とても閑静な住宅街に位置するK様邸には、玄関前と南側道路沿いに二か所の花壇が設けられていました。
お住まいご新築時に植栽は施されていましたが、同じ樹種を連続して列植されており、デザイン性に乏しい景観となっていました。
今回は二ヵ所の花壇の植栽リフォームという形にてご依頼を戴き、お住まいにマッチする様なおしゃれな景観を植栽で表現する事になりました。
玄関前の花壇の植栽デザインは、華美にならずにおしゃれである事を意識しました。
玄関に直接シンボルツリーを寄せるレイアウトとは異なりますが、システムウォールとお住まい外壁を庭木で優しく繋いでいます。
シンボルツリーのソヨゴはくっきりとしたディテールを持った単幹樹形をチョイスしており、枝葉の密度も高めとなっています。
この為背後に見える「宅配ボックスの裏面」が見え難くなる目隠しの役割も果たしており、景観と実用の両面を兼ね備えたシンボルツリーとなっています。
全体に多くの庭木を詰め込む植栽ではなく、明確な立ち木はソヨゴ1本のみであり、必要最低限の低木~下草で景観をまとめています。
ソヨゴの足下に添えた長さ60cm程のみかも石はオブジェの様な存在感が感じられ、花壇をおしゃれに見せます。
近年での庭石の役割は、主にナチュラル感の演出になる事が多いのですが、やはりこの様な景観・添景物としての据え付けも魅力的です。
庭石の存在によって景を形付けるのは和庭デザインにも共通しますが、今回の様に洋風テイストの植栽デザインにおいても効果的と言えるでしょう。
和庭の庭石が静けさを演出する一方、洋風庭石は景観をおしゃれにみせてくれる効果を持っています。
花壇の枠とデザインウォールの隙間へは、割栗石を少し積み上げております。
当初はここにも植栽が施されていましたが、生育面も厳しく、頻繁に枝葉が道路へ越境してしまう為、植物の使用は行わない方向としました。
デザインウォールは無機質でシャープなイメージでしたので、この雰囲気にマッチする飾り気の無い割栗石を選んでいます。
反対に優しい洋風の雰囲気を出したい場合は、丸みを持った石が良く合います。
シンボルツリーの裏手下部は日陰の環境となりますので、シェードガーデン向きの植物を選んで野趣を感じられる様にしています。
宅配ボックスの足下は写真の様に風通しも良くなっておりますので、耐陰性のある下草類であれば美しく育ってくれます。
マンリョウやヤブコウジを始め、セキショウやクリスマスローズが日陰の庭らしい瑞々しさを見せてくれます。
日陰ですと剛健な植物を選ぶという選択肢もありますが、あまりにも伸びたり増殖したりするのが速い植物を選んでしまうと、この様に手の届きにくい場所はメンテナンスが大変となります。
日陰の狭小部への植栽は、適度な空間と緩やかな生育を意識し、維持もしやすいレイアウトにしておくのが良いでしょう。
こちらは南側道路沿いの花壇ですが、やはり庭木は植え過ぎない様に、シンプルかつおしゃれに見せる植栽デザインを心掛けました。
グレーとブラウンが混じる割砂利が空間を締め、庭木はソヨゴ・ヒメシャリンバイ・キンマサキの3種によるレイアウトを行っています。
ヒメシャリンバイは特に幅の広い樹形を選んでおりますが、ソヨゴと同様に非常にメンテナンス性に優れており、道路沿い花壇へおすすめ出来る庭木と言えます。
キンマサキは成長の旺盛なイメージもありますが、実際は上方向へ垂直に伸びる力が強く、幅を抑えるメンテナンスについてはさほど大変になる事はありません。
樹高を抑えておく事を心掛けていれば、カラーリーフがアクセントになる優れた庭木です。
一見すると低木類の植栽もたくさんに見えますが、実際はほとんどが砂利による空間となっています。
植栽は、数に比例して必ずメンテナンス作業も増えていきますので、無理に花壇を植栽でいっぱいにするのは避けるケースが多いものです。
低木については、特に花壇の場合は乾燥に強い樹種を選び、樹種同士の隙間を確保しておく事が望ましいです。
今回はブルーパシフィックやヒュージス等、青々としたコニファーに加え、アベリアやピットスポルム等のイエローリーフの低木を組み合わせています。
リズミカルに空間を設けた花壇は不思議と植栽の数も充実している様に見え、デザイン背も感じられるおしゃれな花壇に見せる事が出来るのです。