N様邸は駐車場として広範囲にコンクリート打ちが施されておりましたが、植樹用とアプローチ制作用として、二ヵ所がくり抜く様に残されておりました。
そこで弊社にて、この二ヵ所を利用してシンボルツリーの植栽と、ナチュラルな玄関アプローチ作りをさせていただく事となりました。
駐車場をくり抜いたスペースに施工した、枕木敷きのアプローチです。
当初はアプローチ全面で植物が繁茂するデザインも検討致しましたが、やはり歩きやすさとメンテナンス性を考慮し、砂利空間と下草が共存するデザインとなりました。
近年の枕木は防腐剤の注入技術も上がっており、一昔前の製品よりも耐久性も高くなっています。
また、防腐技術によって無理に厚みのある枕木を使う必要もなくなり、施工性・適応性も向上しています。
黒ずみが強かった従来品とは異なり、この様に木材らしさを残した景観も楽しむ事ができ、ナチュラル感を演出したいアプローチにはおすすめなマテリアルと言えるでしょう。
左右のコンクリートエリアからも踏み入られる様に、枕木の高さは周囲と合わせたフラット仕上げに。
枕木同士の隙間にも植栽を施す事もありますが、それは庭の中のアプローチである事が多く、普段の生活で使う玄関アプローチの場合はとにかく歩く事が容易な作りにしたいものです。
雨に濡れた下草が服に触れますと、想像以上に濡れてしまうものです。
雨上がりの雑草の上を歩くと驚く程に靴が濡れるのと同じで、これを考えますと枕木同士の隙間には植栽をしない事がおすすめです。
また、当初は草丈の低い植物であっても、成長によって大きく塊状になる事もあり、つまずいてしまう危険性も考慮する必要があります。
北側である為、植栽は半日陰を好む玉竜やセキショウ、ヤブコウジなどでまとめ、野趣も感じさせます。
ナチュラル感を演出したい時はやはり割れ肌の砂利がよく馴染みます。
やや大粒で割れた砂利は散らかりにくいというメリットがあり、これもアプローチへおすすめな理由と言えます。
玄関からのステップを下りるポイントは植栽をせず、枕木と砂利敷きのみの空間にしています。
下りる場所に、踏まない様に気を遣う植物がありますと、場合によっては危険も伴います。
アプローチを渡って向こう側へも気軽に抜ける事が出来る様になっており、あくまでも生活動線を優先したデザインにしています。
角にくり抜かれたスペースへは、イロハモミジをシンボルツリーとして植栽しました。
ナチュラルシンボルツリーと言えば「株立ち樹形」を連想される方も多いと思いますが、この様にどちらかへ樹勢を傾けたい場合は単幹(1本立ち)樹形の方が自然な景観を作り出せるものです。
特にモミジは自生地の姿はほとんどが曲がりを持った1本立ちであり、この自然に形作られた姿こそが魅力と言えるのではないでしょうか。
敷地の外から眺めれば、イロハモミジとナチュラルなお住まいが一体となった景観を楽しめます。
下枝の少ない自然な1本立ちの木であれば周囲を歩きやすく、頭上に枝葉が自然に展開する美しさを取り入れる事が出来ます。
例え1本のシンボルツリーであっても、テーマに沿ってきちんと樹形を選ぶ事で、完成度の高い景観を作り出す事が出来るのです。
半日陰となるイロハモミジの足下へは、アプローチ側と同じ種類の下草を寄せ植えし、こちらもナチュラルな雰囲気に。
イロハモミジに添える副木としてアロニアも植栽しており、イロハモミジとの共生を演出してみました。
ナチュラルガーデンにおいて下草類は大切な素材と言えますが、強い日差しや乾燥に弱い種類が多く、適切な木陰でないと植栽はおすすめ出来ません。
この雰囲気を求める場合は庭木によって木陰を作る、といった手法が有効ですが、この雑木は相応の樹高と樹冠が必要となります。
木陰を作る木であれば、樹高3m程を想定し、頭上展開する幅も2m程を見込むのが良いでしょう。