お庭のデザインから施工を行っております、新美園:新美雅之です。
弊社は屋外で庭づくりを主に行う造園業者ではございますが、ご要望にお応えの上、室内空間やルーフバルコニーでの景観づくりも承っております。
これらは「室内庭園」あるいは「屋内坪庭」等と呼ばれ、弊社ではデザインから施工まで、屋内の造園工事としてご依頼をいただいております。
もちろん室内等の屋根のある空間では通常の植物を育てる事は困難ですが、この様な環境に対応した材料を組み合わせる事で、室内での庭づくりを実現する事が出来るのです。
部屋の中に庭のある景色や玄関内に坪庭を楽しめる空間等、これらは屋外の庭とは異なり室内インテリア、あるいはディスプレイとして身近に楽しむ事が出来ます。
室内造園とは?
まず室内での庭園・坪庭づくりとは、どの様なものなのでしょうか?
少々こちらにてご説明をさせていただきます。
室内での庭づくりの特徴
弊社における室内造園とは、屋外とは異なる環境で維持が出来るお庭づくりを指します。
大まかな特徴と致しましては、
- 造園箇所の底部に養生となる合板又はシートを敷設する
- 植物は人工植物やフェイクグリーンを使用する(観葉植物の組み合わせも可)
- 地被植物や苔(モス)も人工植物をレイアウト
- 庭石や自然石は屋外の場合と変わらない造園技法でレイアウトする
- 原状復帰の必要性を視野に入れて設計する
という事が挙げられます。
室内の庭園・坪庭を構成する材料
屋外造園と共通する素材を使う事で違和感の無く室内庭園を構成する事が出来ますが、屋内だからこそ使う素材もたくさんございます。
こちらでは室内での庭づくりならではの素材や材料を見てまいりましょう。
既存躯体や床の養生・保護材
室内やバルコニーでの庭づくりは、まず庭の下となる既存躯体(フローリング等含む)の保護が前提となります。
防汚と防水を兼ねた建築用のシートで造園該当部を保護し、その上へ施工をする形となります。
建築時に屋根の下地等へ敷かれるシートで、保護機能に優れています。
土の山を表現する素材
地盤・築山となる部分は、透水性舗装材を始め粘土やモルタルによって成型をします。
舗装材によって盛り土を成型した場合は、上の写真の様に「乾燥気味の砂地」を自然に表現できます。
ここから表面加工によって自然に発生した苔を表現する事で、苔と土が入り混じった様子を再現する事が出来ます。
土を成型する素材は耐重量や施工箇所によって決定する必要がありますので、各所条件によって異なります。
軽量の庭石や擬石(プラスチック製)
室内の坪庭制作の場合、多くは床材に重量を掛けられない条件となります。
半屋外のルーフバルコニーであっても同様で、特に庭石の種類は軽いものを選びたいものです。
室内造園には鳥海石という山石や墨石(溶岩石)であれば軽量で安全に坪庭づくりを行えます。
写真は庭石の様に見えますが、こちらは強化プラスチック(FRP)製の擬石です。
高さは60cm程あり、これが本物の石ですと床材やに大きな負担が掛かって現実的ではありませんし、ビルや室内への搬入自体が難しくなります。
しかしリアルな擬石であれば搬入~設置が容易であり、施工後も安心です。
擬石は写真の様に暖色のライトで照らす事でよりリアルに見え、人工物特有のツヤも抑える事が出来ます。
室内で大きな石の演出をしたい場合はおすすめのマテリアルと言えるでしょう。
人工植物・フェイクグリーン
人工植物・フェイクグリーンとは、インテリアとして作られた「植物を模した置物」です。
様々な物が流通しておりますが、弊社では作り込みがよりリアルで繊細なメーカー品の使用を推奨しています。
特に竹類などは本物の竹を保護塗料でコーティングした物がおすすめで、こちらですと骨格自体が本物の竹である為に人工植物とは思えない仕上がりとなります。
その他はモミジ等のバリエーションもあり、これらは如何に植物らしいレイアウトをするかがポイントになります。
苔庭を表現する素材
和風庭園や坪庭と言えば、やはり苔庭を連想される方が多いかと思います。
インテリア庭園として苔庭を表現する場合、弊社では2通りの施工方法をご用意しています。
乾燥苔(ドライモス)をレイアウトする工法
ハイゴケ等、生育につれて盛り上がっていくコケ類を表現する際は、乾燥苔(ドライモス)を中心にレイアウトしていきます。
こちらであれば本物の苔と形状が変わらない為、より精工な庭づくりを行う事が出来ます。
苔の特性を知り、生育時の姿を的確に表現しなければ良い作品を作る事は出来ません。
粉末スポンジ材を散らす工法
こちらは青々と盛り上がる苔とは異なり、砂質地にうっすらと生える苔を表現しています。
水彩画の様に何色かの色味を散りばめて表現しており、製作には自然の色彩を再現する技量が必要となります。
屋外では植物の足下が乾燥気味になる事も多い為、こちらの仕上げですとリアルで自然味のある庭となります。
茶庭や露地の様な雰囲気をインテリアとして取り入れたい場合に有効です。
ポンプ循環式の手水鉢
室内の坪庭で水音を表現できる素材として、水中ポンプが内蔵された循環式手水鉢があります。
上でご紹介の擬石と同じく、石に見える部分は強化プラスチック製であり、容易に室内へ搬入が出来ます。
写真は屋外ですが、循環式手水鉢を設置した実例となります。
電源となるコンセントを差し込む事で内部に溜められた水が筧から流れ落ち、水道工事も行わずに和の風情を楽しむ事が出来ます。
室内に限らず、屋外でも周囲から水道管を引き込めない場合にも向いています。
石材に見える手水鉢の中身は空洞となっており、そこへ水を溜めて使用します。
水底に設置された小型ポンプが筧まで水を上げ、自然に落水する仕組みとなっています。
コンセントさえあれば本物の水を使った演出が可能となり、これは店舗や住宅の玄関でも実現できます。
洋風庭園の表現に欠かせない人工芝
フラットなフロアーやバルコニーにマッチしやすい人工芝は、室内で洋風庭園を構成する際に欠かせない素材です。
和風庭園では砂利敷きでデザインする「空間」を人工芝で代用する形になる事が多いのですが、そのリアルな作り込みが室内の雰囲気を一変させます。洋風の庭石やグラベルとの組み合わせで、さらに明るい洋風デザインを構成する事が出来ます。
インテリア庭園や室内坪庭に合わせやすい観葉植物一例
本物の自然石をレイアウトした室内の庭では、観葉植物を合わせてレイアウトするとより魅力的な眺めになります。
観葉植物については「設置する場所」を空間としてデザインに取り込んでおき、後にお客様ご自身にて観葉植物を楽しんでいただく形もお勧めです。
陽の当たる場所へ作られた室内庭園であれば、レイアウトした観葉植物も活き活きと育ってくれます。
和洋問わず室内の庭に合わせやすいエバーフレッシュ
エバーフレッシュは元々人気のある観葉植物ですが、室内へ設えた坪庭などにマッチしやすい姿と言えます。
人工植物では再現が困難な美しい葉や柔らか味など、室内坪庭に是非取り入れたい植物です。
実生の苗木や灌木を表現するナギ
ナギは屋外では大木となる木ですが、観葉植物として小振りに育てる事が可能です。葉脈と色が美しい植物で、屋外造園で使用するサルココッカの葉と似ています。 日当たりは必要ですが、室内の庭へレイアウトすれば日陰の灌木、実生の植物を表現出来ます。
小さな庭石にも馴染む、野趣あるシダ類
シダ類は強い日当たりを必要としない為、室内庭園にも使いやすい植物です。写真の植物に限らずシダは種類も多く、特にトキワシノブは小振りで繊細な葉を持ち、複数を室内庭園にレイアウトすれば野趣ある庭を表現出来ます。
写真の様な鉢によるインテリア作品にもマッチします。
室内庭園・屋内坪庭のメリット
インテリアとしてはもちろん、庭園ディスプレイとしても活躍する室内庭園ならではのメリットです。
通常の屋外造園とは全く異なる側面がありますので、ご参考下さいませ。
マンションや店舗内へも対応可能
お庭の無いマンションや広過ぎるルーフバルコニーを始め、照明の暗い店舗内においても実現できる事が、最も大きなメリットではないかと思います。
尚、マンションのバルコニーやテナントビルの場合は利用規約を遵守する必要がございますので、お問い合わせ前に予めご確認を戴く必要がございます。
室内庭園ならではのメンテナンスフリー
本物と見間違う様でも人工植物であれば生育はせず、剪定によるメンテナンスが必要ありません。
特に竹類は落ち葉や生育の速さ、周囲への増殖が大きな問題となりますが、こちらの様な人工植物でしたら手軽に、心配なく竹林の風景を取り入れる事が出来ます。
真夏でも平気な、施工時期を選ばない柔軟性
本来の屋外造園工事でありますと、植木のお探し期間を始め、厳寒期や暑い時期の施工が難しい等の問題があります。
ですが室内での庭づくりですと人工植物や内装資材が主な材料となる為に手配に長い期間が掛からず、真夏や真冬でも全く問題なく施工を行う事が出来ます。お急ぎの方はご参考下さいませ。
室内庭園(坪庭)として活かせる場所とデザイン例
これまでご説明をさせていただきました室内での庭づくりですが、こちらでは具体的な場所やデザイン例を見てまりましょう。
玄関土間へ風情ある坪庭を
こちらは広い玄関の一部を坪庭とするべくデザインした施工例です。
コンクリートと石材用ボンドで据えられた灯篭を始め、庭石類は全て本物の素材を使用しておりますが、苔についてはドライモスを加工の上レイアウトをしています。 端部には細かなウッドチップを混ぜており、これが屋外の様なリアルさをもたらしています。
エントランスへ、お出迎えの小庭を
ビルやマンションのエントランスには、細長い形状のフリースペースが存在する事があります。
休憩用のスペースであったりも致しますが、この様に庭としてデザインする事で、訪れたお客様をおもてなしする風景となります。和モダンなマンションやオフィスなどにお勧めしたい活用法です。
飲食店舗の内装として室内庭園を取り入れる
こちらはレストランの座席背面にデザイン・施工をさせていただきました、竹林と枯山水を表現した室内庭園です。
竹はもちろん、笹や苔に至るまで人工植物によって構成されており、飲食店舗様のディスプレイとしても安心して取り入れていただけるお庭です。
ルーフバルコニーを和風庭園として活かす
こちらは屋根のあるバルコニーへ施工を致しました和風の庭園になります。地盤も植物も全て人工物となっておりますが、これらを使用する際は、なるべく雨風にさらされない条件が必要となります。
しっかりとしたルーフがあり、雨風の吹き込みが少ない場所が条件となりますのでご参考下さいませ。
盆栽鉢で表現する小さな苔庭
ご紹介をしてまいりました室内造園の技法を用いれば、この様な鉢物を制作する事が可能です。
盆栽鉢はインテリアとしても馴染みやすい平鉢もあり、置き場所を選ばずお住まいへ上品な雰囲気を演出出来ます。
お手入れの難しい苔インテリアをお手軽に
苔玉や苔インテリアは近年人気ですが、環境やメンテナンス関係により長期で綺麗に維持するのは現実として難しい側面がありますが、メンテナンスフリーの苔庭鉢でしたらお手入れも要らず、インテリアとして手軽に取り入れる事が出来ます。
庭石はしっかりと固められており、鉢自体の重量もございますので安定感が高く、安心な飾りとしておすすめ出来ます。
室内庭園や坪庭のデザイン・施工のご依頼について
室内での造園をご依頼の際は、通常の庭づくりと同じくお問い合わせを戴ければと思います。
お問い合わせ方法はこちらです。
ご新築のお住まいに室内庭園をお考えのお客様へ
これよりお住まいや店舗をご新築されるお客様におかれましては、庭園や坪庭となる箇所を決められた上で予め囲っておく設計をお勧め致します。
内装と違和感の無い囲いを作っておく事で庭づくりもスムーズに行う事ができ、完成後の景観も非常に良くなりますのでご参考下さいませ。
店舗への室内坪庭をお考えの工務店様へ
店舗内装への作庭につきましては、経営オーナー様のご意見を直接お聞かせいただく必要がございます。
作庭箇所の確認時は工務店様のお立合いのみで結構でございますが、デザイン面等の最終確認は施工前にオーナー様よりの承諾が必要となります。
こちらを頂戴いたしました上で、施工に向けて工務店様との工期調整を行う形となります。
お問い合わせの前にご確認下さいませ。
執筆者:新美雅之(新美園HP作成・作庭者)
庭木や庭デザインについて、作庭者の経験を活かして現実的に解説をするコンテンツを目指し、日々執筆しています。