C様邸の玄関アプローチは外壁に囲まれた落ち着いた構造となっており、歩行部分右手に小さな植栽スペースが設けられておりました。
今回はこちらの花壇状のスペースを有効活用し、目隠し効果も兼ね備えた小さな自然風の庭をデザインさせていただきました。
日陰のシンボルツリーにはソヨゴを植栽
アプローチ外からも存在を感じられる植栽の様子。 お住まいの方以外も眺められるアングルの為、小さな場所ながらも遠景を意識したレイアウトとなっております。
最奥にソヨゴの株立ちを植栽する事で通年緑のスクリーンとする事ができ、視界が隣地へ筒抜けてしまう事を防ぎます。 しかし風通しの要となる場所でもある事から、ソヨゴは幅がありながらも風通しの良いスッキリとした樹形のものを選んでおります。
コハウチワカエデやアロニアが醸し出すナチュラル感
南中時刻以外は日陰気味となるこちらの場所は、ナチュラルな小庭をデザインする上では適所とも言えます。
立ち木でありますソヨゴを始めアロニア(セイヨウカマツカ)やコハウチワカエデの自然生育環境は頭上に高木が被さっている事が多く、こちらの様に日照が限定されている場所を好みます。
足下へは山石である鳥海石と下草類をナチュラルにレイアウトし、華美にならない控えめお庭としております。
小さな場所でも石の大きさや高さを使い分ければ立体的な風景を構成する事が出来ます。
石のすぐ傍からコハウチワカエデの幹が立ち上がる構成ですが、こちらは石の脇から実生で育った木々の風景を模しております。
山間ではあらゆる隙間から木が生えて根を張り、下草類が共生する風景が見られますので、これらを自然に再現する事がナチュラルガーデン構成の原点とも言えます。
しかしながら下草類があまりにも旺盛に増殖してしまいますと手間が掛かってしまい住宅向きのナチュラルガーデンとは言えませんので、生育後も管理のしやすい植物を選んでおります。
常緑性の下草類で自然味を加える
ナチュラルガーデン・シェードガーデンと言えば、ホスタ・ギボウシ類やアジサイ、風知草やシモツケ等が主流となりますが、多くは落葉植物でありますので、冬季は葉が無くなってしまう事を留意したいものです。
特に下草類では葉が無くなりますと存在そのものが無くなり、翌春まで休眠する事となります。
冬季でも葉を残す低木類はもちろん、下草類においても常緑種をバランス良くレイアウトしておきますと、通年大きな変化も無くグリーンを維持する事が出来ます。
一口に樹形と申しましても木には360度異なる見た目があり、植栽時にはこちらを良く吟味する必要があります。どこから眺めても同じ様に見える刈り込み仕立ての木であれば問題はございませんが、落葉樹を自然に生えた様に見せる場合は特に方向を意識します。
見栄えの良い「葉が多い向き」を観賞方向に向ける場合もありますが、やはりそこから自然に育った様子を演出するには幹の方向、木がどちらに向かっているかを考える事がナチュラルガーデンでは大切です。
この様に木々の方向性に共通を持たせますと、お庭の完成時に自然な風景としてまとまって見えます。
そして種類によっては下草類にも方向性がありますので、生えた場所から生育の方向へ葉を向けてあげたりしますと、自然群生の一部の様な風景が出来上がります。