横浜市内の高台に構えるT様邸は、松本直子建築設計事務所様による卓越したデザインが施された邸宅で、今回はこちらのお住まいへの植栽デザイン、造園工事をさせていただく事となりました。

打ち合わせのご機会は建築中より頂戴し、その後事務所での打ち合わせも経て幾度かのご提案を差し上げ、今回の植栽工事に至りました。

海外経験も豊富な施主様のご希望に沿い、玄関周りは少し欧風な植栽デザイン、南側の主庭は広々とした芝生をメインとした造園計画となりました。

温もりを感じる玄関に合わせる植栽デザイン

温もりを感じる玄関に合わせる植栽デザイン

木の温もりを感じる玄関とドイツ製ポスト、この美しい外観に合わせるべく、今回はどこか欧風な雰囲気を感じられる植栽デザインを考えました。

アプローチは整い過ぎない雰囲気を大切に、幅60cmクラスの飛び石によるステップ調に。
大きさだけでなく滑りにくい石質とスリ加工により安全なアプローチとして機能しています。
当然に道路面よりも玄関周りの方が高さがある為、飛び石は一枚毎に少しずつ高さを上げており、一目では解り難い階段の様な設計となっています。

植栽コンセプトとしては木々を充実させつつ開放感がある事、華美な葉を持つ植物は避けて季節感も取り入れる事、これらを思慮致しました。

上品な植栽の中をナチュラルなアプローチが進む、そんなデザインとなっております。

外壁沿いに植栽されたシンボルツリーとサブツリー

外壁沿いに植栽されたシンボルツリーとサブツリー

この庭の中でシンボルツリーとして位置付けたのは樹高3.5mの常緑ヤマボウシであり、玄関のすぐ傍ではなく少し奥の外壁沿いにレイアウトしています。

ほんの少しクリーム掛かったカラーの外壁には常緑ヤマボウシの葉色はよく似合い、繊細な枝までくっきりと浮かび上がっているのが解ります。
常緑ヤマボウシは冬季の寒さによって葉が少なくなる為、この様に背景を意識した植栽がおすすめと言えます。

また今回は玄関周りに植栽デザインを集約している為、存在感の大きな木を奥へレイアウトする事で全体のボリュームバランスを保っています。
庭の奥の方も木々が充実して見える様にしっかりとした骨格を持ったシラカシも植栽しており、成長によってスケールを上げていく計画です。

玄関前は軽やかな低木で明るくデザイン

玄関前は軽やかな低木で明るくデザイン

玄関ドアは植栽によってほんのり目隠しをするケースが多いものですが、今回は開放感を維持する事とし、可愛らしく個性的な低木類によってデザインをしています。

程良い大きさを維持しやすいコハウチワカエデを玄関前のメインとし、その他は濃緑とブルーリーフの低木でまとめています。
樹種選びは色味だけではなく剛健性も重要視しており、多少の乾燥では傷まない様な強い植物を多用しています。
ウエストリンギア、コニファー、マルバシャリンバイは全て乾燥状態に強く、暑さ寒さの影響も受けにくいという点で優れています。

広い空間を枕木によってデザイン

広い空間を枕木によってデザイン

道路沿いの広い空間は枕木を並べて設置しており、これもまたナチュラル感を高める事に寄与しています。
駐車場として使用する機会は少ないスペースである為、枕木については駐車用と言いますよりも景観物といった意味合いとなっています。

近年の枕木は注入によって防腐加工が施されており、昔の様にベタベタとしてしまう事はなく、軽量の木材でも枕木として流通しています。

砂利敷き空間があまりにも広くなってしまいそうであれば枕木を敷き込む事で広い面積のデザインをカバーでき、枕木の空間は歩行路やテラスといった様々な使い道もあります。

ナチュラルガーデン作りにおいて広大な空間を埋める為に枕木が使われる事は多く、地被植物との相性も美しいおすすめなマテリアルと言えます。

広々とした美しい芝生の庭

広々とした美しい芝生の庭

玄関とは反対側、こちらは南面に位置する主庭であり、芝生空間がメインの開放的な芝庭としました。

芝生の庭で最も大切な事はそもそもの環境であり、芝生に向かない環境ですとどんなにお世話をしても芝生が綺麗に育つ、維持する事は出来ません。
こちらの庭環境は芝生にとって最良の条件が揃っており、
・朝から夕方まで陽が当たり続ける
・高台で水捌けが良好
・常に風通しが良い
この環境が芝生の生育を後押ししてくれます。

写真は芝張りから半年後の撮影ですが、この短期間でここまで芝生がしっかりと育つ事は稀であり、施主様の芝生管理が大変見事だったと言う他にありません。

植栽は芝生に支障が出ない様に最小限に留めており、イロハモミジ、サルスベリ、フェイジョア。シマトネリコ、ジューンベリー、シラカシといった、目隠し効果や季節感に富んだ樹種を選んでいます。

地被植物についてはとにかく剛健で繁殖力も強いもの選び、土面を速やかに覆う事を目的としています。
こちらではローズマリーとラベンダーをメイン低木とし、残る空間はクリーピングタイムが植えられています。

芝庭と建物の境界ライン

芝庭と建物の境界ライン

芝生と建物の間には芝生を踏まずに歩ける空間を設けたいものですので、こちらではプラスチック製のエッジを曲線で設置して芝生止めとしています。

曲線模様が施された砂利空間はポップな印象となりますが、シックなカラーと割れ肌を持つ砂利を遣う事でこちらも少し欧風な雰囲気を出せたのではないかと思います。

尚、水捌けを好む芝生に水溜まりは大敵であり、壁から雨水が滴って為りやすい壁際へは芝張りを避ける事がおすすめです。
砂利敷きであれば雨落ちによって泥跳ねが起きる事も無く、常に清潔な空間を保つ事が出来ます。

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