トキワマンサク:左が白花・右が紅花

トキワマンサク:左が白花種・右が紅花種

トキワマンサクはマンサク科トキワマンサク属の常緑低木~中高木で、萌芽力が強く成型もしやすい事から、あらゆる植栽用途に使われます。

シンボルツリーや目隠しとして身近な存在ですが、やはりトキワマンサクと言えば生垣としての姿を多く目にされるかと思います。

枝いっぱいに細い花弁の花を付けるのが最大の魅力である他、ベニバナトキワマンサクはカラーリーフ植物としても人気です。

トキワマンサクの基本データ

  • 科名と属名 マンサク科・トキワマンサク属
  • 学名 Loropetalum chinense
  • 英名 Fringe flower, Evergreen witchhazel
  • 原産地 日本 中原産地国 インド
  • 分類 常緑広葉樹 低木~小高木
  • 放任樹高 4m~5m
  • 開花期 4月~5月
  • 主な植栽用途 シンボルツリー 生垣 目隠し

マンサクに似た花をたくさん咲かせ、葉が常緑(常盤)である事から「常盤のマンサク」という意味でトキワマンサクと呼ばれていますが、マンサクの方は落葉高木である上、異なる植物です。

花色の違いによって葉の色が異なる為、庭木の種類としても花色を冠して「ベニバナトキワマンサク」と「シロバナトキワマンサク」を分けて取り扱います。

トキワマンサクは中国からの輸入鉢に付いていた苗木が最初の発見だった為に中国原産と考えられていましたが、その後に日本国内での自生も確認されました。

 

作庭者から見ると「トキワマンサクはこんな庭木」

近年ではより多く姿を見る様になったトキワマンサクですが、作庭者の目線で考えますと以下の様なポイントが挙げられます。

おすすめなポイント

  • 紅花・白花で葉色も全く異なり、好きな方を選べる
  • 色鮮やかで数多く咲く花を楽しめる
  • 刈込によって成型しやすくシンボルツリーとしてもおすすめ出来る
  • 小さな葉と葉密度の高さで目隠しや生垣に最適

注意したいポイント

  • 花が多い為、落ちた後の掃除が大変
  • 葉に星状毛があり、衣服や手袋にしつこく付着する
  • 成長力があり、徒長枝やひこばえを必ず外しておく必要がある

それではこれらのポイントを交えながら、庭木としてのトキワマンサクについて解説をしてまいります。

 

枝葉に見るトキワマンサクの特徴

トキワマンサクは常緑樹でありながら繊細で細かい葉を持ち、花付きも良く和洋を問わない庭木として昔から親しまれています。

小さな葉がたくさん付いている為、トキワマンサクは樹形・枝ぶりはほとんど見えない事が多い庭木です。

生い茂った「葉の輪郭」そのものを形の基準とする事が多く、賑やかな庭木をお求めの場合はおすすめです。

ベニバナトキワマンサクの葉

ベニバナ・シロバナに関わらず、トキワマンサクの葉は小さくて数も多く、「葉密度が高いこんもりとした庭木」というイメージです。

トキワマンサク(紅花)の葉

トキワマンサク(紅花)の葉

ベニバナトキワマンサクの葉は紅色である事が知られていますが、厳密に言えば濃い紅色(銅葉)の木と緑色が残り枝先のみ紫色をしている木があります。

どちらにしましても紅色の印象である事は変わらず、ベニバナトキワマンサクはカラーリーフの庭木として重宝されています。

シロバナトキワマンサクの葉

白花トキワマンサクの葉

白花トキワマンサクの葉

こちらは白花トキワマンサクの葉です。

紅花種は葉や根まで紅色に染まっておりますが、白花の方は清涼感のある黄緑色で覆われます。

紅花とは異なる軽やかさがありますので、本数を多く植栽する場合は圧迫感の出にくい白花種を採用する事が多いです。

「星状毛」により衣服に付着しやすい葉

トキワマンサクの葉にある繊毛は星状毛という生え方をしており、これは繊毛が星形に広がって生えるタイプです。

布地に付着しやすいトキワマンサクの葉

布地に付着しやすいトキワマンサクの葉

この為、衣服に非常に付着しやすく、特に軍手に付いてしまうと一枚ずつ指で剥がさないと取り除けない程です。

ご自身でトキワマンサクの剪定を行う際はポリエステル生地の衣服を着用する他、軍手ではなくゴム系のグローブを装着する事をおすすめします。

 

トキワマンサクの枝

トキワマンサクは枝葉が多い庭木であり、その葉密度を作り出す枝はとても細かい印象です。

細さが特徴のトキワマンサクの枝

細さが特徴のトキワマンサクの枝

横向きの細かい枝は太さ2mm前後と非常に細く、この細かさを活かして更に枝葉を多く仕立てて目隠し用の庭木に仕立てられる事が多いです。

写真にも写っておりますが、剪定による切り口から細い枝が枝分かれして成長しやすく、葉密度の高い木に仕立てる事が非常に容易です。

枝が細い為に折れやすく、特に植える前の持ち運びや運搬時には注意が必要です。

 

トキワマンサクの花

トキワマンサクの開花期は4月~5月で、花期もやや長く楽しめます。

花は小さく、数個の花が一か所にまとまって咲いている形となります。

リボンや紐の様にも見える細長い花弁が特徴で、木全体に花を咲かせる様子はとても見ごたえがあります。

しかしトキワマンサクの花は咲き終わって落ちた花弁の掃除が大変ですので、これは予め考慮しておきたいポイントです。

先述の通りトキワマンサクには白花種と紅花種がありますので、それぞれを紹介します。

紅花(ベニバナ)

トキワマンサクの紅花

トキワマンサクの紅花

紅花トキワマンサクの赤い花は発色が強く、賑やかで豪華な印象があります。
花色は赤ではなく紅と呼ばれる様に紫がかったピンク色を見せてくれます。
特に発色の良い紅花種は、蛍光ピンクの様に豪華な発色を見せます。

白花

トキワマンサクの白花

トキワマンサクの白花

こちらは白花トキワマンサクの花です。
当然花色は白いのですが、葉の緑色とのコントラストが美しく、色の組み合わせとしては白いバラの様なイメージでしょうか。
たくさんの花が咲いても重い印象がなく、開花期はとにかくお庭が明るくなります。

 

ベニバナトキワマンサクが見せる紅葉

紅花トキワマンサクが見せる紅葉

紅花トキワマンサクが見せる紅葉

トキワマンサクは秋になると幹に近い部分の古葉を落としますが、ベニバナトキワマンサクの方はこの時期に美しい紅葉を見せます。

トキワマンサクは常緑樹でありますので、落葉樹の様に一面が真っ赤に染まる紅葉とは異なりますが、部分的に深紅が入る姿はとても美しく、おしゃれな紅葉といった雰囲気です。

白花トキワマンサクも秋に色変化を見せますが、こちらは黄色っぽく染まった後に部分落葉をします。

 

トキワマンサクはシンボルツリーに向く?

後述の目隠しや生垣として植栽される事が主流なトキワマンサクですが、実はシンボルツリーにも向いている庭木です。

シンボルツリーとして適した庭木は、単独植えでも立派で存在感がある、という事に加え、剪定による維持管理もしやすければベストです。

トキワマンサクはこれらの条件を満たす事が出来る庭木であり、尚且つ低木サイズで維持出来るというメリットもあります。

紅花トキワマンサクをおしゃれなシンボルツリーに

シンボルツリーとして成型されたトキワマンサク

シンボルツリーとして成型されたトキワマンサク

紅花トキワマンサクをシンボルツリーにすれば、そのレッドリーフが目を引き、玄関前のおしゃれなアイポイントとして活躍してくれます。

刈り込み成型による剪定であればご自身で行う事も可能であり、2m前後の低木シンボルツリーとして維持していく事も可能です。

端正に刈り込まれた樹形なら和風のシンボルにも

トキワマンサクを和風シンボルツリーとして

トキワマンサクを和風シンボルツリーとして

トキワマンサクは定期的な剪定により、細い「ローソク型」という仕立てが可能な庭木です。

特に和風の庭木においては様々な樹種がローソク型として仕立てられますが、トキワマンサクは特にスリムで端正な樹形を維持し続ける事が出来ます。

この為和風の庭においてのシンボルツリーとして植栽する事もあり、美しい葉色が和庭の中で引き立ちます。

尚、スリムなローソク型樹形を維持出来る和風仕立ては、チャボヒバという庭木もおすすめとなります。

白花トキワマンサクであれば清涼感のあるシンボルツリーに

白花種の清涼感もおすすめ

白花種の清涼感もおすすめ

こちらは白花トキワマンサクをローソク型に仕立てた樹形で、この様な形であればシンボルツリーにもおすすめできます。

紅花種と違ってこちらは軽い印象になり、和風建築にもマッチし、飲食店舗への植栽ならおしゃれな雰囲気づくりに役立ってくれます。

 

尚、トキワマンサクに限らずシンボルツリーをお選びされている方は、シンボルツリーの選び方とおすすめ樹種についてのページもご参考いただければと思います。

 

生垣・目隠しに最適なトキワマンサク

トキワマンサクは葉密度の高さ、刈り込みに負けない強い萌芽力を持った庭木ですので、目隠しや生垣用としても広く知られています。

刈り込む程に枝数も増えて葉も増える為、初めから密度の濃い仕上がりにしておく必要はありません。

トキワマンサクであれば、成長によって数年以内に濃い目隠し効果を発揮します。

トキワマンサクの生垣

トキワマンサクの植栽で最も多い、生垣仕立て。
単体植えでも美しい景観となりますが、列植をしやすい樹形、目隠し効果を活かした生垣とするのが主流になりつつあります。

紅花トキワマンサクの生垣

植栽して翌年から少しずつ刈り込みを行えば、枝数が増えて生垣らしい景観になっていきます。
濃緑色とは異なる、独特の色合いが洋風ガーデンにもマッチします。

少し間を空けて植えたトキワマンサク
こちらは生垣の場合よりも少し間を空けて植栽したトキワマンサクです。
数本規模の列植であれば、1本ずつ木鋏で剪定する事も容易ですので、生垣とは異なる軽快な目隠しに仕立てる事が出来ます。
トキワマンサクは光が入りますと葉色がより美しく見えますので、こうした空間を設ける植栽もお勧めとなります。

袖垣風に仕立てたトキワマンサク

玄関脇を目隠しするトキワマンサクの生垣

玄関脇を目隠しするトキワマンサクの生垣

こちらは玄関脇の目隠しとして生垣調に列植したトキワマンサクです。
目隠し効果も高く、個性的な色合いがエントランスをおしゃれに見せてくれます。

隙間を空けた白花トキワマンサクで軽やかな目隠し

隙間を空けた軽快な目隠し

隙間を空けた軽快な目隠し

色が明るく軽やかな白花トキワマンサクに、やや隙間を空けて「列植」とした手法もおすすめです。

紅花種ですと隙間がハッキリとした印象になってしまいますが、白花種ですとシルエットが柔らかい為、この様に隙間を空けた植栽でも自然に見えます。

葉が小さく清涼感のある白花トキワマンサクは、ナチュラルなお住まいに非常にマッチします。

トキワマンサクにおすすめな「生垣」について詳しく解説しているページもありますので、併せてご参考下さい。
関連記事>>>生垣とは?メリットや注意点、おすすめ全21種類を花・洋風・低木等のテーマ別にご紹介

 

トキワマンサクの成長と適した環境

トキワマンサクは枝が細い為にご自身でのカットもしやすいのですが、剪定維持によって形が整ってくると毎年の走り枝も強くなる傾向があります。

生垣の場合は越境も考慮しておく

生垣の場合は越境も考慮しておく

写真の様に道路沿いの生垣仕立ては歩道へはみ出しやすいので、こまめな刈り込みが必要になります。

トキワマンサクは特に頭部分からの伸びが顕著で枝数も多く、刈り込みポイントが高い位置にある場合はご自身での作業は困難になります。

トキワマンサクの適応環境

トキワマンサクはとにかく日当たりの良い場所を好みます。
暗い日陰ですと生育は極端に悪くなり、葉の数は半分以下になります。

しかい明るい日陰の場合は葉のツヤが増して大きくなります。
この姿はとても美しいのですが、花が咲かなくなるケースが多いのでご注意ください。

また、日光が少ないと育たない傾向は部分的な面にも表れます。
壁側や足元、太陽を背にした裏側、などは部分的に葉が少なくなりますので、予め植栽計画時に考慮しておきましょう。

乾燥にはいくらか強い

トキワマンサクは剛健な庭木でありますので、乾燥にも耐えやすい木ではあります。
マンサク科の木は剛健な面がある為に、庭木生産者や問屋の方も安心して取り扱っている程です。

ですがトキワマンサクは日当たりが強く乾燥もしやすい場所に植えられるケースが多い為、夏場は乾燥が続かない様に水遣りをしてあげましょう。

寒さに弱い一面

丈夫な常緑樹というイメージのトキワマンサクですが、寒さに弱い面があります。
シマトネリコやホンコンエンシス程の傷みは見せませんが、関東よりも北での越冬は難しいとされています。

関東北部での植栽では、冬も寒さに晒されにくい南側を選んであげるのが良いでしょう。

 

トキワマンサクの育て方

適した土

トキワマンサクは水捌けが良く有機質に富んだ土壌を好む植物です。

水捌けを改善する赤玉土に加え、腐葉土を豊富に混ぜ込んだ用土を用意しましょう。

植え付け

植え付けの時期は成長期目前の春(4月~5月)または暑さを過ぎた秋(9月~10月)に行います。

トキワマンサクの植木はポットに植えられた状態が多く、植え付けをする日までは乾燥させない様に水やりをしておきましょう。

水やり

乾燥に強い植物ですので年間気を使う必要はありませんが、道路沿いの生垣などの場合は夏の乾燥と高温が激しい為、夕方の水やりは必要だと思っておきましょう。

肥料

1~2月:寒肥として骨粉、油かす等の有機肥料を周囲へ埋め込む

9月頃:追い肥として緩効性の化成肥料を撒く

病気や害虫対策

トキワマンサクには虫害はほとんど起こらず、この点はメリットと言えます。

ただし稀にハマキムシやカミキリムシ、弱った木にはカイガラムシが付く事はあります。

トキワマンサク自体は甚大な被害を受ける事は少ないのですが、これらの害虫は庭の他の木へ移っていくと被害が大きくなります。

また、陽当たりと風通しが不足気味の場所ですとうどんこ病を発症する事もあります。

やはり病害虫の予防措置として、殺菌剤・殺虫剤は全体に散布しておく事が望ましいです。

 

トキワマンサクの剪定方法

特徴の解説でも述べましたが、トキワマンサクの手入れをする際は軍手をしておりますと葉がたくさんくっついてきてしまいます。

葉にある繊毛が軍手に付きやすい為、ゴム製の作業手袋などがお勧めです。

トキワマンサクの刈り込み剪定

トキワマンサクの刈り込み剪定

トキワマンサクは特に生垣の場合、広範囲に植栽されている事が多いので、手早く作業を進める考えも必要です。
よほど太い枝でなければ刈り込み鋏によって大まかに形を整えてしまい、後から目立つ切り口を見付けて木鋏で取り除く、といったローテーションで行いますと広範囲の作業もしやすくなります。

刈り込み剪定で整えたトキワマンサク

刈り込み剪定で整えたトキワマンサク

芽吹きは強い植木ですので、思い切った刈り込みをしませんと年々大きくなってしまいます。
葉が少なくなってしまったかな、という程度まで刈り込んでおく事が景観維持に繋がります。

地面からの「ひこばえ」と徒長枝を外す

トキワマンサクは、特に勢い強く走る徒長枝が各所から発生しますが、発見して外す事は容易です。
横向きにゆっくり伸びる小枝とは明らかに勢いも角度も異なっており、これらは必ず発生点から外しておきましょう。
放っておいてしまいますと大事な小枝の中へ割って入って成長を続け、樹形を担う小枝を枯らせていってしまいます。

また、地面から新たな幹の様に吹き出すひこばえの力が強く、これも外しませんと幹がいつの間にか増えている様な密生状態になります。
こちらも発生したてであれば容易に取り除く事が出来ますので、きちんと元から外しておきましょう。

 

まとめ

トキワマンサクのご紹介でしたが、如何でしたでしょうか。

剪定によって樹形を作りやすく、トキワマンサクの様にあらゆる用途で使える庭木はそう多くはありません。

庭木でちょっとした目隠しをしたい、コンパクトなシンボルツリーが欲しい、という時には、是非トキワマンサクをご検討されてみては如何でしょうか。

 

執筆者:新美雅之(新美園HP作成・作庭者)

執筆者:新美雅之庭木や庭デザインについて、作庭者の経験を活かして現実的に解説をするコンテンツを目指し、日々執筆しています。