O様邸のお庭は玄関アプローチ沿いから垣間見える日陰に位置し、面積は自転車3台分程となります。
ご相談にお伺いを致しました際は仮の自転車置き場になっておりましたが、この度は玄関付近からも眺められるこちらのスペースを、和風ナチュラルなお庭にする事となりました。
最も眺める機会の多いこちらのアングルを重要視し、和風とナチュラル感を共存させるデザインを施しております。
和風庭園では灯篭や手水鉢等の添景物を目立たせる事もございますが、住宅のお庭におきましては反対に「目立たせない」レイアウトをする事が多くなります。
こちらでもその意匠を踏まえ、庭の最奥部に水鉢の気配を感じながらも眺めの主役は緑濃い植栽や下草としています。
どうしても目立ってしまう室外機はヒメシャリンバイによる植栽目隠しを施しており、手前のポスト脇にはソヨゴを植栽する事で庭の領域を明確にしています。
背後にL字型の目隠し樹脂フェンスを設置しておりますので植栽を多く取り入れた目隠しの必要は無く、最低限の植栽量で空間を広く取ったレイアウトに仕立てています。
庭のシンボルツリーとなる2.5mのアオダモの他は低木類や下草のみでデザインをしており、足下で存分に緑が活き活きと育ちます。
半日は日陰になる環境を踏まえ、ヤマアジサイやアガパンサス、セキショウなどの自然味溢れる植物を使っています。
庭の奥に当たる水鉢周りは日陰の時間が長く、特に日陰向きの植物でまとめています。
アガパンサスやヤブランは初夏~夏に紫色の花を付ける為、水鉢の水面がより涼しげに感じる様になります。
アオダモの足下にはギボウシも植えており、こちらも紫花が夏の風情を感じさせます。
硬さを感じる石材も、この様に柔らかな下草類と合わせる事で優しい表情となり、庭全体のバランスも美しくまとまってきます。
水鉢周囲は植物や割栗石で細かにデザインを施していますが、その上部は広い空間を残しており、アオダモの幹のみが存在します。
この高さを空間にしておく事で風通しが確保され、植物の健全な生育を助けます。また、中間層を空間にする事で地面付近のデザインがより引き立つ様になります。
和風ナチュラルなお庭の醍醐味は、静かな自然味であるかと思います。
賑やかで動きのある洋風感も魅力ですが、しっとりとしたナチュラル感は和庭独特の空間であり、「眺める」だけに留めるお庭として成り立ちます。
植木や庭石の色彩を華美にせず添景物をさりげなく据えれば、どんな面積の場所でもしっとりと佇むお庭を作る事が出来ます。