アラカシはブナ科・コナラ属の常緑広葉樹で、シラカシと共に庭づくりで古くから植栽されてきた植木です。
アラカシの株立ち物はボウガシと呼ばれる事もあります。

関東でカシと言えばシラカシを指す事が多いのですが、関西圏ですとカシはこのアラカシを指す事が多くなります。

実際に関西では生垣や和庭の植栽としてアラカシを見掛る事が多いものです。

アラカシ

造園上の用途は1本(株)を単体で植栽する事が多く、玄関脇や古い坪庭・中庭などでその姿を目にします。

シラカシよりも葉が大きく広く、葉脈がはっきりと浮き出て見える特徴があります。
葉が大きい代わりに葉数はシラカシよりも少なく、葉と葉の隙間が広く空いており、幹の周囲には葉が付きにくいです。

 

お庭での生育傾向

シラカシと同様に伸びる力は強く、伸びる枝も太い傾向があります。柔らかく小さく維持しようと「カット」を続けた場合、樹形が崩れるのが早いです。

アラカシの樹形が崩れやすい理由としては、切り口までの部分があっという間に太ってくる事で、剪定後も非常に硬い印象の木に見えてしまいます。

これを防ぐ為にも、アラカシはある程度の幅や樹高を容認しつつ、枝の数を減らす事で維持していきたい庭木です。

維持する樹形としては、枝が常に透かされており、向こう側の景色が見える様な樹姿が望ましいです。

 

アラカシなら和庭やナチュラルガーデン、生垣としても

先述の様に、目隠しやワンポイント的な植栽をするのがお勧めとなります。
魅力を活かす剪定を施していればシラカシよりも和風で優美な姿にも見える為、大切な景観ポイントへの植栽にも向いています。

和風の庭に合わせる

アラカシと垣根
葉の一枚一枚が余裕を持って展開出来る樹形にすれば、背景の垣根などとの調和を楽しむ事が出来ます。

写真の様に背景が垣根ですと和風の趣が感じられ、アラカシが使われる事の多い京風の雰囲気も感じられる様になります。

アラカシは成長力もあり元々存在感が強い庭木ですので、周囲には他の庭木を寄せずに孤立させた植栽レイアウトに向いています。

ナチュラルガーデンに溶け込ませる

ナチュラルガーデンに馴染むアラカシ

ナチュラルガーデンに馴染むアラカシ

ナチュラルガーデンや雑木の庭、と言えば、連想される庭木は落葉樹が大半を占めるのではないでしょうか。

しかし常緑樹であるアラカシは里山の野趣を感じられる庭木であり、実際に規模の大きな自然な庭への植栽に使われます。

枝透かしをきちんと行っていれば涼し気な姿を見せてくれますし、写真の様に落葉樹の葉が無くなってしまう冬季もお庭に緑を添えてくれます。

アラカシをたくさん庭に植える事は出来ませんが、他の常緑雑木であるシラカシ・ウバメガシ・ソヨゴ・ヒメシャリンバイ等の常緑樹と組み合わせれば、冬のナチュラルガーデンも緑あふれる景観になります。

風情のある生垣として

野趣ある生垣になるアラカシ

野趣ある生垣になるアラカシ

アラカシは生垣風の植栽も可能であり、敷地面積が広い場合に多く見られます。

きっちりと整えられた生垣と言うよりも自然な姿を残した列植に向いており、剪定次第で樹高1.5m~1.8m辺りで維持する事も可能です。

但し幅(奥行き)を薄く維持する事は難しく、幅は80cm~程度を許容出来るスペースであればアラカシの生垣も育てられるかと思います。

また、枝の走りが強い庭木ですので、長距離の生垣にすると剪定管理が大変になります。
特にご自身で剪定を行う場合は、カシ類を使った生垣は程良い距離に留めておくのが良いでしょう。

 

アラカシの剪定方法と実例

シラカシと同様に、必ず太く長く飛び出す枝が幾つも発生します。
その様な枝は元から間引き、途中でカットする様な事は厳禁です。あっという間に再度同じ枝が発生するだけでなく、さらに伸びが強くなって樹形が乱れる原因となります。

アラカシの自然な剪定例

アラカシの自然な剪定例

こちらのアラカシの剪定では、剪定前後でほぼ背丈が変わっていないことがお解りいただけると思います。
庭木をすっきりと見せるのと背丈を低くするのは別のお話であり、骨格を形成する最低限の枝数に減らすだけでこの様な自然な姿で維持する事が出来ます。

こちらのアラカシは植栽から4年手付かずで放任させましたが、それがかえって樹形を崩さない剪定を可能にさせます。

不用意なカットの繰り返しを行いますと、この様な仕立ては難しくなってしまいます。

特に生育の速いカシ類の剪定におきましては「切り揃える・カット」という認識は捨てて、不要な強い枝(場合により幹も含む)を外し、残った小枝も少なくする剪定が大切です。
庭木として維持する際も、ある程度の大きさを容認する事が第一かと思います。

 

執筆者:新美雅之(新美園HP作成・作庭者)

執筆者:新美雅之庭木や庭デザインについて、作庭者の経験を活かして現実的に解説をするコンテンツを目指し、日々執筆しています。