お庭や花壇を彩る背の低い木や、地面を覆う様が美しいグランドカバー。
多種多様な色彩で楽しませてくれる背が低い木、いわゆる低木は、庭づくりの技法を取り入れた植栽方法によってさらに美しい風景を見せてくれます。
低木はシンボルツリーの足下を美しく彩ったり、寄せ植えにして庭のデザインの要となったりと、使い方も魅力も様々です。
こちらのページでは、低木の定義や役割・効果、おしゃれな使い方の解説の他、庭木や花壇にもおすすめな種類の低木を、私の事例写真を交えながらご紹介してまいります。
目次
樹高の分類における低木とは?
自然界や大規模な植栽計画においては、
- 樹高5m以上の木を高木
- 上記と下記の間のサイズを中木
- 成長しても樹高3m以下の木を低木
と定義します。
つまり樹木の分類として、低木とは放任しても樹高が3m以下である木を指します。
庭づくりの規模における庭木の呼称
住宅における庭づくりの場合は上記とは異なって規模も小さくなりますので、一般的には
- 幹を持つ立ち木を高木
- 2m以下の庭木を低木・灌木(かんぼく)
- 1m以下、40~80cm程度の高さの庭木を小低木
と位置付けます。
ですので住宅等の庭づくりにおいての低木とは、樹高2m以下の木々を指す事になります。
尚、更に背丈が低く地面を覆う様なものは地被植物、グランドカバーとも呼ばれます。
植栽デザインを伴う庭づくりでは、上記の様に4段階に樹高を分けた庭木を組み合わせる事で、立体感や奥行きのある形を作っていく事となります。
3種類に分かれる低木の形
このページで解説しておりますのは「低木」と呼ばれる庭木でありますが、この低木も樹形によっていくつかの種類(タイプ)に分かれます。
ここでは大きく3つのタイプに分けて解説致します。
一本の幹を持つ、立ち木タイプ
地面から1本幹が立ち上がり、その幹から枝が展開して樹形を作るタイプの低木です。
高木と同じく幹を骨格としており、普通の木の形をしていながらもサイズ感を小さく維持できる低木を指します。
庭デザイン上の用途としては、背の高い木に寄せて植えるサブツリーや、ちょっとしたフォーカルポイント等へレイアウトする事が多いです。
また、どうしても背を高くしたくない木をお探しの場合や、樹高を低く維持しなければならない場合のシンボルツリーとしても活躍します。
このタイプの低木としてはソヨゴ・ヒメシャリンバイ・フェイジョア・キンメツゲ・オガタマノキ・ボックスウッド他が該当します。
一本幹を持たず、膨らむ様に成長するタイプ
真っ直ぐに背を伸ばす為の幹を持たない低木で、このタイプの庭木は地面から即座に枝分かれをしており、全体的に膨らむ様に大きくなっていく低木を指します。
また、上で紹介の立ち木タイプの木の幹をカットし、枝葉を玉状に仕立てた木もこちらに該当します。
ツゲやボックスウッド等は仕立てによってこちらのタイプとする場合もあります。
樹高は多くが50cm未満であり、植栽後もこのサイズを維持する様に剪定を行う事が基本となります。
同じ種類で寄せ植えを行ってデザインを表現する他、アイポイント的な存在としてランダムに点在させる事もあります。
このタイプの低木は、葉の形や色において実に多くの種類が存在し、お庭のイメージやデザインの第一印象を決めてしまう程の視覚的効果を持っています。
樹種としては、サツキ・アベリア・サルココッカ・アセビ・沈丁花他多数の低木類が該当します。
上に伸びずに横方向へ伸びる(這性)タイプ
地面の近くで横方向へのみ生育し、上へはほぼ伸びないタイプの庭木を指します。
基本に横へ広がり続ける成長をする為、庭のデザインを崩さない様に領域を決めてカットを繰り返し行う事となります。
草類にあたる植物であればグランドカバープランツに該当されますが、「庭木」として生きる植物にもこのタイプがあり、主に這性タイプのコニファーやクリーピングローズマリー他が該当します。
横方向への成長を考えますと他の低木とは領域争いをしてしまう為、このタイプの低木を植栽する場合は他種同士の間に空間を設けておくのがおすすめです。
他種同士の横枝が接触しますと、多くの場合成長力の強い方が生き残って弱い方は飲み込まれてしまう事もありますので、レイアウトする場合はこの点に注意しておく事が望ましくあります。
このタイプの低木は寄せ植えを行って地被とする他、植栽地表レベルよりも低い場所へ枝垂れさせるデザインにも活用します。
低木を使った4つのレイアウト方法
低木類は小さく取り扱いも容易ですが、ご自身で植えるとなりますとレイアウトに困る事もあります。
庭作りでの低木レイアウトには大きく分けて3つの方法があり、これによってお庭の雰囲気も大きく変わってきます。
それでは低木のレイアウトパターンをそれぞれ見てまいりましょう。
寄せ植え・刈込による成型
これは和風の庭で多く見られる様に古くから存在する低木レイアウトであり、背の低い植栽を絵画の様に自由に描く様なイメージで行います。
多くは常緑低木を用いてレイアウトする事が多く、最も自由度の高いデザイン性を持ちます。
植栽方法としては葉の幅30~40cmのサツキやツツジを相応の密度で寄せ植えし、大まかなデザインラインを形作っていきます。
その後に仕上げとして全体に刈り込みを行い、一つの塊の様に仕立てるのが一般的です。
曲線の模様を自由に描ける事が魅力ですが、この美しいラインと低木の健康を保つ為に定期的な刈り込み剪定が必要である事を認識しておきましょう。
低木コニファーなら洋風イメージの寄せ植えに
こちらは低木コニファーを寄せ植えし、一つのエリアをまとめています。
針葉樹の寄せ植えは自然な雰囲気も感じられ、周囲のマテリアルによって洋風ガーデンのイメージも取り入れる事が出来ます。
特に低木コニファーには濃緑、イエロー、ブルー等、葉色のバリエーションが多く、いわゆるカラーリーフを使って低木デザインを施すのもおすすめです。
しかし和風の寄せ植えと同じく、低木コニファーの場合も領域を限定する剪定は必須となります。
伸ばし過ぎてしまうと内部が蒸れて枯れてしまうのがコニファーの特徴ですので、こうなる前に時折ハサミを入れておく事がおすすめです。
サツキと低木コニファーの組み合わせも
ご紹介したサツキ・ツツジの刈り込みと這性コニファーですが、この2種類の低木は微妙に異なる樹高と成長形態により、写真の様に近接させて低木デザインを作り出す事が可能です。
サツキやツツジは急激な成長をする訳ではなく全体がゆっくりと膨らんでいく為、直ちに這性コニファーを覆ってしまう事はありません。
這性コニファーについては日照不足の場所ではほぼ生育が出来ない為、サツキの下へ潜って成長してしまう事が無いという訳です。
例えばこの這性コニファーの代わりにツル性植物を植えてしまうと、サツキの下を潜って成長してしまい、サツキの上まで飛び出して延々と成長をしてしまう事となります。
アイビーやハツユキカヅラ、ワイヤープランツ等は特に注意が必要で、他の低木類の中に絡んでしまうと整理する事が非常に困難になる事を留意しておきましょう。
あらゆる色彩の低木を使う寄せ植えレイアウト
限られたスペースの中で多くの植栽を行う寄せ植えレイアウト。
この植栽方法において低木は欠かす事の出来ない存在です。
最も寄せ植えを行うシチュエーションとしては写真の様な大型プランターが挙げられ、非常に狭い場所へ多くの植物をレイアウトしていく事になり、植栽には主に低木を使う事になります。
低木は限られた場所へ複数の種類を植栽出来る為、その空間の中に多くの色合いを添える事が可能になります。
小さな空間をたくさんの葉色で彩りたい、そんなイメージを叶えてくれるのも低木類の強みです。
低木を点在させる、ポイント的なレイアウト
寄せ植え用の低木とは異なり、樹高60cm前後の木を使う事が多いレイアウトです。
例えば直線的で幅の狭い部分への植栽は、低木が単純に並べられている様に見えてしまう事があります。
その様な場合は低木を前後にずらす、いわゆるランダムな配置で植栽する事で景観に動きと変化が生まれます。
上の写真ではマホニアコンフューサと斑入りツゲを前後にずらして植栽しており、葉色も大きく異なる2本の低木が、植栽のデザイン性を担っている事がお解りいただけると思います。
ランダムなレイアウトなら、少ない植栽数で管理も楽に
こちらでは玉仕立ての斑入りツゲとブルーマウンド(コニファー)の2種をテンポ良く見せる様に植栽しています。
この色彩が異なる2種の低木が中間の景観を保っており、ソヨゴとブルーベリーの「間を持つ」様な役割を担っています。
ランダムに配置した低木であれば密植とは無縁ですので管理も容易になり、場合によってはある程度の大きさの玉になるまで放任成長させる事もあります。
低木のランダムな配置におきましては、植物を植え過ぎないデザインをお好みの方へおすすめ出来ます。
自然な群生を表現するレイアウト
低木は整えられた形を表現したりポイント的に使うだけではなく、植物本来の魅力である「繁茂・群生」を表現する事にも向いています。
自然に育った姿や自然群生を高木で表現するには広大な敷地が必要であり、現実的には難しいものです。
しかし低木による表現であれば手軽にお庭へ取り入れる事ができ、この低木の使い方は住宅におけるナチュラルガーデンデザインの要と言っても良いでしょう。
単一種類のグリーンを繁茂させる
こちらは同種の低木類を一面に配する低木植栽手法であり、樹種はマホニアコンフューサを使っています。
一種類の緑が花壇から溢れ出る様にしており、花壇が賑やかに、充実して見える様になっています。
枝葉が溢れる様なレイアウトですとアベリアやキンシバイ等も人気ですが、マホニアコンフューサですと色合いが濃緑色となり、どこかナチュラルな雰囲気を感じられる様になります。
小さな自然に囲まれた様な植栽デザインをご希望でありましたら、是非ご参考をいただきたい低木レイアウトと言えます。
山間の自然群生を低木で表現
低木は狭小部での庭づくり、いわゆる坪庭・中庭での植栽レイアウトに多く用いられます。
こちらの中庭の様にナチュラルデザインを表現する場合におきましても、低木で十分に自然な群生を表現する事が可能です。
自然な群生を表現する際、多くは樹高60cm前後の低木を使いますが、その色彩は華美でなく落ち着いたグリーンの樹種を使うのが理想的です。
ナリヒラヒイラギを始め、アオキやシャリンバイは里山の低木を表現するのに向いており、持ち前の耐陰性によってある程度の密植でも健全な生育を続ける事が出来ます。
ナチュラルガーデンの場合、高木~中木に至って落葉樹を使用する事が多い為、冬季落葉時の景観補助も兼ねて低木類は常緑種を多く取り入れる事がおすすめとなります。
しかし自然群生の表現と言いましてもある程度の空間は残し、そこへ下草類をレイアウトするとより自然な風景に仕上がります。
小さな場所でナチュラルガーデンを作りたい場合でも、諦めずに低木類で自然を表現してみましょう。
低木によって得られるデザイン効果
庭づくりにおきましては、低木類の植栽を積極的に取り入れる事でデザイン上においても大きな効果を得られます。
そもそも小規模のお庭の場合ですと、立ち木(高木)の存在よりも、目線の高さ~地面の方が人の目に留まりやすい為、デザインポイントのほとんどが低い場所へ集中する為です。
つまり低木の植栽デザインはお庭デザインの要とも言える存在であり、庭づくりの際は是非取り入れていただきたいものです。
ここでは低木類の植栽によって得られる、デザイン上の効果を簡単にご紹介致します。
限られたスペース内で異なる葉形や色彩を引き出せる
低木類を取り入れたデザインメリットとして最も明解なのは「色彩の変化」にあるかと思います。
こちらは高木としてシマトネリコ、低木にビルベリー、グランドカバーとしてゴールデンモップを組み合わせた植栽デザイン例です。
シマトネリコとビルベリーの葉の形は非常に異なり、列状葉と細かい葉の組み合わせが庭木をよりおしゃれに見せてくれます。
また、グランドカバーのゴールデンモップは葉色が個性的なイエローであります為、同一空間において3色3模様によるコントラストを引き出せる事となります。
この様に低木類はお庭や花壇を多くの葉色で彩ってくれますので、結果として自由で美しい景観を生み出してくれます。
低木の個性を組み合わせて立体感を出せる
色合いの変化による組み合わせはもちろん、低木の持つ樹形の違いによる組み合わせもデザイン上で欠かせないポイントとなります。
上でご紹介を致しました写真の反対側からのアングルとなりますが、同じエリア内でもかなり異なる印象に見える事と思います。
先程はシマトネリコとの組み合わせにビルベリーが写っておりましたが、こちらから見ますと刈り込み仕立てのボックスウッドが組み合わさっています。
低木類は色はもちろん樹形にもバリエーションが多く、自然樹形の木と成型的な木を組み合わせるという植栽デザインが可能となります。
成型された低木を添える事で、柔らかな木をより柔らかに見せるデザイン手法と言えます。
低木によるゾーニングでおしゃれなお庭に
庭づくりにおいては、いわゆる「レイヤー」の様にあらゆるデザイン部分を組み合わせるのが一般的です。
このデザインされたエリアの組み合わせや配置をゾーニングと呼びますが、低木植栽はこの際も大きな役割を担ってくれます。
庭における「土」、水栓周りの「砂利」、広場となる「バークチップエリア」が近接する部分へ植栽した低木の寄せ植えですが、各ゾーンを「自然に区切る」という役割を担っています。
この様に低木は地面デザインの終着点や近接ポイントへ植栽する事で、各ゾーンを枝葉によって美しく、おしゃれに繋ぎ合わせてくれる効果があります。
こちらの植物は低木コニファーに該当するブルーパシフィックですが、膝丈程の低木類でも同様の植栽デザインが可能です。
低木を使った景観補助効果
高木、特に落葉樹を選んで植栽した際、目線の高さより下部が幹だけの景観となって寂しく感じられてしまう場合があります。
そこで高木よりも低い低木類を寄せ植えする事で、よりおしゃれで自然な庭に見せる事が出来ます。
こちらでは高さ2.6mのアオダモを高木として植栽しておりますが、アオダモの特性上地面から1.5mまでは枝がほとんど無く幹だけの景観になる為、落葉低木を寄せ植えして自然な賑やかさを演出しています。
寄せ植えをした低木は高さ1.5~1.8m程のオトコヨウゾメやセイヨウカマツカであり、大きな木の足下から自生した雰囲気を出せる様に致しました。
また、さらに小さい低木としてヤマアジサイまで自然味を繋げており、段階的に雑木の賑やかさを取り入れる事が出来ております。
この様に低木は寂しい部分を補う「景観補助」の効果も得る事が出来ますが、この補助効果をあえて組み込んでおく事も多くあります。
特にナチュラルガーデンのデザイン時は多用する植栽手法となりますので、自然な庭がお好きな方はご参考戴ければと思います。
低木類がもたらす、庭木生育面へのメリット
低木類によるデザイン性のお話をしてまいりましたが、低木類はデザイン面だけではなく、植栽の方法次第で他の庭木の生育面にもメリットをもたらしてくれます。
低木によって、高木の幹元や地表を保護する効果
雑木高木の多くは元々の生育環境では起こりにくい、幹や地表へ直射日光が当たる事を嫌います。
夏以外であれば環境適応の範囲内で耐えてはくれますものの、暑い時期の直射日光は確実に幹を傷め、地表も極度の乾燥を起こし、根付近の温度も上昇してしまします。
写真では幹回りや地表への日除け効果の為にシロヤマブキやダンコウバイ等の低木を植栽し、高木の保護に役立てています。
しかしこの低木類も直射日光を苦手としますので注意が必要です。上の例では高木のアオダモが半日陰を作っており、高木と低木がお互いを保護し合うような構成になっています。
低木の寄せ植えで地表に影を作り、乾燥を遅らせる効果
日光の当たりやすい真南や道路沿いは、散水後も土壌乾燥が早めに起こる場所です。
こちらではデザイン面も兼ねた低木のサツキを寄せ植えしており、地表への直射日光を半減させる効果ももたらしています。
この様に地面全体を低木類で覆う事は乾燥を遅らせる方法としては有効ですが、サツキ他下草類への散水は欠かす事は出来ません。
あくまでも乾燥を「遅らせる」方法として活用し、まず低木類をしっかりと育てる為にも水管理は計画的に行う事が必要です。
尚、水遣りのしにくい場所であれば乾燥に非常に強いコニファーのグランドカバーやローズマリー等で地面を覆うのがおすすめです。
低木シンボルツリーに使えるおすすめ樹種
低木と言いますと本当に小さな庭木を想像されるかと思いますが、上でご紹介を致しました様に低木でも幹を持ちコンパクトに維持できる「立ち木タイプ」も存在します。
このタイプの低木ならシンボルツリーとしても植栽が出来る他、背の高い庭木との組み合わせで立体感を生み出せます。
低木シンボルツリー=樹高が低い木ではなく、あくまでも「低い樹高を維持出来る樹種」という認識が重要ですので、以下の樹種をご参考下さい。
ソヨゴ
維持可能な樹高:1.5m~
ソヨゴはシンボルツリー等のメインの庭木としても植栽されますが、人の背丈よりも低いサイズも流通し、その高さを剪定によって維持していく事が可能な庭木です。
大きな落葉樹の下で自然に育つ常緑低木にも見せる事ができ、ナチュラルガーデンデザインにおいても重宝する庭木です。
フェイジョア
維持可能な樹高:1.8m~
フェイジョアは果樹・目隠し用の庭木として1.5m程のサイズも流通しますが、維持管理的には1.8m程が現実的なサイズとなります。
小さく低く維持する為には刈り込み剪定でも整えられるので、フェイジョアは低木ながらも重厚感のある存在です。
ヒメシャリンバイ
維持可能な樹高:1.3m~
低い樹姿ながらしっかりとした存在感を放つヒメシャリンバイは、生育が緩やかでローメンテナンスな上、花も楽しめる常緑低木として活躍します。
ただし植栽間もない年は冬場にかなり落葉をしたり花後に木が枯れ込む事があり、落ち着くまで経過観察を余儀なくされる事もあります。
カラタネオガタマ
維持可能な樹高:1.5m~
濃緑でしっかりとした葉が美しいカラタネオガタマは庭デザインの中でサブツリーとして使われますが、その成長の緩やかさを管理のしやすさから、手頃な樹高の低木シンボルツリーにも向いています。
カラタネオガタマはバナナの芳香を放つ花が主役ともいえる木ですが、健康に育ったオガタマは葉の美しさも魅力的です。
カラタネオガタマについては多くの場合刈り込みによる剪定が行われますが、枝透かしのみ施した野趣ある自然樹形もおすすめです。
ギンバイカ
維持可能な樹高:1.8m~
ハーブとしても有名なギンバイカは葉の香りがとても良く、菱形に見える細かい葉が洋風の雰囲気を感じさせます。
梅の花にも例えられるギンバイカの花は、雄しべが冠の様に目立って美しく、花数も多いのが特徴です。
低木として維持は出来ますが毎年の枝の伸びは強く、これは剪定によって外しておく必要があります。
葉が小さく密生しているので目隠し効果も併せ持ちますが、この伸びの強さを踏まえ、歩行の妨げになる様な場所へは植えない様にしましょう。
ボックスウッド
維持可能な樹高:50cm~
低い生垣としても植栽が可能
写真の様な円柱仕立てからテーブルの様な刈り込みまで、あらゆる形状に作られるボックスウッド。庭や花壇をおしゃれに見せてくれますが、残念ながら剛健種とは言えません。
特に根が張り葉が多くなるまでは、暑さにも寒さにも注意が必要な庭木です。明るい緑の葉はレンガ調の花壇に良く似合い、特に洋風テイストを引き立てる庭木です。
キンメツゲ
維持可能な樹高:1m以下も可
低い生垣としても植栽が可能
キンメツゲは低木類でありながら、刈り込み剪定によって様々な形に仕立てる事が出来る庭木です。
低い立ち木や生垣としてはもちろん、ボックスウッドと同じく刈り込み仕立てなどがテーマパークにも使われます。
その特性を活かして小さく維持すれば花壇にぴったりの植物と言えますが、乾燥に強い庭木ではありませんので、水遣りなどのメンテナンスは欠かさずにしてあげましょう。
アデク
維持可能な樹高:1.5m~
ブルーベリーやアロニアの様な自然樹形を常緑で維持できる貴重な低木です。初夏の白花の美しさも魅力ですが、暖地の植物の割に寒さで傷みにくいのもポイントです。
小葉のタイプはより少数で珍しく、私にとりましても数多くを植えた庭木ではありません。
ギンバイカの様にシャープな尖った葉が美しい低木です。
マサキ類
維持可能な樹高:1.6m~
生垣としても植栽可能
マサキ類は生垣としての植栽がよく知られておりますが、写真の様に1本の庭木として仕立てられたものも多く存在します。
低木と言いましても縦方向へ伸びる力が優先される庭木の為、とにかく背を伸ばしたくない様な場所には不向きとなります。
マサキは濃緑色の原種から、斑入りマサキ、キンマサキ、ギンマサキ、ベッコウマサキ等、カラーリーフのバリエーションに富んだ庭木でもあります。
花が咲く落葉低木
低木類には花を楽しめる樹種が多く存在します。
花と言えば宿根草や草花で楽しむ機会が多いのですが、背の低い木として花を楽しめる植物は、庭のデザイン上でも重要です。
ここではまず、花を楽しめる落葉樹の低木をご紹介します。
オオデマリ
開花期5~6月
小さな花が集合して咲くオオデマリの花は、立ち木に咲く白いアジサイといった印象があります。
花はとても美しいのですが、大きな葉が虫に食べられやすいという難点があります。
ケムシ類はもちろん、飛来する昆虫にも葉が食害されやすく、この点は農薬の予防的散布によって対応する事となります。
コデマリ
開花期4~5月
コデマリの花も小さな白い花が集合するタイプで、少し控えめな美しさが山の風情を感じさせます。
樹姿は後述のユキヤナギと似た印象ですが、コデマリの方がやや硬い印象ではあります。
柔らかな樹形を維持する場合は、直径1m程の球体サイズを許容する必要があります。
ユキヤナギ
開花期3~5月
柳の枝に雪が積もった様な花の美しさが名前の由来となったユキヤナギ。
古くから庭づくりの脇役として植栽されてきた低木です。
細かい多数の枝の立ち上がりによって全体が膨らむ為、花後に球体上に刈り込む剪定が一般的です。
ヤマブキ
開花期4~5月
春の黄色い花が目を引くヤマブキは、葉も美しく野趣ある見た目も魅力的な低木です。
地面から生える新しい枝が周囲へ増えていく傾向が強いので、元から切り取る剪定管理が必要となります。
花は一重だけではなく八重咲種も存在します。
シロヤマブキ
開花期4~5月
葉脈も花の形もヤマブキと似ているものの、別属となる低木です。
花付きも良く、山に咲く花を思わせる自然味も魅力であり、野趣ある樹形はナチュラルガーデンにも植栽されます。
横枝は大人しいのですが徒長する枝はとても生育が早く、これらは毎年除去する事が必要となります。
ヤマアジサイ
開花期6~7月
日陰の花を代表するアジサイですが、葉も枝も小型であるヤマアジサイはシェードガーデンの立役者とも言えます。
湿潤に富んだ明るい日陰が適所ですが、暗すぎる日陰には意外に弱く、いつの間にか枯れる傾向があります。
ヤマアジサイの植栽場所は木漏れ日の下等を選んで、自然に習った植栽を意識すると良いでしょう。
ウグイスカグラ
開花期4月
ウグイスカズラと呼ばれてしまう事も多いのですが、ツル植物を指すカズラとは異なります。
葉の小さい内にラッパの様な形の美しい小花を付け、後に熟す実は食する事も出来ます。
生育をすると意外にも葉は大きくなり密生する木となるのが特徴で、雑木の庭への植栽時は枝透きのみを行ったり、古い枝を新しい強い枝へ更新する剪定を行います。
カイドウ
開花期4~5月
カイドウは低木と言いましても幹を持つ立ち木なのですが、花物としての印象が強い為にこちらでのご紹介となっております。
蛍光ピンクの様な強い鮮やかな色合いの花は昔からお庭で愛される存在であり、「低木」という位置づけで楽しめる花として貴重な存在です。
ある程度形が整った木を植栽する事が多く、その樹形を逸脱しようとする徒長枝を外す剪定で形を維持していきます。
ミツバツツジ
薄紫色で数も多い花が人気のミツバツツジですが、夏の暑さに弱い面を考えますと植栽場所は限定されてきます。
葉の傷んだ箇所は吹き返さずにそのまま枯れ込んでしまう事が多く、高木の下等の木漏れ日で育てるのが無難です。
シロミツバツツジ
ミツバツツジの白花種であり、植栽のご要望を戴く事も多いツツジです。
やや紫色の名残を感じるゴマ柄があり、真っ白とは異なる美しさを見せてくれます。
花が咲く常緑低木
花木と言えば落葉樹が多いものですが、冬も葉を付けたままの常緑樹の花木もあります。
常緑低木の花木は冬の庭へ緑を添える事が出来る他、庭のデザインの骨格としての役割も持ちます。
花を楽しむだけではなく、その存在感も楽しめる低木と言えるでしょう。
マホニアコンフューサ(ナリヒラヒイラギナンテン)
開花期10~12月
ホソバヒイラギナンテンの近縁種で、花の少ない冬季に黄色の花を咲かせる貴重な庭木です。
マホニアコンフューサという名前が長い為、庭職に間では「マホニア」や「コンフューサ」等と略称で呼ばれる事が多いです。
弊社の庭づくりでも多く登場し、日向から日陰まで植栽場所を問わない常緑低木です。生育が特に緩やかな訳ではありませんが、切り戻し剪定が行いやすい木です。
平坦になりがちな花壇の中でも立体感を出しやすく、扱いやすい庭木です。
セイヨウイワナンテン
開花期4~5月
狭い花壇を明るいカラーで彩るイワナンテン。他の庭木と混ぜ植えされる光景を目にしますが、他の木とはやや離して植栽しても十分なボリュームがあり、かえって伸び伸びと育ちます。
同種を寄せ植えすれば乾燥防止にもなりやすいので、明るいワンポイントを作りたい時に役立ちます。半日陰可。
西洋シャクナゲ
開花期4~5月
低木花物として慕われている西洋シャクナゲは、庭植えとして健康に長く育てるのは容易な木ではなく、土壌作りや植栽場所(西日の当たらない適度な日向)をきちんと行う必要があります。
腐植質が多く水はけのよい酸性土壌へ改善し、乾燥をしない様に管理するのが最低限の条件となります。
薄紫色のシャクナゲは半日陰で美しく映えます。
紫の花はシランやツツジ、アガパンサス等でも見られますが、豪華な紫花はシャクナゲならではと言えます。
アセビ
開花期2~4月
細かい枝葉が美しいアセビは、古くから坪庭でも見られた低木です。
花は垂れ下がる様が美しく、写真の赤花の他白花も魅力的です。
全体がゆっくりと膨らむ生育を見せ、ある程度の大きさで落ち着いた木であればほぼ管理が必要なくなります。
ヤクシマアセビ
流通量は少ないですが、こちらはさらに小葉性で密度も高いヤクシマアセビです。
通常のアセビよりも明らかに剛健であり、強い日差しにも適応する力があります。
花が咲いた際に下垂をせずに花穂が上を向いたままであるのが特徴です。
沈丁花
開花期3~4月
沈丁花は花の香りがとても有名であり、日陰を好む低木として昔から慕われています。
花びらに見えるのは萼が花弁の様な形になっているもので、この部分に紅色が混じるかどうかで写真の様に「紅花種」と「白花種」に分かれます。
庭植えでは樹高1m程の球体に仕立てられる事が多く、放任するのであればある程度の面積を必要とします。
樹形が自然に整うので剪定の必要が無いとされる事もありますが、実際は枝が伸びた重みで木が傾いてくるケースが多く、やはり花後に切り戻しを行うのが良いでしょう。
樹形の維持に加え、枝葉の若返りを促す事は生育面へも有効になります。
這性寒椿(ハイカン)
開花期:10月~2月
寒椿はツバキよりも早く、寒い時期に開花する事から「寒椿」と呼ばれ、花の形も散り方もサザンカに近い庭木です。
庭職の間では立ち木となって育つ寒椿を「タチカン」、枝が横方向に伸びて樹高が低いままの寒椿を「ハイカン」と呼びます。
這性寒椿は樹高40cm程でも維持出来る低木であり、この特性を活かして寄せ植えによる植栽デザインが作られます。
古い和庭でも寒椿は多く目にする庭木であり、日向から日陰を問わず日本の気候に適した植物と言えるでしょう。
しかしツバキ科でありますので「チャドクガ」の発生が最も懸念され、近年では植えられる機会が少なくなってきています。
消毒散布さえしていれば非常に優れた庭木でありますので、常緑低木としておすすめです。
ビバーナム(常緑ガマズミ)各種
常緑のガマズミとして様々な品種があるビバーナムですが、共通して濃緑色の色彩と耐乾燥性が挙げられます。
常緑性で開花期は5月頃で、丈夫な低木類と言えますが、風通しが悪かったり日当たりが足りなかったりするとうどんこ病を通年発症する事があります。
壁際やカーポート下に植栽した場合に起こりやすいので注意しましょう。
ティヌス
葉はやや大きいものの、花期はカルミアにも似た賑やかな姿に。日向~半日陰まで適応性が高く、ティヌスは植栽次第で低い生垣を構成出来ます。
レイフレアーズドワーフ
小さな葉を持つ品種で、低木の寄せ植えとしても使いやすい庭木。刈り込みで重く見せたり透かして軽やかに見せるのも自在で、しっかりと花も付ける剛健種です。あまりにも暗い陰地では生育が難しくなります。直径40cm程の玉仕立ての樹形も時折流通します。
ハリアナム
レイフレアーズドワーフと樹形は似ているものの、葉の1枚1枚が艶やかで美しく、丸みを帯びているのが特徴です。やや葉数は少な目ですが、洋風ガーデンやナチュラルガーデンなど、どこにでもマッチする庭木です。
キンシバイ
半常緑性・開花期6~7月
黄金色の花を多数咲かせるキンシバイ。
大きく膨らんだ樹形が特徴で、春に全体を刈り戻す剪定で維持します。
ある程度生育した木は日照にも耐えやすいですが、表土が乾かない様に水管理は必須です。
全体が膨らむ木ですので、混ぜ植えはせずにキンシバイが旺盛に育つエリアを作るつもりで植栽しましょう。
近年ではやや大型で剛健な近似種であるヒペリカム類が多く植栽される様になっています。
ビヨウヤナギ
半常緑性・開花期6~7月
咲き方も色もキンシバイに似た花を付けますが、繊細な雄蕊が目立つ様がキンシバイとは異なります。
半落葉性の木に分類され、冬場は葉を多く落としますが、その際は美しい紅葉を見る事が出来ます。
キンシバイと同じく、同種の寄せ植えでボリュームのある花壇にするのがおすすめです。
アベリア
常緑性(但し寒地では落葉)・開花期5~10月
アベリアは旺盛な生育力と剛健さを持ちながら花を多く付ける低木類で、花壇向きの植栽として扱われます。
花壇の広いマンションなどでは多くを寄せ植えにしたりする事もあります。
耐乾燥性もあり、余程の事では枯れる事がありません。
剪定の際は無理に詰めたり透かしたりするよりは、ある程度の走り枝を残して仕上げると賑やかで自然な花壇に見せる事が出来ます。
カラーリーフを楽しむイエロー種
こちらは薄いイエローの斑が美しいアベリアです。乾燥気味な花壇でも旺盛に育ち、充実した植栽を演出出来ます。
この様にタイルはもちろんレンガ調の素材とも良く合う為、ボリュームのある植栽デザインに向いています。
濃緑色のアベリアで重厚感を
こちらは濃緑一色のアベリアが花壇全体に植栽された様子です。
高さのある花壇から溢れ出る様な生育を見せる為、動きと賑やかさを感じられる風景に。
濃緑色のアベリアは重厚感を演出する事にも向いており、お住まいやビル等をエレガントに見せる効果もあります。
ローズマリー
開花期11~5月
ローズマリーはハーブとして有名な植物で、乾燥にも強い剛健さを活かして乾燥しやすい花壇へ植える低木としてもおすすめです。
日光を必要とする植物であり、暗い場所へ植えるとすぐに葉が少なくなり枝も少しずつ枯れていきます。
庭木としては上へ伸びるいわゆる木立タイプよりも、写真の様にやや立ち上がってから枝が下りてくる「半ほふく性」の品種がお勧めとなります。
柔らか味のある姿は寄せ植えをしても美しく、花壇の中でボリューム感を見せたい場合にもお勧めな低木とです。
地を這う様に生育するクリーピングローズマリーと呼ばれる品種もありますが、こちらは地面を覆い尽くしたい場合にグランドカバーとして植えるのが良いでしょう。
グレビレア
グレビレアはオーストラリア原産の常緑性低木で、ヤマモガシ科に属する300種類以上の植物を指します。
生育環境としては陽当たりを好み、ジメジメとしていない水捌けの良好な土壌を好みます。
グレビレアの仲間は品種により全く異なる葉や樹形を持ちますが、蜘蛛の花「スパイダーフラワー」とも呼ばれる雌蕊の長い美しい紅花が特徴です。
このユニークな花と濃緑色の細かい葉のコントラストが美しく人気があり、開花時期も11~3月という他の花があまり咲いていない時期となっているのもニーズに繋がっていると言えるでしょう。
細かい葉がびっしりと付いた枝先にたくさんの蕾を付けるグレビレア・ピグミーダンサーです。
葉は濃緑色が美しく、写真は開花直前ですが葉色との対比の美しさが解ります。
葉先が尖っている様子はギンバイカの様にも見えますが、やはり色鮮やかな花は見応えがあります。
こちらはグレビレア・ジョンエバンスという品種で同じく赤いスパイダーフラワーを楽しめますが、ピグミーダンサーと異なり枝が斜め上に向かって真っすぐ伸びているのが解ります。
ジョンエバンスは樹高も幅も相応に大きくなる低木として認識し、レイアウトとしては無理に他の植物へ寄せ植えをして賑やかに見せようとはせず、開けた場所へ独立させておくのが良いでしょう。
植栽当初は空間が目立っていてもグレビレアは必ず膨らむ様に大きくなっていきますので、これを見越したレイアウトを心掛けておくのが大切です。
シャリンバイ
開花期5~6月
シャリンバイの花は白と紅の2種類が流通しており、紅花シャリンバイの花は実に美しい発色を見せます。
シャリンバイはアベリアと同じく日照りや乾燥に強いのが強みであり、特にシャリンバイは潮風にも耐える性質を持ちます。
この為、海に近い場所の低木街路樹として姿を見る事もあり、緑化樹としての側面も持ちます。
こちらが紅花シャリンバイの花で、鮮やかで存在感のある小花を多数見せてくれます。
花弁はグラデーションがかかった様な淡いピンク色を見せ、遠目から眺めると濃緑色の葉と鮮やかな花色とのコントラストが目を引きます。
薄暗い庭でも美しい花を楽しめるシャリンバイは、シェードガーデンの立役者ともいえる優れた低木です。
ツツジ類
ツツジ類は花物として昔から慕われてきた植物であり、常緑性も落葉性も存在する様に品種が多岐に渡ります。
多くは4~5月が開花期となり、同じツツジの仲間でも、花は色も形も大きく異なりバリエーションに富んでいます。
オオムラツツジ
常緑種のツツジ類であれば強い日当たりにも適応出来ますが、花壇や、コンクリートをくりぬいた植栽スペースですと乾燥が激しく、ツツジでも特に剛健な種類を選ぶ必要があります。
オオムラツツジであれば、マンションや公園でも丈夫に生育出来る剛健さを持ち、花だけではなく目隠し用の庭木として活かす事も出来る、頼れるツツジです。
管理の仕方によっては生垣としても活躍します。
エゾムラサキツツジ
半常緑性のツツジであるエゾムラサキツツジは、西洋シャクナゲにも似た集合した花付きが美しいツツジです。
ミツバツツジなどと比べると丈夫な一面があり、庭づくりで植栽する機会も多い低木です。
吉野つつじ
やや透き通る様なピンク色が美しいヨシノツツジは、一見して弱弱しく栽培が難しい印象がありますが、意外にも庭での適応性は高いツツジと言えます。
植え付け後に葉の傷みを生じても吹き返す事例も多く、自然味ある姿を活かしてナチュラルガーデンにも植栽したいツツジです。
カラーリーフの洋風低木
花を楽しめる低木と異なり、鮮やかな葉色、いわゆるカラーリーフを楽しめる低木類もたくさん存在します。
低木類のメリットとしては限られたスペースへ何種類かをレイアウト出来る事にあり、この際葉色の鮮やかな低木類を多用する事で実に多くの色彩に溢れた景観を作る事が出来るのです。
葉色の明るい低木であれば立ち木の下をカラーリーフで彩る事もでき、おしゃれなお庭づくりのキャストとして活躍してくれます。
ウエストリンギア
オーストラリアンローズマリーとも呼ばれるウエストリンギアは、その名の通りローズマリーに非常によく似た葉を持っています。
乾燥に強く剛健に育つという面も似ており、長時間陽の当たる場所を必要とする所も共通しています。
ローズマリーとは明確に異なる低木なので葉に芳香はありませんが、枝分かれの繊細さと柔らかさが唯一無二の美しさを持ち、写真の様に高木の幹回りへ優しく被せる様にすると大変ナチュラルな景観を作れます。
ウエストリンギアは年間ちらほらと花を咲かせる低木であり、この花もローズマリーに似ているという面白さがあります。
花数はやはり春先が最も多くなるのですが、繊細な枝先に薄紫の小花がたくさん咲く様子は、多くの方々がお持ちであるナチュラルガーデンのイメージに合致するのではないでしょうか。
そしてウエストリンギアで注目したいのが、品種毎に存在するカラーリーフです。
写真のウエストリンギアは青緑色の葉を持ち、葉がたくさん見られる時にはブルーリーフとも言える樹姿を楽しめます。
お庭のワンポイントへの植栽でも目立ちますし、広範囲にレイアウトしても独特の青世界を表現できるのではないでしょうか。
こちらのスモーキーホワイトと呼ばれる品種は白斑が多く入ったホワイトリーフとも言える葉色をしており、色の美しさと葉の繊細さを併せ持った素晴らしい低木と言えるでしょう。
日陰にこの葉色を添えたい事もあるかもしれませんが、スモーキーホワイトは陰を非常に嫌い、状態や葉色が悪くなる速度も速い感触を受けます。
ですので通常低木レイアウトで行いがちな「木の下」への植栽を行うよりも、明るく開けた日向で独立させて植栽するのが良いと考えます。
プリペット
色の鮮やかさと乾燥にも動じない剛健さから、花壇への植栽としてご希望をいただく事も多いプリペット。
自由に伸びた葉が優雅に垂れ下がる様が美しい庭木ですが、この姿になった際のサイズ感は植栽当初に比べますとかなり大きくなっている事を想定する必要があります。
優雅に見せるのであれば直径1mの領域は必要ですので、周囲には空間を設ける等、余裕を持った植栽計画をたてましょう。
プリペットレモンライム
プリペットのカラーリーフは基本のグリーンやシルバーなど多岐に渡りますが、最も明るい印象なのがゴールドの色を放つプリペットで、品種としてはレモンライムと呼ばれます。
とにかく金色の葉が眩しい程で、お庭へワンポイントで植栽をしても存在感を発揮します。
プリペットは総じて新葉を虫に食べられてしまう事が多いので、予防的な農薬散布がおすすめです。
シルバープリペット
雪が舞ったような白斑が美しい、シルバープリペット。
イエローリーフのプリペットレモンライム程の存在感はありませんが、シルバープリペットの優しい葉色を上手にレイアウトすれば、派手過ぎずナチュラルで美しいお庭になる事でしょう。
斑入りツゲの仲間
ツゲと言えば古くからお庭に植えられてきた、段作りの姿を思い浮かべる方も多いと思います。
大きな木というイメージもあるかと思いますが、キンメツゲを始め低木の扱いで植栽が出来る品種もございます。
総じて小葉が美しい低木ですが、乾燥に強くはありませんので、散水メンテナンスはきちんと行いましょう。
ツゲ(貴婦人)
黄色と黄緑が入り混じり、葉も小さく美しいツゲ、貴婦人と呼ばれる品種です。
多く見掛ける事はございませんが、弊社では良品を仕入れた際に積極的にスモールガーデンや花壇へ取り入れています。
寄せ植えというよりも40cm程の玉状に作られた物が多く、ワンポイントを美しく飾る様なレイアウトがお勧めです。
斑入りツゲ
こちらは葉の周囲に白斑が入ったツゲです。
色味は抑えられた印象ですが、上品な色彩は花壇や他の植物の色味を引き立てる効果があり、何よりも維持がしやすいという利点があります。
ヒメマサキ
マサキと言えば扱いやすい立ち木や生垣を連想しますが、ヒメマサキは一本幹を持たず枝が細かく分かれており、あくまでも膝丈程度の高さの低木として植栽されます。
非常に小さな葉にはっきりとした模様が入っており、カラーリーフ低木の中でも上品な雰囲気を出す事に向いています。
しかし春先にとても小さな毛虫による食害に遭いやすく、これには予防として農薬を散布しておく事が望ましいです。
アオキ(ピクチュラータ・サルフレア等)
アオキと言えば日陰を好む低木で有名ですが、やはりイエローリーフの品種の需要が高いです。
黄色の斑入り品種は「斑入りアオキ」「ピクチュラータ」「サルフレア」等の多岐に渡り、それぞれ黄色の入り方が異なります。
アオキの性質を活かせば陽の差さない北側花壇や乾燥しやすい壁際日陰等にも植栽する事ができ、暗く寂しい空間でもイエローリーフのアオキなら美しく演出してくれるでしょう。
画像はピクチュラータで剪定も行いやすく、低木としてのサイズ感も維持する事が出来る植物です。
ギルドエッジ
ギルドエッジは斑入りのグミで、鮮やかなイエローが特徴的な低木です。
低木として維持する事は可能ですが、幹から直接伸びる徒長枝が非常に強く、一年で1.5m程伸びる枝もあります。この様な枝は必ず元より外し、大人しい小枝だけで樹形を構成させておく事が大切です。
尚、各所にトゲがある庭木ですので、小さなお子様が遊ぶ庭や近くを歩行する花壇には不向きかもしれません。
五色南天(オタフクナンテン)
日陰のイメージが強い五色南天ですが、発色自体は日当たりを必要としますので、同種で花壇へ寄せ植えする植栽にも向いています。
最も知られるレッドリーフを見せるのは秋~冬で、それ以外の季節は緑色に落ち着いています。
枝が急に伸びたりする木ではありませんが、ゆっくりと全体が膨らんできます。
内部の葉は枯れやすいので、膨らみ過ぎる前に剪定を施すのがおすすめです。
トベラ(斑入り)
トベラは沿岸部にも自生する、潮風にも強い剛健な常緑低木です。
この特性はシャリンバイにも似ており、葉の形や樹形もどことなく共通しております。
トベラは写真の斑入り品種がとても美しく、成長も全体がゆっくりと膨らんでくるタイプの為、維持管理がしやすい優れた低木です。
剪定からの芽吹きも良く、ボリュームのある明るい低木としておすすめ出来ます。
ピットスポルム
トベラの仲間でありますが、ピットスポルムの名前で流通するこの低木は葉が小さく繊細で、きらびやかな雰囲気を感じさせてくれます。
葉の小ささと斑入りのカラーがシルバープリペットによく似ておりますが、プリペットの様な強い走り枝が発生する事は無く、ゆっくりと全体の樹形を整えながら成長していきます。
生花、フラワーアレンジメントにも利用される事があり、観賞価値の高い常緑低木と言えます。
斑入りアジサイ
アジサイと言えば花がお目当ての低木類として有名ですが、葉に白斑が入る斑入りアジサイなら美しい葉も楽しめます。
アジサイは陰を好む特性から半日陰や日陰に植栽される事が多く、その際この明るいカラーリーフが日陰を上品に明るく彩ってくれるという訳です。
葉も大きく葉色も派手過ぎない斑入りアジサイなら、是非美しいシェードガーデン作りに取り入れたいものです。
ツル性のカラーリーフ植物
ツル性の植物は総じて生育面での注意が必要となります。とにかく壁やフェンスを伝って領域を広げる事はもちろん、他の植物を飲み込む様な生育をしてしまう事があります。
花壇にツル植物を植栽する際は、なるべく他の植物との混ぜ植えは避ける事が望ましくなります。
プランター等の寄せ植えでしたら管理もしやすく寄せ植えなども容易に楽しめます。
ツルマサキ
ツルマサキは実に豊富なカラーがあり、最も明るいカラーがこちらのイエローリーフです。
シックなレッドなどもあり、半日陰にも適応する丈夫な植物です。
その特性を活かせば、花壇でも暗くなりがちな「庭木の足下」などを明るく見せる事が出来ます。
一般的なツル植物よりは緩やかな生長ですので、手入れが追い付かなくなる事は稀です。
冬季に異なる色へ変化する事が多く、紅葉の様な美しさを見せるツルマサキもあります。
ハツユキカヅラ
ハツユキカヅラの葉の美しさは特別とも言える物で、花壇に限らずプランターの寄せ植えに使われる方も多くいらっしゃいます。
ツル植物らしい剛健性で、水遣りの行き届かない広大な花壇やマンションエントランスでも旺盛に広がり、独特の色合いを見せてくれます。
花壇の様にきちんと領域を管理できる場所であれば、取り入れてみたいカラーリーフです。
ワイヤープランツ
ワイヤープランツは針金を思わせる赤いツルが特徴とされますが、実際には赤味はあまり感じないかと思います。
庭・花壇植えの場合ですととにかく丈夫で生育が早く、一帯がワイヤープランツになる事を想定する必要があります。
一面が厚い絨毯になる事から、雑草対策としては有効です。
ツルニチニチソウ
寄せ植えアレンジやプランター、グランドカバー等で用いられる植物で、つる状に伸びた茎から根を下ろして定着する様に広がっていきます。
カラーリーフとして斑入り種が多く流通していますが、花付きは通常葉の方が良いと言われています。
暑さ寒さに強い剛健種ですので、この特性が花壇やプランターへの植栽で活かされます。
アイビー・ヘデラ
ワイヤープランツと並び、プランターやハンギングの寄せ植えアレンジでよく見掛ける植物です。斑入りの物が多く流通しており、カラーリーフとして花壇やプランターに植栽されます。
丈夫で育ちやすい植物ですが、やはり他を侵食する程の生育力を想定し、寄せ植え等はプランターで行っていただくのがお勧めです。
ドライガーデン向きの低木やグランドカバー
荒廃地をモチーフに個性的な植物を楽しむドライガーデンですが、そんなシチュエーションにおすすめな植物・低木もご紹介します。
カレックス:イエロー・レッド・ブラウンなど多数
グラス系植物として植えられるカレックスは、オーナメント植物としてもレイアウトします。洋風のロックガーデンや砂利とのバランスも良く、乾燥に強い一面が花壇向きと言えます。冬の霜に当たると一気に傷みますので、壁際や他の庭木の足下へ植栽しておくと安心です。
セダム:ゴールドやレッド他、品種は数多く存在
セダムは多肉植物の一つであり、乾燥状態を好む植物として知られています。コツを掴めばどんどん領域を広げ、盛り上がる様な美しい絨毯状に地面を覆います。
増やすのも容易ですので、乾燥しやすいプランターや鉢植えでの愛好者様も多いです。
写真はゴールド系のセダムで、色や葉は実に多くの品種が存在します。
こちらはブルーが鮮やかなセダム。花壇や玄関周りにこの様な絨毯があればとても美しい事でしょう。
ニューサイラン
ニューサイランは1m程の背丈にもなる植物で、洋風ガーデンはもちろん、お庭を南国調の雰囲気に見立てる事が出来ます。手入れはほとんど必要ありませんが、古くなった葉が茶色く枯れて目立ちますので、それらを取り除いてあげると美しい姿を保てます。
レッドリーフのニューサイラン
こちらはドライガーデンへ植栽した銅葉のニューサイランです。様々な色が競い合うお庭の中で、シックな表情が引き立てられます。ニューサイランは全体的にサイズが大きくなってきますので、周囲は空間を残して植栽しましょう。
コルディリネ類
ドラセナやコルディリネは乾燥状態に強い特性から、花壇はもちろんプランター植栽でも多く使われる植物です。カラーリーフはグリーンとレッドが主流ですが、斑入りの希少種も存在します。古葉を取り除くお手入れ程度で維持出来ますので、気軽にお庭へ取り入れられます。ですが少しずつ真上へ背丈を伸ばしていく植物である事は想定しておきましょう。
ドラセナ類
ドラセナ類も幹先端部から放射状に葉が展開する植物で、こちらは多くのカラーが存在します。
ドラセナと言えばスタンダードなグリーンやレッドが慕われていますが、こちらの様なイエロー系カラーリーフやピンク等も存在します。
ドライガーデンの1キャストとしてはもちろん、花壇の中でオーナメントとしての存在感も併発揮してくれます。
アガベ(リュウゼツラン)類
アガベ(リュウゼツラン)はセダムと同じく多肉植物で、暑さや乾燥に強い特性があります。これは花壇に適した特性とも言えますが、あまりにも寒さが厳しい地域や場所は避ける方が無難です。
生育期以外に水を与え過ぎると根腐れする傾向があり、管理的には容易な植物と言えます。
種類は何百もあると言われ、それぞれ大きさはもちろん葉の形状やカラーに個性があります。
ユッカ類
ユッカは観葉植物としても慕われており、青年の木とも呼ばれるユッカ・エレファンティペスが有名です。
庭木として知られる種は様々な形状やカラーがありますが、総じて剣状の葉と放射状に広がる葉列が特徴です。
耐寒性を持ち合わせる事でも知られ、丈夫な植物と言えます。
ユッカ・ロストラータ
希少種のユッカ・ロストラータ。葉が特に繊細で数も多く、シルバーブルーのカラーがお庭で一際目を引きます。
幹がしっかりとした姿はヤシ類の様な風格も見せ、個性的な姿はドライガーデンにも向いています。
価格が高いのがデメリットでしょうか。
カラーリーフらしさを楽しむユッカ
ユッカは葉先が尖っているのが特徴ですが、品種によっては危険とも言える硬さを持っています。
庭木として植栽する場合はこの様に葉がしなやかものがお勧めとなります。
こちらのユッカはイエローとグリーンの組み合わせが鮮やかで、お庭や花壇を手軽に明るく見せる事が出来ます。
乾燥や日照りに強い、低木コニファー
花壇への低木植栽を計画する場合、先述の様に非常に乾燥しやすい場所であることを想定する必要があります。
その点、低木コニファー類であれば総じて乾燥に強い特性があり、花壇にはうってつけの庭木と言えます。
立ち木性のコニファーの多くは庭木として向かないのでおすすめは致しませんが、這性種であればコニファーは是非おすすめしたい植物です。
ゴールデンモップ
黄金色で糸状の葉を持つコニファーで、寄せ植えから1株植えまで幅広いレイアウトが可能です。
冬季は葉がオレンジを帯びる為、また違った表情が楽しめます。剛健な特性から、大型店舗の植栽としても見掛ける事があります。
刈り込みでの剪定も可能ですので、膨らみ過ぎない様に常に低く仕上げておくと美しいです。
ブルーパシフィック
グランドカバーとしての役割はしっかりとこなしつつ、飾り過ぎない見た目が魅力のブルーパシフィック。
主張の少ない濃緑葉はナチュラルガーデンはもちろん、乾燥が強く植栽に悩みがちな和庭へもマッチします。
高山の針葉樹にも見える事から、雑木類との相性も良いコニファーです。
ブルーカーペット
薄紫色の葉が個性的なブルーカーペットは、ある程度枝が伸びつつ下へ降りてくる樹形をしており、匍匐型というよりも枝垂れ型という生育を見せます。
しっかりとした枝を持ちますが刈りこみがしやすく、成型次第できっちりとした絨毯に仕上げられる品種です。
花壇にブルーのカーペットをあしらいたい場合はお勧めのグランドカバーです。
ウィルトニー
ウィルトニーはコニファー系グランドカバーの中でも特に上へ伸びない種類になります。生育は常に横方向へ進む為に低いフォルムを維持する事ができ、グランドカバーの最前列へのレイアウトに向いています。
ですが枝が重なり合った部分がすぐに枯れやすく、枝が混み合わない様に伸びた枝は常に外しておく必要があります。
ブルースター
ブルーカーペットよりもさらにはっきりとしたブルーを放つコニファーです。
小さなポット物ではなく、直径30cm前後の玉仕立てとして流通する事が多いです。
もちろん乾燥に強い為、独立してオーナメントの様な植栽レイアウトを行います。
お庭に個性的なブルーが存在するだけで、周囲の植栽カラーが引き立って見えます。
マザーローデ
コニファーとしては珍しい柔らかな葉を持つマザーローデ。
金色の新芽が美しいのですが、伸びた葉が地面に接触すると傷みやすいという弱点があります。
僅かな陰でも傷みやすいので、土に接触しない明るい日向へ植える様にします。
ブルーマウンド
コニファー系のグランドカバーとしては最も小さな葉で密度の高い絨毯を形成する植物です。
生長もコニファーとしては緩やかで、剪定維持が非常に容易です。
冬季は写真の様に紫がかりますが、生育期は鮮やかなグリーンが美しいグランドカバーです。
プロペングンス
プロペングンスの葉はブルーマウンドと同じく細かく、繊細な印象です。
しかしながら針葉らしさが強く懐の葉は特に尖っており、不用意に手を入れると痛みを感じる為、お子様の遊ぶお庭では扱いに注意が必要です。
枝は主に横方向へ伸びますが、重みで垂れ下がりにくく頑丈な樹形を形成していきます。
古くから和庭へ植栽されてきたハイビャクシンと雰囲気が似ており、和洋問わずレイアウトをする事が出来ます。
まとめ
低木の定義や役割、庭木としておすすめな種類をご紹介してまいりましたが、如何でしたでしょうか。
低木の植栽はシンボルツリーなどの立ち木を引き立てる事はもちろん、足下部分への視覚効果に直結しますので、デザイン面でも重要な位置付けとなる庭木と言えます。
弊社によるお庭づくりの際は、高木の植栽と低木類の組み合わせをトータルで考えるプランをお出し致しておりますので、植栽・お庭リフォームをお考えの際はお問い合わせ方法をご参照の上、お声掛けをいただければと思います。
執筆者:新美雅之(新美園HP作成・作庭者)
庭木や庭デザインについて、作庭者の経験を活かして現実的に解説をするコンテンツを目指し、日々執筆しています。