T様邸は美しい南欧風の建物であり、施主様におかれましては設計・建築段階より、植栽との調和を考えていらっしゃいました。
今回は植栽の為に設計をいただきました外壁沿いのスペースへ、お住まいと調和する植栽デザインを施してまいりました。
植栽の構成は、右手にシンボルツリーのホンコンエンシスを配し、中央へ軽やかな印象のアオダモ、左手へ常緑低木のヒメシャリンバイをレイアウトしております。
木目調の扉や窓枠を美しく引き立てる様に、低木も明るく色彩を散りばめる様にレイアウトしています。
常緑樹と落葉樹を組み合わせるリズム感はもちろん、色の移り変わりも楽しくレイアウトしております。
ポストエリアとインターホンのエリアに分けられた植栽スペースを、それぞれ植木レイアウトによって彩りを付けています。
ポスト周りは当初アオダモを植える予定でしたが、頭上にある軒との干渉を考慮し、生育の緩やかなソヨゴへ変更しました。
単幹タイプのソヨゴは可愛らしい印象もあり、洋風建築へのマッチングも良い庭木と言えます。
暗くなりがちなステップ周りやポスト下部はゴールデンモップで明るく見せています。
玄関周りの植栽は、洋風の雰囲気に映える葉色を多用して仕上げています。
南欧風の建物にマッチする様に、カラーリーフのコニファーや斑入りツゲ、セキショウ類やカレックスをバランス良くレイアウトしてみました。
ポイント毎に据えられた庭石のブラウン色がリズム感を引き出します。
門柱にチョークベリーを植栽し、ナチュラルな雰囲気も添えております。
シンボルツリーとして植栽された常緑ヤマボウシ(ホンコンエンシス)は、明るい葉色で出迎えます。
やや光沢を持つ葉は部分的に異なる色彩を見せ、年間を通してカラーリーフの様な雰囲気も持ち合わせています。
このホンコンエンシスは綺麗に整った3本立ちの株立ち樹形ではありますが、ハナミズキと似た枝振りはコンパクトで整形的な仕立てにも対応でき、剪定による樹形維持もしやすい庭木です。
植栽スペース中央部分へ背の高い軽やかなアオダモを植栽し、圧迫感も無いナチュラル感を取り入れています。
その足下は色彩の異なるコニファーが続き、時折砂利仕上げの空間を作る事で、小庭らしさも演出します。
アオダモは枝葉の少ない繊細な樹形が魅力ですが、これを活かして外壁や窓へ寄せる植栽手法が可能になります。
重い印象の常緑樹や生育の旺盛な落葉樹ですと、あらゆる問題から建物へ隣接する植栽には向きません。
特にこちらのアオダモの様に株立ちではなく「2本立ち(双幹)」であれば更にコンパクトにナチュラル感を添えられます。
ナチュラル感を持ちながら建物に寄せられる木は限られていますので、是非取り入れたい植栽手法と言えます。
あらゆる樹形と色味を感じられる植栽デザインですが、施工箇所となる奥行きは60cm程の細長い空間です。
奥行きが小さく細長い空間であっても植栽の高低差や配色に工夫を凝らす事で、楽しい小庭としてデザインをする事が出来ます。
また、スペース全てを無理に植物で埋め尽くす事はせず、空間そのものをデザインに取り込むのがポイントです。
細長い場所も活かす植栽デザインを、是非取り入れてみては如何でしょうか。