住宅街での庭づくりで気を付けたい事とは
様々な植木や資材マテリアル、自然石まで使用するお庭造りは奥が深く様々な事を表現できますが、その舞台はお庭以前に「住宅街」である事を忘れてはなりません。
造園会社にとりましてお客様邸は、自身の庭デザインを表現する為の場ではございません。
作庭家自身も「住まう方の気持ち」「お庭を引き渡された感覚」「今後の事」をお客様と共有出来る様な設計をする事が必要です。
こちらでは、デザイン以前に大切に考えなければならない事や、それを踏まえました弊社の心掛けにつきましてお話をさせていただければと思います。
経年変化を予測、想定した設計
他のコーナーにおきましても申し上げておりますが、植木を扱う「庭」は経年と共に姿を変えていきますので、変化を想定した設計が第一になってまいります。
木が大きくなった場合は適切な剪定を施せば良いですが、大きさを維持する様な剪定が苦手な樹種もあります。
一昔前の様な「段作りの植木」などは毎年の刈り込みによって形を維持する訳ですが、現代で流行のナチュラルな樹種(落葉中高木など)におきましてはそうもまいりません。
「まいった」を「楽しむ」に変える植栽計画
自然味のある木の配置と致しましては、まず「生長して樹形が確立されたサイズの木」を植栽するのがコツです。
落葉樹に限らず、オリーブやハイノキなどは、切り込んだ姿よりもやや伸びて枝が枝垂れ始めた辺りが最も美しいと思います。
ある程度大きくなった木を植栽すれば、想定外の変化もなく、若すぎる木に比べ伸びも大人しくなります。
ですが野山の様な巨木になる樹種もありますので、その様な木は住宅街の場合は使用を避けるのが良いでしょう。
やや大きな木がさらに生長する景観を予想しておく事で、「大きくなってまいった」という風になりがちなお悩みも、逆に生長した柔らか味を「楽しむ」という考えに変わります。
ですが「剪定」は確実に必要です。
柔らか味を感じる樹形を極力維持し、また同じ様な生長を見込む剪定技術が必須です。
「ご要望通りのプラン」の注意点
新美園ではご要望の全てを取り入れたプランをお作り出来ない事がございます。
これはこれまでの造園や植栽、剪定作業の経験則から申し上げましてお勧め出来ないケースも多々あるからです。
お客様のご要望(植栽品種や位置、資材の選定など)を全てそのままにプランと出来れば私共と致しましても喜ばしい事でありますが、やはり業者と致しましてアドバイスをしたい事もございます。
「全てをご要望通りに」を前提に組まれた庭は、植木の環境不適合などが理由で枯れてしまったり、通路に濡れると滑りやすい資材を使って雨の日が危険だったとしても、それはご要望通りに組まれたプランであり、施工者側の提案ミスではなくなります。
せっかくのご要望におきましても、時には「悪いケース」を想定するのも大切であり、後々の後悔を避けられるチャンスでもあります。
時にはお客様のご要望に対しましてアドバイスをさせていただき、より良いお庭をご一緒に考える事が出来ればと思います。
住宅街である事を忘れない「環境配慮型」の庭設計
お庭造りをご依頼されるお客様方はもちろん、木々の緑がお好きな方は大勢いらっしゃいます。
ですが近隣の全ての方々が木が好きとは限りませんのも現実です。
木そのものが嫌いなのではなく、木から虫を連想されたり、過去に木々の合間から蜂の巣や蛇などに遭遇してしまい、枝が茂る風景が苦手になってしまったりと、様々な理由がある事でしょう。
住宅街の一角として楽しむ庭ですから、やはり近隣様へのご配慮は必須と言えるのではないでしょうか。
もちろん、お隣様も木々がお好きでいらっしゃり、枝が超えても良いと仰っていただく事もございますが、様々な自体を予想した庭設計を考えたいものです。
設計段階から考えられる対策
「配慮」といいますのは、やはりクレーム的な状況になりにくい様にする事が主となります。
設計段階から出来る事を幾つか挙げますと、
■枝が隣地境界をすぐに超える様な植栽をしない(成長速度を考慮する)
■落ち葉の飛散を気遣われます場合は、葉の小さな樹種を検討する
■実の成る樹は良い物ですが、収穫しきれない実の落下を想定する(アプローチや下屋付近を避ける)
■トゲを持つ植物は危険度を予めお伝えし、フェンス付近などに植栽しない
■雨戸の形状を考え、開閉時に枝を挟む様な配置を避ける
■落葉樹だけでなく、常緑樹も葉を多く落とす物がある事に留意する
■隣家様が家庭菜園をされている際は、なるべく農薬を使用しない(虫の来づらい)木を使用する
■道路に面した植栽箇所については、交通量、通学路でないかを考慮する
などなど、ごく一部ですが配慮できる事はございます。
庭造りの際も、あらゆる「気付き」を活かした施工を努める事が大切です。
自然の中での造園とは異なり、住宅地だからこその気遣いが出来る事も、作庭者には必要です。
工事の際も近隣様への配慮を忘れず、気持ちの良い工事を行う事で、お客様にもご安心いただけるのではないかと思います。
職人一同、今後もこの様な「デザインよりも大切な事」をお客様と共有出来る作庭者でありたいと思っております。