M様邸はマンション一階にあり、専用庭は全面が芝生で覆われていました。
芝庭は管理自体が趣味である方なら問題ないのですが、成長期は度重なる芝刈りや施肥、水やりが必須となります。
芝生は背丈を刈り込む事が主と思われがちですが、芝刈りがままならなくなってきますと、横方向への浸食も起こってきます。
砂埃さえ溜まればランナーから根が生えてコンクリート平板にも根付き、驚く程狭い場所へも広がっていきます。
今回の庭リフォームはこの芝生を根ごと漉き取って処分する所から始まりますが、芝庭をお考えの方はメンテナンスが大きな負担とならない様な最低限の面積で計画される事をお勧めします。
今回の専用庭リフォームプランにおいては、メンテナンスフリーな空間を広く取り、隣室からの目隠しフェンスを設置する事を最優先にしています。
隣家境界へ樹脂フェンスを設置しておりますが、フェンスは隣家様からも見える為、カラーを明るいベージュにして圧迫感を感じさせない配慮をしています。
空間を埋めるのはシックな割砂利と洋風平板であり、平板はタイルの様な固いイメージを感じさせない「石材風」のマテリアルを採用しています。
主要な植栽はソヨゴとホンコンエンシス、低めのビバーナム・ティヌスの3本によるシンプルなレイアウトとしています。
ブラウンの色合いが美しい洋風庭石を組み、サビ御影ピンコロ石を繋げて曲線模様を付けています。
どんな庭においても「境界ライン」はデザイン上の要となり、いわゆるゾーニングは庭の形を決めると言っても過言ではないでしょう。
森林や公園とは異なる住宅の庭は、どうしても目的のある空間と植物が育つ空間を分ける必要があります。
それは面積に関わらず大切な事であり、その分け目となる「境界」を美しく楽しい形にする事が造園の基本とも言えます。
今回の様に曲線ラインとすれば優しく自然な庭に見えますし、直線を基調とすればシャープでモダンな庭に見せる事が出来るでしょう。
石材の様なデザインが施されたコンクリート平板は、1辺60cmとやや大型のサイズを採用しています。
いわゆる大判サイズの平板の景観的メリットは、お庭が広く見える事に加え、目地ラインが少なくなって落ち着いた見た目になる事が挙げられます。
この平板は模様は表面的に留まらず、石材の様な凹凸も形作られており、タイルとは全く異なる趣を取り入れる事が出来ます。
ナチュラルガーデンとも相性が良く、自然な風合いが求められるお庭にもおすすめが出来ます。
隣家境界に設置した目隠しフェンスは樹脂製、いわゆる樹脂フェンスと呼ばれるものです。
木材の様な模様が塗装された板材はカラーバリエーションも豊富で、選択によってお庭のイメージも大きく左右されます。
柱材はアルミ製で、こちらも複数のカラーの他、板材と同色に塗装された仕様もラインナップされています。
今回はベージュ色の板と違和感が生じない様に、ホワイトのアルミ柱を採用しています。
樹脂フェンスの設置によってお庭の最奥が明色となる事で、明るく開放的な雰囲気を取り入れる事が出来ています。
尚、マンション専用庭においては目隠しフェンスの設置許可が下りない事も多い為、こちらは専用庭の使用規約を確認する必要がありますのでご注意ください。
既存の立水栓周りは、洋風の庭石組みによっておしゃれに演出しています。
排水パンは置かず、土を掘り下げて砂利を入れた水落ち部分が速やかに水を吸い下げます。
洗い物を行うには適さない作りですが、落ちた水によって水溜りが出来る事は無く、フラットで清潔感のあるフォーカルポイントとも言えます。
立ち位置の平板は先にご紹介の60cm×60cmサイズの半分の大きさのもので、30cm×60cmの長方形をセレクトしています。
サイズは異なりながらも同品である為、テラス部分からの繋がりも自然に見える仕上がりになっています。
主要な立木の他、足元には下草類の植栽を取り入れています。
下草類は庭石とピンコロ石によるラインを更に柔らかく見せ、石の美しさを引き立てる効果もあります。
庭石と下草を合わせると言えば、和庭やナチュラルガーデンを連想しやすいものですが、洋風ガーデンにおいても同じです。
下草も植えずに土のままとしている部分もあり、こちらはご自身で草花を楽しめる空間としています。
境界エッジラインに沿って草花を植えていただけますと、どんな植物も綺麗に引き立つ事と思います。