港区の荘厳なマンションにお住まいのA様は自然や木々の緑がお好きであり、室内から見えるパティオの無機質な風景にお悩みでいらっしゃいました。
特に外部パティオは外壁がグレー調に統一されていた事もあり、これが無機質感を一層に増してしまっている感触でした。
私の方へは別件にて植栽の御相談をいただいておりましたが、ご自宅パティオへのプランター植栽についてもご用命をいただき、庭木の緑が室内から感じられるおしゃれな植栽プランをご提供する事となりました。
3台の大型プランター植栽から溢れる緑
今回のプランター植栽の基本構成は、直径80cmの丸型プランター3台を直線上に設置するという形になっています。
当初はそれぞれのプランターをややランダムにレイアウトする案もございましたが、やはりパティオを狭くしてしまわない様に、周囲を歩きやすい様に、というご意向から直線レイアウトに決定しました。
丸形プランターは「角が立たない」という設置上のメリットがあり、複数台を設置した際もフロアが窮屈に見えないという点で優れています。
また、プランターの底部がラウンド状ではない「円柱」の形であれば安定性も高く、強風等が懸念されるシーンでも安心して採用する事が出来ます。
各プランターには1本ずつ株立ち樹形の常緑樹を植栽し、複数の彩り豊かな低木の寄せ植えアレンジを行っており、特に色彩バランスに留意しています。
高木低木を問わず樹種については流行のおしゃれな樹種よりも庭木として親しまれる丈夫な樹種をチョイスし、プランターという過酷な条件で生きられる剛健性を優先しています。
柔らかく広い葉張りで角部を締めるシマトネリコ
まず右側のプランターへレイアウトしたのは樹高2mのシマトネリコで、幹もある程度太り骨格が整った樹形をお納めしています。
シマトネリコがプランターで映えるのはその「葉張り」であり、樹高の割に有効幅が広いという点が魅力です。
多くの樹種はプランターへ植栽直後では幅広く見えませんが、シマトネリコの場合は放射状の株立ち樹形によって既に幅広い緑が確保されやすく、プランターの直径以上に緑が溢れる様な景観を作り出せます。
その柔らかな樹姿は風による影響を受けやすい為、本植栽プランでは幾らか風当たりが少ないであろう角部へレイアウトする事にしました。
プランター植栽では竹による風止めや構造物との誘引を行えないシーンも多く、風当たりと樹形の関係性はレイアウト上で考慮しておく事が重要となります。
シマトネリコの足下へは、同じく柔らかみを感じられる低木をチョイスしており、色彩は多々取り入れています。
耐乾燥性と強い成長力を持つプリペットはレモンライムを選択し、丸い濃緑葉と小花が可愛らしいビバーナムハリアナムを前面へ植栽。
ハリアナムは大変貴重で当面入荷する目処はありませんが、本件に取り入れる事が出来て何よりでした。
遠くからは見え難い裏側についてはサルココッカやクリスマスローズといった葉のツヤや花を楽しめる植物をレイアウトしており、これらは少しでも陰に入る位置へ植栽されています。
前面は自由に繁茂させ、裏側はしっとり上品に、といった植栽レイアウトと言えます。
庭木でお馴染みのソヨゴがおしゃれなプランター植栽に
中央のプランターへ植栽した高木はソヨゴの株立ち樹形であり、こちらも樹高は2mを有します。
ソヨゴと言えば庭木として地植えをされるケースが圧倒的に多いものですが、実はプランター植えでも良好な生育を見せる一面があります。
持ち前の成長の緩やかさに加え、適度で美しい透け感や季節を感じさせる赤い実等も楽しむ事ができ、シーンを選ばず重宝する庭木と言えるでしょう。
レイアウト上、生育が最も緩やかなソヨゴは中央へレイアウトしており、両隣は生育が旺盛なシマトネリコとオリーブを植栽し、植栽後の成長バランスを取っています。
ソヨゴは幾らか陰を作られても葉が枯れずに残る強さを持ち、両隣の木々が成長しても大きな問題は生じません。
低木はソヨゴの濃緑葉と相対するカラーリーフを持つ斑入りヒメトベラを合わせ、繊細さと葉の賑やかさを取り入れています。
また、花物としてアベリアベーシックも植栽しており、プランターの外へ繁茂する優雅さと小花を楽しめる様になっています。
尚、アベリアと言えば斑入り葉(カラーリーフ)が多く使われるものですが、花付きが最も良いのはベーシック種であると言われています。
実際に花数は多く見受けられ、飾り気の無い葉色の中で小花がとても引き立てられるものです。
左側プランターには存在感のある株立ち樹形のオリーブを
左側プランターへ植栽したのは樹高2.3mの株立ちオリーブで、品種は庭木としてお馴染みのチプレシーノとなります。
株元から5本の幹に分かれる美しい樹形で幹には十分な太さがあるこちらのオリーブは、三重県より入荷された非常に良い木でした。
適度に下枝が少ないオリーブですので、足元へ低木アレンジを行う事に向いており、こちらでも色とりどりの枝葉が繁茂する様な低木植栽を施しています。
オリーブは地植えされた際の強烈な成長力に困ってしまうケースも多いものですが、代わりに成長力が抑制されるプランター植栽では根強い人気を保っています。
持ち前の耐乾燥性、表裏の葉色がはっきりと異なる葉色、唯一無二の存在感や雰囲気、オリーブの木は洋風・ナチュラルを問わず様々なシーンに良く映える庭木と言えるでしょう。
オリーブで肝心なのが剪定維持の方向であり、ある程度自由に伸びた枝はそのままとして自然なシルエットを残す事が要となります。
今回の様なプランター植栽でも同じくであり、内側に影を作ってしまう小枝は適宜取り外し、自由で軽やかなシルエットを維持するのが良いでしょう。
プランター植栽ならではの低木アレンジを楽しむ
様々な低木類を寄せ植えしたアレンジがとても美しい事例ですが、これはプランターならではという見方も出来ます。
通常の様に地植えで植栽デザインを行う場合、低木については「植え過ぎ」を懸念する事が多いものです。
これは根が自由に展開できる環境では低木がすぐに成長してぶつかり合い、どちらか弱い樹種が枯れてしまうケースを想定するからです。
プランター植えの場合は良くも悪くも根詰まりに近い状態によって成長力が抑制され、地植えでは行わない様な寄せ植えも可能になってくる他、プランターに植えられた低木は伸びた枝葉が土に接触しにくく、綺麗な状態を保ちやすいというメリットもあります。
地植えですとなかなか見られない多種低木の寄せ植えは、まさにプランター植栽の醍醐味とも言えるのではないでしょうか。
低木の「樹種数」はそのまま「葉色の数」となる訳であり、つまり多くの色合いが詰め込まれたかの様な植栽デザインは、プランターと低木という組み合わせならではの美しさと言えるでしょう。
無機質な空間へ緑を添えるプランター植栽なら、是非ご相談下さい
プランター植栽の最大のメリットは土の無い場所へ植物を植えられる、という点ですが、その目的はほとんどが景観向上を図る為と言えます。
もちろん目隠しの為というシチュエーションの御相談も大変多く戴いておりますが、その際もやはり庭木特有の美しさは景観として活かす事になります。
庭木が持つ緑色は日常生活の中で大変大きな景観向上効果があり、人工構造物の中ではまず得られない色彩と言えるでしょう。
無機質なデザインが好まれる現代は特に緑の重要性が高まっており、これを後から補う事こそプランター植栽の存在意義とも言えるのではないでしょうか。
環境や管理難易度を踏まえた植栽プランをご提案しておりますので、生活の中へ「緑を設置」されたい方は是非ご相談をいただければと思います。