F様邸には道路に面した花壇が備えられており、シンボルツリーとしてシラカシが植わっていました。
シラカシは狭い場所や外壁沿いに植栽すると後々弊害が起こりやすい庭木です。
成長が早い為に歩行場所に干渉する事が多く、何度も切り戻しをされるとすぐに幹や枝が太くなり、成長速度も増していくというケースが多いです。
今回はこのシラカシを別のシンボルツリーへ植え替える事をメインに、低木や洋風庭石によるアクセントも加えさせていただきました。
シンボルツリーは手間の掛からないソヨゴへ植え替え
シラカシは成長力が強く、伸びを制約される場所への植栽はおすすめ出来ません。
例えば道路沿いや隣地境界はもちろん、普段からよく歩く玄関周りも例外ではありません。
この様な場所ですと少しでもシラカシが伸びた際に枝を切り詰めてしまいがちであり、これがシラカシを更に伸ばす原因となってしまいます。
今回の様に道路沿いの玄関付近、となりますと、相当に管理の楽な樹種を選択するのが賢明と言えるでしょう。
こちらのシラカシは止む無く抜根とし、新たなシンボルツリーとして樹形の整ったソヨゴへ植え替えます。
シラカシは根の成長も速く、極めて硬く頑丈な根を走らせます。
シラカシの根は浅根だけに留まらず、横方向へ成長しにくい場合は直下へも太い根を展開させます。
この太い根は水道・配水管を傷める原因になる事もありますので、シラカシの植栽計画は慎重に行う事をおすすめします。
しかしシラカシは成長が早く非常に剛健な庭木ですので、とにかく木を大きくしたい場所や他の樹種だと成長が難しい過酷な場所への植栽には重宝します。
関連記事>>>シラカシとは?目隠しや生垣への活用方法、他のカシとの違いや剛健な性質も解説
新たなシンボルツリーとなったのは樹高2.5mの単幹、いわゆる一本幹の樹形です。
一本幹の樹形は株立ちと異なり整ったシルエットが特徴で、株立ちの持つナチュラル感とはまた違った洋風テイストが感じられます。
シラカシによって陽が全く入らなかった窓も明るくなり、何よりもソヨゴは成長が緩やかである事が最大のメリットと言えるでしょう。
外壁にも再び陽が当たる様になりましたので、建物にとっても非常に良い環境改善となりました。
成長に緩やかさを備えた庭木であれば、今回の植栽の様に窓の近くやポストの側でも安心です。
加えて虫による被害にも遭いにくい為、ソヨゴはあらゆる面でメリットの多い樹種と言えるでしょう。
植栽した時期はちょうどソヨゴの実が多く付いており、この赤い実と緑葉とのコントラストはとても美しいものです。
ソヨゴの実は食用ではなくあくまでも観賞用ではありますが、鳥に食べられてしまう事も少なく、比較的長い間楽しめるのが魅力です。
ソヨゴの基本として雌雄異株という特性があり、雌株の木でありませんと実は成りません。
雄株と雌株では、咲く花も雄花・雌花として異なりますので、見た目もやや違う印象を受けます。
しかし実の成らないソヨゴの雄株も、剛健で逞しい樹形になりやすいというメリットがあり、雑木の庭の中にあえて雄株のソヨゴを植栽する事もあります。
しかしソヨゴの流通としては圧倒的に雌株が多いですので、雄株を探す方がかえって難しいかもしれません。
関連記事>>>ソヨゴの特徴や魅力を解説-成長の緩やかさを活かしてシンボルツリーや目隠しにしてみよう
シンボルツリーとサブツリーのバランス感を大切に
シンボルツリーのソヨゴを引き立てる様に、サブツリーも植栽された花壇。
常緑ヤマボウシ(ホンコンエンシス)とオガタマが整然と並び、窓の高さへ緑を添える様にされています。
サブツリーと言いましても、樹種によってはシンボルツリーの樹高を簡単に追い抜いてしまい、景観バランスが崩れてしまいます。
サブツリーとして維持するのであれば樹高はある程度抑えられる樹種を選ぶ事が肝心であり、可能であれば放任しても樹高が3m以内に留まる「低木種」を選ぶのがおすすめです。
オガタマは低木に分類されますが、常緑ヤマボウシの方はきちんと剪定管理を行いませんと樹高はみるみる上がっていってしまいます。
年に一度の剪定を念頭に置き、シンボルツリーとのバランスを維持していくのが望ましいでしょう。
様々な樹形・葉色を組み合わせる低木植栽
足下には様々な低木類を植栽しており、樹形や葉色の違いが賑やかな雰囲気を感じさせてくれます。
花壇である以上、特有の乾燥しやすさに耐え得る樹種である必要もあり、これはトベラ類やコニファー系統であると安心です。
手前の色鮮やかな低木はトベラの仲間であるピットスポルムという低木であり、繊細で丈夫な葉を持ち、プリペットの様な洋風のイメージを得られます。
しかしプリペットの様に強い成長に悩まされる事もなく、比較的維持がしやすい洋風低木と言えるでしょう。
近年では手軽に取り入れられるようになったマホニアコンフューサも剛健な低木ですが、この樹種は寄せ植えと単独植えで印象がかなり異なります。
今回の様に独立させた植栽でも濃緑の列状葉が目を引き、モダンな雰囲気を得る事が出来ます。
コニファー類だけでなく、今回は既存でありました久留米ツツジもレイアウトし直しております。
ツツジはきちんとした散水管理を行っていれば花壇の様な場所でも生育が可能で、これは盆栽でツツジが多用されてきた事からも解ります。
ツツジの細かい根は実は湿り過ぎた環境をとても嫌い、根腐れを起こしやすい木でもあります。
いつもジメジメとさせるのではなく、乾燥と湿潤を繰り返す様な管理が向いています。
植栽を行わない空間はシックな色合いのレンガチップで仕上げており、全体的に洋風ナチュラルといった雰囲気を意識致しました。
砂利敷きによって雑草と泥跳ねを抑制
砂利敷きと言えばお庭全体へ撒くイメージを持たれるかもしれませんが、泥跳ね対策としての側面も持っています。
お住まい周囲が土のままですと降雨によって泥が跳ね、意外と高い位置まで外壁を汚してしまうものです。
外壁の汚れは放置すると落ちにくくなってしまうもので、特にご新築の際は早めの泥跳ね対策が望まれます。
写真の様に外壁周囲へ砂利敷きを施す事で、雨が降っても泥が跳ねなくなり、同時に植物が育ちにくい場所をおしゃれに見せる効果も発揮します。
また、外壁沿いの土面は乾燥を起こしやすく、こうなってしまうと野良猫のトイレにされてしまうケースが多いものです。
砂利敷きにしてもこれを完全に防ぐ事は保証出来ませんが、ある程度の抑止効果は見込めます。
花壇へ庭木をバランスよくレイアウトすればお住まいもおしゃれな景観に生まれ変わりますので、今回の様な植栽リフォームも含め、現状にお悩みの方も是非ご相談を戴ければと思います。