、雨によって育っていきます。
オリーブは鉢植え栽培が多いですが、こちらは乾燥を確認したらたっぷりと水を与える様にします。
ですので鉢植えの場合は水やりが頻繁になる事を踏まえ、尚且つ水捌けの良い土を使っておく事が大切です。
肥料
オリーブへの肥料は、
- 1~2月に寒肥として有機肥料を樹冠下へ埋める
- 本格生育期の6月と収穫時期の11月に追肥として有機肥料を与える
これらが基本となります。
オリーブの剪定方法
剪定の適期
オリーブの剪定は成長が止まっている冬季、2月前後が適期とされています。
しかし木のサイズを小さくする強剪定を行う場合は寒さを避ける必要があります。
この場合は成長が始まる4月頃を目処に剪定計画をたてましょう。
日光と花芽の為の「透かし(間引き)剪定」
オリーブが伸びてしまった、というお声をいただいた際は、大体は全体に徒長枝が付いており、猛烈に木が膨らんでしまった状態です。
オリーブの枝は伸びた翌年に花芽を付ける為、全ての枝をカットする様な「刈り揃え」を行うと花芽に大きく影響してしまいます。
ですのでオリーブの場合は「外す枝」と「残して翌年花を咲かせる枝」を分ける事が必要で、これが透かし剪定を行う理由にもなります。
透かし剪定を行うと幹周りまで日光が届く様になり、枯れ枝の発生を防ぐと共に細かい芽吹きを促します。
この状態で花を咲かせる事がベストですので、オリーブは枝の透かしを中心に行いましょう。
「小さく」ではなく「軽く」する意識
オリーブの場合、高さや幅が広くなるのはある程度寛容していただき、とにかくシルエットを軽くするという事に重点を置きます。
ハサミを入れる前に枝の発生箇所を覗き込むと、多くの徒長枝が幹付近から発生している事が解ります。
まずはこの幹付近からの徒長枝は外す必要がありますので、元だけを見ながら取り除いていきます。
そうしますとこれだけでかなり軽くなりますので、今度は枝付近からの徒長枝をバランス良く外し、残った小枝は少々ハサミを入れるか、目指す樹形によっては放置します。
庭木として維持する為には、オリーブの向こう側が透けて見える程度の間引きを意識すると良いでしょう。
オリーブで注意したい病気・害虫
オリーブは他の庭木で困りがちな毛虫類の心配はありませんが、日本に昔から生息する虫がオリーブの天敵として知られています。
オリーブアナアキゾウムシに注意
まず、オリーブアナアキゾウムシの被害に遭う確率は高くはありませんが、害虫としては大きな被害を与えるので知っておいても良いかもしれません。
名前の通り、オリーブに穴を空けるゾウムシとしてオリーブに被害を与えます。
オリーブアナアキゾウムシが与える被害
樹皮を好んで食害しながら幹の中に産卵する為、幼虫も幹の中を食べ荒らしてしまうという訳です。
幹の中を食べられてしまうとオリーブは枯死するという甚大な被害を受けます。
これはテッポウムシやマツノザイセンチュウと呼ばれるカミキリムシの被害と同様です。
被害の確認方法
オリーブアナアキゾウムシがいるかどうかは、
・幹の根元に木粉が積もっていないかどうかを見る
・樹皮が著しく傷んでいる部分が無いか
これらをチェックする他にありません。
穴を空けて幹の中へ産卵をしていないかどうかを確認するしかない訳です。
予防措置と対策
オリーブアナアキゾウムシの被害を予防、つまり寄せ付けない様にする処置としては以下、
- 成長期に幹の下の方へ農薬を塗布する
- 剪定で適度な枝透かしを行って風通しを良くしておく
- 幹の周りの落ち葉を掃除し、雑草も処理しておく
これらが有効とされております。
幹周りの風通しが良いと幹が乾き気味になり、食害しやすい状態になります。
幹は湿っていると水分を含んで柔らかくなりますので、幹周りは湿り気を断つ様にすっきりさせておきましょう。
また、落ち葉の堆積や雑草の繁茂があると虫の温床になりやすいので、その環境を与えない様に改善するのが有効です。
これらはオリーブアナアキゾウムシに限らず毛虫の予防にも同じ効果が期待できます。
駆除方法
庭木としてのオリーブであれば、一般的な殺虫農薬「スミチオン乳剤」の散布によってある程度の駆除は可能です。
しかし幹の内部の幼虫まではなかなか効果が行き届かないので、幹周りを中心に予防散布を行っておくのがおすすめです。
実の栽培を目的としたオリーブですと、農薬成分が気になる事と思います。
その場合は天然成分で作られた野菜用の殺虫剤「ベニカベジフルスプレー」の使用がおすすめですが、殺虫農薬よりは効果が弱いかもしれません。
まとめ
以上、庭木としてのオリーブの解説でしたが、如何でしたでしょうか。
剛健でナチュラル、上品な洋風感をお庭にもたらすオリーブの魅力は、唯一無二とも言えます。
陽当たりの良い広い場所への庭木を選ぶ際は、是非オリーブもご検討されては如何でしょうか。
執筆者:新美雅之(新美園HP作成・作庭者)
庭木や庭デザインについて、作庭者の経験を活かして現実的に解説をするコンテンツを目指し、日々執筆しています。