独自の設計がふんだんに盛り込まれたM様邸には三角形のバルコニーが設けられており、この外周は高さ1.8mの外壁が備えられています。
この壁さえあれば周囲からの目隠しも万全かと思われますが、住宅地においては向かい側の建物二階からは簡単に視線が届いてしまうものです。
そこで今回はバルコニーの外壁だけでは対策しきれない高所の目隠しを、プランター植栽によって補助する事となりました。
プランターが計4台設置された為、リビングからは気持ちの良い緑を望める様に。
プランターには背の高いシマトネリコと小振りなイロハモミジが植栽されており、常緑樹・落葉樹の違いはありますが双方共に柔らかな樹形を楽しめる樹種と言えるでしょう。
近年はプランターをダークカラーにする流行が見られますが、今回はフロアタイルや外壁の色に溶け込む様に、プランターはホワイト基調のカラーをチョイスしています。
丸型プランターのメリットはその安定感と、角の無いフォルムなので設置場所を狭くしにくいという点が挙げられます。
プランターへ植栽されたシマトネリコは樹高3~3.5mを有しており、プランター自体の高さを加えるとフロアから3.5~4m前後の高さまで枝葉が展開します。
シマトネリコはそのほとんどが株立ち樹形であり、3株の植栽によって幹がたくさん立ち上がる姿を楽しむ事が出来ます。
広いバルコニーはハンモックも使用出来る様に設計されていますが、このプランター目隠しがあるからこそ、しっかりとしたプライベート空間として成り立っています。
特に奥の外壁沿いへ集中して3台のプランターを設置していますが、手前にも斜めからの視線をカットする為にプランターをレイアウトしています。
このレイアウトによってプランターの景観に遠近感が加えられ、まるで木々が地植えされた庭の様な心地良さが生まれます。
植栽景観というものは「重なり合い」が生じると2本の木が立体的に揺れ動いて見え、これが森林の様な心地良さを生み出すという訳です。
プランター植栽は一列に並べられた空間を連想されがちですが、これに捉われずに自由なレイアウトを施せば、より樹木の美しさを引き出す事が出来ます。
角に置かれたプランターは直径80cmの大型であり、このサイズですと立ち木の足下へ様々な低木を用いた寄せ植えアレンジを施す事も出来ます。
プランターの寄せ植えアレンジに使われる低木は総じて乾燥に強めな樹種が多く、じめじめとした環境を嫌い適切な乾燥と湿潤の繰り返しを好む樹種を使う事が大切です。
ローズマリーやラベンダーをプランターアレンジでよく見掛けるのもこの様な環境を好むからであり、同じくツル性の植物もその剛健性からプランターで使われる事が多いです。
今回はリビングという離れた場所から眺めるプランターですので、ある程度の樹高やボリューム感を有する低木を寄せ植えとして採用しています。
低木コニファーやウエストリンギアといった低木は、柔らかいシルエットを保ちながら膨らむ様にボリュームを増していってくれます。
また、背後に見える細葉のカレックスはポニーテールと呼ばれる品種で、葉が周囲へ倒れにくい特性が寄せ植えアレンジに向いています。
低木は全体的に青々とした色合いでまとめており、暑い季節も清々しい景観を保ってくれる事でしょう。
3株のシマトネリコに混じって凛とした美しさを見せているのがイロハモミジです。
通常プランターへイロハモミジを植栽する事は少ないのですが、上の部分に陽が当たりプランター自体は陰に入りやすいという位置の為、乾燥を嫌いがちな落葉樹ながら今回の植栽に採用しています。
シマトネリコが一年を通して同じ姿でいる事に対し、イロハモミジは新緑から落葉前の色付きまで、季節感を見せてくれる事が最大の魅力と言えるでしょう。
単幹樹形のイロハモミジは下部に枝葉が少ない為、このプランターには剛健なアベリアを寄せ植えしています。
アベリアであれば乾燥にもかなり強く樹高も伸ばしやすく、5~11月の長い間に渡り花を少しずつ咲かせている姿を楽しむ事が出来ます。
加えて落葉期を迎えて葉が無くなったイロハモミジの足下を賑わせてくれる低木として、とても多くの役割を担ってくれています。
プランターへの植栽は目隠しと景観向上の両面にメリットがあり、今回の様に木々を立体的に見せたり低木寄せ植えを取り入れたりと、可能性は無限に広げられます。
お住まいに緑を置きたい、そんなご希望をお持ちでありましたら是非ご相談をいただければと思います。