I様邸は建築時から道路沿いへの植栽も計画されておりましたが、道路境界まで設置された花壇は思いの外面積があり、ご自身で植栽やガーデニングを行うには広すぎてしまうものでした。
花壇内にはマスが設置され配管も埋設されていましたが、しっかりと深い位置に通されている事から植栽は問題無く行えると判断致しました。
今回はこちらの花壇へ、ちょっとしたリゾート感も感じられる様な、おしゃれな植栽デザインを施す事となりました。
花壇は道路沿いの広い長方形と玄関側の半円形の二ヵ所に分かれておりますが、植栽によって敢えて統一した雰囲気にする事としました。
お住まいの外壁カラーにマッチする濃緑色の庭木をベースとし、各所へイエローリーフや銅葉の植物をレイアウトしております。
カラーリーフの庭木は一か所に固めるとそこだけが目立ってしまい、全体バランスを崩してしまう事がありますので、バランスを見て適所へレイアウトする事がおすすめです。
広い花壇は全体を植物で覆う事はせずに適切な空間を残し、建物や外構に合わせたカラーのレンガチップ敷きで仕上げています。
玄関に近い半円形花壇にはシンボルツリーとしてソヨゴの単幹樹形を植栽しています。
シンボルツリーという位置付けを明確にする為に他の庭木よりも樹高は高くしておりますが、ソヨゴであれば成長も緩やかな為、樹高が高いからと言ってメンテナンスに追われる事もありません。
また、単幹樹形は文字通り幹が一本である為、複数本の幹が建つ株立ち樹形よりもメンテナンスが楽になるというメリットがあります。
加えて単幹樹形の場合は足元の空間が広くなって風通しも良く、何よりも他種の低木類を寄せ植えしやすいという点で優れており、結果的に単幹樹形の方が色彩を多く使った景観に仕上げやすいという事になります。
ソヨゴは濃緑色が美しい庭木ですが、それを引き立てる為に、同時に視界に入るエリアにはカラーリーフの低木をレイアウトしています。
ヒメトベラのイエローやコルジリネのレッドが背後のソヨゴと合わさって見える為、それぞれの色彩が引き立って見えるという訳です。
洋風ガーデンに見られる植栽技法として、同じ樹種を同じ高さで列植するケースもありますが、住宅のお庭ですとそれを行うには面積が小さく、かえって植栽には高低差を付けた方が動きが出ておすすめと言えるでしょう。
こちらの花壇で「高木(立ち木)」としているのはホンコンエンシスやキンマサキ、ギンバイカと言った個性的な庭木で、それぞれ葉色や花付きといった魅力を持っています。
共通して「洋風植栽」として扱う事が出来る庭木であり、レンガ調の建物や花壇とのマッチングも優れています。
これらの立木の隙間を埋める様に低木をレイアウトしており、ヒメトベラやコルジリネ、ウエストリンギアの鮮やかな色彩に加え、グレビリアや低木コニファーによってしっかりとしたグリーンも添えています。
お住まいの中から窓を見るとうっすら緑の存在を感じられる様にしており、これは同時に将来的な目隠し効果にも繋がっていきます。
ギンバイカもキンマサキも枝葉密度を高めるのが容易であり、ここも庭木選びのポイントと言えるでしょう。
ギンバイカは成長力が強いので適時剪定が必要となりますが、ホンコンエンシスについては切り戻し剪定を行っても樹形が維持しやすいという特性があります。
キンマサキは枝が垂直方向に伸びる特性があり、横方向への成長は意外と緩やかという点で道路沿い花壇でもおすすめが出来ます。
レンガチップについては明るい色の製品もよく見られますが、保水性の高い素材ですので水垢による黒ずみも生じやすく、予めシックなカラーをチョイスしておくのも有効です。
今回は建物と花壇の色彩とマッチングの良いレンガチップを選んでおりますが、華美なマルチングは庭木の色彩を弱く見せてしまう事もあり、庭木とマテリアルの景観バランスはしっかり考える事がおすすめです。
不思議とレンガチップは砂利よりも柔らかく優しい景観に見せる事ができ、これはバークチップと似ている印象かもしれませんが、風によって飛散する事がほとんど無いという点で、とても優れたマルチング材なのではないかと思います。
広く持て余しがちな花壇であれば、今回の様に「庭づくり」の様な植栽デザインを施してお住まいを引き立てる事が出来ますので、道路沿いの植栽をご検討されている方は是非ご相談をいただければと思います。