以前にご紹介をさせていただいた2階リビングからも緑を楽しむ、雑木が美しいナチュラル坪庭-文京区K様邸に続き、今回はK様邸の玄関アプローチや植栽デザインの事例紹介となります。
K様邸の玄関まではまず駐車場にある階段を上がり、そこから数mで建物へ辿り着きます。
今回はアプローチ自体も庭造りに含めてご依頼をいただき、心地よい雑木の緑と自然素材を使ったアプローチ、この様なテーマでご提案をさせていただきました。
まずこちらは道路に面した駐車場の奥に位置する部分であり、階段上のエリアの雰囲気が伝わる様に少々の植栽を施しています。
階段脇には吟味した華奢なヤマボウシを植栽しておりますが、この木を明確なシンボルツリーとはせず、背後に同等のボリュームを持つソヨゴ株立ちをレイアウトしています。
このソヨゴは背後のコンクリート擁壁に緑を添える大切な役目を持っており、併せてヤマボウシが冬に落葉した際も緑を保つ効果を担っています。
背後に濃いグリーンが備わりますと華奢なヤマボウシも不思議と存在感が出るもので、柔と剛の関係性の様に2つの木がお互いを引き立て合います。
この駐車場部分は日向と日陰が混在しており、低木や下草はそれぞれ適材適所を心掛けています。
ローメンテナンスで剛健性も高い斑入りヒメトベラはしっかりと明るい色彩とナチュラル感を出しており、奥のエリアはサルココッカやリュウノヒゲといった濃緑色の植物で締めています。
ヤマボウシとヒメトベラは双方共に軽やかな雰囲気である為、その足元へは割栗石を積み上げる事で重厚感を出してバランスを取っています。
下から見上げると階段上エリアの木々がよく見えますが、ヤマボウシとソヨゴはこの景観を更に緑深く見せる事にも寄与しています。
華奢でありながら樹高を4m近く有するヤマボウシは、下からの眺めで上階の木々と一体化して見える様になります。
同時にソヨゴの緑もしっかりと存在感を感じられ、上階の緑濃い雰囲気を予感させる、そんな一風景を考えてみました。
最も樹高が高く見えるのはアオダモで、軽やかな樹形のまま5m以上の位置へ緑を添えています。
建物上に設置されている窓からもアオダモの存在をうっすら感じられる様になり、木々の中に建てられた住まい、そんなイメージを大切に考えております。
駐車場から階段を上がると、自然石と雑木でデザインされたアプローチガーデンが見えてきます。
左手の緑濃い常緑樹はホンサカキで、ナチュラルで美しい丸みを帯びた葉が程よい目隠し効果をもたらします。
ホンサカキの裏には外壁開口部があり、その奥には門扉が備えられています。
この門扉を見え難くする為に最適だったのがホンサカキであり、候補としてはヒメシャリンバイも向いています。
中央には柔らかな樹姿を持つクロモジがレイアウトされ、ナリヒラヒイラギや青葉ウエストリンギアが足元に繁茂します。
このアプローチガーデンの中央にはシンボルツリーとしてアオダモが植栽されていますが、これを挟む様にアプローチは二つの方向へ分かれています。
このエリアの形は正方形であった為、一本道ですと植栽エリアが奥深くなり過ぎてメンテナンス性が悪くなってしまう事から、アプローチを2つに分ける事で管理のしやすい植栽レイアウトとなり、風通しや採光も妨げない環境を保つ事が出来ます。
アプローチ材の隙間に繁茂する草はダイカンドラで、丸いクローバーの様な姿が印象的です。
シルバーフォールという銀葉品種もありますが、今回はナチュラルガーデンがテーマでありますので自然な緑葉を選択しています。
日常的によく歩く左側アプローチは諏訪スリ鉄平飛び石で構成しており、ナチュラル感と滑り難さを兼ね備えた安全な小道になっています。
アオダモの幹回りには複数の雑木を寄せ植えしており、ちょっとした自然繁茂の様な美しさを身近に感じられます。
アロニア、トキワエゴノキ、マルバノキを自然に組み合わせて植栽を行っており、アベリアベーシックやリュウキュウアセビといった低木類がナチュラル感に溢れたグラウンドを構成します。
右側のアプローチは大回りのルートを描きつつ、アオダモとソヨゴの間を縫う様に進んでいきます。
こちらで使用しているアプローチ平板は大谷石の特注品で、スタンダードな60cm×30cmの規格ながら、側面にノミ加工を施したコブ仕上げとなっており、表面はビシャン仕上げによって微細な凹凸を持たせた逸品です。
奥に見える隣家の塀土台も大谷石で作られている為、景観も統一された自然なアプローチになっています。
こちらのルートも低木の植栽が充実しており、左手のリュウキュウアセビに併せてマルバシャリンバイや斑入りトベラといった優しい雰囲気の植物に包まれています。
それぞれのアプローチを進んだ先には大谷石による小さなテラス兼通路を設けています。
こちらの大谷石は側面を正確な直線で仕上げたダイヤ挽き加工となっており、それぞれをしっかりと隣接させて大きな一枚板の様なテラスに仕上げています。
奥に見える小さな出入口は浴室や和室窓から見える小庭への入り口となっており、扉の向こう側には小さな和風の庭を設えました。
向こう側の和庭については日陰の小スペースに設える、垣根と石組みによる小さな和庭-文京区K様邸にて解説をしておりますので併せてご参考下さい。
テラスに沿えた植栽はアカシデの株立ちで、樹高は4mを有する美しい自然樹形が持ち味です。
アカシデは飾り気の無い幹肌と非常に細い枝を持ち、特筆すべき魅力はほんのり赤味を帯びる小さな葉と言えるでしょう。
アカシデの剪定はコナラやイロハモミジと同じく、木の成長方向と向き合ってその美しさを引き出す様な枝整理が必要です。
アカシデに限らず雑木類については植栽直後の大きさを維持する様な剪定は適さず、ゆくゆく枝葉が頭上展開していく様な成長を、予め許容した植栽計画が必要となります。
今回は施主様より「木々に包まれた住まい」といった植物を大切にお考えになられたご要望をいただき、そこへ自然に生えて育っていたかの様な植栽レイアウトを心掛けております。
面積や規模に関わらず、植栽を効果的に盛り込むご提案は可能でありますので、ご検討をされる方は是非お声掛けをいただければと思います。