今回は荒川区のM工務店様社屋での、植栽工事の様子をご紹介致します。
植栽工事を行うのは出入り口ドアの左右に設けられた2つの植栽スペースで、奥行き・幅共に1m以下というコンパクトな場所です。
植栽スペースとなるのはコンクリート打設時にくり抜かれた形であり、個人邸でもこの形はよく見られます。
一見して植木を持ち込むのは難しく感じられるかもしれませんが、樹種をしっかり選ぶ事で見違える様な雰囲気を作る事が出来ます。
左右の花壇へシンボルツリーを植栽
右手の花壇へシンボルツリーとなるソヨゴを立て入れます。
質の良くない土やガラ(石やコンクリート片)は既に取り除いてあり、植木を入れてから客土を行っていきます。
こちらの花壇も同様にソヨゴを搬入、位置決めを行います。
既にスポットライトの配線がありますので、それらを避ける様にレイアウトを行います。
ソヨゴは根の張りも非常に穏やかですので、配管類や電線への配慮も最低限で済みます。
特にシラカシやシマトネリコ、オリーブ等を植栽する場合は、成長の旺盛な根が設備に干渉する事に注意が必要となります。
シンボルツリーのソヨゴを立て入れた後、客土する土を配合します。
弊社ファームの土、いわゆる畑土をベースとして樹皮堆肥や赤玉土を混合していきます。
土壌改良としては程良い保水性も大切ですが、四方を囲われた狭い花壇では水捌けも重要な要素となります。
ジメジメした土壌では酸素も少ない密閉空間になり、根の生育も極端に悪化して、場合によっては根腐れからの枯死も起こり得ます。
土を入れながら、円形に土手を作って水を溜めていきます。
これを水決めと言いますが、水分を与えるというよりも水によって土を細部まで活着させるという意味合いを持ちます。
シンボルツリーの植栽を終え、既に接続済みのスポットライトの位置を決めます。
コンクリートやタイルテラスへの設置とは異なり、土へのスポットライトの設置は土へ本体を差し込むだけなので容易です。
多少の移動であれば後でも調整が出来る為、土面への設置はおすすめとなります。
低木類をレイアウト
花壇の角へはベアグラスをレイアウト。
この植物は下部自体が大きくなってくる成長を見せる為、2方向は成長で花壇外へ越境させる事を想定します。
花壇の中へ完全に収めてしまうとゆくゆく花壇全体を覆ってしまう為、大きく膨らんだ姿を想定しましょう。
こちらは低木コニファーであるブルースターです。
冬季なのでやや紫がかったカラーをしていますが、暖かい生育期には綺麗なブルーリーフを見せてくれます。
イエローリーフは数多くありますが、綺麗なブルーを見せる庭木はなかなかありません。
個性的なカラーを取り入れられるのもコニファーの魅力と言えるでしょう。
こちらも低木コニファーですが、ウィルトニーという這性コニファーとなります。
ブルースターは膨らむ様に成長するタイプですが、ウィルトニー等の這性コニファーは枝がはっきりとしており、これが横方向へ伸びてくる成長を見せます。
コニファーは基本的に葉のある部分であればどこをカットしても萌芽しますので、ご自身での剪定管理も容易です。
木立型、いわゆる普通の木の形をしているコニファーですと刈り込みに手を焼くかもしれませんが、このタイプであれば作業も行いやすく、綺麗な姿を維持する事にも繋がります。
空間へレンガチップを敷き詰め
植物の無い空間となる土部分へは、装飾と乾燥抑制を兼ねてレンガチップを敷き詰めていきます。
チップや砂利を撒く時は防草シートを敷く事がほとんどですが、陽当たりの少ない花壇や低木レイアウトを施した場所ですと、土へ直接敷き込む形となります。
レンガチップは明るいカラーもあるのですが、この様に色を抑えたものもおすすめです。
特に日陰環境の場合は水分が乾きにくく、明るいレンガチップが黒ずんでしまい目立つ事もあります。
シックなレンガチップであれば植栽よりも目立つ事がなく、緑が綺麗に見えるというメリットが得られます。
洋風であればつい色々な部分を華やかにしてしまいがちですが、植物の緑とのバランスを考えてみる事も必要です。
植栽工事を終えた花壇
出入口を挟む2つの花壇への植栽工事を終えた様子です。
左右雰囲気が揃った仕上がりとなっており、統一感も出せたのではないかと思います。
特にシンボルツリーのソヨゴは左右とても似た樹形を選んでおり、当然同ロットにて仕入れた2株をお納めしております。
特にソヨゴは葉性の違いが何種類か存在する庭木であり、同じ「ソヨゴ」でも並べ比べると全く異なる木である場合はよくあります。
成長も緩やかなシンボルツリーで歩行を妨げず、維持もしやすく乾燥にも耐えやすい低木でまとめてみましたが、シックな洋風感を感じられる様になったかと思います。
今回の植栽工事の施工例は日陰の2つの花壇へシンボルツリーと低木によるレイアウトを-荒川区M工務店様にてご覧いただけます。
閲覧されているお客様のお住まいにも、小さな植栽スペースがあったりするのではないでしょうか。
環境確認や植樹目的を明確にする事で、小さな場所でもおしゃれな植栽レイアウトを施せるものです。
是非ご参考を戴き、素敵な空間をお作りになられては如何でしょうか。
執筆者:新美雅之(新美園HP作成・作庭者)
作庭・植栽工事をしながら撮影を行い、これから庭づくりを目指す方に役立つ「工事ダイジェスト」を目指して執筆をしています。
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