白壁とレンガ調の装飾が美しいI様邸は、日当たりも風通しも良い高台の好環境に位置しております。
一般的には植物が健全に生育する基準としてこちらの様な「全日照の環境」が挙げられる事も多いのですが、実際にはこちらの限りではございません。
夏の日光の暑さは年々厳しくなっており、日陰におきましても確実に気温の上昇が感じられる様になりました。
この為、長時間直射日光に晒されなくても夏に葉が傷むケースが増えており、近年における植栽計画におきましては「日向対策」を盛り込む様になってきております。
人の手で木陰を作るのは住宅街では難しい為、最も実践しやすいのは少しでも夏の日光に耐えうる樹種を選ぶ事ではないでしょうか。
施主様におかれましては、日光が庭木に及ぼす影響の強さを既に熟知されておりましたので、ご相談時より少しでも夏に耐え得る木を選ぶ様に心掛けました。
目隠し目的の植栽の場合、植樹当初から目隠し効果を期待するレイアウトをしますと後々の管理も大変ながら、景観的にも問題が生ずる事があります。 庭木は生育によりサイズが大きくなる事はもちろん、十分に葉数も増してまいります。 こちらを意識してまずはレイアウトに重きを置き、ある程度まで自由に枝を充実させる計画がおすすめとなります。
手前よりフェイジョア、ホンコンエンシス、ソヨゴ、プランター植えのオリーブへと続きます。生育を前提とする際は、特に樹形の「筋」が良い物を植栽する事が望ましくございます。
枝の分岐数が多いフェイジョアは繊細な印象も感じさせ、目隠しだけでなく景観的にも美しいお庭を演出してくれます。
中央のホンコンエンシスは冬季の為に半落葉を起こしておりますが、これは根張りをするにつれて葉数が増し、寒さの影響が少なくなっていきます。
3種それぞれが異なる葉色を持ち、形状も個性的な木が共演するレイアウトになっており、洋風らしさに必要な賑やかさが感じられます。
ソヨゴも同じく幹数が特に充実したものをお探ししております。ソヨゴは目隠しには向かないすっきりとした樹形も魅力的ですが、この様な木でありますと手間も掛かりにくい目隠し植栽として活躍してくれます。
特に夏場は幹数・葉数が充実しておりませんと幹までも直射日光の影響を受けやすい為、この様な全日照の環境下では自らに日陰を作れる様な樹形が向いております。
プランター植栽としてオリーブを2本レイアウトしています。
オリーブであれば強い直射日光に耐える事ができ、さらに環境が厳しいプランター内でも育てる事が可能となります。地植えですと相当な生育力を発揮する木ですが、プランターの場合は幾分生育力が抑制される事になります。
道路にも近い場所ですので、生育力の抑制に併せて適切な剪定メンテナンスは必要となります。
こちらのオリーブはコンパクトながら幹が太く骨格が既に形成された木であり、植栽時には既にオーナメント的な存在感を発揮してくれます。
オリーブに合わせる低木はアベリア品種のベラドナです。黄緑とイエローの斑入り種となり、とても賑やかな雰囲気を演出します。集合住宅や店舗の花壇等、過酷な乾燥環境にも耐える剛健種ながら、自然に枝を伸ばした姿はナチュラル感も感じられます。
使用したプランターは石材を滑らかに削り取った様な意匠が施されたGRC(ガラス繊維強化セメント)製であり、公共・商業施設へも納入される業務用プランターです。頑丈で重量のあるプランターは劣化や転倒の心配が少なく、しっかりとした据え付けを行う事が出来ます。
ホワイトの外壁やアイアンフェンスは、オリーブが最も馴染むマテリアルの一つと言えます。オリーブが身近な存在となる諸外国は白壁の民家が立ち並ぶ風景も多く、自然と色合いが美しく引き立ち合います。また、テラコッタ鉢もとても相性が良く馴染みます。
2本のオリーブは生育を前提としておりますが、レイアウトはお互いが自然に馴染む距離感を入念にチェックして決定しております。今後は株立ち樹形に見える様な育て方をしていくと良いかと思います。