I様邸は駐車スペースと道路に隣接したコーナー花壇があり、植栽が未施工の状態でありました。
こちらの花壇は外構業者様が非常に丁寧な施工をされており、今回はこちらの花壇へ植栽デザインを施すご依頼を戴きました。
コーナー花壇を飾る主木として、右手へホンコンエンシス(常緑ヤマボウシ)を植栽。
ホンコンエンシスは株立ちの樹形が多く流通しておりますが、今回は樹形の整った単幹2本を寄せ植えしております。
ホンコンエンシス寄せ植えの際に剪定を施し、違和感の無い株立ちの様な仕上がりになっています。
グラウンド部分は常緑種、乾燥に耐え得る品種でまとめ、庭石やシックな砂利を合わせて洋風ナチュラルな雰囲気でまとめております。
立体感とはいわゆる高低差や樹姿の違いを組み合わせる事で生み出す事が出来ますが、樹形そのものに動きを付けるのも有効です。
右手の端正なホンコンエンシスに対し、最も外側へせり出す木として西洋カマツカをレイアウトし、この異なる雰囲気が景観に変化を感じさせてくれます。
圧迫感の無い細く繊細な自然樹形は、限られた場所を最大限に活かす立体レイアウトを可能にします。
足下の植栽、いわゆるグランドカバーですが、あまり近杯に地面をカバーし過ぎない事も必要です。
1種類のグランドカバーで地面を覆い尽くす手法も時には有効ですが、他種同士の空間を確保する事で自然な模様が生じます。
この空間が遠目から眺めた際の立体感に繋がり、建材・資材では生み出す事の出来ない植栽ならではの風景とも言えます。
かつては庭づくりに巨石が多く見られた物ですが、小さな庭石であれば小さな場所で魅力を発揮します。
洋風ナチュラルな雰囲気は庭石ひとつでも表現できますが、石の持つ色・硬さ・形は周囲の植物の色を引き立て、葉の柔らか味を引き出します。
小さく、佇む、という表現で扱えば、庭石も実に優しげな自然素材と言えるのです。
小さな場所で立体感を演出する場合、「並べない」「ずらす」というレイアウトが面白味を生み出します。
2つの素材であれば、かならず一直線に並ぶ角度が存在しますが、3つを用いますとどこから見ても異なって見える形を作る事が出来ます。
一つが見え隠れしたり数が違って見えたりと様々ですが、これを庭石や植栽に置き換えると、広さに関わらない立体的な庭づくりに繋がります。
同じコニファー系統ですが色と生育形状の異なるウィルトニーとブルースター、これらの間へ大きく形の異なるカレックスを挟み込んで植栽。
手前の砂利と奥のバークチップも色味が異なり、さり気ない立体感を演出します。
花壇内を立体的な小庭に見せる事がメインではありますが、やはり周囲との溶け込みも感じたいものです。
さり気ない存在感ではありますが、先述のセイヨウカマツカは背後の美しい壁との調和も意識して植栽をしております。
花壇内の施工ではありますが、やはりある程度の広がり、自由な雰囲気も取り入れたいものです。