キンメツゲはモチノキ科モチノキ属の常緑低木で、新芽が黄色く鮮やかな特徴を持ち、イヌツゲの園芸品種にあたります。
キンメツゲの仲間である「イヌツゲ」は古くから庭へ植えられる事が多い植木ですが、キンメツゲは通常のイヌツゲに比べて葉が小さく密度も濃く、枝分かれも非常に細かい庭木です。
葉密度の高さと萌芽力の強さから、刈り込みによって自由に整形する仕立てがほとんどで、玉仕立てや段づくりの他、生垣の庭木としても有名です。
目次
キンメツゲの基本データ
- 科名・属名 モチノキ科・モチノキ属
- 学名 Ilex crenata cv.
- 分類 常緑低木
- 開花期 6月
- 庭木としての樹高 1m~2m
- 原産地 日本(北海道を除く) 朝鮮半島南部
- 主な植栽用途 生垣 目隠し トピアリー 玉仕立て 段作り仕立て
新芽が黄色く鮮やかな色をしている事から「金芽(きんめ)」の名が付けられています。
キンメツゲはイヌツゲの品種でありますが、イヌツゲとホンツゲは全く別の植物で、ツゲ科でなくモチノキ科に分類されます。
イヌツゲの名の由来としては、イヌツゲの葉の形がホンツゲに似ていながら材として劣る(成長が遅い)事から「イヌツゲ」と呼ばれる様になりました。
作庭者から見ると「キンメツゲはこんな庭木」
キンメツゲが庭づくりに使われてきた歴史は古く、生垣や段作り仕立てとして、現在もその姿を見る事があります。
作庭者の目線で考えますと、キンメツゲは以下の様なポイントが挙げられます。
おすすめなポイント
- 葉が小さくて密度も高く、しっかりした存在感
- 1m程度の低い樹高でも維持出来る
- 萌芽力も強く、生垣として最適
注意したいポイント
- 古くなった枝が突如枯れる事がある
- 成長が遅く、早く大きくしたい場合には不向き
- 葉密度が高い為、刈り込みの技量が表れやすい
それではこれらのポイントを交えながら、庭木としてのキンメツゲについて解説をしてまいります。
キンメツゲの特徴
小さく高密度な葉
キンメツゲの最大の特徴は、非常に細かい枝葉を持っている事でしょうか。
庭木において「小葉種」と位置付けをされる木は貴重かつ美しいと言われてきており、「コハ~」「ヒメ~」と呼称される事が多いものです。
しかしながらこの木は小葉よりも新芽の黄色が特徴とされる名称をしており、金芽ツゲと呼ばれます。
色鮮やかな新芽
キンメツゲの新芽は名前の通り新芽の黄色が鮮やかで、イヌツゲと大きく異なる特性と言えます。
この為、年間を通して同じ姿をしているイヌツゲとは異なり、花の目立たない常緑樹ながら春の季節感を感じられます。
強い萌芽力
刈り込みからの新芽展開も繊細で、これによりいち早く目隠し効果を高める事が可能です。
細かく密生した枝葉は絨毯の様に美しく、キンメツゲは特に生垣として向いている木とも言えます。
また、整形を行いやすい特性から、キンメツゲは自由な形を植物で表現する「トピアリー」の素材としても使われます。
突然の枝枯れ
キンメツゲは年月を経ると、古い箇所が突然枝ごと枯れる事があります。
原因は定かではありませんが、虫でもなく、カビ類によるものという設もあります。
枯れ枝となってしまった部分は元から取り除き、元気な部分を生育させて補うのが対処法となります。
キンメツゲの花
イヌツゲと同じくキンメツゲは「雌雄異株」の植物であり、雄株と雌株に分かれます。
雌株は6月頃に小さな花を咲かせますが、イヌツゲ類については花はあまり目立たず鑑賞目的とはされません。
しかし花後に付く実は小さくともツヤがあって可愛らしいものです。
庭木として流通するのは花を付けず剛健に育つ雄株が多いのですが、雌株のこんな一面も観賞価値的におすすめではあります。
キンメツゲに適した環境
キンメツゲは日当たりの良い場所を好み、建物や他の木が近くに寄る事を嫌がる傾向があります。
少々の日陰(北側の庭など)でも生垣を形成出来る程度に生育するものの、裏側や塀際などに近い枝はみるみる内に枯れ込んでいきます。
細かな枯れ枝ですが、木鋏や指で取り除いておきましょう。
ただし自然な枯れが起こるのは陽当たりの少ない箇所だけですので、元気な箇所を大切にして育てるのが一般的です。
また、日当たりの少ない場所ではグンバイムシの被害を受ける事があり、葉が全体的に白く(薄く)なってしまいます。
落葉樹や他の常緑樹よりは生育は緩やかで、刈り込みなどの剪定でも次々に細かい芽を吹かせます。
ですが成型的な仕立てが多い為、形を維持する様に刈り込みを欠かさない様に行っておく必要があります。
キンメツゲを生垣に
キンメツゲの持つ繊細な枝葉は常緑樹としては稀であり、その特性を活かした目隠しとして植栽する事が多いです。
生垣の材料として適した植木でありますので、生垣用の形の木が多く流通しております。
生垣用のキンメツゲは背の低いタイプも流通しておりますので、圧迫感の無い生垣を施工する事が出来ます。
植栽当初より枝葉が密でありますので、施工後から目隠し効果を得られる優れた植木です。
道路と小庭を区切る生垣として
こちらは歩道沿いに施工を致しましたキンメツゲの生垣です。
伸びが細かく生育も緩やかなのでこうした場所への植栽にも向いております。
低い位置だけを隠す生垣として
こちらは下部への目線のみを目隠しする目的で作ったキンメツゲの生垣です。
生垣の向こうには室外機等の住宅設備が見えていましたが、キンメツゲの濃い枝葉によって見えなくする事が出来ました。
この生垣の樹高は1m以下と、生垣としては非常にコンパクトなサイズに仕上がっており、キンメツゲならではの景観を作り出しております。
生垣について詳しく解説するページもありますので、併せてご参考下さい。
関連記事>>>生垣とは?メリットや注意点、おすすめ全21種類を花・洋風・低木等のテーマ別にご紹介
仕立て物としても使われるキンメツゲ
キンメツゲは整形のしやすさから生垣に使われる点を解説しましたが、この特性を利用して、他の樹形としても多く利用されています。
和風の段づくりとして
和風の庭に見られる段作り仕立てとは、頭を作り、枝の塊を段の様に配置させて作る樹形を指します。
キンメツゲもこの仕立て方に使われる事が多く、イヌツゲやマキ等と共に和風の庭で見る事が出来ます。
キンメツゲはこの他に、球体に刈り込んだ仕立ての「玉仕立て」に使われる事もあります。
自由な形を楽しむ「トピアリー」として
トピアリーとはイギリスの庭園でよく見られる、植物を使った造形物の事です。
形作るのは動物や幾何学的模様が多く、骨格は針金を使って曲げられた幹や枝となっており、葉を刈り込んでいく事で最終的な形が作られます。
キンメツゲは葉密度が高く幹周りが全く透けて見えない為、このトピアリー作りに向いている植物です。
テーマパーク等で見掛ける事もありますので、是非観察してみては如何でしょうか。
キンメツゲの育て方
適した土質
強い木ですので土質は選ばない方ですが砂質土は避け、腐葉土や樹皮堆肥を多く含んだ土を作ってあげる事が望ましいです。
ややアルカリ性寄りの土壌を好む庭木ですので、植え付け前に適量の苦土石灰を施しておくのも良いでしょう。
植え付け
キンメツゲの植え付けは暖かくなり始める4月~5月、暑い夏を過ぎた9月~10月が適期です。
根鉢は小さく作られている事が多く、根が弱いというケースも少ないです。
植え付けについては楽に行える庭木と言えます。
水やり
植えた苗木が根付くまでは乾燥しない様に水やりを行いますが、庭木として落ち着けば水やりは必要ありません。
ただし乾燥しやすい場所の生垣であれば、夏場の水やりは欠かさない方が良いでしょう。
肥料
寒い時期も元気な樹勢を保させる為、年に二回の施肥を推奨します。
寒肥として2月に堆肥の埋め込みや化成肥料を与え、成長期の7月頃には追肥として化成肥料を株元へ撒いてあげると効果的です。
キンメツゲの剪定方法
キンメツゲの剪定は、とにかく枝が多く細かい為、刈り込みによって樹形を整える方法が一般的です。
枝葉の密度が濃いので、剪定によって成型された際はまるで緑の壁の様な仕上がりとなります。
剪定の適期
キンメツゲの刈り込みは厳寒期を避ければ通年行う事が出来ますが、理想としては一般的には年二回ある成長期の後に行います。
春から5月までの成長後、8月の二回目の成長後に行うと効率が良く、つまり
■6月と10月頃
の二回が剪定の適期と言えるでしょう。
キンメツゲの枝を切り揃える様子
先述の様に日の差しにくい場所は枯れが進んでいきますので、剪定時あるいは気が付いた際に取り除いておいてあげましょう。
こちらは生垣として植栽された直後のキンメツゲを、木鋏によって切り揃える様子です。
特に難しく考える必要は無く、キンメツゲの剪定は枝を揃えて樹形を作る、という事に専念します。
キンメツゲの繊細な枝により、この様に綺麗な直線に仕上げる事が出来ます。
刈り揃えた後は、切り口が大きかった箇所と枝が込み合った部分を軽く透かせば完了です。
尚、キンメツゲは幹の根元から「ひこばえ」「ヤゴ」と呼ばれる徒長枝が発生しやすい庭木です。
この枝を取り払う事も大切ですので、剪定作業の一環として行いましょう。
刈り込み剪定に併せ、ハダニ類の予防策として薬剤を散布しておくのも効果的です。
まとめ
キンメツゲの紹介と解説でしたが、如何でしたでしょうか。
キンメツゲはご自身での入手も比較的容易な庭木で、適期であればホームセンターでも樹高1m程の植木が売られています。
DIYで生垣づくりにチャレンジする事にも向いた庭木であり、マサキと並んで売られている事もあります。
陽当たりの良い場所があれば、是非キンメツゲを植えられてみては如何でしょうか。
執筆者:新美雅之(新美園HP作成・作庭者)
庭木や庭デザインについて、作庭者の経験を活かして現実的に解説をするコンテンツを目指し、日々執筆しています。