今回は台東区A様ご所有のマンションエントランスにおきましての造園工事をご紹介致します。
今回はこちらのマンションエントランスの長方形スペースに、和風の風情を感じられる小庭を作庭させていただきます。
四方をくっきりと囲まれた部分でのお庭づくりとなりますので、坪庭作りに通ずるシチュエーションとも言えます。
造園工事を行う場所は四角形で丁度一坪の面積を持ち、マンションの竣工時に植えられた大きなヤマボウシが植わっておりました。
今回の造園工事はこちらのヤマボウシを撤去し、枯れてしまった玉竜などを処分したうえで行います。
目隠し用の人工竹垣の柱設置に平行して、主木となる2本の植木を植栽します。
隣地境界となります部分へ人工竹垣を設置する為、まずは掘削のうえアルミ製の柱を立て入れます。隣家外壁との境界になる人工竹垣は土スペースの中での限界1.4メートルとコンパクトながら、高さは1.8mと十分な目隠し効果を持ちます。
主木の片方、コハウチワカエデをエントランス寄りの部分へ植栽します。
コハウチワカエデはエントランスに合わせる事も意識した植栽をします。もちろん長方形の中での造園キャストとなる木ではございますが、小庭と独立してエントランスに添える様な見方も必要となります。あくまでもエントランス全体の中の小庭、という意識を持って植栽をします。
土壌を改良しながらの主木植栽。アオダモを人工竹垣側に合わせて植栽します。
植栽部分の周囲を掘削した土は全て残土として処分の対象とし、都度新規に堆肥混合の赤土を客土していきます。粘土や団子状のものが混じった赤土とは異なり初期発根に優れており、肝心な植え付け直後の根張りに貢献します。
小庭スペースの中に植栽を終えたアオダモとコハウチワカエデの眺め。
植栽を終えた2本の主木の様子。単独で主木とする事の多い和風のお庭は多いものの、この様に雑木を主体とする場合は単独で木を目立たせず、雰囲気を作る為に木を寄せ合うデザインにすると、完成したお庭に一体感を感じられます。主役を飾るよりも「心地良いスペースを作る」といった考えが大切です。
主木の植栽を終え、人工竹の施工作業を再開します。
積み上げる人工竹材の支えとなる、下部銅縁を取り付けます。実測サイズに合わせて切断のうえ、アルミ材と同色のビスによって取り付けを行います。荷重の掛かるパーツですので、弊社では4本のビスによって取り付けを行っております。
サイズに合わせて裁断加工をした人工竹材の積み上げ~縛り付けを行います。
サイズに合わせて必要本数を裁断のうえ、まずは下部銅縁の上へ積み上げをしていきます。人工竹材のサイズが長い程、この時点でたわみによる重なり合いが起こりますが、後の縛り付けによって矯正されていきます。
裏手にも縛り目を付ける両イボ縛りを施し、強固に立子材を取り付けます。
将来的に隣家が無くなる事も踏まえますと、裏側も良く見える様になる事が考えられます。ですので今回は現状では見えない裏側部分にも縛り目を付ける為、両イボ縛りによって施工します。
同様に上半分も人工竹垣を積み上げていきます。
人工竹材の上半分を支える中間銅縁材を取り付けます。この位置は実際に竹材を積み上げながら、全体の半分の高さに近い位置を割り出して決定します。
下半分と同様に両イボ縛りによって上半分の人工竹材を縛り付けます。目隠し高さが十分な垣根である事がお解かりいただける事と思います。
施工を終えた人工竹垣がアオダモの繊細な枝模様を浮き上がらせます。
施工を終えました人工竹垣の様子です。アオダモの様な雑木特有の繊細な枝葉も浮き上がらせ、雑木類の自然美と和風の雰囲気が溶け合います。冬季の落葉時も垣根越しに枝が浮き上がる風景となり、四季を通じて小庭の大切なスクリーンとなってくれます。
完成レイアウトを意識しながら鳥海石を据え付けます。同時に低木類の植栽配置も調整していきます。
弊社におきましては完成レイアウトは施工者自身が描いてお客様に提示致しておりますので、完成時の状態を確実に施工者自身が意識して施工を進める事が出来ます。完成時の流れ模様を年頭に置きながら、石が水に削られたかの様な方向、向き、位置を調整しながら据え付けを進めていきます。
庭石と直接呼応する中~低木類の植栽も進めていきます。
こちらはマホニアコンフューサを石と合わせる様子です。植栽が適度に覆い被さる事で石のボリューム感を抑え、植物に覆われた流れを連想させます。
こちらはヒメシャリンバイの植栽です。こちらは庭スペースの角をぼかし、同時にコハウチワカエデの幹部分の空間に緑を添える役目を担っております。居住者様の歩かれる箇所となりますので、生育も緩やか且つ有害な毛虫が付きにくい植木を選択する事は必須となります。
錆砂利仕上げ部分と苔部分を分けるエッジ材を埋め込み、小庭のラインを形付けます。
小庭の模様にとって重要な位置付けとなるエッジ材を埋設します。遠目よりお庭を眺めた際の印象は第一に立ち木、第二に地模様となりますので、主木植栽と同等に大切な部分となります。ラインは一続きではなく途中に鳥海石を挟むデザインとなります為、完成時に庭石を含めた全体ラインに違和感が無い様に細かにチェックしながら施工を行います。
こちらは苔庭部分となる箇所との境界エッジラインとなります。苔の張り付けに先立ち、山間を思わせる下草類を植栽しております。何気無い下草類ではございますが、レイアウトは自然に習って決定すると良いでしょう。鳥のフンから育った下草や石の割れ目から育った下草など、少しでも自然要素を取り入れたレイアウトにしたいものです。
グランドカバーコニファーによるあしらい。苔庭部分とは異なる風景を前面に取り入れます。
道路に面し、尚且つ日当たりも強いこちらの部分にはコニファー類でありますウィルトニー、ブルーパシフィックなどを用いた植栽ゾーンをレイアウトしております。砂利と植栽を自然に分ける事が可能なうえ、乾燥に非常に強い特性がございます。ですがこちらの系統の植栽を多用し過ぎますと、お客様ご自身でのメンテナンス量が増えてしまいます為、適材適所といった程度の植栽がお勧めとなります。
庭を構成するエッジラインや低木類の植栽を終え、構図が仕上がったお庭の様子です。
小さな長方形の範囲を存分に活かし、柔らかな構図にまとめたレイアウトの様子です。はっきりと目立っておりました長方形を和らげ、角度によって見える部分と見え難い部分が散らされているデザインになっております。
苔を張り付け、仕上げは錆砂利と伊勢ゴロタによる枯れ流れの施工を行います。
砂利部分になる箇所には防草シートを敷き込み、仕上げに錆砂利を撒いていきます。エッジ材の効果により植栽部分へ砂利が流れる事も無く、くっきりとした地模様が浮かび上がってきます。
流れを感じさせるゴロタ石との組み合わせ。石の表情に逆らわない枯れ流れを作っていきます。
庭の最奥から始まる枯れ流れは左右に振られながら石を削り、下流に入って落ち着く、といった様な動きを表現します。枯れ流れはどの様な面積におきましても細かな模様作りによって作庭する事が出来ます。
完成した小庭の様子です。
枯れ流れを施し、完成した小庭の様子です。くっきりとした背景を持つ為、小さな面積でも奥深い景色とする事が出来ました。和風一点と申しますより、雑木林の下を枯れ流れが走る風景、といったデザインと言えると思います。
こちらのお庭の施工例につきましては、お庭の施工例-一坪の中で流れ(枯山水)と和風ナチュラルの融合を感じる小庭-台東区A様マンションエントランスにてご覧戴く事ができます。
決して広くはございません場所、無機質に四角形で仕上げられた土部分などにおきましても、お庭デザインの工夫によって全く異なる表情を与える事ができ、場合によりましてはお住まいの主役となる顔になる事もございます。
小さな面積を活かす坪庭風の造園施工を、是非取り入れてみては如何でしょうか。
それでは失礼致します。