マサキはニシキギ科・ニシキギ属の常緑樹であり、古くから目隠しや生垣用として植えられてきた常緑樹です。
本種のマサキは葉が濃緑一色であり、決して明るい印象ではありませんが、日陰でも育つ植木としてクチナシやセンリョウ、アオキやヒイラギナンテン等と共に植栽されてきた歴史があります。
現在はカラーリーフのマサキが多く流通しており、キンマサキ・ギンマサキ・ベッコウマサキなどが有名です。
日陰でこの様なカラーリーフを取り入れられる植木は貴重であり、かといって日向でも問題なく育つという剛健な面を持っております。
マサキであれば乾燥や大気汚染にも強く、植栽シーンを選ばないというメリットがあります。
マサキ(柾・正木)の基本データ
- 科名・属名 ニシキギ科・ニシキギ属
- 学名 Euonymus japonicus
- 分類 常緑高木
- 放任樹高 6m
- 原産地 日本 中国 朝鮮半島
- 主な植栽用途 生垣 目隠し 防風林 日除け
マサキ類は総じて乾燥や大気汚染に強く、植栽シーンを選ばない多様性が大きなポイントとなります。
作庭者から見ると「マサキはこんな庭木」
昔から現在に至るまで庭木として使われる事が多いマサキですが、作庭者の目線から考えますと以下の様なポイントが挙げられます。
おすすめなポイント
- 葉色の種類が多く、カラーリーフの庭木としても楽しめる
- 2m程度の樹高で維持する事が可能
- 葉が多く萌芽力も強く、おしゃれな洋風生垣としての代表種
注意したいポイント
- 新芽展開の時期に古葉が一斉に落ちる事も
- 新芽を食べ尽くすミノウスバが寄生しやすい
- 縦方向の枝成長が早い
それではこれらのポイントを交えながら、マサキについて解説をしてまいります。
品種ごとに見るマサキの葉色
マサキの葉には多くの種類がありますが、総じて小さくツヤがあり、葉数が多いという特徴があります。
葉の色が異なる変種が多く、これにより全く異なる木に見える程です。
よく扱われるマサキの種類を見てみましょう。
本種のマサキ
学名:Euonymus japonicus
古くから植栽されてきたマサキはこの本種であり、濃緑色一色の葉を持ちます。
青々とした印象はアオキやクチナシと似ており、存在感も強い品種です。
長距離の生垣に使うとやや重い印象を受けますので、1本植えのローソク仕立てや短い距離の生垣としておすすめです。
オウゴンマサキ
学名:Euonymus japonicus cv.
新芽が明るい黄色に染まっている種類で、最もイエロー感が強いマサキです。
遠くから見ても明るく目立つ庭木で、イエローカラーリーフでは最も明るい庭木かもしれません。
この種類も存在感が非常に強いので、1本植えを刈り込み仕立てにするなど、ワンポイントを飾る植栽としておすすめ出来ます。
キンマサキ
学名:Euonymus japonicus ‘Aureovariegatus’
新芽に限定されず、全体的に黄斑が入る葉を持つマサキです。
近年では最も流通量が多く、生垣もこのマサキで作られる事がとても多くなりました。
遠くから見ると黄色がバランス良く散りばめられた様なカラーで、距離の長い生垣としても美しい品種です。
洋風で軽やか、おしゃれな生垣としておすすめです。
ギンマサキ
学名:Euonymus japonicus ‘Albomarginatus’
葉に入る班が乳白色に近く、イメージとしてはキンマサキのイエロー部分が白味掛かった様なカラーを持ちます。
キンマサキが洋風出るならばギンマサキはナチュラル~モダンな雰囲気を感じられ、マッチするシチュエーションも多いのではないかと思います。
洋風なイメージでも清々しさが欲しい、そんなイメージにぴったりのマサキではないでしょうか。
マサキの生育傾向
枝の伸び方
マサキ類はとにかく真上へ枝を伸ばす傾向が強く、樹形そのものも縦向きの枝の集合体といった様な感じになっております。
ですので横方向への過剰な生長は困らないのですが、縦方向へ勢い良く伸びる習性は予め考慮しておく必要があります。
特に樹高を低く抑える事を目的とする場合は、他の庭木も候補として考える事が必要です。
伸びは早いのですが枝そのものは柔らかく、この点は剪定も楽に感じられます。
強い刈り込みに堪える萌芽力
マサキは枝を切断された後の芽吹きが強く、この特性も生垣向きである理由です。
葉の無い部分まで深く刈り込まれても枝数を増やす様に萌芽し、目隠し効果も十分に得られます。
意外と多い落ち葉に注意
マサキは新芽を全体に展開させる際に一斉に葉を落とす事があります。
普段の生育期でも成長に伴って古い葉を落としますが、春の葉の入れ替わりの時期は本当に多くの葉が落ちます。
キンマサキなどは新芽が膨らむ際に、新芽しか無くなってしまう事もあり、重要な部分の目隠しとして植栽する際は要注意となります。
マサキを洋風シンボルツリーに
マサキには葉の鮮やかなカラーリーフもある事から、住まいを引き立たせるシンボルツリーとして植栽する事もあります。
特に耐陰性を活かして北側玄関へ植栽できる強みがあり、周囲を明るくする洋風シンボルツリーとして活躍します。
キンマサキを洋風のお住まいのシンボルツリーとした植栽実例です。
白壁が美しいお住まいにキンマサキのシルエットが映え、おしゃれな外観にする事が出来ています。
マサキは刈り込み剪定によって幅を小さくするのは容易な庭木ですので、花壇や小さな植栽スペースを活かす事も出来ます。
生垣用として有名なマサキですが、形を維持しやすい特性から1本植えでも美しい事がお解りいただけると思います。
シンボルツリーのマサキであっても、年に一度の刈り込みによって十分維持していく事が出来ます。
植栽の中のワンポイントにも
こちらは細長いスペースへ植栽デザインを施した際、ワンポイントのカラーリーフとして植栽したキンマサキです。
左右はフェイジョアやヒメシャリンバイ等の濃緑色の庭木であるので、このマサキのカラーリーフがとても引き立ちます。
同時に左右の庭木のグリーンも映える様になり、景観上、いわゆる相乗効果を得る事が出来ます。
特に明るい日陰への植栽ですとマサキの効果は大きく、是非取り入れていただきたい庭木です。
マサキを生垣として
マサキ類はその葉の充実さと列植に耐える性質から、近年では目隠しの生垣として植栽されるのが主流になっております。
排気ガスなどにもある程度耐える事から、車道沿い・道路面への目隠しとして活躍しています。
とにかく縦方向へ伸びたがりますので、刈り込み剪定の際は横面はスムーズに行う事ができ、生育力の割には横面を気にし過ぎる必要はありません。
日陰でも育つキンマサキは、その特性を活かせば暗めな日陰を見違える様に明るくしてくれる効果を発揮します。
日陰へ植栽する際は、風通しや周囲の空間を確認しておき、うどん粉病へ警戒しておく事が望ましくあります。
こちらの施工例では静かな住宅街の道路沿いへキンマサキの生垣を施工しております。お庭の雑草対策と平行して施工を致しておりますが、砂利の明るさとキンマサキのイエローリーフが大変明るい光景となっております。
目隠しの生垣施工に合わせて快適な雑草対策を-市原市D様邸
こちらの施工例は日陰のお庭へキンマサキを生垣として植栽しております。既存の人工竹垣が目隠しとして設置してありましたが、下半分が空間となっている為に背後のブロック塀が見えてしまうという景観上の問題がございまして、そちらをキンマサキの生垣で補う事を目的としております。
人工竹垣の下空き部分を補うキンマサキの生垣-松戸市H様邸
マサキにおすすめな「生垣」について詳しく解説するページもありますので、併せてご参考下さい。
関連記事>>>生垣とは?メリットや注意点、おすすめ全21種類を花・洋風・低木等のテーマ別にご紹介
マサキの育て方
適した環境
日陰の木というイメージを持たれるマサキですが、生育的には日向が適しています。
あくまでも「日陰でも育つ」という特性ですので、丈夫に美しく育てる場合は日向への植え付けをしましょう。
日陰でも暗い場所は適さず、意外な程に下の方から枝を枯らす傾向があります。
適した土質
マサキは土質を選ばず乾燥しやすい砂質土でも生育は可能ですが、植え付ける時は水捌けの良い土を作りましょう。
ジメジメした土は避ける為、赤玉土で水捌けを改善する事に加え、腐葉土を混ぜ込んで腐植質を多くしてあげるのもポイントです。
植え付け
植え付けの時期は春前の3月~4月、秋の9月~10月が適期とされます。
真夏は避け、常緑樹ですので寒い時期に行うのも良くありません。
マサキの根は太めの細根が密生しており、この根と土をよく密着させるのがポイントです。
植え付け後は水鉢として周囲に土を盛り、たっぷりと水を溜める様にしましょう。
水やり
乾燥に強いマサキですが、旺盛な新芽展開をする春や乾燥の強すぎる夏は水やりが必要です。
生垣としてこんもり育ったマサキであれば株元も日陰になっていますが、しっかり育つまでは地表の乾燥に目を配る事が大切です。
肥料
肥料は生育期は特に必要とせず、寒肥が中心となります。
生育期を控えた2月頃、油かす等の有機質肥料を株元周辺へ浅く埋めておくと効果的です。
病気・害虫対策
マサキのうどん粉病
陰地でも育つ事は大きなメリットとして捉えられますが、あまり風通しの良くない場所や地面がすっきりとしていない場所ですと、マサキは全体的にうどん粉病を発症するケースが見受けられます。
こまめな刈り込みでスッキリしておく事や、周囲の風通しを妨げない工夫が効果的です。
新緑に発生する毛虫(ミノウスバ)に注意
マサキの大敵として真っ先に挙げられるのが、5月頃に新芽を食べ尽くすミノウスバという毛虫の大量発生です。
食害するスピードが極めて速く、気が付いた頃にはあちこちの葉が食い散らかされているという事が起こります。
毛虫自体が初期の小さい時から食害を始める為、毛虫の姿に気が付かない事がほとんどです。
ミノウスバの被害は新芽が充実してきた5月に突然葉が無くなるイメージですので、農薬の予防散布もしくは粒状(浸透移行性)の殺虫剤を株元に撒いておきましょう。
ふやし方
マサキを増やすには「さし木」が容易でおすすめです。
成長期にあたる6月~9月辺りがさし木の適期であり、まず本年に伸びた元気の良い枝を20cm弱の長さで切り取ります。
マサキの枝には葉が多く付いていてそのままではさし木として使えませんので、上部1/3程度の葉だけを残して後はむしり取ります。
そのまま土へさしておけば発根しますが、それまでは直射日光が当たり過ぎない場所が適しています。
やはりさし木は置き場所を変える事が出来る鉢植えで行うのが望ましいでしょう。
マサキの剪定方法
マサキの剪定適期は6月と10月頃であり、生垣の場合はこの時期に合わせて2回行う事になります。
刈り込み直後に育ってくる新芽は夏の日光に弱く、真夏の刈り込みを避けるのはこの為です。
徒長枝はとにかく真っ直ぐ上へ立ち上がってくるので、まずはこれらの枝を元から外していきます。
残った枝葉は意外にも生育が大人しく柔らかい為、サクサクと軽く刈り揃える事が出来ます。
生垣でも1本植えの木でも基本的にはこの方法で剪定する事となります。
横面の枝葉は柔らかくカットしやすい感触ですが、手間が掛かるのは生垣の天端部分で、無数の徒長枝が飛び出してきます。
樹高を極端に低く保とうとすると年々の伸びも旺盛になりがちで、やはり人の背丈程度の樹高を保つのがベストと言えます。
ご自身にて刈り込みを行うのであれば低い生垣の方が安全に行いやすいので、低い生垣に仕立てて年に二回ほど刈り込むのが最良かもしれません。
まとめ
以上マサキのご紹介でしたが、如何でしたでしょうか。
マサキは芽吹きが良く整形しやすい庭木として、DIYで植えられる事も多い庭木です。
その為ホームセンターでも商品として置かれている事もあり、根鉢も小さく持ち帰りやすい木と言えます。
ちょっとした洋風シンボルツリーや生垣として、是非お庭へ植えてみては如何でしょうか。
執筆者:新美雅之(新美園HP作成・作庭者)
庭木や庭デザインについて、作庭者の経験を活かして現実的に解説をするコンテンツを目指し、日々執筆しています。