新宿区Y様邸は都心部でありながら周辺は非常に閑静であり、古く大きな木も残る好環境となっております。車通りが少なく風通しも良い環境は、植栽の生育にとりましても良好となります。
今回は周辺の静けさをより感じられる、作庭から年月を経た様な落ち着きのある和風造園をさせていただく事となりました。
左写真:玄関へ向かうアプローチから眺める主庭の様子。玄関までのアプローチは洋風ナチュラルにまとめられておりますが、こちらのお庭を眺めると雰囲気は一変し、物静かな雰囲気が出迎えます。
最奥部に見えるヒメシャリンバイは常緑樹の特性により、冬季も庭の奥深さを演出します。こちらの植栽配置はお客様よりのご提案にて決定を致しました。
右写真:玄関から眺める和庭の中心部です。添景物となります手水鉢周囲も決して目立たせる事無く、自然に配置された一空間とする様に心掛けました。設計当初より、蹲周りはモミジによって見え隠れさせる構図となる様、お話し合いを進めておりました。
自然に生えた苔の中に、元々佇んでいたかの様な蹲周りの構成。
既存樹を思わせる自然な枝振りの高木落葉樹を大胆に被せる事で、作庭から既に年月を経たかの様な雰囲気を作り出しております。
御影石と静岡産の面石を合わせた延段風の園路は、作り込み過ぎず手元にあった石を自然に再利用したかの様な雰囲気に。
適度に崩された表情が、肩の力を抜いた様な優しげな風景にしてくれます。
お庭の奥から振り返る眺めは、明るく爽やかな印象も感じられる雰囲気に。
緑濃く高木もあるお庭ながらも風通しを妨げないのは、お住まいと植栽の間の空間を徹底して空けている事に起因します。
手水鉢の左右はイロハモミジとコハウチワカエデがそれぞれ中央へ傾いだ構図としており、和室から眺めた際は中央がモミジ類に抱かれた様な景色を見る事が出来ます。
また、常緑の低木や下草類の植栽は、既存のフェンス柱を目立たなくする様な配置と致しております。
庭全体に繋がるエッジラインは全体構成をまとめる効果に併せ、庭石や石材をも優しい表情に変える効果があります。
そして景石としての庭石据え付けも、柔らかな面や自然に朽ちた面を表に出す様にしており、その効果も合わさって経年を感じられる眺めと致しております。
手水鉢の台石は根府川石を使用し、厚みと重厚感、何よりも濡れた際の美しい艶を見る事が出来ます。
3mクラスのモミジ類を植栽しておりますが、透かし剪定を施して足下の日照や風通しを確保しております。
この様なレイアウトをする事で、大きな木を植えても歩行を妨げる事が無く、庭木に抱かれた様な空間を作り出す事が可能となります。
モミジ類に併せ、ダンコウバイやツリバナ、アロニアなどの雑木も各所に添えられ、花や紅葉、結実を見られる事もこちらのお庭の魅力です。