モダンナチュラルなデザインが施された横浜市M様邸、こちらのお住まいには玄関前や道路側に植栽用のスペースが設けられており、建築中の段階より私の方へ植栽設計のご依頼を戴いておりました。
こちらのお住まいではバルコニーへ目隠し用のプランター植栽も施しており、こちらについてはシマトネリコとイロハモミジのプランター植栽で、リビングを心地よく目隠し-横浜市M様邸にてご紹介しています。
今回シンボルツリーとしてご用意したのは樹高4mを超えるアオダモであり、これは1株ではなく2株を並べて寄せ植えしたデザインになっています。
アオダモは幹が数本立ちあがる規格ですと価格がかなり高くなってしまうのですが、自然なボリューム感を求めるのであれば幹の少ない比較的安価な株を寄せ植えする事で実現でき、幹の本数も多すぎず爽やかな植栽デザインになります。
こちらではほぼ1本幹のアオダモを2株、左流れ且つ植栽角度も合わせやすい木を選んでおり、2株の木が自然に溶け込んでいるのがお解りいただけると思います。
樹形についても枝が斜め上へ走るのではなく、極めて自然に横向きへ伸びた木を選んでいます。
山で見掛ける様な自由気ままに成長した様な樹形であり、幹模様の面白さと葉の少なさがアオダモらしい魅力を引き立てています。
近年では山採りの雑木をかなり傾けて植栽するケースが多く見られますが、傾け具合についてはその木の持つ自然な角度を守ってあげる事がおすすめです。
上部の枝葉が軽い雑木についてはある程度傾けても木が重みで傾いてくる事はほとんどありませんが、植栽後に留意すべきは「倒れ」ではなく「曲がり」にあります。
枝や幹が細い山採り雑木は、葉が雨で濡れただけで水分の重みによって曲がりが生じます。
この枝の曲がりについては幹へ施した支えでは対応できず、下向きになった枝によって歩行に支障が生ずるケースも多々見られます。
特にイロハモミジの様に枝が細く葉数が多い樹種は重みの影響が表れやすく、自然な傾きを演出するのであれば枝の少ない樹形を選ぶ、または植栽時に大幅な枝透かしを行う事が必要です。
もちろん木々は根付きや適宜剪定によって幹も枝も太って曲がりにくくはなっていきますが、後々を見据えた植栽計画として、枝の曲がりによる影響が顕著になり過ぎない植栽角度を保つのが良いでしょう。
成長によって枝は伸び、これに伴い自然に幹にも傾きが付いてくる事もありますので、この様に自然な成長を経た樹形をゆっくりと楽しまれるのが良いかと考えます。
花壇や独立した植栽スペースに見られる特徴として、乾燥しやすいという点が挙げられます。
これは植栽スペースの囲い有無に関わらず、特に囲いによって周囲より高くなったスペースでは更に顕著となります。
花壇への植栽においては大前提として乾燥に強めな剛健種を選ぶのが望ましく、今回の場合はこの中から特にナチュラルに見える樹種、放任して後々繁茂した姿が美しく見える様な植栽を心掛けました。
アベリアやトベラ等は剛健性の高い樹種として知られていますが、マンションやビルへの植栽等で一面に寄せ植えをされているイメージを持たれがちです。
寄せ植えを行ってしまうと樹形自体が見えなくなってしまい、ナチュラル感をもたらしてくれる貴重な樹種である事はあまり周知されていないかもしれません。
これらの樹種は枝が走る様に成長しますが、ある程度の枝伸びは許容して枝の数を減らし続ける、この様な適宜剪定によってナチュラル感溢れる植栽景観を維持したいものです。
一方で葉密度が高く全体が膨らんでくる様な成長を見せるコニファー類やウエストリンギア類も合わせており、これらは後々ボリュームを増して地面が見えない様になっていきます。
建物には玄関が2つありますが、もう片方の玄関前は雑木風情を感じられる樹形のソヨゴを植栽しており、白壁に映える素朴なシンボルツリーになっています。
ソヨゴと言えば均整の取れた株立ち樹形が多く見られますが、吟味を行うと枝も細く少なく、野趣ある樹形の木を探す事が出来ます。
もちろん多くは簡単に見付けられないのですが、この様な樹形のソヨゴは常々探し歩いてはおります。
但し雑木らしさを持つソヨゴは相応に幅もあり、写真の木でも直径1.2m程を有しています。
植栽に自然樹形を取り入れたい場合は周囲に余裕があって植栽後にも放任ができ、他樹の寄せ植え等はせずにシンプルに仕上げておく事がお勧めです。