T様邸は砂地によって造成された土地であり、元々から地中に存在する宿根性の雑草の発生が懸念されておりました。
土手などで見られる強靭な雑草は発芽の際に針の様な硬さを持ち合わせており、安価品の防草シートですと簡単に破って生えてきてしまいます。
今回はこれらの強い雑草の抑制に重点を置きながら、様々な雑草対策方法をデザインとして取り入れたお庭造りを行う事となりました。
華美ではなくどこかナチュラルであり、メンテナンスも行いやすいガーデンデザインを考えてみました。
お庭へは砕石敷きによって仕上げた通路から立ち入る事が出来ます。既存の立水栓周りは庭石組によってナチュラルな排水構造とし、砂利による浸透機能も備わっています。
砕石と化粧砂利との境界には枕木風の平板ステップを設け、歩行によって砂利同士が混ざり合ってしまう事を防ぎます。
正面の物置は全体が視界に入らない様、シラカシを植栽する事によって目隠し効果を得ています。
入り口から見渡す洋風ナチュラルガーデンの様子です。冬季ですので手前のイロハモミジに葉が付いておりませんが、葉のある季節ですと一層の立体感を感じられます。
アプローチともテラスとも言える平板エリアから人工芝の広場が垣間見え、グラウンドの持つ様々な表情とカラーリングが出迎えてくれます。
お住まいから直接お庭へ下り立つ事はあまりございませんが、デザイン上こうした園路を構成する事でお庭に面白味が生まれます。
また、お住まい内部からお庭を見下ろした際も、アプローチは一つの風景として楽しめるものです。
沓脱石や平板は全て木材を模したコンクリート製ですので劣化も無く頑丈に仕上がり、周囲は柔らか味を演出するバークチップによって仕上げます。
チップ底部には高耐久の防草シートと強化テープを施工しており、雑草対策も万全です。
お向かいのお住まいの室外機や小窓は2株のソヨゴを植栽する事でピンポイントの目隠し効果を得ています。ソヨゴは陰気味のお庭でも育ちやすく、生育の緩やかさから徐々にサイズを大きくする植栽計画にも向いています。しばらくは強い剪定は必要なく、枝の整理がメインとなるでしょう。
洋風コンクリート平板を使用したテラスは、バークチップエリアと人工芝エリアを分ける役割を持ち、完全に雑草を防ぐ「雑草対策」としての一面も持ちます。
変則的にお庭を横断する形状はアプローチの様にも見え、写真の様に鉢植えを飾る場所としても向いています。
首位のグランドカバーが被さってきたり、頭上のアオダモの葉が充実してきますと、テラスは益々お庭と一体になっていきます。
経年を意識して将来的に資材と植栽が合わさる風景を考える、これがガーデンデザインの醍醐味ではないかと思います。
和風造園に限った素材と思われがちな飛び石ですが、自然味を感じられる素材であれば立派にナチュラルガーデンのキャストとなります。
平板や敷石と異なり、飛び石であれば高低差もそのまま受け入れたレイアウトをする事ができ、小さな立体感が演出されます。
鉄平石は薄い物が多いのですが、きちんと下地を頑丈にして据え付ける事で、平板等と変わらず頑丈なアプローチを構成出来ます。
特に雑木類の植栽においては、「植栽群」といった意識を持ってレイアウトを行います。
植栽当初だけの景観を考えるだけであれば容易かもしれませんが、領域を広げるグランドカバーや思いのほか背を伸ばす低木類、そしてメインの立ち木の生育特性を考慮した組み合わせを考えなくてはなりません。
それらの植栽が生育を経てお互いが馴染んだ際は、完成時よりもナチュラルな風景が構成されます。
今回はお住まい窓から植栽景色を楽しんでいただける様、窓の近くにナチュラルなエリアを置いております。
こちらのお庭は高低差が無い、いわゆるフラットなガーデンとなっており、曲線と直線を使い分けたランドスケープを行っております。
タイルやレンガ等を多用しますと直線が強く感じられやすいのですが、擬木や石を模した造園素材を使う事で、直線や直角部分も固く見えない様になります。
特にこちらの部分は直線同士が多く交差しておりますが、素材の柔らか味、角を消す植栽レイアウト、バークチップのナチュラル感によって硬さを感じさせない様になっております。
最低限の本数で構成した植栽レイアウトとなっておりますが、全ての木が前後して視界に入る三角構図を取り入れており、お住まいの中から眺めても立体感を感じられる様になっております。
窓の近くのアオダモやテラスに寄り添うイロハモミジの新緑が充実した際は、木々に抱かれる様な風景になる事と思います。