今回は東京都杉並区のS様邸での造園工事をご紹介させていただきます。
門扉から玄関を伝い、お庭の奥まで伸びる敷石アプローチの施工に合わせ、植栽・下草ラインを緩やかにデザインした和風のお庭です。
日陰の環境ではございますが、かえってこの様な場所ほど綺麗に育つ植物も多くございます。 しっとりとした静寂を感じるお庭づくりの様子をご紹介致します。
既存の垣根を背景として、日陰に適応する植栽を中心の造園施工と致しました。小振りの庭石を随所に不規則に配する事で、若干の古さを感じさせる演出を。最奥部には見え隠れする様に燈篭を据え付け、お庭の奥へ目線を誘う造りとなっております。
造園工事に先立ち、既存の平板を取り外し、庭木の伐採・抜根処理をします。
造園施工前のお庭の様子です。
通路として使用されていた平板を取り外し、既存の庭木を処分する所から施工を始めます。
まずはお庭を更地にします。
平板と低木を撤去している様子です。
幅の広がってしまった低木類は、意外なほどにお庭を狭くしてしまっているケースが多いものです。
歩行・植栽スペースを明確に確保できる空間が出来上がります。
伸びの激しかったレッドロビンを伐採している様子です。
剪定を繰り返すと幹が非常に太りやすく、日陰では上部が旺盛に成長する代わりに、下枝が衰えやすい植木でもあります。
鳥が種を落として成長した実生の庭木も伐採・抜根処分をしていきます。
写真のシュロは背丈を低く整える事が出来ないので、お庭に必要無い場合は早めの処分をお勧め致しております。
歩行部分を掘り下げ、アプローチとしての敷石通路を施工していきます。
敷石を施工する部分を掘り下げて均一に整地を施します。
門扉からお庭の奥まで水平に敷石を繋げていく為、掘り下げ作業の段階から仕上げを意識します。
水平の目安に従い均一に砕石を撒いていきます。
敷石アプローチの地盤となる部分ですので、掘り下げも深めに、砕石部分も厚めに施工していきます。
砕石の敷き均し作業を終え、全体を転圧していきます。
隅々まで確実に、敷石からややはみ出る部分までしっかりと地盤を固めます。
砕石地盤の施工を終えた様子です。
この上から敷石のアプローチを並べていきます。
敷石を一枚づつ、水平を保ちながら据え付けていきます。
下地はモルタルを使用しております。
造園工事では敷石の傍に植栽をする事がありますので、後で脇を掘っても強度が保てる様に仕上げてあります。
玄関から庭の奥まで一列目を繋ぎ終えた様子です。
一見するとタイルの様な平らな資材に見えますが、実際は微妙に形状が異なります。
相性の良い物を隣り合わせにする様に繋げてあります。
進行方向の水平も大切ですが、実際は左右の水平具合の方が見た目の影響が大きいものです。
三列仕上げの敷石アプローチの施工では、特に左右の水平の仕上がりを慎重に確認していきます。
敷石の据え付けを終え、下地も固まった後に目地を詰め込んでいきます。
タイルや平板よりも目地が深く、多くのセメントを押し込みながら入れていきます。
目地セメントを入れ、刷毛処理を施した様子です。
石を敷いたという質感を大切に、必要に応じて粗さを出す事もあります。
目地周りを始め、全体を洗浄して仕上げとなります。
錆模様が浮き上がる、水に濡れた姿は一段と趣を感じる事が出来ます。
敷石アプローチからお庭の最奥部を渡り、主庭へ歩む飛び石の施工です。
予め私共にて形を吟味させていただいた飛び石をお庭へ搬入します。
敷石アプローチから繋げる様に仮置きをします。
国産御影石で厚みもあり、風情を感じられる飛び石です。
既存の排水枡を避ける様に周回する必要がありました為、お庭の奥まで歩むカーブを描きます。
歩幅や飛び石の向きが決まったら据え付けに取り掛かります。
据え付けを終えた飛び石の様子です。
重量もありますので据え付けにはコンクリートを使い、しっかりとした踏み心地と強度を確保します。
敷石アプローチからお住まいの犬走りへ上がれる道筋を付けました。
真っ平らな素材ではありませんので、目視と歩きやすさを目安にして据え付けております。
お庭の最奥部、燈篭周りの造園施工。既存庭木を剪定して採光・通風を確保します。
お庭への日当たりを妨げていた既存のモミジを剪定する親方。
強剪定ながらもモミジの柔らかな雰囲気を損なわない事が大切です。
お庭の裏手にあった大きなネズミモチは伐採処分とします。
大きな庭木は採光だけでなく通風も妨げてしまいます。
他にも既存のミカン、南天等を強く剪定する事でお庭の環境を改善致しました。
新たに植栽をする低木・下草類の生育の為にも大切な作業となります。
日当たりの戻ったお庭の奥の様子。
南天や千両はこのまま新たなお庭で活かす事となっております。
お庭最奥部に燈篭を据え、植栽と庭石を合わせた後に下草を添えます。
搬入する露地型燈篭です。
お庭へ運び、適所へ据え付けます。
落ち着きのある色彩と質感に重きを置いて選ばせて頂きました。
既存の南天・千両に付かず離れずの距離感を置き、様々な場所から眺めた上で据え付けを行います。
据え付けと微調整を終え、宝珠を据えて燈篭が決まります。
ここからはいかに燈篭の持つ雰囲気を引き出すかを考えた造園を施していきます。
燈篭の手前から被さる様に、適度にお庭の奥を隠す雑木の植栽です。
曲がりのある株立ちの植木は、雰囲気を損なわず流れに逆らわない様に植栽します。
燈篭の足元に据えた庭石です。
燈篭の位置をより奥深く見える様に演出し、角度を付けて地に流す据え付けにより、古くから存在するお庭の様な雰囲気を出します。
エゴノキに寄り添う様に低木のツリバナを植栽します。
雑木同士の植栽におきましては、枝を接触・交差させる事で雑木の雰囲気を増す事が出来ます。
雑木植栽の足元に、大小の小石を合わせます。
大きい庭石が小さな庭石に寄り掛かり、その接触部分に亀裂のある面を見せてあります。
イワナンテンや玉竜に合わせ、ラン系の下草類を添えて燈篭周りが落ち着きました。
適度に自然味を感じるお庭に。ここからアプローチ部分の造園へ移ります。
敷石通路沿いの造園施工です。 まずは主要な植木を植栽していきます。
お庭に搬入された植木を設計図面を踏まえて仮置きします。
実際に適した位置へ微調整を行い、場合によっては植木の位置をそれぞれ入れ替えたりもします。
ヒメシャラを植栽する親方。 背後に見える燈篭周りを意識して植栽します。
燈篭の前に雑木が重なり合うイメージを付け加えていきます。
植栽の際に、腐葉土を多めに透き込んでいきます。
植木の周囲だけではなく、後の低木植栽の為にも周囲に渡り土壌改良をしておきます。
主要な植木の植栽を終えた様子です。
お庭の形状が細長い通路状の為、どうしても植木が直線に並んでいる様に見えますが、この後の施工によって立体感を付けていきます。
植栽に与えた水が引いたところで、用土を使いながら地均しを行います。
一度地面を平らにする事で、低木・下草類や庭石に最大限の動きを付ける事が出来る様になります。
地均しが仕上がったお庭の様子です。
この様な処理によって敷石アプローチと庭の高さを正確に把握し、この後の造園に繋げます。
植栽に合わせて庭石を据え付け、低木・下草類を植えていきます。
低木を添える前提で庭石の位置を決めていきます。
小さな庭石でも植栽の引き立て役として扱い、よほどの理由が無い限りは目立ち過ぎない役割にしたいものです。
位置が決まった庭石は、微調整を行いながら突き固めて据えていきます。
庭石と引き立て合う低木のスペースを予め空けておきます。
庭石と耐陰性の低木植栽との相性。
静かに佇む庭石の横で植栽がいきいきと。
艶やかな植栽が日陰のお庭を彩り、対照的に庭石は苔生して物静かな雰囲気を増していきます。
植栽が直線的に見えない様、特に曲線模様を大切にデザインしていきます。
成長による動きを踏まえて植栽の種類を振り分けております。
空間部分に雑草対策の防草シートを施工し、その上から錆砂利を敷き込みます。
下草に隣接する空間へ、防草シートを敷いていきます。
地面を掘削し、完成後の砂利の厚みを確保してから施工に入ります。
継ぎ目をなるべく少なくする様に、防草シートを長く敷き、レイアウトの沿ってハサミを入れて仕上げていきます。
防草シートの整った部分から錆砂利を入れていきます。
歩行する部分ではありませんので、特に平らに仕上げていきます。
細かな部分は手作業で施工します。
細かな部分には指で砂利を押し込み、板を使って叩き仕上げを行います。
お庭最奥部には砂利止めを施工。既存の庭石も使ってお庭に馴染む雰囲気を。
砂利敷きの行き止まりとなる部分に庭石を低く組みつけていきます。
掘削した上にコンクリートを使い強度を充分に確保します。
既存の庭石も織り交ぜて砂利止めを施工致しました。
庭石の隙間から泥や砂利が流れない様に、細部までセメントを押し込みます。
組みあがった庭石に沿って防草シートを施工します。
雑草対策として細かな部分まで確実にハサミを入れて仕上げます。
お庭の最奥部まで砂利を敷き込み、敷石アプローチ側のお庭と一体となりました。
厚みのある飛び石は砂利の中でも存在感があります。
錆砂利を始め、各所造園資材を散水によって洗浄し、お庭が完成となります。
アプローチ部分の仕上げ洗浄後です。
散水により砂利を洗浄し、庭石や敷石をタワシによる手作業で洗います。
同時に植栽の葉についた埃も洗い流します。
お庭の最奥部の仕上げ洗浄後です。
飛び石が表情豊かになり、庭石も落ち着いた雰囲気を醸し出します。
写真手前部分は透水性舗装仕上げとなっております。
錆砂利を始め、各所造園資材を散水によって洗浄し、お庭が完成となります。
普段はつい見過ごしてしまいそうな、お住まい脇の通路を庭として捉えた和風造園。日当たりの良くない場所は特に悪条件と思われがちですが、風通しを確保する事により、意外にも植栽にとっては過ごしやすい空間となる事もございます。
日陰に対応する植木・下草は色彩の濃い物が多く、植栽後もお庭の環境に順応し、色濃く変化していく事もあります。 日陰のお庭に据えられた庭石は、それぞれの場所に応じて色も変化し、追々静寂な雰囲気を増していくという魅力がございます。
こちらのお庭の施工例解説は杉並区S様邸 敷石アプローチに添えた玄関前の和庭にてご覧戴く事が出来ます。
日陰の庭を美しく彩る造園手法。ご依頼、ご相談を心よりお待ち致しております。
それでは失礼致します。
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