K様邸は前面道路との間に空間が設けてあり、将来植栽スペースとして使える様にひとまず砕石が敷き込まれていました。
この空間は明確な四角形となっており、単純に庭木を並べるでは無機質に見えてしまいます。
今回の植栽デザインは、雑木を使った自然なイメージを持ち、適度に空間を残す様に、四角形のイメージを和らげる様に考える事と致しました。
四角形のスペースへ庭木を植栽した様子です。
この空間のシンボルツリーはヤマボウシであり、樹高2.6mの割に幹数も多く幅も自然に広がっている木をお選びしました。
奥の方にボリュームのある庭木をレイアウトする事で、まずどこから見ても庭に奥行きと充実感を添える事になります。
手前にはご希望を戴いていたエゴノキを植栽。この2株の雑木によって空間が自然風に見える様になります。
隙間や足元の低木は色とりどりの常緑樹を植栽しており、冬季の景観補助と華やかさを取り入れています。
正面や斜めから眺めると庭木が隙間なく植えられている様に見えますが、実際はこの様に中央へ空間を確保しています。
植栽デザインにおいては陽当たりを阻害しない様に注意しますが、まず風通しの確保を先に意識する事が多いものです。
風通しの確保を行えば自然と採光は得られるものであり、陽当たりが弱ければ耐陰性のある庭木を選べば良い為です。
しっかりと空間を確保する事で庭木全てに風が当たる様になり、病虫害の軽減や健全な成長に繋がっていきます。
植栽における空間確保のメリットは、やはり庭木を多く植えなくてもしっかり充実して見せられる事ではないでしょうか。
雑木の枝葉に包まれる様な空間に、色とりどりの低木類が映えます。
窓からグリーンを感じる為のフェイジョアをピンポイントにレイアウトし、足元は洋風ナチュラルな低木を寄せ植えしています。
カラーリーフとして親しまれるプリペットやアベリア、ピットスポルムのイエローが足下を明るく見せ、ヤマボウシの足下の暗い部分にはマホニアコンフューサやサルココッカ、その他下草類も植栽しています。
プリペットやアベリアの管理ですが、無理に背丈を低く維持しようとしない事が大切です。
自然に枝葉を伸ばした様子が美しい為、樹高は60cm~になる事を予め想定し、寄せる高木も下枝の少ない樹種を選んでおくのが良いでしょう。
下枝が充実した常緑樹の足下へ剛健な低木を寄せてしまうと、この成長によって下枝が隠れ、部分枯れを起こしてしまう事が懸念されます。
この点、雑木類であれば下枝が少ない事が多く、こういった自然繁茂を楽しめる低木を寄せる事に向いています。
限られた整形的な空間へ自然な風景を作る場合、まず直線的な植栽レイアウトは避ける様にします。
目隠し対策として庭木を植える場合は直線を基調としますが、ナチュラル感を表現する為にはいわゆる「三角構図」が有効で、まず3か所へ主要な庭木を配し、その際に空間をしっかりと決めておく事が大切です。
このレイアウトですと多くの角度から眺めても全ての木が前後して視界に入る他、低木のレイアウトにも自然な面白味が生じます。
このランダム感に合わせて葉色を散りばめる事で、カラーリーフ低木の魅力が際立ってくれます。
この様に自然で面白みのある植栽風景を考える際は、まず三角形をイメージしてみるのが良いと思います。
玄関にも小さな植栽スペースがありましたので、こちらには樹高2mクラスの常緑ヤマボウシ(ホンコンエンシス)を植栽、足元へは剛健な這性コニファーや下草類を添えています。
空間を埋める化粧砂利は先程のエリアと同じものを敷いて統一感を出しており、この角度から眺めるとお住まいが木々に抱かれる様な心地良さが感じられます。
ホンコンエンシスは花付きの良さと明るい葉がシンボルツリーとして人気のある庭木ですが、樹高も幅も相応に成長してくる事、冬季に半落葉を起こしやすい事も想定しておきましょう。
お住まい脇の通路がやや広く植栽も可能でありましたので、ご希望でありましたハナミズキを3本レイアウトしています。
花色は白とピンクを織り交ぜており、花期には見事な花付きを楽しむ事が出来ます。
道路沿いへ植えられる落葉樹は意外と限られており、これは落葉樹特有の枝の伸びがすぐに道路へ越境しやすい為です。
しかしハナミズキは落葉樹では珍しく「樹形を維持」するタイプの木であり、骨格も一本幹である事からスリムな樹形を維持しやすいという特徴があります。
やはり道路へ全く越境しないというのは無理ではありますが、高い位置に限り幅を許容する、低い位置の枝は早めに払っておく、等を行っていくのが良いでしょう。
今回は植栽レイアウトのみで庭を構成する、そんな施工事例をご紹介致しました。
庭づくりとは必ずしもエクステリア素材が必要な訳ではなく、庭木を適材適所へレイアウトするだけで心地よい「庭」となるのがお解りいただけたかと思います。
庭木の植栽、レイアウトをご検討中の方は是非ご参考の上、お声掛けをいただければと思います。