F様邸は浴室に大きな窓が設けられており、そこから外にある花壇(植栽用スペース)を眺められる設計でした。
花壇の背後にはしっかりと目隠しフェンスが備えられておりましたので、私の方で耐陰性のある植物を使った植栽デザインを施す事となりました。
幅広い花壇へ、耐陰性のある庭木をレイアウトした様子です。
シンボルツリーの様に「主木」とする庭木は決めず、高木としてソヨゴの兄弟木を3本配置しています。
ソヨゴは日陰でも色濃く美しい葉を見せやすい特性がありますが、花壇特有の乾燥には敏感に反応する為、日々の乾燥チェックや水遣りは必要となります。
常緑樹の間から自然に育ったかの様に、アロニアやアオダモ、白山吹等の落葉低木類をレイアウトしており、季節感とナチュラル感をプラス。
新緑や花、紅葉等を庭に添えてくれる重要な植栽キャストと言えるでしょう。
浴室から木々の緑や柔らかな木漏れ日を感じられる花壇になっています。
ソヨゴ同士の間隔は2m程空いているのですが、斜めから眺めた際は重なった様にも見え、緑が充実した景色となります。
背後の目隠し樹脂フェンスには美しい木目模様が施されており、庭木の葉や落葉樹の小枝が綺麗に映える様になっています。
樹脂フェンスには庭木の存在を浮き上がらせる効果がありますので、必ずしも目隠しが必要でない場合でも、庭のデザインに取り入れる事は多くあります。
直線的な花壇への低木植栽は非常にデザイン上でも有効であり、単調な直線を打ち消す効果が得られます。
加えてこちらでは常緑樹の濃緑色とは異なるカラーリーフを取り入れています。
斑入り姫トベラは日陰や乾燥に適応しながら美しい葉を楽しむ事ができ、暗い庭に明るさを添える低木として活躍します。
落葉低木は自然な「樹勢」を持っている事が多く、これは成長の方向性を指します。
左右対称に仕立てた落葉高木は多く存在しますが、低木の場合は一方向への自然な流れを有している事が多いです。
この樹勢に逆らわない植栽を施せば、そこから木が自然に生え、ここまで成長したかの様に見せる事が出来ます。
写真のアオダモも、花壇の奥から生えて手前に向かって成長してきた様に見せており、これが落葉雑木らしさを更に引き立てる事になります。
花壇の地表にはバークチップを敷き込んであり、砂利類とは異なるナチュラル感を演出しています。
砂利の上に落ち葉が落ちると気になってしまいますが、バークチップであれば多少の落ち葉も自然な風景として成り立つ事になります。
日陰の環境は、様々な下草類が生育しやすいという面で優れています。
日陰の庭は雑木類の葉焼けも起こり難く、強い日光を嫌う下草類も健全に育てる事が可能です。
本来は高木を植えて木陰を作り、そこへ下草を植栽する事になるのですが、環境上初めから日陰となる庭であれば、木陰でなくても自然な下草レイアウトを楽しむ事が出来ます。
こちらの花壇ではセキショウやヤブラン類を始め、ヤブコウジやクリスマスローズ、宿根草のギボウシやフウチソウもレイアウトしています。
日陰環境ならではのナチュラルな植栽デザインを、ぜひお住まいに取り入れて見ては如何でしょうか。