K様邸には二ヵ所の窓に面した庭スペースが設けられており、今回のお庭づくりにおきましてはそれぞれの窓から異なる風景を見る事が出来る様にデザインをしております。
全体的に日陰となりやすいこちらのお庭に馴染む様、和風エリアはしっとりとした坪庭風に、洋風エリアはどこかクラシックな印象を感じられる様にしております。
和風・洋風が変化する、庭の繋がり
奥の和風坪庭と手前の洋風小庭を区切る様子です。
こちらのポイントは窓からは見え難い位置にしており、それぞれの窓から違和感を感じられない様にしております。
和洋の庭の大きな違いは砂利にありますが、足下の下草類の種類をそれぞれのエリアの雰囲気に合わせており、植物による自然な融合をデザインしてみました。
反対側からの庭の眺めは、奥に向かうに連れて和風の木から洋風の木へ変化していく様子が見られます。
庭木のレイアウトとしては和風のコハウチワカエデとクラシックなソヨゴを、ナチュラルなアオダモが繋ぐ形にしています。
アオダモの様なナチュラルな雑木は和洋どちらの庭にもマッチしますので、自然な繋ぎとしての役割も担ってくれます。
奥の洋風小庭も華美にせずまとめる事で、坪庭と共に落ち着きを感じられる景色となります。
燈篭と手水鉢を奥深く見せる庭石組み
和風坪庭の要となる岬灯篭と知足型手水鉢は、手前の小石組みを手前に迫り出させる事でより奥側にある様に見せ、奥深さを演出しております。
あくまでも植物の背後に佇む姿は周囲と調和して風情が感じられ、単純な飾りではない存在感を醸し出します。
灯篭背後のキンモクセイは透かし剪定を行っておりますが、木が成長しますと背後が適度に暗くなり、よりしっとりとした風景になるかと思います。
苔庭が見せる独特の風情を楽しむ
灯篭周りの苔・下草類は、静寂な雰囲気を感じられる様に色彩の統一化を図っております。
植物の色彩統一は、どれかが目立つという事を避け、全体が風景を構成する様に見せる場合に有効な手法となります。
また、既に植物が庭に馴染んだ様に見せる事ができ、年月を経た様な仕上がりにする事が出来ます。
苔は様々な種類から選択をしますが、頭上に他植物が被さる様な陰地におきましてはコツボゴケ等が定着しやすいかと思います。
石材周りはスッキリと簡素なデザインに
植栽可能箇所が限られておりました事もございますが、灯篭と手水鉢の周囲はすっきりとしたまとまりにしております。
やがてキンモクセイの枝葉が展開してくる事も想定した空間ではありますが、シンプルに据えられた添景物は凛とした表情を感じさせてくれます。
手水鉢方向が抉れたかの様に自然石を据え、3種の砂利によって水の盛り上がりを表現し、静かな中にも動きのあるデザインを心掛けてみました。
風通しも妨げない、シンプルなシェードガーデンデザイン
リビングへ入る際に必ず目に入るこちらの窓からは、クラシックな意匠を施した洋風シェードガーデンが出迎えます。
ソヨゴは株立ち物が主流となりつつありますが、こちらの様な単幹の樹形ならではの雰囲気も魅力的です。
整った1本幹の樹形は左右均等に生育しますので、植栽当初に想定した姿へ育ちやすいものです。
また、単幹のソヨゴは丈夫である事が多い為、目隠し効果が必要な場合や更に生育させて幅広くさせたい場合にはお勧めとなります。
コンクリート製の枕木風平板と濃緑のグランドカバーが足下を引き締め、奥の方でカラーリーフがさりげなく色を添え、砂利のカラーもさりげなく背後の壁と合わせております。
室内から眺める和風坪庭
和風坪庭エリアを窓越しに眺める様子です。
こちらのお庭は地下階の上に位置する事から地面が高く、通常よりも足下の風景が目に入りやすくなります。
この為、諏訪鉄平飛石や大谷石の敷石が良く見え、植栽や石材との融合が感じられます。
不思議と地面が高いとお庭がより近くに感じられ、フロアーからお庭がそのまま繋がる様な雰囲気となります。
お庭の出入り口となる大谷石の敷石は高い位置に設定し、お住まいのフロアーとほぼ同じ高さとなっております。
この為、見た目にもお住まいとの一体感のあるお庭とする事が出来ました。